ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~ 作:零たん
闇に包まれたソラシド市で、キュアサンライト達3人は強力なランボーグと戦っていた。
電車を模したその怪物は、これまで戦ってきたランボーグとは比較にならないほど強力で3人は苦戦を強いられていた。
「ヒーローガール!スカイパーンチッ!!」
「ヒーローガール!プリズムショット!!」
キュアスカイとキュアプリズムの浄化技がランボーグに命中する。だがランボーグは膨大なアンダーグエナジーを蓄えている影響で浄化耐性と防御力が大幅に強化されており、攻撃を受けても怯まないどころか全身から黒い衝撃波を放出して逆にキュアスカイとキュアプリズムを吹き飛ばした。
「「キャァアアアーッ!!」」
吹き飛ばされるスカイとプリズム。
ランボーグは地面に倒れた二人に狙いを定め、眼から怪光線を発射し追撃する。
「させるかぁあああーっ!!!」
そこへ盾を構えたキュアサンライトが飛び込み光線を防ぐ。あまりの威力に吹き飛びそうになるも何とか堪えたサンライトは、光線を盾で押し返しランボーグの頭部に強烈な一撃を叩き込んだ。
だがサンライトの自慢のパンチもランボーグに全く通じず、敵はお返しとばかりに巨大な拳で彼を殴り飛ばした。
「「サンライトッ!!」」
地面を転がり倒れるサンライトの傍に駆け寄るスカイとプリズム。
「だ、大丈夫だ…」
そう答えつつも立ち上がるサンライトだが足取りがおぼつかない。3人とも全身傷だらけで体力も消耗しており、このまま戦い続けても勝ち目はない。だからと言って退くことも困難だった。
「二人とも下がってろ」
サンライトが右手拳を握り締めながらスカイに告げる。
「もう一度、サンライトバスターを叩き込む。さっきは通じなかったが、今度は全エネルギーを乗せた出し惜しみなしの本気だ」
「ええっ!?その体で!?」
スカイは必殺技を出そうとするサンライトを慌てて止めた。前線で敵の攻撃を受けとめ続け、一番傷を負っているサンライトがこの大技を使えばどうなるか…。
「無茶はダメです!一旦引いて体勢を立て直しましょう!」
「無理だ。アイツはもう攻撃体勢に入ってる…」
サンライトがそう言った直後、ランボーグは目から再び怪光線を発射した。
放たれた閃光は真っすぐサンライト達のもとへ向かってくる。
この攻撃を避けようにも今の彼女達にもう回避できるだけの力は残っていない。
「ごめんなスカイ…でももうこの手しか残ってないんだ!!」
「!?待ってください!!行ってはダメ!!」
サンライトはスカイの静止を振り切り、放たれたビームに向かうように飛び上がった。
「ひろがる!サンライトバスタァアアアーッ!!」
そして渾身の力でランボーグへ向け再度必殺技を発動する。
巨大な紅蓮の拳と敵の閃光がぶつかり合いしばらく拮抗するが、やがて空中で爆発し相殺される。
爆風で吹き飛ばされ変身が解けたハルトはそのまま地面に叩きつけられた。
「ハルトさんっ!!」
倒れた彼の元へスカイが駆け寄る。
「ハルトさん!しっかりしてください!!ハルトさ…っ!?」
彼を揺さぶり必死で呼びかけるスカイだったが、ハルトの頭から多量の血が流れ落ちていくのを見て言葉を失った。
「ハルトさん?…うそですよね…?」
恐る恐るハルトの顔をスカイが覗き込む。
既に彼の瞳から生気は失われており、体はピクリとも動かない。
「あ…あぁ……そんな…ハルト…さん……」
スカイはふと自分の両手を見る。その手は彼の流した血で真っ赤に染まっていた。
「いや……いやっ…!」
私のせいだ。私が彼を止められなかったから。私がもっと強かったら。
後悔と罪悪感がスカイの心を蝕んでいき、遂に彼女の精神は崩壊する。
「いやぁあああーっ!!ハルトさぁあああんっ!!」
スカイの悲痛な叫び越えが、暗雲立ち込める街に響き渡った。
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「はぁ…はぁ…またこの夢…」
汗だくになったソラはゆっくりとベットから起き上がる。
ここ最近、彼女は毎晩のように悪夢にうなされていた。
それも決まって、最後はハルトが自分たちを庇って死んでしまうという夢を見続けている。
「なんでずっとこんな夢ばかり…まさか…」
以前ハルトはキュアスカイになった自分に助けられた夢を見たといい、それは後日ほぼ現実のものとなった。今見ている悪夢も彼に似た予知夢なら、現実のハルトも本当に自分達を庇って死んでしまうのではないだろうか。
「そんなこと…あるはずが…」
ソラは不安を誤魔化すように自分に言い聞かせる。
だが自分たちはプリキュアとしてエルを狙う刺客と戦い、何度も危険な目にも遭っている。このまま戦いが長引けば、いずれ誰かが犠牲になる可能性は大いにあり得る。
「嫌です…ハルトさんやましろさんが…死んじゃうなんて…そんなの…」
ソラはおもむろに立ち上がり、ゆりかごで寝ているエルを起こさないよう静かに部屋を出る。カラカラになった喉を潤すために1階のキッチンへ向かった。すると通りかかった洗面所で意外な人物と遭遇する。
「は…ハルトさん!?」
「おおソラ、おはよう」
そこで出会ったのはハルトだった。時刻は午前5時頃。自力で起きれない寝坊助の彼が起きるにはあまりに早すぎる時間だ。ちなみにハルトは洗顔を終えたとこらしく、濡れた顔をタオルでゴシゴシ拭いていた。
「お、おはようございます!珍しいですね、こんなに朝早くから…」
「そう思うだろ?なんか最近自然と朝早くに目が覚めるようになったんだ。これってソラとトレーニングを始めたおかげなのかな?」
そう言いながらハルトは拭き終わったタオルを洗濯籠に入れ、洗面台の周りを片付け始める。その間ソラはハルトの全身をくまなく観察していた。
(どこも怪我はしてない…よかった)
ハルトの無事な姿を確認し、ホッと胸をなでおろすソラ。ハルトがランボーグに敗れて傷ついた。あれが夢の中の出来事とは分かっているが、彼が何ともないか確かめずにはいられなかった。
「なあソラ?」
「え?あ、はい!?」
ハルトに声を掛けられソラはハッとする。片付けを終えたハルトがソラを不思議そうに見つめていた。
「さっきから俺をジッと見てるけど、どうかした?」
「い、いえ!なんでもありません!」
「そう?ならいいんだけど」
慌ててハルトから目を逸らすソラ。そんなソラをハルトが怪しげに見つめてくる。
「で、でもすごいですよハルトさん。あんなに苦手だった早起きができるようになるなんて…これも毎日頑張ってきた成果ですね!」」
そんなハルトの視線に気まずくなったソラは慌てて話題を替えようと試みた。
「そ、そうかな?ていうか偶然起きれただけだし、大げさだって」
「大げさじゃありません!出会った頃はスカイランド神拳を使わなければ起きれませんでしたし!」
「す、スカイランド神拳…その言葉はやめてくれ、古傷が疼くから…」
急に苦しそうにうずくまるハルト。スカイランド神拳で起こされたことがまだトラウマになってるらしい。わざとらしく鳩尾を抑えてうめくハルトがおかしくて、ソラは口元を手で押さえ笑いをこらえた。
「けどもしトレーニングの成果が出てるなら、それはソラのおかげだよ」
苦しむ演技をやめたハルトが真剣な声色でソラに告げる。え?と首を傾げるソラに対し、ハルトは更に言葉を続ける。
「早起きできたこともそうだけど、プリキュアになったことや、今より強くなりたいって思えるようになったのはソラと出会えたからだ。ソラと会う前の俺はずっとましろやヨヨさん達に甘えっぱなしだったからなぁ…まあ今もメチャクチャお世話になってるんだけど」
ハルトは苦笑しながらも話し続ける。
「俺はまだまだ弱いし頼りないと思う。けどソラと一緒だと頑張れる。ソラに負けないくらい強くなろうって前向きな気持ちになれるんだ」
「ハルトさん…」
「そんな気持ちにさせてくれたソラには感謝してるよ。本当にありがとな」
「い、いえ…どういたしまして…」
ハルトは笑顔を浮かべながらソラに感謝の言葉を告げた。しかしソラは何故かハルトを不安そうな表情で見つめていた。
「よし、せっかく早起きできたことだし今からランニングでも行ってくるか!あ、よかったらソラも付き合ってくれる?時間があれば、戦いに向けた実践的な訓練も教えてほしいんだけど…?」
ハルトは意気揚々とトレーニングに誘うが、ソラは何も言わずに視線をそらしてしまう。
「あの…ソラ?どうかした?」
そんなソラの様子をみてハルトが心配そうに声をかける。するとようやくソラが口を開いた。
「ハルトさんは、そんなに頑張らなくてもいいと思います…」
「え?…えっ!?」
だがソラの口から出てきたのは意外過ぎる言葉だった。頑張らなくていいなんて、いつものソラなら絶対に口にしないだろう。ハルトは戸惑いを隠せなかった。
「そ、ソラ?何で突然そんなことを…」
ハルトは動揺しながらも今の言葉の真意を尋ねようとする。対するソラは暗い表情を浮かべながら再び言葉を紡ごうとする。
「だって…このまま戦い続けたら…ハルトさんは…」
ー死んでしまうかもしれない。
そう伝えようとした時、ソラの脳裏に血まみれで横たわるハルトの姿がフラッシュバックする。冷たくなったハルトと彼の血で染まった自分の両手。夢でみた悪夢の光景がソラの脳内を埋め尽くしていく。
「…い、いや…嫌ぁっ!!」
突如ソラは悲鳴を上げ、頭を抱えながらしゃがみ込んでしまう。
「そ、ソラ!?おいソラ!大丈夫か!?」
その様子を見てハルトは慌てて駆け寄り、彼女の肩を優しく掴んで呼びかける。
するとソラが恐る恐る顔を上げ、ハルトを見つめた。
「は、ハルトさん?よかった…生きてる…」
「あ、ああ。俺は生きてるけど…それより急にどうしたんだよ?」
「だ、大丈夫です…何でもありません…」
「何でもないわけないだろ!?今日のソラ、なんか変だぞ!?」
ハルトが問い詰めるがソラは黙り込む。今日のソラは本当にいつもと違う。自分に頑張らなくていいと言ったり突然悲鳴をあげたり、明らかに情緒が不安定だ。
「なあ、もしかして何か悩み事でもあるのか?そうなら遠慮なく話してくれよ。相談くらい乗るから…」
ハルトはソラを安心させようと声をかける。しかしソラは小さく首を横に振った。
「わ、私は本当に大丈夫ですから…構わないでください…」
「いや、全然大丈夫そうに見えないって…」
「本当に大丈夫ですから!で、では失礼します!!」
「お、おい!待ってくれソラ!?」
ソラは心配するハルトの言葉を遮ると、その場から逃げるように立ち去った。
自室に戻りベットに飛び込み布団をかぶる。だが先ほどの悪夢を見るのが怖くて眠れない。
(やっぱりハルトさんを戦わせるわけにはいきません…!あの夢がもし現実になったら…ハルトさんが傷ついたら、私…)
大切な友達が傷つくことが何よりも怖い。
恐怖でガタガタ震えながらも、ソラは必死に考えた。
どうすればハルトを危険から遠ざけることができるのか。
(止めないと…ハルトさんがプリキュアになるのを…戦うことをどうにかして止めないと……)
ハルトはそれを望まないだろう。けど、彼を死なせない為にはそれしか方法がない。
それが切っ掛けで自分が嫌われることになっても構わない。彼の命が救われるなら…。
そう決意したソラはハルトを説得する方法を考えながら、ひとり孤独に思い悩むのであった。