アリス・イン・オサレワールド   作:甲乙兵長

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仕事忙しないくせに連載を増やしたお陰で執筆時間がさらに削れたー
そのくせチマチマ未発表の関係ないのも書いたり練ったりしてるから余計に…

今回はバトル手前なので早く次に移りたいなー(願望)(遠い目)



模擬戦

 

 

 

「…………」

「ふふん」

 

 

 

 

 ――バンビエッタ・バスターバイン。

 

 

 今俺の目の前で、堂々と勝ち誇りヅラを掲げている娘。星十字騎士団の「E」。“バンビちゃん”の愛称で名高い、色物揃いの騎士団において外面だけは良い黒髪の美少女。

 だが油断するなかれ。美しき花弁を支える茎には猛毒の棘があるものだ。彼女がリーダーの自称バンビーズなる女滅却師集団(例外一名)は容姿こそ可愛らしいもの揃いだが性格や性癖は実に異質で俗悪。特に、眼前で美乳を張るこのバンビは、不機嫌になると気に入ったイケメンとワンナイトラブしたあと相手の男を殺してしまうという理解の及ばないサイコパスフェチを備えている。ただでさえ希少な滅却師を手前勝手な都合で減らす思慮の足りなさ。激情家で高慢ちきなメスガキ具合。同じ騎士団所属とはいえ、平穏を望むなら進んでかかわり合いになりたくない奴だ。

 ……百歩譲って、男を食い散らかすのは置いといてだ。なぜよりによって、俺のそばにいる人間に手を出すのか。しかも、ぶっちゃけ顔以外は難点しかないあの犯罪者予備軍を。……薄々、察しはつくがね。

 

「両者、準備は良いか!」

 

 その上で、この騒ぎ。

 声を張り上げ問いかけたのは同じく騎士団所属、「S」マスク・ド・マスキュリン。レスラーのような覆面に口ひげが特徴の筋肉モリモリマッチョマン。今回の立会人みたいなことをしてくれている。

 

「アリスー。集めたトトカルチョ分は頑張ってくれよー」

 

 その他にも、「Q」ベレニケ・ガブリエリ、「N」ロバート・アキュトロン、バンビーズの四人、そして、手を振りながら応援という名の私欲を振りかざす「D」のアスキン・ナックルヴァールなどなど。訓練所にちらほら散らばる一般団員含め、結構な数が見物としてやってきていた。

 

「……立会と見届け人だけじゃなかったの?」

「リルたちが連れてきたアキュトロン以外は知らないわよ。けど、この方が盛り上がるし、勝敗が分かりやすいでしょ? これだけの証人がいるんだから。言い逃れはできないってワケ。怖じ気づいたかしら?」

 

 安っぽい挑発(ドヤ顔)を軽く無視して、周囲の霊圧を探る(サーチ)

 

【――半径七百メートル圏内にその場から不動の聖章騎士クラスの霊圧を多数検知。見物数と数が合致しません】

 

 だろうな。他の団員どももひそかに覗いてる。考えられるのは鍵盤出歯亀(ナナナ)褐色デブ(ペペ)。その他は生態アルゴリズムが不明な連中ばかりで謎。

 

「ちょっと! 無視すんな!」

「おーい! はじめて()いのかー!?」

 

 お呼びがかかったので真面目に向き合うと、マスキュリンが改めてルールを告げる。

 

「禁ずるのは『完聖体』と『聖隷』だけとはいえ、やり過ぎぬよう注意するのだぞ。これはあくまで研鑽と訓練を兼ねた模擬戦ということを忘れるな! このスターが立ち会いを任されたからには陛下のご迷惑にならぬよう精一杯努めさせてもらう。以上だ。質問は?」

「ないわ」「同じく」

「では位置に着くが良い」

 

 互いに離れた場所へ移動しながら、頭で苦笑する。禁止は完聖体と聖隷()()、か。どちらも使ってしまったら銀架城そのものへの被害が大きくなりすぎるものな。けれど逆にそれ以外の配慮は一切含まれていないと見るべき。

 明言されていないだけ……というのは楽観視が過ぎるだろう。戦闘中でも邪魔者(味方)を殺して手柄を奪い合うような仲だ。訓練中の事故や殺害もあり得て当然という暗黙の了解くらいあるに違いない。それぐらいの殺伐具合(モチベーション)は感じ取れる。

 すなわち、『弱者は死ね』と。ホントにロストモラル極まるな此処は。千年ものあいだ鬱屈と閉鎖環境にこもっていれば当然か。

 

「これよりィ! 両者合意のもと騎士団内模擬戦闘訓練を(おこな)ぁう!!

 

 (ぁあお)コーナーッ! バンビエッタ・バスターバイン!!

 

 (ぁあか)コーナーッ! アリステレス・エーテルラント!!

 

 映えある星十字騎士団の戦士として、皇帝ユーハバッハ陛下に恥じぬ戦いをせい!

 

 ゴングを鳴らせジェイムぅーズ!!」

 

「はぁーい!!」

 

 

 

 ――――カァンッ!!

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 ――ことの経緯の始まりは、一時間ほど前。

 いつものように研究室で開発を行っていたときの気付きがきっかけだ。

 

 

 

 はて、何かを忘れているような……?

 

「ねーねーお姉様、変態オジさんはどーしたの?」

「そういえば、け、今朝から一度も見ていませんね」

「確かに。まあ、さして支障はないのでどうでもいいのですけど」

 

 指摘を受けてハッとした。なるほど、やたら今日は静かで作業が捗ると思ったら。そばで鬱陶しく絡んでくる副官(ヘンタイ)がいなかったからか。

 

「昨夜、わたしが帰ったあとどうしてた?」

「おねえさまが使ったあとの工具や機器の清掃と微調整を。整備担当の兵隊たちを押し退けて勝手に行っていました。ニコニコと気持ち悪い顔をしながら」

 

 普段と変わりなしか。

 単なる遅刻……はない。わたしたちのいるこのラボ空間がこの世の桃源郷と言って憚らない輩だ。なんなら日頃は一番に出勤している。何かしらの厄介ごとに巻き込まれたのか。緊急連絡信号すら届いてないことを考えるになかなかの異常事態らしい。

 

「さ、探しに行きますか?」

「……いい。あなたたちはこれから虚圏でしょう? “アレ”の完成もいよいよ見えてきた。データ収集(仕事)を優先して。

 キルゲ隊長の言うことはちゃんと聞くようにね」

『はい。おねえさま』

 

 配下三つ子の返事を背中に、すぐさま研究室をあとにする。しょうがないので、自力で探しに行くことにしよう。

 割り当てられた部屋にはいなかった。寄り付きそうな場所の当たりをつけるも影も踏めず目撃情報は皆無。やむなく試したセンサー感度最大で広域霊子探査をかけてもそれらしい反応は引っ掛からない。

 銀架城にいないのか? さすがに門をくぐって領域(ベライヒ)圏内から出たということはないだろうが。許可なしの渡界は脱走扱いで即粛清だし、何より俺たちに相談なくそんな真似をする意図が見当たらない。

 ならばあと考えられるのは自発的にどうこうではなく……。

 

「あら、一人でウロウロ何を探してるの?」

 

 テラスから城下町が一望できる場所に来たとき、壁に背を預けてこちらを待ち構えていた女と遭遇する。

 

「バンビエッタ」

 

 ため息が漏れかける。俺が騎士団でかかわり合いになりたくない人物トップ5に入る女だ。入団当初からちょっかいをかけられ鬱陶しいのである。己はカースト上位と自認してる陽キャクラスメートの無意味な絡みに似た面倒臭さと言えば分かりやすいだろうか。とにかくこちらのペースを乱しにくるので普通に苦手。

 あと、あたかもずっとそこにいたかのような白々しい態度だが、正しくは研究室を出てから一定距離ずっと尾行しながら着いてきていて、ついさっき進行方向に回り込んできたのは把握している。エーテルラント(じるし)の霊圧探知能力を嘗めるな、と言いたいが、どちらかと言えばバンビエッタが隠密不得意なだけな気がする。

 

「……副官のギルがいない。知らない?」

「ギル? ああいつも付きまとってるヤツね。構ってあげないから拗ねてどっか逃げたんじゃない?」

 

 ニヤニヤと、露骨なまでに煽りを利かせてくる女。この時点で、俺は九分九厘こいつが行方不明に噛んでると確信した。

 ……霊圧が見つからない理由は何も感知範囲にいないだけではない。感じ取れないほど弱まっている場合も考えられる。当然、死んでいたら霊圧は感じられないのだ。有名な「チャドの霊圧が消えた」ネタと理屈は同じ。

 しかし、意外かもしれないがバンビは無意味に味方を殺す真似はしない。一応独自なりとも理由ありきでヤるのである。そう、原作にて提示された例の「イライラ○ックス後相手を殺す」というイカれた方法で。

 にしてもマジか。副官のギルことギルバートは、変態ではあるが確かに顔はまあまあだ……けどそれを対消滅して余りある残念さがおおいなる足枷となっている。てっきり興味はないかと思ってたんだが……。

 っていうかそもそも。

 

「ねえ、教えてあげましょうか? ソイツがどうなったか。あたし知ってるんだか―――」

「……アイツがコレでタつとは思えないし」

「……………………は?」

 

 あ。

 やっべ声に出た。

 なおも迂遠な煽りを利かせてきそうな弁舌を遮る形で本音が漏れてしまった。

 いやだって、アイツ真性の“ロリコン”だからさ。幼児体型少女趣味全開の。お陰で普段から貞操の危機を感じて心が安らがないんだよね。いくらアリス(少女)の身体になったとはいえ性自認は男性面がしぶとく残っていて雌堕ちしたくなるほど堕落していないし。その点で言うと、見た目十代半ばから終盤で若いとはいえ、バンビはたぶん守備範囲外だと思うんだよね、うん。

 しばし、言葉の意味を咀嚼するような沈黙があった。それはまさしく嵐の前の静けさ。噴火する活火山の前兆。やってしまったかもと後悔してももう遅く。

 

【急激な霊子収束を感知。バンビエッタ・バスターバインの霊圧上昇。警告。回避を】

 

 直後。

 

 

 

 

 ドンッッッ!!!

 

 

 

 

「ふッざけんじゃないわよあんたら下っ端と上司は揃いも揃ってぇ!!

 ほとんど同じセリフ吐いてんじゃないわよおちょくってんのかあ!!!」

 

 

 

 憤激度合いが形となったかのように縦横無尽に放たれた霊子弾の雨あられがテラス一帯を包みこむ。爆炎と衝撃の範囲に呑まれながらも俺は足で石畳をひっくり返して盾にし難を逃れていた。バンビの能力に素体での防御(ブルート)は無意味なので、障壁で霊子弾が当たらないようにするか回避して凌ぐ以外手段がないのだ。なんとも厄介だな。

 ってか言いそうとは思ったが、ほとんど同じそうか。……ギルの分かり手みたいで絶妙にイヤだな……。

 

「ジョートーじゃない……! もうちょっと焦らしてヤキモキさせようと思ったけどこうも嘗められたんじゃ先輩団員(リッター)のあたしのプライドが許さない!」

 

 バンビはポケットを探ってなにかを放り投げた。“チャリン”と俺の滑り足元で止まったのはドックタグ……いや、ロケットか。割れて中身の写真が見える。見覚えのないアングルからの俺の横顔。どー見ても盗撮ですねくォれは。バンビがこんなもの持ってるわけないし、必然誰の持ち物かは導かれる。

 

「あんたの副官くんは()()()()()()()()

「…………」

「あンのバカ、さっきのあんたと似たようなセリフ吐いて『あなたのような若作りババアと我が敬愛するアリス様とでは断界よりも深く絶対な隔絶した溝があります。せめてあと50年は幼く若返って一から魅力を磨き直してきてください。それならまあ努力点くらいには評価しましょう』とか言ってきたのよ! 何様目線よ! 今思い返してもムカつく!! あんなのいくら顔がよくても問答無用でブチ殺すに決まってんでしょうがッ! ムカッぱらが立ったから首から上を爆弾にしてぶっ飛ばしてやったわっ!!」

 

 それはさぞ汚い花火だったろう。ギルを哀れむ気はない。自業自得なのだから。

 

「コラぁ! お主ら何をやっとる! バンビ! これは貴様の仕業か!? 陛下の居城を傷つけよって!」

「いいとこに来たわねマスキュリン!」

 

 破壊音を聞き付けて、レスラーマスクをかぶったムチムチ白装束の巨漢……同じ騎士団団員のマスク・ド・マスキュリンと肩に乗ったお供ジェームズが現れると、バンビは“ギュインッ”と首を向け凄絶な喜色満面を浮かべた。

 

()()()! あたしとコイツでっ!」

「むっ……しかし団員同士の私闘は陛下に禁じられておるぞ?」

「だったら訓練でも模擬戦でも大義名分はなんだっていいわ! と・に・か・く! あたしは、コイツと一回()り合ってギッタギタにしないと気が済まないのよ!」

 

 闘志ビンビンの少女が遠くからでも突き刺さん勢いで指差し宣誓する。俺たちの騒動に惹き付けられ、マスキュリンだけでなく他の一般団員など野次馬も集まりだしていた。

 なんかもう、何を言っても止まらなさそうな気配がある。けど、あくまでバンビが一人昂っているだけだ。最終的な裁定はハッシュか陛下のどちらかが取りなすだろうし、さすがに無用な決闘もどきを認めはしないだろう。

 

 

 

 

 ……とか、悠長に思っていたのに。

 

 

 

 

 なんと条件付きで認可が降りてしまい。

 お互いに見届け人の聖章騎士をひとり立て、立ち会いをマスキュリンが執り行うこととなったのだった。

 

 

 

 

 ほんと、どうしてこうなったんだろうな?

 

 

 

 

 





「沈黙が金ですよまったく。浅はかな所業に眩暈がしますねぇ」

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