元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった。
これは平塚らいてう(1886・明治19年~1971・昭和46年)が、雑誌『青鞜』の出発にあたって、創刊号(1911・明治44年九月発行)に寄せた発刊の辞の一文である。
作家として有名であった平塚は、天文学、考古学にも精通しており、過去を直接見たとでも言わんばかりの学識により、この二つの学問は数世紀相当まで発展し、今日における天文学と考古学の隆盛に繋がったとされる。1説によると、国内の宇宙航空研究開発機構であるJAXAの前身である『蛇草』の創立メンバーであったともされる。これは宇宙という広大な草原を蛇の如し柔軟な身体を以て開拓すべし、という意味を込めているという。
(田礼耶念『偉大なる大正のアルキメデス・平塚らいてう』民明書房、2404。)
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気がついたら暗闇とよくわからん小石がいくつも浮いている空間にいた。
「え、どこここ」
ふよふよと海の上を漂うような感覚に身を任せながら口をついて出たのは困惑だった。
「え、ちょ、なに、ドッキリ? どっかに連れて行かれた系?」
花も恥じらう女子高生の自覚があるあたしはすわ誘拐か、と思ったが、にしては目の前に広がる光景が異様すぎて多分そういうのではないのはなんとなくわかる。
「……あ、あれじゃん。多分これあたし夢みてるやつじゃん」
なんだっけ、白鳥の夢? みたいなやつ。夢みてるのがわかる夢みたいなやつ。よくわからんけど。多分それでしょ、それ。
「もっかい寝たら起きるでしょ。寝ちゃおっと」
漂う感覚は多分ベッドの感触で、現実のあたしはまだムニャムニャしてるのだろう。
そう思いながら私は目を瞑り、再び眠りにつくのであった。うわ、なんか小説っぽい。
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天の川銀河が近傍の矮小銀河と衝突し、爆発的に星々が増えるスターバーストが発生した。我々の太陽系もその中の1つである。
やがて粒子密度の高い場所が生まれ、引力による衝突が頻繁に起こり、徐々に大きなかけらに成長して微惑星となった。
そしてその微惑星は、更に微惑星同士で衝突を繰り返し、更に大きな惑星へと成長していったのだった。
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夢から醒めたと思ったらまだ夢だった。
「え、まだあたし寝てる感じ? めっちゃ寝るじゃん」
昨日友達と寝落ち通話してたからかな。多分深夜回ってたから疲れてたのかも。起きたら充電切れてるかも。最悪。
「てかなんか小石でかくなってない? ウケる」
辺りは自分の周り以外は暗闇なのは相変わらずだったが、そこらへんで浮いていた小石がいつの間にかボーリングの球ぐらいの大きさになっていて、それが8つあたしの周りをぐるぐると廻っていた。
それをぼんやりと眺めていると、あたしの背後からビュン、ってボーリング球よりはやや小さいぐらいのボールが飛んできた。
「うわっ、あぶなっ」
あたしの真横を通り過ぎたそれは、そのままあたしの周りを廻るボーリング球の、その内の1つに衝突した。ボールは砕け散って、そのままボーリングの球の周りをぐるぐる廻りながら散らばっていた。
「わあ、なんか土星みたいになってる」
ラウワンのボーリングもぶつかったらこうなるのかな。今度やってみよ。やらないけど。
でもちょっと気になるので、辺りを見回して、いい感じの石を探す。
「これでいっか」
ちょうど近くで浮いていたドッジボールぐらいの球を掴んで、他のボーリング球の、適当に赤黒い色のやつに投げよう、と決めた。
「ピッチャー振りかぶってぇ」
よく野球選手がやる感じのポーズをとって、
「投げました〜」
そんな感じで投げたボールは、あたしの運動神経が悪いのか、投げるのがへたくそなのか、想像していたよりも何倍もふわふわとゆるやかに飛んでいった。
「アハハ、めっちゃ下手なんだけどあたし」
ケラケラ笑いながら飛んでいくボールを眺めていると、やがて狙い通り赤黒いボーリング球にぶつかった。土星みたいになるかな〜、などと考えながらそれを観察していたが、ボールは赤黒いボーリング球を少し削ったものの、そのまま跳ね返り、ボーリングの球の近くでぐるぐる廻った。
「やっぱ野球選手が投げたら土星になるのかなあ」
くだらないことを考えながらも、思いっきりボールを投げたつもりで身体を動かしたので、少し疲れた。
もう一度寝よう。多分起きたら凄い寝相になってるんだろうなあ、と思いながら再び目を瞑った。
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原始地球はまだ冷めきっておらず、緑どころか水もない、真っ赤な溶岩と黒い岩石の球体であった。
また、同じ公転軌道上に沢山の星々が生まれたため、原始地球は、火星サイズの惑星と衝突を起こした。
ジャイアントインパクトである。
この衝突により、月が生まれる。
こうして、月を従えた現在の地球が誕生したのだった。
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この夢さあ。多分あたし宇宙にいる夢じゃね? 3度目の目覚めと共にそんなことを考えた。
辺りの暗闇とボーリング球はよく見ると遠くで星がたくさん輝いてるし、ボーリング球だと思っていたものは見るからに水金地火木土天海だし。うわー、マジで壮大じゃん。
「てかあたしめっちゃ光ってるんだけど。太陽じゃん」
あたしバカだけど流石に太陽の周りをぐるぐる廻ってるのが太陽系なのは知ってる。天と海がなにかわからんけど。なんかメイとかいうのなかった?
「お、あれ日食じゃね?」
なんか地球の方見たら月と重なってた。どうでもいいけど太陽側から見たら日食じゃなくて地食じゃない? どうなんだろ。そんなこと考えてたらちょっと地球見に行ってみたくなった。
ふよふよと漂っていた身体を、泳ぐように動かすと、どんどん地球のほうに近づいていった。
「今の日本何時代なんだろ」
令和だったらアタシバズったりして。そんなことを考えながら、日本列島らしき緑の島に向かっていくのだった。
「え、めっちゃジョーモン人じゃん。ウケる」
日本に降りたらまだ縄文時代だった。弥生時代だっけ。まあいいや。なんかそんな感じの服の人がめっちゃいた。空を見上げると日食が起きていて、あたしの周り以外はちょっと薄暗かった。
ただジョーモン人たちの目の前に降りてきちゃったから、みんな驚いて土下座してる。なんかめっちゃ申し訳なくなってきた。
「カミ■■」
「■■」
「■■カミ■■■■」
え、なんか言ってる。怖。カミカミカミカミ言ってるのはわかるんだけど。もしかして神だと思われてる?
「あー。まあ照らしてるし。おおむね神かもね、あたし」
そんなことを考えていると、だんだんと眠気がやってきて、意識が霞んできた。そして夢がようやく終わり――――。
目が覚めたらいつもの自分のベッドの上だった。ちゅんちゅん、と小鳥が鳴いている声がする。もう朝か。
なんかすごい夢を見たような気がする。どんな夢見てたんだっけ。思い出せないってことはだいぶ熟睡したんだろうなあ。……って。
「やばっ、寝坊じゃん!」
ふと電源を付けたスマホを見ると、もうとっくに学校に行く時間だった。急がないと遅刻する。
「いっけなーい! 遅刻遅刻!」
そうしてあたしは夢のことなんか完全に忘れて、学校に急ぐのであった。
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古代の人類にとって、未知とは恐怖であり、恐怖とは災いであり、災いとは死であった。
「おお、空が暗闇に飲まれておる……!!」
「災いじゃ、天変地異が起きたのじゃ」
クニの長老などは口々にこう言い、それを聴いた民などは恐れ慄いた。そして、その恐怖と混乱こそが、古代人の思考を停止させた。
原因も分からぬまま、何が起きているかさえ分からぬままにただ怯え、逃げ惑うしかなかったのだ。
やがて夜が訪れてもそれは変わらず、人々は闇を畏れ、火を燃やし続けた。
火とは光であり、光とは人にとっての希望である。そして空にあった太陽などは人々にとって希望の象徴であった。
ゆえに、それが月によって覆い隠されたのであれば、どうなるか。日食という概念を未だ知らない古代人たちは恐怖に支配された。
「ああ! 太陽が闇に覆われてしまった!」
「なんということだ!!このままでは世界が滅びてしまうぞ!」
「神よ! なぜこのようなことをなされたのか!?」
そうして神への祈りを捧げる者や、泣き崩れる者、中には怒り狂って暴れ出す者もいた。そうして誰もが世界の終わりを予感させたその時。
「え、めっちゃジョーモン人じゃん。ウケる」
世界に「恒星」が降りてきた。
その姿はとても美しい女性で、見慣れない衣装を身に着けている。その女が空から降りてきた途端、辺りは光に包まれたのだ。人々は一様にして驚きながらも、その人智を超えた現象を見て直感した。
この方こそ、「神」なのだ、と。
「神だ」
「神様だ」
「神様が我らをお救いになられた」
彼らは口々にそう言いながら、神に対して不敬のないように五体を倒置し、平伏した。
「神」は民を見回し、少し考える素振りをみせる。そして一言、
「ア(ー。)マ(ぁ)テラ(してるし)ス、オオ(むね)ミカミ(かもね、あたし)」
と言った。民はその一言で理解した。このいとうつくしき「神」の名を。アマテラスオオミカミ。これが即ち天照大御神の降臨の逸話であった。
(『現代訳古事記「序詞・降恒星」編』民明書房)
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1911年。明治44年9月。平塚らいてうは、このような夢を見た。そして朝、その夢のことを思い返し、それがすべて誠であると直感。
「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった」
起き抜けについて出た言葉はまさしく大正のアルキメデスの如し。「エウレカ」の類語として後世に伝わることになるのを、まだ平塚は知らない。