ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第14話:あげは姉との約束

 

専門学校の戦いが終わった後、ハルト達はあげはに送られて虹ヶ丘家に帰宅した。家に帰宅して早々自室に戻ったハルトはベットにあおむけに寝転がる。

 

「ふぅ…今日も色々あったな」

 

ハルトは天井をぼーっと眺めながら今日起きた出来事を振り返っていた。

 

数年前にお別れしたファーストお姉ちゃん、聖あげはと再会したこと。彼女と一緒に出かけた専門学校で、ソラがカバトンの罠にはまりミラージュペンを奪われたこと。

 

それを取り戻すためにランボーグと戦ったが、自分も罠にはまり捕まったこと。そしてハルトを助けるために、ましろが3人目のプリキュア『キュアプリズム』に変身したこと。

 

ソラと出会ってから毎日色んなことが起きるが、今日は何時にも増して濃い内容の一日だった。

 

「しかしましろもプリキュアになるなんてな…」

 

ハルトの脳裏に今日初めてプリキュアになって戦ったましろの姿が浮かぶ。

 

彼女は赤ちゃんの頃からずっと一緒の幼馴染で姉のような存在だ。小さい頃ハルトがいじめっ子に絡まれてた時はいつも庇ってくれたし、落ち込んだり泣いたときは励ましの言葉をかけ抱きしめてくれた。この年になっても何かと世話になってるし、彼女は自分の事を本当の家族だと思ってくれている。

 

ハルトにとってましろは自分をずっと支えてくれた大切な存在だ。彼女がいてくれたからハルトは道を踏み外さずに生きてこれたと言っても過言ではないだろう。

 

「そう考えるとましろも俺のヒーローなのかもしれないな…プリキュアになれるのも納得だ」

 

ふとプリキュアになれて大喜びのましろの顔を思い出し、ハルトはクスッと笑みを浮かべる。ましろは自分の力になると張り切っていたがハルトも同じ気持ちだ。今日はさっそくピンチに陥ったところを助けてもらったし、守られてばかりも情けない。ハルトも彼女を守ることが出来るくらい強くなろうと心に誓っていた。

 

「けどましろがプリキュアになったってことは、この先も俺の知り合いがどんどんプリキュアになるかもしれないよな?もしかしたらあげは姉も…」

 

ハルトはふとプリキュアになったあげはの姿を想像する。彼女は中学時代にモデルにスカウトされるほど容姿端麗だ。プリキュアの衣装もバッチリ着こなすに違いない。

 

で、肝心の戦闘能力だが多分メチャクチャ強いだろう。自信満々でポジティブな彼女の事だ、テンションアゲアゲでカバトンやランボーグをぶちのめす姿が容易に想像できた。

 

「もしそうなったら俺の存在意義がなくなる……うん、これ以上考えるのはよそうか」

 

ハルトは考えを振り払うように頭を振るとゴロンと転がりうつ伏せになる。

 

「あげは姉か…」

 

ハルトの脳裏に久しぶりに再会したあげはの姿が浮かんだ。

 

「めちゃくちゃ美人になってたな……」

 

ハルトは少し遠い目をしながら呟いた。あげはは昔一緒に遊んだ時の面影を残しながらもすっかり大人びた綺麗な女性になっていた。栗毛のロングヘアーをなびかせ、ツリ目気味のマゼンタ色の瞳と整った顔立ち、ワンピース越しに主張するバストも程よく実っており、腰もくびれてスタイルも抜群。けしからんほど露出した生足は健康的で艶っぽく、ミニスカートから覗かせる太ももはむっちりと肉付きが良く柔らかそうである。

 

何より彼女に抱擁された時にハルトの鼻腔をくすぐった大人の女性の香り…。彼女の全てがハルトの心を揺さぶっていた。

 

「…って、バカバカ!あげは姉で何へんなこと考えてんだ俺は!?」

 

ふと我に返ったハルトは邪念を払うかのようにブンブンと頭を振った。しかし一度芽生えた煩悩はなかなか消えてくれず悶々とするのであった。

 

「ハルる~ん!いる~?」

 

そんなハルトへ追い打ちをかけるように、あげはの自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「は、はいっ!何ですかぁ!?」

 

今しがたあげはのことを考えていたハルトは、その当人の登場にびっくりして思わず飛び起き、変な声で返事をしてしまう。

 

「こんちゃーハルるん!さっきぶりだね!」

 

ハルトの返事を聞いたあげはがニコニコしながら部屋へと入ってきた。

 

「お、おう…さっきぶり。一体何しに来たの?」

 

「帰る前にハルるんにもう一度会いたくなってねぇ。それにファーストお姉ちゃんとしては、成長した弟分がどんなお部屋で過ごしているか興味があるしね」

 

そう言いながらあげははハルトの部屋を見渡した。彼女の香水の匂いだろうか?いい香りが漂ってきてハルトの心臓がまたドキリと跳ね上がる。

 

「へ~、ちゃんとキレイにしてるじゃん。男の子の部屋は散らかってたりごちゃごちゃしてるイメージあったけど。ハルるん意外とマメなんだね~」

 

「ま、まあな!俺こう見えても綺麗好きだから!」

 

感心した様子で言うあげはにハルトは得意げに胸を張る。綺麗好きというよりかは、ましろが定期的に部屋の掃除にくるので必然的に片付ける癖がついただけなのだが。

 

「そっか!しばらく見ないうちにはるるんも立派になったんだ!お姉ちゃんとしては喜ばしい限りだね!」

 

そう言うあげははニコニコしながらハルトをじっと見つめてきた。ハルトは急に彼女の事が怪しくなってきた。あげはの言ってることは本心だろうが、部屋を片付けた程度で立派になったというのは褒め過ぎではないか?

 

「…で、本当の要件はなんだよ?」

 

その笑顔の裏に何か企んでいるような雰囲気を感じ取ったハルトはあげはにそう尋ねる。

 

「ん~?何の事かな?」

 

「とぼけるなよ。あげは姉がそうやって俺を褒めちぎるときは絶対何か裏があるだろ」

 

「裏なんかないよ?私はただハルるんにソラちゃんやエルちゃんの事、あとプリキュアについて色々教えてほしいだけだし?」

 

「大ありじゃねえか!?ダメダメ!今朝も言ったけどあの二人には事情があるから話せないの!」

 

ツッコミを入れるハルト。どうやらあげははハルトにプリキュアの秘密を教えてもらいにやってきたらしい。

 

「えーでも人前であんなに堂々と変身しておいて今更じゃない?ましろんに聞いても全然話してくれないし、ソラちゃんは落ち込んでるみたいだし、エルちゃんは『えるぅ』しか話せないでしょ?だからハルるんに聞くしかないな~と思ってさ」

 

そう言うとあげはは手を合わせて懇願してくる。

 

「お願いハルるん!他の人には絶対言わないから、プリキュアの事や二人のこと教えて!」

 

「だから話せないってば!」

 

だがいくらあげはに頼まれようともハルトは首を縦に振るわけにはいかなかった。

 

「今朝ましろも言ってたけど、友達の秘密を勝手に打ち明けることはできない。それにこれは命がけの戦いなんだ。あげは姉がこの件に深入りすることで、あげは姉自身にも危険が及ぶかもしれない」

 

あげはもハルトにとって守りたい大事な人だ。せっかく保育士になる夢に向かって頑張ってる最中なのに、こんなことに巻き込みたくないし傷ついてほしくないのだ。

 

「だからごめん。この話は戦いにケリがついてから改めて説明する…ってことでいいかな?」

 

ハルトは真剣な表情を浮かべてあげはに告げた。あげはだって賢明な女性だ。ここまで言えば諦めてくれるだろうとハルトは思っていた。

 

「ハルるん。そんな寂しいこと言わないでよ…」

 

「えっ!?」

 

ハルトの言葉を聞いたあげはが悲しげな笑みを浮かべて小さく呟いた。ハルトはそんなあげはを見て罪悪感で心がチクリと痛んだ。

 

「私だって…ハルるんの事が心配なんだよ?」

 

あげははゆっくりとハルトに近づいてくる。

彼女の香りがまたハルトの鼻腔をくすぐり、ハルトの心臓の鼓動を速めた。

 

「私はましろんやソラちゃんみたいに戦えない。それでも私にだってできることがあると思う。それに私はハルるんの最初のお姉ちゃんだからさ、今まで会えなかった分ハルるんの力になりたいんだ」

 

そう言いながらあげははそっとハルトを抱きしめた。豊満で柔らかい胸の感触や甘い香りがハルトの平常心をゴリゴリ削っていく。

 

「このことは絶対秘密にするって約束するからさ…、お願い、ハルるんが大好きだったあげは姉のお願い…聞いてくれない?」

 

耳元で囁かれるあげはの吐息交じりの声。こんなことされたらハルトはもうダメである。

「………はい、わかりました」

 

真っ赤になったハルトはついに観念した。ましろという幼馴染の女の子と一つ屋根の下に住んでてギューまでしてもらってるくせに、この少年は異性に対する免疫がまるでなさすぎた。

 

「やったー!流石ハルるん、話が分かる―♪じゃあさ、まずはプリキュアについて教えてくれる?ハルるんどうやってあの姿に変身したの?」

 

あげはは先ほどとは打って変わってテンションアゲアゲ!といった感じで嬉しそうに飛び跳ねると、早速ハルトに質問を投げかけてきた。こうしてハルトはまたもあげはのペースに乗せられてしまったのであった。

 

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「なるほど…エルちゃんはスカイランドっていう異世界から来たお姫様で、その不思議な力を狙って悪者たちが襲ってきてるんだね。そいつらからエルちゃんを守るためにハルるん達はプリキュアに変身して戦っているわけか…」

 

「はい、そういうことです…」

 

一通り説明を聞いたあげははうんうんと納得したようにうなずいている。結局ハルトはスカイランドの事や、プリキュアの秘密について知ってることを洗いざらい話してしまった。もっとも、エルの不思議な力についてはまだわかっていないことが多すぎるので詳しく話せることは少ないのだが。

 

「ていうかハルるんのアクセサリーにそんなすごい力があったなんて…それもエルちゃんの力が関係してるの?」

 

「いや、こいつに関してはエルは一切かかわってないと思う。少なくとも俺が初めて変身した時はエルは傍にいなかったしな…」

 

ハルトは父親から託されたスカイトーンのことも話した。元々このスカイトーンは父親が、少なくとも13年前から持っていたものだ。三人が持つスカイトーンの中でも唯一誕生にエルが関わっていない。しかもこのアクセサリーはハルトを黒い姿にしたり、ピンチの時はバリアを張って守ったりとエルのような不思議な力を秘めている。

 

「そんな不思議なアクセサリーをハルるんのお父さんはどこで手に入れたんだろう?というかハルるんのお父さんって何者なの?」

 

「それは俺も知りたいよ。親父に会ったことのあるヨヨさんも知らないみたいだし。ほんと、今頃どこで何してるんだか」

 

ハルトはため息をついた。このスカイトーンもそうだがハルトの父親も謎の多い人物だ。夢の中で出てきた父親は赤ん坊だったハルトに絵本を読み聞かせたり、自分の夢を語って聞かせたりと、少なくとも息子に対しては愛情を持って接していたようだった。

 

だが不可解なことも多い。あんなに可愛がっていたハルトを何故手放したのか?何故ヨヨにハルトを預けたのか?そもそも彼は何者で、迎えに行くと言っておきながら13年もどこで何をしているのか? 考えれば考えるほどハルトの頭は混乱していくばかりだった。

 

「まあ、わかんないこといつまでも考えてても仕方ないや」

 

「でもハルるんは気にならないの?自分のお父さんのこと…」

 

「気にはなるよ。でも今は親父の事より大事な使命があるからさ」

 

ハルトはミラージュペンと、父親のスカイトーンをじっと見つめながら答えた。

 

「エルをスカイランドで待ってる父さん母さんのところへ帰らしてあげたい。今ヨヨさんがゲートを明けるために色々準備してくれてるらしい。その間もカバトンがエルを攫おうと今日みたいに襲ってくるはずだ」

 

エルはカバトンのせいで実の両親と離れ離れになってしまった。早く両親の所に帰してやりたい。そのためにはカバトンの魔の手から彼女を守り続けなければならない。

 

「だから俺たちはエルを守るためにプリキュアとして戦ってるんだ。エルがスカイランドに帰って両親と再会するまでは、絶対に負けられない…」

 

ハルトはスカイトーンを見つめながら拳を強く握りしめ、決意を新たにする。

そんなハルトをあげはは不安げな表情で見つめていた。

 

「じゃあハルるんはさっきみたいな怪物が襲ってきたら戦うんだ…。怖くないの?」

 

「大丈夫。ソラやましろが傍にいてくれるから」

 

ハルトはそう言って微笑みかけた。プリキュアになる前、悪夢にとらわれていた自分を助け、現実でもランボーグの魔の手から救ってくれたソラ。

幼い頃からいつも自分の傍にいて支えてくれた幼馴染でセカンドお姉ちゃんのましろ。

ハルトにとって二人の存在は本当に心強いのだ。

 

「でも、二人だってプリキュアである前に一人の人間だ。どんなに強くなったとしても、戦うのなんて怖いし、心身ともに傷つくことだってこれからたくさんあると思う」

 

ハルトはソラがハンバーガショップのランボーグに痛めつけられる光景を思い出していた。だれにも頼れず、一人で戦おうとして打ちのめされ、傷つき倒れる彼女の姿を。その間自分は何もできず、ただ見ていることしかできなかった。あの時の無力感と悔しさを思い出すと、今でも胸が張り裂けそうになる。ましろだって、今後同じようにひどい目にあうかもしれない。

 

「だから、俺もこのスカイトーンに頼んでプリキュアにしてもらったんだ。こいつの正体はわからないけど、俺にとってこの石は、目の前の友達を…俺のヒーローを守る大切な力で相棒なんだ」

 

ハルトはそう言ってスカイトーンを優しく見つめた。

 

「だから相手がどんなに怖くて強い相手だろうと、俺は絶対に逃げたりしない。ソラやましろがエルを守るために戦うって言うなら…俺も全力で体張ってやろうって思うんだ」

 

「ハルるん…」

 

ハルトの決意を聞いたあげはは胸が熱くなった。あの泣き虫だった弟分が、こんなに強い想いを抱いて戦っているとは思わなかった。あげはの知っている幼い頃のハルトはとても繊細で傷つきやすい少年だった。嫌なことがあるとすぐ自分に泣きつく甘えん坊な子だったが、今はそんな面影は全くない。彼の力強い言葉と瞳は、あげはの知るハルトとは別人のようだ。

そしてあげはは気づいた。ハルトのこの変化はきっと、彼と一緒にいる女の子たちの影響なんだろう。

 

(きっとましろんやソラちゃんのおかげで、ハルるんはここまで変われたんだろうな…)

 

離れ離れになる自分の代わりにハルトのお姉ちゃんを頑張ってくれたましろ。

ハルトの恩人で、彼の生き方を変える切っ掛けとなったソラ。

この二人の少女の存在が、ハルトを大きく成長させたに違いない。

 

(ありがとうましろん…ハルるんをずっと支えてくれて。ソラちゃんもハルるんが変わる切っ掛けをくれて、ありがとね…)

 

あげははそっと心の中でつぶやくと、改めてハルトに向き直った。

ハルトもそんな彼女に気づくと不思議そうな顔で首をかしげた。

 

「どうしたのあげは姉?」

 

「い、いや~!お腹痛めて産んだ可愛いハルるんが、いつの間にかこんなに逞しくなってたのが嬉しくてさ!」

 

「ええっ!?あげは姉が俺を産んだ…?」

 

「そうだよ~?訳あって今まで隠してたけど、私とハルるんは親子だったんだ!」

 

「そうか、あげは姉が俺の母さんだったんだ…知らなかった…」

 

ハルトは驚愕の事実に呆然とした。まさか自分の母親が、小学校だか幼稚園の頃に知り合った幼馴染だったということに驚きを隠せなかった。

 

「……って騙されるかよ!あげは姉は俺と5歳差だろ!?俺を産めるわけないだろ!第一あげは姉が母さんだったら俺やましろとの関係性も根本から変わっちまうだろ!嘘つくんじゃねーよ!」

 

が、我に返ったハルトは慌ててあげはにツッコミを入れた。

 

「あははっ!ほんとにハルるんはツッコミが冴えてるね~!で、NSCに入学する話はどうなったの?」

 

「そうやなー。俺まだ未成年やし将来の事も考えると取り合えず高校卒業してからかな~…って何でやねん!俺は芸人なんかならないし、この程度のツッコミで芸人なんか務まるわけねーってさっきも言っただろ!いい加減にしろ!」

 

あげはの冗談に律儀にノリツッコミで返すハルト。

それを見たあげはは可笑しくて笑い転げていた。

 

「あははっ!やっぱりハルるん変わったね~!昔あんなに泣き虫だったのに、まるで別人みたいに明るくなって嬉しいよ!ツッコミも冴えるし、これはからかい甲斐があるな~!」

 

「からかうのはやめてくれよ。くっそ~真面目な話をしてたはずなのに、どうしてこうなるんだよ…」

 

ハルトは悔しそうに頭を抱えた。そんなハルトを面白そうに笑っていたあげはだったが、急に真面目なトーンで語り始めた。

 

「でも本当に嬉しいよ、ハルるんがこんなに元気に頼もしく成長してくれてさ…。どんな相手からも逃げない、友達を守るために戦うなんて言葉、昔のハルるんからは想像できないもん。ホントに立派になったよ」

 

そう言いながらあげははハルトの手を握り、愛おしそうにジッと見つめる。

柔らかい彼女の手の感触にハルトはまたドキッとした。

 

「な、なんだよ、今度は何を企んでるんだ?言っとくけど…これ以上俺の知ってることはないぞ?」

 

「違うよ、ハルるんが立派に成長したのが本当に誇らしくってさ。だからこれは、あげは姉からハルるんへのご褒美だよ…」

 

「へ?ご褒美…?一体何…って!?」

 

そう言うとあげははハルトの頭を優しく抱え、そのまま自分の胸元へと引き寄せた。

 

「ー¢£%#&□△◆■!?」

 

先ほど以上にダイレクトに伝わる、あげはの豊満で心地よい柔らかさと温かさ、女性の香りがハルトを包み込み、彼の思考を狂わせる。

 

「ふふ、よしよし…ハルるんはいい子だね~…」

 

あげははハルトを胸に抱き寄せたまま、ゆっくりと彼の頭を撫でていく。そういえば、昔もこんな風にいじめっ子にからかわれて泣いてたハルトを慰めるためによくこうしてハグしたものだ。あげはは昔を懐かしみながらハルトの髪を優しくなで続けた。

 

一方ハルトはというと、もうパニック状態だった。ハグされただけで色々限界だったのに、あげはの胸の中に顔を埋められてしまったのだ。そのあまりの衝撃的な出来事のせいで、ハルトの頭はオーバーヒート寸前だった。

 

「ねえ、ハルるん」

 

「は、はいっ!ななっなんですかぁ!?」

 

不意に声をかけられ、ハルトは動揺しながら答えた。

 

「ハルるんすごく頼もしくなったけど、無茶はしないでよ?さっきも言ったけど、私はハルるんのことが心配なんだからね。だってハルるんは…私の大切な弟みたいな存在だからさ」

 

「あげは姉…」

 

「辛いことがあったらこうしてハグしてあげるからさ…無理だけはしないでね。ハルるんにもしもの事があったらあげは姉…泣いちゃうぞ?」

 

優しい声でそう囁かれ、ハルトは胸が熱くなるのを感じた。あげははハルトの最初のお姉ちゃんになってくれた人だ。父親に捨てられたと思い悲しんでいるハルトを励ましてくれた。泣いたり落ち込んだりした時はこうして抱きしめて慰めてくれた。母親の都合で引っ越しして離れ離れになってから何年もあってないのに、こうして自分を心配してくれる。そんな彼女の優しさが嬉しかった。

 

「大丈夫だよ」

 

ハルトはあげはのハグから離れると、まっすぐ彼女を見据えて告げる。

 

「キュアサンライトはヒーローを守るプリキュアだ。俺の初めてのお姉ちゃんになってずっと支えてくれたあげは姉だって、俺のヒーローだ」

 

そう言うと今度はハルトの方からあげはを抱きしめた。

 

「だからどんな無茶なことしても絶対帰ってくる。俺をずっと励ましてくれた、大事なお姉ちゃんのところへさ」

 

ハルトの言葉を聞いたあげはは瞳を大きく見開いた。自分のことをヒーローだと、守りたい存在だと、彼がそう言ってくれたことが嬉しくて、目頭が熱くなり涙がこぼれそうになる。

 

「も、もう!そういういっちょ前なこと言う前に、無茶しないって約束してよね!」

 

あげははごまかすように零れそうになる涙をぬぐいながらそう言い返した。

 

「いや、無茶はこれからもするかもしれない。だってこの先どんな敵が出てくるかわからないし、俺はできない約束はしない主義だから」

 

「そこは嘘でも無茶しないって約束するものでしょ!?もう、せっかくのいい雰囲気がハルるんのせいで台無しだよ!」

 

真剣な表情で答えるハルトに、あげはは不満そうに頬を膨らませた。二人はジッとお互いの目を見る。そして二人とも自然と笑い合った。

 

「じゃあ、何があっても帰ってくるっていうのは約束できるんだ?」

 

あげは問いかけに、ハルトは力強くうなずいた。

 

「オッケー、ハルるんを信じるよ。だから、何があっても絶対帰ってきてね」

 

「うん、約束するよ」

 

ハルトはあげはの前で小指を見せ、それをみたあげははクスッと笑って自分の小指を差し出した。

ゆびきりげんまん。二人の声が重なり約束が交わされたのであった。

 

 

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「ああ~くやしいな~。からかわれ上手のハルるんに一本取られちゃうなんてさー」

 

「からかわれ上手ってなんだよその言葉。第一今までのやり取りに一本取られる要素なんてあったか?」

 

少し拗ねたような口調で言うあげはに、ハルトは不思議そうに首をかしげた。

 

「あるよ色々!ハルるんしばらく見ないうちにすっごく逞しくなっちゃってさ~。それはいいんだけど昔の甘えん坊だったはるるんも可愛いかったし…なんというか、知らない間に成長してく弟を見て寂しく感じる姉心っていうか…とにかくわかる?この気持ち?」

 

「ちょっと何言ってるかわかりませんね」

 

「むぅ~、そういうところが可愛くない~。あ、だったらいっそのこと私もプリキュアになって、ハルるんと一緒に戦おうかな?あげは姉がいかにハルるんにとって頼もしい存在か、もう一度わからせてあげたいしさ!」

 

「もう十分わかってるから!それにあげは姉までプリキュアになられたら、俺の立場がなくなりそうだからやめてくれ!」

 

あげはの発言にハルトは割とガチで拒否した。ましろに続いてあげはまでプリキュアになられたら、姉二人に守られる弟という構図が完成するかもしれない。それだけは勘弁してほしいとハルトは思ったのだ。

 

「も~、それどういうこと?せっかくハルるんの大好きなあげは姉が一緒に戦うって言ってるのに……あっ」

 

あげはのスマホのアラーム音が鳴り響く。どうやらそろそろ時間らしい。

 

「楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃうね…」

 

「もう行くのか?」

 

「うん、引っ越しの準備も途中だし、課題もあるからさ」

 

「未来の保育士は大変なんだな…あげは姉こそ無理しないでな?」

 

「ありがとうハルるん。じゃ、そろそろいくね」

 

あげははくるりと背を向けるとそのまま歩き出そうとした。

するとあげはの右手を誰かの手がギュっと掴んだ。

 

「ハルるん…?」

 

「あっ…」

 

その手の主はハルトだった。

彼はあげはの手を握りしめたまま、不安そうな顔で彼女を見つめている。

 

「いや、その…ごめん…」

 

ハルトは謝るが、あげはから手を放そうとはしない。せっかく数年ぶりに再会したのにまた別れてしまうのが嫌なのだろうか?逞しくなっても、根っこの部分は昔と同じ寂しがり屋なんだな…と、あげはは思わず笑みを浮かべた。

 

「大丈夫だよ、ハルるん」

 

あげははハルトに向き直ると、彼の頭を優しく撫で始めた。

 

「子供の頃とは違うよ。今日からまたいつでも会えるからさ…」

 

ハルトの頭をなでながら、あげはは彼を愛おしそうな表情で見つめた。

 

「うん、そうだな…また会えるんだよな、俺たち…」

 

その言葉を聞いてハルトの顔が少し明るくなった。まだ名残惜しそうにしながらも、彼はあげはの手を離し、彼女を送り出すべく向かい合う。

 

「じゃあまたな、あげは姉。道中気を付けて…」

 

「うん、またね、ハルるん…!」

 

あげはの言葉にハルトは笑顔を見せると、彼女に小さく手を振った。あげはは部屋の扉へ向かい、最後にハルトの方を振り向いた。そして微笑みながらハルトに向かって手を振ると、今度こそハルトの部屋を後にした。

 

「あーあ、3人の秘密をあげは姉にばらしちまった…ソラはともかくましろからお叱りの言葉を受けそうで怖いな~」

 

一人部屋に残されたハルトはベットに腰掛けると、天井を見ながらため息交じりに呟いた。

まあプリキュアの件は変身シーンや戦うところも含めてあげはにバッチリみられてたわけだし、遅かれ早かれ話すことにはなっていただろう。

 

「でも、久しぶりにあげは姉と話しができて嬉しかったな」

 

初めて自分の姉になってくれて、引っ越しするまでの間ずっと自分を支えてくれたあげは。そんな彼女に逞しくなったと言われ嬉しかった。ずっと泣き虫で誰かに守られて情けなかったあのころと比べて、少しは成長できたんだとハルトは実感することができた。

 

「なあ、あげは姉。今度は俺があげは姉を守れるくらい強くなって見せるからさ…」

 

ハルトはさっき彼女と指切りした小指をジッと見つめた。

 

「だからまた、会いにきてくれよな…あげは姉」

 

そうつぶやくとハルトは小指をぎゅっと握りしめ、再びあげはと再会する日に想いを馳せるのであった。

 

 

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