ヴィンセント逆行   作:キザキすい

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これで一章おわりです。
ジェノバプロジェクトについてオリジナル解釈あります。CCでジェネシスが『数多のプロジェクトを踏み台にして~』とプロジェクトSについて語っていたので、プロジェクトG以外にも踏み台となったたくさんのプロジェクトがあったんじゃないかなと思い、書きました。


Ⅶ ジェノバプロジェクト

 

 

 祠の中で眠るルクレツィアは夢を見ていた。

 彼女の中で赤ん坊のまま時を止めていた息子が成長した姿で現れた。

 十に満たない年齢の彼はこちらを見て、小さく『母さん?』と呟いた。

 ハッと彼を見る。

 一度でいい。抱きしめたかった。名前を呼びたかった。動かない身体を動かそうとして、声を出そうとして、手を伸ばそうとして――。

 しかし、息子の幻は、消えてしまった。

 

 ――ごめんなさい。ごめんなさい

 

 きっと、自分に彼を抱きしめる資格などないのだろう。

 一筋、涙がこぼれた。

 

 

 

 

 

神羅屋敷にて

 

「なぜ、セフィロスが古代種であるという資料を捨てなかったんだ?」

 

 ヴィンセントの言葉にガスト博士は、資料を仕分ける手を止めることなく答えた。

 

「もし、セフィロスが古代種ではないと知られたら、彼が処分されると思ったからです」

 

 処分。

 つまり、殺処分。殺されるということなのだろう。実験動物と同じ――いや、下手をすればもっとひどいものなのかもしれない。

 手に力が入り、持っていた資料に皺ができた。

 そこには『プロジェクトG』という文字が書かれている。セフィロスを生み出したプロジェクトとは別の、ジェノバプロジェクトの資料である。

 セフィロスのプロトタイプであるそれには、数少ないプロジェクトの生存者の名前が書かれていた。

 この神羅屋敷を漁って、ヴィンセントは吐きそうになる気持ちを必死で抑えていた。そこにはガスト博士でさえ把握できていなかった数多のプロジェクトの情報が重なっていたからだ。

 失敗して死亡した人間の数が積み重なっている。最初は死刑がほぼ確定した人間で実験を行っていたようだが、それがだんだんと捨て子へと変化し、いつしか研究員が実験用に子供を作ることとなった。

 そんな中で、生存者はセフィロスを含めてたったの三人。うち二人は特別な力を持たない子供と判断され、外の世界で生活しているのだという。

 現在、ヴィンセントとガスト博士はジェノバプロジェクトに関する資料の整理――と称して、資料の処分と残しておく資料を鍵のかかる部屋へしまう作業を行っていた。

 万が一、これを見た誰かが狂気に取りつかれないように――。

 

 ――プロジェクトGか

 

 巻き戻る前の世界で拾った《Gレポート》を思い出す。セフィロスのプロトタイプとなった謎のソルジャー。そして、DGソルジャーの強化に使われたソルジャーだ。

 

 ――アンジールとジェネシス。この二人のどちらかが《G》か

 

 DGは危険だ。何かあるまえに《G》をDGにかかわらせないようにしなければならない。しかし、彼に関してヴィンセントはほとんど知らない。

 

 ――できることなら、シェルクの誘拐も阻止したい

 

 シャルアの言葉から[u]- εγλ 0010の九年前、[u]- εγλ 0001にシェルクは誘拐されたことになる。猶予はざっと16年に足りないくらいか。

 ヴィンセントは巻き戻り前に見た資料の記憶をどうにか掘り起こした。

 DGソルジャーの一件後、リーブ達WROの隊員と共に、ヴィンセントは神羅の負の遺産の調査を行っていた。

 今から四年後、[μ]-εγλ 1989に最強の兵士、ソルジャーを作るために、たくさんの兵を戦わせるバトルロワイヤルが始まる。同時期に、セフィロスを神羅の英雄とする計画が始まるはずだ。

 [μ]-εγλ 1992にイファルナとエアリスは神羅ビルを脱出。その後イファルナは命を落とす。そして同年にセフィロスはラディオル島の反神羅兵を壊滅させる。この後から、セフィロスは大々的に英雄と称えられるようになり、彼にあこがれた若者たちが、ソルジャーへと志願した。クラウドも、その一人だったはずだ。

Gというソルジャーが神羅から逃げたのはおそらく、[μ]-εγλ 2000ごろ。詳しくは書かれていないが、このころにソルジャー大量脱走事件が起きていた。クラウドが神羅に入社するのもこのくらいの時期だろう。うまく説得してこちら側に引き込み、協力者になってくれればいいが。

 

 ――やることが山積みだな

 

 ふうと息を吐いて、ヴィンセントはファイルを閉じた。

 それとも、早めにセフィロスを神羅から引きはがすことが先決か。

 未来に起こる事件と、これから起こす計画。両方を頭の中で整理しながら、ヴィンセントは高く積まれた資料をにらみつけた。

 

 

 

 数日かけてようやく資料の整理、移動、処分を終えたヴィンセントは神羅ビルへ戻ってきた。すると――

 

「そう、そうやって、ゆっくりと……」

「あの、大丈夫ですよね? 壊れませんよね?」

「そうならないように、やさしくね」

 

 声のする方へ行ってみると、そこにはイファルナ、そしてエアリスを抱き上げているセフィロスがいた。おっかなびっくり、赤ん坊のエアリスを抱くセフィロスに対し、エアリスはきゃっきゃと笑顔を見せている。イファルナの表情も優しい。

 ガスト博士が顔をほころばせる。こちらに気づいたセフィロスが、助けを求めるような視線を向けた。

 そんな彼からガスト博士は優しくエアリスを受け取る。すると、エアリスは「あー、あー」と少し不満そうな声を出した。

 ほんの少し落ち込むガスト博士を見て、イファルナはころころと笑う。

 

「ここ最近、よく遊んでくれていたから、すっかりセフィロスがお気に入りになってしまったようですね」

 

 その言葉に、セフィロスは照れくさそうに頬を染めた。

 少し見ない間にずいぶんと打ち解けたようだ。おもわず、ヴィンセントの頬も緩む。

 

 

 

 どうか、あの子たちに幸せな未来が訪れますように

 

 

 

 

 

 

 

 

 セフィロスは古代種などではなかった。その事実を知った上層部は、セフィロスを《処分》すべきでは? と、声をあげた。

 いいや、さすがに殺すのはやり過ぎだろう。プロジェクトGの被検体と共にバノーラ村へ置いておくのはどうだと提案する者もいる。

 それらに待ったのかけたのは宝条だ。そういえばアレは宝条の息子らしい。肉親の情でもあるのだろうか?

 

「セフィロスには、まだ使い道がある」

 

 使い道という言葉に、いつもの不気味な笑み。どうやら彼には肉親の情よりも、研究対象をどう使うかという考えの方が強いらしい。

 

「使い道?」

 

 宝条は眉間にしわを寄せるプレジデント神羅にとある映像を見せた。それは高レベルのモンスターを一人で倒すセフィロスの姿。

 使い道――それはソルジャー計画のことだろう。何よりも強く、誰にも負けない兵士を作る計画だ。

 だが、兵はたった一人だけでは意味がない。どれだけ強くても、一人だけ強いだけでは、戦争はできない。

 

「セフィロスの中にあるジェノバ細胞を研究したところ、あれには人間の身体能力を高める効果があると分かりました」

 

 宝条の言葉に、プレジデント神羅はひげをさすりながら『ほう』と答える。

 

「ジェノバプロジェクトは、身体強化兵士ソルジャーを作る計画へと変更。それと同時に、今も行われているファーストソルジャー計画も進めよう」

 

 ファーストソルジャー計画。ソルジャー同士を戦わせ、強い兵士を作る計画だ。

 ファーストソルジャー計画の話を聞き流しながら、宝条はこれからのことを考える。

 

 ――セフィロス。私の最高傑作。何にも負けない、誰も寄せ付けない。そんな存在になれ……

 

 クククと不気味な笑い声が、宝条の喉を震わせた。

 

 

 

 




少しお休みしてから、第二章を書き始めます。
二章は時間が進んで[μ]-εγλ 1989(四年後)となります。
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