死んでないです(n回目)
side サンズ
禍々しくうねる空気が舞う中、オレはソイツを睨みつける。
子供が纏っているとは到底思えないような殺気、隙の無い構え、絶えない笑み…
『ほんもののナイフ』を所持している時点でレベルは…
いきなりで悪いが、少し別の話をしよう。
オレの持つ『魔操界』の能力についてだ。
ここで指す
そして、この能力を使おうとすると、『自分ともう一つ何か』の最大二つしか同時に発動できない。つまりは多人数だと面倒だ。
例外として、自分が生成したものである『骨』と『ガスブラ』は同時に幾つでも操作が可能だが、それでも大きい弱点だ。
…何故、オレがその話をしたのかって?
それはだな、ヤツには魔力が無いからだ。
今更オレに魔力の感知ができないなんてことは絶対にありえない。オレの命を賭けてもいい。
つまりはコイツは『魔力体ではなく、自分から動ける』という特性を持った厄介すぎる相手というわけだな。
だから、オレがどうやって立ち回っていくのかは…
「…行くか。」
右手を振るうと、地上には骨の波がヤツに目掛けて流れていき、空中にはガスブラが二体出現する。
そしてオレは一本大きな骨を地面から伸ばし、高台のようにして距離を取る。
ヤツが襲いかかる波を前へ飛び越え、空中をガスブラが刺すと思えば、すでに一体はナイフで切り刻まれており、不発で消える。
もう片方はなんとか発射はできたが避けられる。
…クソ、相手の魔力無しには狙いが定まりにくい。
この数秒を見るだけでも、ニンゲンの身体能力の恐ろしさを感じさせられる。
おそらくこの非常識な動きも『ケツイ』の力によるものだろう。
キャラは避けたことを確認すると、ガスブラに目掛けて跳ねる。
…まさか、踏み台にしてこちらに来る気だろうか。
「開幕から対処が早いな…」
ヤツの居る位置目掛けて上から槍のように骨を伸ばし、投擲する。
当たるかと思った瞬間、妙な斬撃音が現れたと思えば、真っ二つに斬られた骨が落ちていった。
へへ、まあまあ硬いはずなんだがな。こんな豆腐みたいに軽々しく刻まれるとは…
「ま、この程度想定の内。本命は…」
「……?」
上から落ちてくるのは一際大きい骨…と見せかけた骨の集合体。
今度は建物の天井が落下した時くらいの勢いと力はあるはずだ。
ギャガガガガガガ!!!
…音を聞く限り、今度は連続斬りか?
斬撃が止まると大きな骨へナイフを振り翳し、小さな窪みを作る。
足場となったそこを経由して、すぐにオレが即席で作った高台の頂上まで来られてしまったが…残念。
「そこにオレは不在だ。…あと、一つ土産を置いておいた。」
頂上の更に上空にてガスブラがキャラの不意を突く形で現れる。
そのまま真下に向かって即発射。
ようやく直撃といったところだ。
因みに、オレは一足先に地面を踏みしめている。『近道』があったから使わせてもらったぜ。
「…もう少し効いてる様子を見せてくれてもいいんだがな。」
見上げると、その高台には何事もなかったかのように立ち尽くすヤツの姿があった。
一歩足を空中へ進めたと思えば、体が宙に浮く。
右手に構えたナイフを突き立てて、自由落下の勢いを殺しつつ、こっちへ垂直に向かってくる。
今ヤツに向けて骨を放ったところで足場にされるか、断たれるかの二択。
じゃあここで取るべき選択は…
「着地点を囲む…!」
ヤツが地面にたどり着く瞬間、周囲を囲い込む壁のように骨が地面から出てくる。
一瞬にして特製の檻が完成したが、ナイフで切り抜けられるのは御免だ。
ついでに青い骨を一本、体に突き刺しておく。
「一旦のターニングポイントってところか…」
前にも言った通り、普段完璧にしている魔力操作を甘くして、ワザと未完成の骨にするとバグってできるのがこの『青い骨』という攻撃。
バグを維持するのは超がつく位に難しく、骨の維持はまだしも、新しくガスブラを作るには多分技を解除しないと駄目だ。
解除もガスブラも失敗して隙を晒しました…なんてことになっちゃ困る。
そして魔力操作を甘くする原理のため、技が消えるのも早い。
つまり、これは時間稼ぎにしかならないのが事実だ。
だが、この僅かな時間が必要だったんだ。
「
直後、鋭い骨の雨が上からキャラへ注がれる。
キャラが着地する事前に座標操作で当たるように調整したものだ。
ヤツのナイフで斬られた断面の鋭さと、自然の重力。それなりに威力は期待でき──
「──ん?なんだ…」
嫌な気配がした。意識を集中させると何かがこっちに向かってきている。
「赤…飛ぶ斬撃!?」
勘は正しかったらしい。砂埃を裂いて走る、赤い
「…いや、狙いは青い骨の解除!」
紙一重で避けると、その赤くギラめいた斬撃は壁にブチ当たって轟音を生む。
気づくのが遅かった。檻に目をやるともうそこにアイツの姿はない。
「飛び道具持ちか…話が変わってくる。」
…連発はしなかった、恐らくチャージ系か体力使う系…なのか?
このタイミングで使うなら奥の手と見ていいのだろう。
「…チッ、上か。」
長々と思考をさせてくれはしない。
逆手で持たれたナイフがオレに矛先を向ける。
バックステップで躱すと、ヤツの体がやっと見えた。
その姿を見ると思わず笑みが溢れる。
「へへ、さっきの攻撃、無傷じゃないらしいな?」
頬の切り傷から血が流れている。
服にできた隙間からも肩や腕に赤色が露出している。
致命傷には程遠いが、こちらの攻撃にも意味はあるらしい。
…戦えている。
ヤツは正真正銘キャラなのか、他人の空似なのか…
結局、幾ら頭を回したところで答えは返ってこない。
…いや、攻撃という形で返答自体はやって来るか。
「真偽はこの戦いで明らかにしろって?」
『戦いとは対話』…そんなシャドウの言葉が頭の中で妙に響くのだった。
side アルファ
彼のあんな叫びを見たのは初めてだった。そしてその笑みが消えるのも…
「あの子供は一体…?」
離れる直前に目に入ったシルエット。
それは明らかに大人とは違う背丈だった。
だからこそ、最初は脅威には感じ取れなかったのでしょう。
でも、その考えはあの子供が威圧を放った時に否定された。
判ってしまった。これは脅威なのだと。
彼が早くに逃げる指示を出していなかったらどうなっていたか…
彼はソレに相対している。たった一人で…
対して私は眺めているだけ。
本当なら支援したいのだけれど、却って邪魔になってしまう。
そう理解してしまう程の隙の無さ、威圧、狂気…
攻撃も鋭くて、サンズの骨すら容易く裂いてしまう。
時間が経つにつれてどんどん感情が蓄積していく。
何もできない自分への不甲斐なさと焦り、何よりサンズが斃れるかもしれない心配、恐怖…
「…ダメね、私。」
ふと、そんな言葉が溢れる。
今の私はどんな顔をしているのだろうか。
「アルファ様…」
「…イプシロン、まだ帰っていなかったのね。」
あえて振り向かずに答える。
私を心配しているのが声色から分かった。
「デルタはどうしたの?」
「見送りました。サンズ様の命だから素直に……帰ってくれました。」
少し言葉に澱みがあったけれど、デルタがここにいないのは事実。
あの子が来ていたら、見届けるどころではなかったかもしれないわね。
戦うと暴れるデルタを抑えて…それで…
「あれが聖域の防衛システム…なの?」
目前で繰り広げられる死闘を青ざめた顔で見つめるイプシロン。
その一撃一撃がまともに入ると致命的な隙を生むため、両者とも全て喰らうわけにはいかない。
速さ、力、技術…どれが欠けてもこの勝負はできない。
全てが揃ってようやく勝負になる…とも取れる。
「あんなの、強すぎる…」
…やっぱり、どうしても考えてしまう──
「…思うの、考えてしまうの。
もしかしたら、サンズが…
負けてしまうのではないかって…」
…ああ、言ってしまった。
底が知れない彼に匹敵するような存在を見て、
いつもとは違う彼の表情を見て、
一人で戦い続ける彼を見て…
普段なら考えもしなかった、『サンズの敗北』
ありもしないはずの未来が何故か鮮明に映ってくるような気がして…
「アルファ様!」
「っ…イプシロン…」
彼女の表情が目に入る。
いつもより真っ直ぐな瞳だった。どこか私に対して怒っているようにも見えた。
「仮にも第一席なんです。貴方がサンズ様を信じなくてどうするのですか!?」
その言葉は思わず痛くなるほど頭の中で響いた。
シャドウとサンズはいつも私たちの常識を覆してきた。いつも私たちの先に居た。
「勝ちます。サンズ様が戦うなら必ず!」
根拠のないただの感情論。
でも、今はそれが暴論だとしても、何故か頼もしく見えた。
「…ごめんなさい、漸く目が覚めた気がしたわ。」
そう告げると、ホッとしたような表情で微笑んだ。
「集中しましょう…私たちにできることは、彼を信じて終わりを待つことだけ。」
『もしも』が起こった場合、全てを受け入れ切れる自信はない。だけど…
そんなことにはならないと、何故か直感が告げていた。
side サンズ
特に痛がる様子も無く、ヤツは攻めっ気に満ちた立ち回りを続けていた。
飛ぶ斬撃は使っておらず、やはり接近戦へと持ち込むつもりらしい。
当然こちらとしては接近戦などお断り。
距離を取ったり、技で妨害をしつつチャンスを窺う。
ドゴッ、と地面を蹴る音がした。
「接近戦しか能が無いのか?」
『近道』で離れ、骨の槍5本をヤツに目掛けて飛ばす。
最初の1本は避けられ、2本、3本目は切られ、4本目は掴まれ投げられると、5本目に当たって両方とも砕けた。
徐々に詰められて来ているが下手に動くのは悪手。常に頭に入れておかないといけないのは飛ぶ斬撃だ。
オレの見立てじゃ、発動には溜めが要る技だ。
飛ぶ斬撃を使わざるを得ない状況にすればあるいは…
「…へへ、どうするかな。」
たった一人で全員を潰し、斬り、殴り、裏切り、最後は殺し、一つ、
それがキャラという存在。あの世界に於ける最強。
だったらどうする…このまま負けに行くって?
いや、違う…よく頭を使え。
ヤツはなぜ虐殺ができた?
ヤツはなぜサンズ戦を攻略できた?
ヤツはなぜ…ここまで生き残ってきた?
「セーブとロード…そうだ、
諦めない限り無限の機会を、やり直しを、復活を齎す。
初見の筈の攻撃を知り、避けることができる。
だが、今までのヤツの立ち回り…妙に気になる。
殺気に塗れたあの近接戦闘…なるほどな。
こっちの攻撃を初見じゃなくするために、攻撃を誘発させているという訳か。
要するにヤツは…
「まだ
顔が引き攣っていくのが自分でもよく分かる。
当然だ。初見攻略だなんてサンズには許されない…
あの戦闘の難しさがあるからこそのGルートだろう!?
「ここで勝たなきゃ…サンズを名乗る資格は無し、か。」
ぱんッ、と顔の正面で合掌をする。
すると弾けるようにしてオレの周りに円を描くように一本一本骨が現れていく。
両手を離して腕を横に広げる。そして右手をヤツへ向けると、骨も呼応し徐々にヤツへと傾いていく。
ここいらで…一発勝負しなきゃな。
「さぁ初見だろう?お望みどおりのオーダー、くれてやるよ。」
開かれていた右手を勢いよく握る。
瞬間、風を切る音と共に放たれた。
ビュンビュンと矢の如く、しかし一つ一つは槍のように重い骨がミサイルとなってヤツを襲う。
しかしヤツは動かない。そのまま骨との距離がだんだんと縮まっていく。一体何を…
…いや、ナイフを掲げていやがる。
骨が今にも当たろうとするそのとき、ナイフは振り下ろされ…
そして──
ヤツの居た地面が
「まさか、飛ぶ斬撃…あれを推進力にしたのか!?」
巻き上がる煙の中で見えた赤黒い光…間違いないだろう。
あんなギリギリのタイミングといい、己の足元を狙ったことといい、狂気の沙汰といっても過言ではない。
そして、ヤツ自身は当然オレ目掛けて飛んできている。
オレの骨よりも多少速いか…クソ。
「あぁ、まさかこんな…」
ヤツはナイフを握った。
「こんな…」
ヤツは獰猛な笑みを浮かべた。
「こんなにも…」
ヤツは
「…へへ──」
ヤツはナイフを振るった。
「こんなにも、うまくいくなんてな。」
ナイフが首筋に触れるその刹那…
ガスターブラスターが──ヤツの体を貫いていた。
言い訳は活動報告でします。見て頂けると幸いです。
それと今後からは(も)不定期になりそうなので、『不定期投稿』タグつけます、はい…ずみまぜん!!!