ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~ 作:零たん
分身ランボーグの追跡を振り切り、何とか校舎の屋上まで逃げ切った3人。
あげはは屋上の扉が開かないようにドアノブをロープでくくり、近くの突起に固定した。
どこまで時間稼ぎができるかわからないが、何もやらないよりはマシだろう。
「大丈夫よエルちゃん。お姉ちゃんたちが守ってあげるからね」
あげはが不安そうな表情を浮かべるエルに優しく微笑み、声をかける。
一方、ましろはランボーグに掴まったハルトの事が心配でたまらなかった。
「ハルくん…どうしよう…」
「ましろさん…ごめんなさい。私が罠にはまったせいでハルトさんが…私がミラージュペンを奪われなければ、こんな事には…」
ソラも罪悪感で胸が押し潰されそうになっていた。
青ざめた表情を浮かべるソラにましろは首を横に振る。
「大丈夫だよ、ソラちゃんは何も悪くないよ」
ソラは責任感が強いあまり必要以上に自分を責めてしまう傾向にある。ましろはそのことをこの間の戦いでよく理解していた。だからソラを安心させるように、彼女の手を握り優しく語りかけた。
「ソラちゃん。ハルくんを助けるためにどうすべきか、一緒に考えてくれる?」
ソラはまだ涙目だったが、こくりと小さく頷いた。
「うーん、どこかで金属バットでも拾ってぶん殴ればワンチャン?それか私が囮になってアイツの注意を逸らしたり…」
あげはもハルトを救い出す方法を考え頭を悩ませている。
「あー、マイクテス、マイクテス~。無駄な抵抗はやめるのねん!今すぐプリンセスを連れて出てこい!」
するとカバトンがスピーカーを使って屋上にいるソラたちに降伏するよう呼び掛けてきた。
彼の傍にはランボーグに触手で拘束されたサンライトの姿もあった。
「ほらお前も一言言ってやれ!『俺たちの負けです!カバトン様にごめんなさいしましょ~』ってな!」
「それよりもカバトンさん、俺いますっげートイレに行きたいから一旦離してくれない?用済ませたら戻ってくるから」
一旦口縄を解放されたサンライトは呑気にカバトンに用件を伝えてきた。
「トイレだとぉ?嘘つけ!その間に逃げようって魂胆なのは見え見えなのねん!」
「いやもうホントまじ我慢の限界なんだって」
「あー漏らせ漏らせ!次回からお前のあだ名はメソメソおもらし野郎に改名してやるのねん!」
「おもらしと言っても大きい方だぞ?」
「絶対漏らすな!大きいのを漏らすニチアサのヒーローとか聞いたことないのねん!?」
女児向けアニメにあるまじきどえらい発言をかますサンライト。カバトンがガチで引いている。ちなみにカバトンはスピーカーから離して会話をしているので、幸い屋上にいるソラたちには二人の会話は聞こえていない。
「おーいランボーグよ。プリキュア20周年の歴史に幕を下ろしたくなかったら俺を離せー。このシリーズが打ち切りになるか否かはお前にかかっているんだぞー?」
それを聞いて冷や汗を流すランボーグ。漏らされたくないし、かといって主人の命令に背くこともできない。困った彼?は「どうしたらいいですか?」と言わんばかりにカバトンをジッと見つめてきた。
「おいお前!なに困った顔してこっちを見るのねん!?いいか、死んでもそいつを解放するな!漏らさせるな!というかこれ以上喋らせるな!早くグルグル巻きにするのねん!!」
栄光あるプリキュアの看板に、く…泥を塗るような真似は絶対にさせない。
使命感に駆られたカバトンはランボーグにサンライトを黙らせるよう命令した。
「わっぷっ!冗談に決まってるだろ!ちょっと悪ふざけ~~~~むぐむぐっ!?」
サンライトはランボーグの触手でミイラ男のようにぐるぐる巻きにされてしまった。
体もギチギチに締め付けられ身動きも取れない。
「ちくしょう!こんなお下品なメソメソおもらし野郎より、やっぱりソラを捕まえるべきだったのねん…!」
ソラのように加虐心がそそられる少女を触手攻めすればマニアックな大きいお友達からの好評も得られたはずなのに、筆者としても実に残念な展開である。
(おちょくって体力を回復する時間を稼ぎたかったがダメだったか…)
身動きが取れないサンライトは再び思案する。
さっきのおもらし云々の話は一応彼なりの作戦だったらしい。
(このままじゃ上の四人が捕まっちまう…こんなグルグル巻きにされちゃ盾を展開できないし…キュアサンライト、ほかに武器や隠された力は持ってないのか…!?)
焦るサンライト。だがそんな都合のいい展開はそうそう起きるはずはなかった。一方、下でクソみたいな茶番劇が繰り広げられているとはつゆ知らず、ソラはサンライトがガチガチに拘束されているのを見て悲鳴に近い声を上げた。
「は、ハルトさんがっ!?やっぱり…やっぱり私助けに行きますっ!!」
急いで屋上から飛び降りようとするソラをあげはが慌てて腕をつかみ静止する。
「ちょっと危ないよソラちゃん!ハルるんを助けたい気持ちは私も同じだけど、飛び降りたらソラちゃんも危ない!第一焦って行動しても事態が悪化するだけだって!」
「だって…だってこのままじゃ、ハルトさんが…!!」
「そうだよ…行かなきゃ…ハルくんを助けなきゃ…!」
ソラと同様焦りだしたましろも、おもむろに屋上の柵を掴んで乗り越えようとする。
「ちょっとましろんまで!気持ちはわかるけど危険だって!」
「それでも…!それでも行かなくちゃだよっ!」
目の前でハルトが、大切な家族が苦しんでいる。何としてでも助けたい。いてもたってもいられずましろは叫んだ。すると彼女の胸元が突然輝きだし、ピンク色の眩い光が出現した。
「!?あの光は…」
(まさか…!?)
ソラもサンライトも、目の前の光景を見て驚く。あの輝きは自分たちがプリキュアに変身する切っ掛けとなった、ミラージュペンを誕生させる光の輝きと同じだった。そして彼らと同様、光はミラージュペンに形を変えて、ましろの目の前で浮いている。
「こ、これは…私のミラージュペン…?なんで私が…?」
ましろは困惑した表情でミラージュペンを見つめる。ヒーローを目指すソラや、彼女を守るために立ち上がったハルトと違って、何の取柄もない自分になぜミラージュペンが発現したのかはわからない。
「でも、これで私もプリキュアに…ハルくんを助けることができる…!」
だがそんなことは今はどうでもいい。今はハルトを助け出さねば。
ましろは意を決しミラージュペンを手に取ろうとする。だがそれに待ったをかける人物がいた。
「やめろぉっ!!」
異変を察したカバトンが、ましろに制止の声を掛ける。
ましろはビクッと手を止め、カバトンの方を振り向いた。
「脇役なんかがプリキュアなんかになれるもんか!お前に何の力がある!?自分だってわかってるんだろ!?ホラッ!?」
それは何の根拠もない、ただ彼女をプリキュアにさせないための難癖だった。
だが、その言葉はましろの決意を挫くには十分だった。
(確かに…私には何の力もない。仮にプリキュアになれたところで…ハルくんやソラちゃんの役に立てるの…?)
カバトンの言葉を受けて固まってしまうましろ。直後にドンドンッ!と屋上の扉を叩く音がした。分身ランボーグが遂にこちらの居場所を突き止めたらしい。無理やりドアをこじ開けんとドアノブを捻ったり、ドアを殴る音が響き渡る。
(敵がもうすぐそこまで来てる…早く、プリキュアにならなきゃだよ…でも…私なんかじゃ…)
彼女の手はミラージュペンに触れる寸前で止まっていた。
「ギャーッハハハ!ほら見ろ!もうピンチが目の前に迫ってるのに震えて動き出せない。そんな役立たずの脇役なお前なんかじゃ、誰も救うことなんかできないのねん!!」
カバトンがましろを更に追い詰める。
それを聞いたましろは何も言い返せず、体を震わせることしかできなかった。
(ましろが役立たず…?誰も救えない…!?)
サンライトは頭にきた。ましろを侮辱された怒りで体中からメラメラと炎が漲ってくるようだ。
彼は右腕にあらん限りの力を籠め、ランボーグの触手を強引に引きちぎった。
「何!?このメソメソ野郎、まだこんな力を残してやがったか!?」
驚愕するカバトンには目もくれず、サンライトは自分の口を押えている触手を引き剥がす。
そして、声を大にして叫んだ。
「ましろ!俺を助けてくれ!!」
サンライトの言葉に、ましろは大きく目を見開いた。
「そんな奴の言葉なんかに惑わされるな!!ましろは役立たずなんかじゃないっ!!いつも俺を助けてくれる大切な幼馴染で、自慢のお姉ちゃんだっ!!」
「ハル…くん…?」
ましろはサンライトを見つめる。いつも彼のお姉ちゃんぶったり、弟扱いされるのをウザがる彼が、自分に助けを求めている。
「あと、さっきは本当にごめん!俺は意地張っていつもましろにっ!?んぐっ!むぐむぐむぐっ!?」
「ハルくんっ!?」
言いかけたところで再び触手に捕まり縛られてしまう。
ましろは自分に救いを求めたサンライトを見て目を潤ませる。
「ハルくんが私をお姉ちゃんだって、助けてくれって…」
「そう、ハルるんの言う通りだよ。ましろんは役立たずなんかじゃない。優しさっていう誰にも負けない強さを持ってるよ。ハルるんもそれがわかってるから、照れくさがってもましろんにくっついてるんでしょ?」
あげはがにこやかに笑ってましろを優しく励ます。
「あの日の約束、ちゃんと守ってくれてたんだね。ありがとうましろん!ましろんはもう立派な、ハルるんのお姉ちゃんだよ!」
「あの日の…約束…!」
ましろはあげはとお別れした日の事を思い出す。
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数年前のある日、虹ヶ丘家にあげはの母親が血相を変えてやってきた。遠い街へ引っ越すことを知ったあげはが、怒って家を飛び出したというのだ。
それを聞いたましろはハルトを連れてあげはを探しに外へ出た。一緒に遊んだ公園や、3人の行きつけのお菓子屋さん等、彼女が行きそうな場所を一生懸命探した。そして日も暮れ始めた頃にようやくあげはを見つけた。彼女は川の堤防で一人蹲って泣いていた。
「ここにいたんだね、おうちにかえろ」
ましろはあげはに優しく声をかけるが、彼女は一切耳を貸さない。あげはは怒っているのだ。彼女の家は母子家庭で、数年前に両親が離婚し父親や姉たちと離れ離れになった。そして今度はハルトとましろとお別れしなければならなくなった。彼らと離れたくないあげはは母親に反発し、心配しているましろの声にも応えようとしない。
「おてがみだすよ、でんわもするよ…!」
それでもましろはあげはに自分なりの精一杯の気持ちを伝えようと、必死に声をかけ続けた。しかしあげはは泣きながら首を横に振る。
「ましろんは悲しくないの!?」
「かなしいよ…でもわたしがないたら…あげはちゃんはもっとないちゃうでしょ…?」
その言葉に振り返るあげは。涙をこらえて一生懸命笑みを浮かべるましろが目に移った。ましろだって悲しくないわけない。彼女にとってもあげはは大切な友達なのだから。でもそんな彼女を心配させまいと、必死に笑顔を作っていた。
そんなましろの優しさ、そして強さをあげはは知ったのだ。
「おれはやだ!あげはねえとおわかれしたくない!!」
だがハルトは納得できなかった。目にボロボロ涙をためてあげはに抱き着いてきた。
「なんであげはねえまでいっちゃうの!?とうさんいつまでたってもむかえにこないし!なんでおれだけ…!」
「ハルるん…」
「やだよぉ!あげはねえまで、おれをおいていっちゃやだよぉ…!」
あげはは駄々をこねて泣きわめくハルトを優しく抱きしめた。事情は違うがハルトも父親と離れ離れになった身だ。同じ親の都合に振り回されている者同士シンパシーを感じたあげはは、ハルトのお姉ちゃんを自負するようになり本当の弟のように可愛がっていた。
そんなあげはをいつもはウザがっているハルトだが、いざ別れの時になるとやっぱり寂しくてしょうがなかった。特にこの時期のハルトは父親に捨てられたと思い込んでおり、そのことで周りの人間から同情されたり変に気を使われたことで、精神的に不安定になっていた。
彼にとってあげはは、ありのままの自分を受け止めてくれる数少ない友達であり、お姉さんだったのだ。そんな彼女がいなくなってしまったら、ハルトはどうなるだろう?
「ごめんね、ハルるん…あげは姉ね、お引越ししなきゃいけないから…もうハルるんの傍にいられない…」
彼女はハルトをさらに強く抱きしめ、必死に涙をこらえる。
「なかないで!ハルくん!わたしはハルくんのそばからはなれないよ!」
ましろはあげはの胸で泣くハルトを自分の方に向かせる。
「だって、きょうからわたしがハルくんのおねえちゃんだもん!」
「ええっ!?ましろがぁ!?」
ハルトが素っ頓狂な声を上げた。あげはも驚いてましろの顔を覗き込む
「あげはちゃん!やくそくする!わたしがあげはちゃんのぶんも、ハルくんのおねえちゃんがんばる!はるくんをひとりぼっちにしないって、やくそくする!」
「えーましろがおねえちゃんなんてやだ!おれとおないどしなのにー!」
幼馴染の突然のお姉ちゃん宣言にびっくりして泣き止んだハルトはぶーぶー文句を漏らす。そんな彼には目もくれず、ましろは一生懸命あげはに自分の決意を伝えた。
「ましろん…うん、わかった!ハルるんのことお願いね!」
そんなましろの申し出を受け入れたあげははましろと指切りげんまんする。
「ハルるんのお姉ちゃんは大変だと思うけど、ましろんなら任せられるね!」
「うん!まかせて、あげはちゃん!」
「えー!?」
「やったねハルるん、新しいお姉ちゃんができたよ!」
「えー…」
不満そうにむくれるハルトを他所に、ましろとあげははにっこり笑いあった。そして三人は手を繋ぎ仲良く家に帰っていった。この日、ましろはハルトの二人目のお姉ちゃんになったのだ。
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「あの日、ましろんに教わったよ。優しいっていうのは、強いってことなんだって。そんな強さを持つましろんだから、ハルるんのことを任せることができたんだ」
あげはは今だミラージュペンを手に取るか悩むましろに一喝する。
「だから何の取柄もないとか、自分なんかなんて言うな!ましろんには優しさっていう、誰にも負けない力があるんだよ!」
「あげはちゃん…」
「はい!ましろさんは、今のましろさんのままでも十分強いです!あなたの優しさに、私も何度も助けられました!」
「ソラちゃん…」
ましろは二人の言葉に涙ぐんだ。ずっと自分には何もないと思っていたが、彼女の優しさはたくさんの友達の心を救っていたのだ。それを教えてもらって、自分にもちゃんとできることがあると知り、嬉しくてたまらなかった。
「だから、行っといで。ましろんのかわいい弟を取り戻しておいで!」
「私からもお願いします!ハルトさんを助けてください!ましろさん!」
「える!えるぅ!!」
「みんな…うん!わかった!行ってくるよ!」
迷いはもうない。彼女はミラージュペンを手に取り、強く握りしめた。
「エルちゃん!お願い!」
「えるぅ!すぅ~……ぷぃきゅあああー!!」
ましろの声に答えたエルはソラの時と同様、不思議な光をましろに向けて解き放った。それをキャッチしたましろの手にはハートの紋章が刻まれたピンク色のスカイトーンが握られていた。
「まっててハルくん!」
ましろは右手にミラージュペンを、左手にスカイトーンを構え、高らかに叫んだ。
「ここからはヒーローの…!」
――――お姉ちゃんの出番だよ!
その言葉と共に、ましろの体が眩い光に包まれた。
「スカイミラージュ!トーンコネクト!」
マイクの形に変形したミラージュペンに、スカイトーンを装着する。
「ひろがるチェンジ!プリズム!」
ステージに降り立ったましろ。それと同時に彼女の髪色がピンクの長髪になり、足にフリルの付いた可愛らしいシューズが履かれる。
「きらめきホップ!」
その言葉と共に頭に白い髪飾り、両耳にイヤリングが付与される。
「さわやかステップ!」
今度は白を基調とし、青とピンクのストライプで彩られているドレスが着用される。スカートには多彩色の星々が散りばめられたインナースカートが付いていた。
「はればれジャンプ!」
可愛く飛び上がると、両手に白いロンググローブが装着される。最後に腰からハートマークが入った布がふわりと伸びた。最期にテレビの前のお友達に向けて可愛いポーズでウィンクする。
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」
全ての衣装を着用し、変身を完了したキュアプリズムが華麗に登場し決めポーズを取った。
「な…!?キュアプリズムだとぉ!?」
キュアプリズムの姿を見てカバトンが驚愕する。
サンライトもプリキュアになった幼馴染のお姉ちゃんの姿を目を点にして見つめている。
(キュアプリズム…これがましろの変身したプリキュア!)
キュアプリズムは可愛らしくも決意に満ちた凛々しい表情で、敵の方を振り向く。
ましろが変身を完了した直後、分身ランボーグが天井をぶち破ってやってきたのだ。
「ええい!メソメソ野郎の次は脇役まで!ランボーグ、ボッコボコにしてやるのねん!」
命令された分身ランボーグは高く跳躍して、キュアプリズムに飛び掛かった。
プリズムは地を蹴って後ろの方へ飛び、敵のキックを回避する。
だがスカイやサンライトの時と同様、彼女も変身したてで自分のパワーを制御できずすっ飛んで行ってしまう。
「うぇ~!?ハルくんの言う通り、パワー強すぎだぁ~!」
「にゃっはっはっは!ランボーグ今だ!プリンセスを捕まえろ!」
そう命令された分身ランボーグはゆっくりとエルを抱くあげはの方へ振り替える。
ソラが彼女たちを守らんと前に出て構える。
「させないよっ!」
プリズムは校舎の壁に激突する直前に体勢を立て直すと、分身ランボーグ目掛けて勢いよく飛び出した。
「たぁーっ!!」
プリズムはランボーグに強烈なキックをお見舞いする。
蹴り飛ばされたランボーグはカバトンの方へ吹っ飛んだ。
「へぶぅうううっ!?またこのパターン!?」
巻き添えをくらって吹き飛ばされるカバトン。
その拍子にソラから奪ったミラージュペンがカバトンの手から離れ宙を舞う。
それを確認したサンライトは口を押えている触手を再び振りほどき、プリズムに呼びかける。
「ましろ!!」
「ハルくん!!」
プリズムは屋上から高くジャンプすると、サンライトを捕らえる毒キノコ・ランボーグ目掛けて、手から煌く光弾を連射した。
「ラッ…ランボォオグゥウウウ!!」
光弾はランボーグの胴体にクリーンヒットし、サンライトを拘束する力が弱まった。
同時にサンライトも触手を振りほどいて、自分を捕らえていたランボーグに振り返る。
「よくも人の体を好き勝手弄りやがったな!健全な女児向けアニメに不健全な触手プレイを持ち込みやがって!」
サンライトは拳を握り締め、ランボーグをおもっくそ殴り飛ばす。
「お前は出禁じゃ!触手アンソロジーにでも再就職しなこの野郎!!!」
「ランボォオオグゥウウウッ!?」
サンライトにぶっ飛ばされたランボーグはその巨体を地面に沈める。その倒れたランボーグの顔面を足場に、サンライトは宙を舞うミラージュペン目掛け跳び上がり、見事にキャッチした。
「待たせて悪かったなソラッ!約束のミラージュペン、返すぜ!」
サンライトは校舎の屋上にいるソラ目掛けてミラージュペンを投げた。
ソラは屋上の柵から飛び出し、投げられたミラージュペンを空中でキャッチした。
「ハルトさん、ありがとうございます…!」
ソラはスカイトーンとミラージュペンを手に構える。
「ヒーローの出番です!スカイミラージュ!トーンコネクト!」
空中でスカイトーンをミラージュペンに装着するソラ。
「ひろがるチェンジ!スカイ!」
その言葉と共にソラの体が眩く光り、キュアスカイに一瞬で変身を完了させた。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
青空をバックに変身ポーズを取ったキュアスカイが、地上に華麗に着地した。
その力強い瞳は、再び体を起こした毒キノコ・ランボーグ本体に向けられている。
「いかんっ!いけランボーグ!」
命令を受けた分身ランボーグは先ほど落下した屋根から飛び降り、スカイを背後から奇襲しようと近づいていく。だがそれを空中で見ていたプリズムが両手から光弾を生み出し分身ランボーグ目掛けて投げ飛ばす。
「キュアスカイの邪魔はさせないよ!」
二つとも分身ランボーグの頭にヒットし、ひるんだところを敵に急接近したプリズムのパンチが吹っ飛ばす。
「これが私の力…この力で、皆を助けるよ!」
プリズムは両手を握り締め、可愛い顔をむんっ!と引き締めると、吹っ飛ばしたランボーグ目掛けて駆け出した。
一方、スカイは体勢を立て直したランボーグ本体に向かって静かに歩みをすすめる。ランボーグは既にサンライトの一撃をくらってヘロヘロだ。だが目の前のスカイを捕らえるために、無数の触手を生やして彼女を襲っていく。
「ヒーローガール!スカイパァーンチッ!!」
だが、スカイが流星の如きスピードで繰り出した鉄拳を前に、ランボーグは彼女に触れることは愚か、攻撃を回避することもできずに必殺の一撃を叩き込まれた。
「スミキッター…」
毒キノコ・ランボーグはエロ同人の怪物の役目を何一つ全うできぬまま天に召された。
残るは分身1体のみ。
「はぁあああっ!!」
一方、プリズムも分身ランボーグに拳のラッシュを叩き込む。スカイのような洗練さや、サンライトのような一撃の重みはないが、皆を助けたい一心で繰り出されるパンチは確実にランボーグにダメージを与える。
「ちくしょう!何やってるのねんランボーグ!?こんな新入り一人にボコボコにされやがって!本気を出すのねん!!」
「!?らん…ぼォッグゥウウウ!!」
そう命令された分身ランボーグは残された力を全て開放し、拳を一気に巨大化させた。
「えっ!?」
咄嗟の事にプリズムはガードも回避の体勢も取ることができない。
プリズムに向かって振り下ろされる拳。しかしその拳は何者かの手で受け止められた。
「俺の姉ちゃんに手を出すんじゃねぇっ!!」
「ハルくんっ!」
サンライトが間一髪分身ランボーグの間に入り、プリズムを守ったのだ。
彼は大切な幼馴染のお姉ちゃんに手を出そうとする不届き者に対し、右腕を思い切り振りかぶって倍返しの鉄拳をお見舞いする。
「ランボォグゥゥゥ!?」
サンライトに殴られランボーグの顔面がぺしゃんこに変形する。そして思いっきり吹っ飛ばされると、地上のアスファルトを砕きながらバウンドし仰向けに倒れ込んだ。それを見たサンライトは倒れたランボーグに飛び掛かり、その体を起こして背後から羽交い絞めにする。
「今だ!
「!?…うん!
サンライトの呼び声を聞いたプリズムは嬉しそうに微笑みかけ、目の前の敵を倒すべく必殺技を発動する。
「ヒーローガール…プリズムショット!!」
プリズムは頭上に巨大な光球を生成し、ランボーグ目掛けて投げ飛ばした。サンライトも捕まえていたランボーグをプリズムショットめがけて投げ飛ばす。
「スミキッター…」
ランボーグはプリズムの放った光球に直撃し浄化された。
サンライトはスカイトーンを装着したミラージュペンを取り出し周囲の気配を確認する。
アンダーグ・エナジーの気配はもうない。三人はすべてのランボーグをせん滅したのだ。
「スカイ、サンライト、プリズム…この3人TUEEE~!お、覚えてろなのねん!!」
カバトンは退却し、破壊された周辺の建物も元通りになった。
専門学校の平和は3人のヒーローの手で守られたのであった。
「やっやた…あ、あれぇ~?」
変身が解けたましろは、へにゃへにゃとその場にへたり込む。
そんな彼女に同じく元の姿に戻ったハルトが慌てて駆け寄って支える。
「ましろ!?大丈夫か!?」
「だ、大丈夫!緊張が解けたらふにゃ~ってなっちゃっただけ…」
「そうか、それならよかった。本当にお疲れ様」
ハルトは安心したように息を吐くと、ましろに微笑みかけた。
「ハルトさん!ましろさん!大丈夫ですか!?」
「ソラ!ああ、俺もましろも見ての通り、ピンピンしてるよ!」
こちらに駆け寄ってくるソラにハルトは元気よく手を振ってこたえる。
だが彼女の表情は強張っており、二人の無事を確認すると頭を下げて謝り始めた。
「ハルトさん…ごめんなさい!私が未熟なせいでハルトさんが捕まってしまって!私のことなんか放っておいてくれれば!」
「ソラ、落ち着いて。そんなに自分を責めなくていいから…」
ハルトはソラを宥めた。
「でも、ハルトさんは私のせいで捕まって…」
「捕まったのはランボーグの正体を見破れなかった俺の責任だ。ソラが悪いわけじゃないって」
落ち込む彼女を慰める様にハルトは優しく語り掛ける。
「それにソラのピンチを放っておくなんてできないよ。ソラは俺たちの大事な友達なんだから」
「そうだよソラちゃん、私なんかなんていっちゃダメ」
ましろもハルトの言葉を肯定するように優しく声をかける。
「私たちは友達だから、困ったときはお互い様だよ!」
「ハルトさん…ましろさん…ありがとうございます…」
ソラは二人にお礼を言うと頭を下げる。まだ責任を感じているのか、その表情は暗く沈んでいた。ましろはそんなソラの心情を察したのか、彼女の背中を優しく摩ってあげる。
「そうだ。それに謝らなきゃいけないのは俺もだ…」
「ハルくん?」
ましろは自分を申し訳なさそうな目で見つめるハルトに首をかしげる。
「ましろ、今朝はごめんな。俺…ましろにいつも世話になってるのにお姉ちゃんぶるなとか、弟扱いはやめろとか…他にも色々生意気なこと言ったりして悪かったよ」
「そ、そのことはもう気にしてないよ!私だってハルくんのことを気に掛け過ぎてうっとおしかっただろうし…!」
ましろは今朝の喧嘩の件で謝ってくるハルトに、慌てて手を振りながら答えた。
「私の方こそごめんね。これからはあんまりお姉ちゃんぶったりしないから…」
「え?ああ、いや…それはそれで、ちょっと困るかも…」
「?ハルくん?」
何やらもじもじとし始めたハルトに、ましろはキョトンとする。
「さっき助けてもらって気づいた。俺はまだ当分姉離れできそうにないんだって。だから…」
「え!?はっはっハルくん!?」
なんとハルトがましろを抱きしめてきたのだ。
「え!?え!?一体どうしちゃったの!?というかソラちゃんも見てるし!恥ずかしいよ~!」
ましろは顔を真っ赤にしながらハルトの胸の中で慌てふためく。普段人目をはばからずハルトにギューするましろも、自分がいざこういうことされると恥ずかしくなってしまう。そんなましろの耳元にハルトが顔を近づけて囁く。
「助けてくれてありがとな。それと、プリキュアになれておめでとう……ましろお姉ちゃん…」
「!?」
それはいつかましろがハルトに送った言葉のお返しだった。ましろはハルトをじっと見つめる。照れ臭くなったのか、ハルトは頬を染めながらましろから視線をそらした。
「は…ハルくん…!」
ましろはハルトにお祝いされた嬉しさで頭の中がいっぱいになった。
「うん…うん!どういたしまして!ハルくんもさっきは私を助けてくれて、ありがとうだよ!」
そしてましろは嬉しそうにハルトの体に手を回し、いつもより強く彼を抱きしめる。ましろのいい香りや柔らかさがよりダイレクトに伝わってきてハルトはドキドキする。
「私も今日からプリキュアだから、いつでもハルくんの力になるよ!これからは私も頑張るからね!」
「お、おう…よろしくな、ましろ」
「うん!よろしくね!」
照れながら返事するハルトにましろは満面の笑みを浮かべながら答えた。
「おお~!ハルるんもましろんも人前で見せつけてくれるね~!」
「える~♪」
そんな二人の様子を、あげはと彼女に抱っこされたエルは微笑ましい表情で見つめていた。
「ほぇっ!?あ、あげはちゃん!?」
「あげは姉!?何でここに!?」
あげはに声をかけられた二人はパッと体を離す。
「何でって、みんなのことが心配で駆けつけてきたんじゃん。まあ取り越し苦労だったみたいだけど?」
あげははニヤニヤと笑いながらハルトとましろを交互に見る。
「な、何だよあげは姉…その目は」
「いや~ハルるんもましろんも白昼堂々と抱き合うなんて、二人は小さい頃から仲良しだったけど、まさかここまで関係が進展していたとはねぇ~」
「はぁっ!?な、なに言ってんだよあげは姉!俺達は別にそういう仲じゃないから!」
「そ、そうだよあげはちゃん!誤解だよ~!」
ハルトとましろは顔を真っ赤にして弁明しようとするも、あげははますます面白そうに二人のことをからかい始めた。
「そんなムキにならなくてもいいって!ハルるんとましろんは大きくなったらお付き合いするんだろうなーて思ってたし!あ、それとも今お邪魔だった?おっけー!エルちゃんは私が見ててあげるから、二人とも気が済むまでごゆっくり~♪」
「「だから違うってば!!」」
ハルトとましろの叫び声が専門学校に響き渡る。からかい続けるあげはの言葉に、ハルトとましろはますます顔を赤くするのであった。
(ましろさんがプリキュアになっていなければ、エルちゃんは誘拐されてハルトさんもどうなっていたか…)
一方、ソラは暗い表情を浮かべながらハルトとましろを見つめていた。
(そもそも私がカバトンの罠を見破れなかったせいで、皆を危険な目に巻き込んでしまった…未熟!)
自分が不甲斐ないばかりにハルト達に迷惑をかけてしまった。ソラは自分の未熟さに唇を噛み締める。
(こんなことじゃダメだ…もっと強くなって皆を守れるようにならないと…!)
ソラは拳を強く握りしめ、決意を新たにするのであった。
しかし心に落した黒い影が、再び自身の心を蝕んでいることに彼女はまだ気づいていなかった。