ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第17話:襲来!悪夢のランボーグ

 

「そっか…そんな怖い夢を見たんだね…」

 

ましろはひとしきり泣いて落ち着いたソラから、彼女の見た悪夢の内容を聞いた。

 

「ハルくんや私のこと心配してくれてありがとう」

 

ハルトを心配するソラの気持ちは痛いほどわかる。ましろとハルトは血の繋がりはないが、1歳の時からずっと一緒に過ごしてきた家族だ。もしましろがソラと同じ悪夢を体感したら彼女以上に取り乱すだろう。正気でいられるかすら分からない。そもそも自分の半身とも呼べるハルトを失うなんてましろは考えたくもなかった。

 

(でも、エルちゃんを守るためにはみんなの力を合わせないとだよ…)

 

今後もカバトンはあの手この手でエルを攫いに来るだろう。

ならば1人よりも2人。2人よりも3人の力を合わせて戦うべきだ。

その方がエルだけでなくお互いのピンチを助けやすくなるのだから。

 

それに夢で見たランボーグが襲ってくるならなおさら3人が力を合わせて戦う必要があるだろう。だからハルトを戦わせないというソラの考えには賛成できない。

 

(だからって、それを今のソラちゃんに説明しても、余計追い込んじゃうよね…)

 

どう声をかければソラが納得するか分からずましろは頭を悩ませる。

すると、ソラが弱々しい声で話し始めた。

 

「分かっているんです…私の考えは間違っていることくらい…」

 

「ソラちゃん…?」

 

「カバトンが生み出すランボーグはどんどん強く厄介になってきています。そんな相手からエルちゃんを守るためには3人の力が必要です」

 

表情は曇っているが冷静に今の現状について語るソラ。

ましろはそんなソラを静かに見守る。

 

「夢に出てきたランボーグだって…ハルトさんの言う通り三人で対策して迎え撃つべきです。頭では分かっているんです。でも…」

 

そこまで言ってソラは言葉を詰まらせる。そして肩を震わせながら絞り出すように呟いた。

 

「もしハルトさんやましろさんが…私の大切な友達が傷ついたら…死んじゃったりしたら…わたし耐えられないっ!」

 

悲痛な表情を浮かべるソラ。彼女の目から再び涙がポロポロと溢れ出す。

 

「そうなるくらいなら私一人で戦った方がいい!わがままなのは分かってる!でもハルトさんやましろさんを失いたくないから!」

 

ソラは感情を抑えきれずに泣き叫ぶ。ソラにとってハルトとましろは大切な存在だ。故郷のスカイランドから離れ、違う世界にやってきても孤独を感じることがなかったのは二人が傍にいてくれたからだ。だからこそハルトやましろが傷付くことが何より怖いのだ。

 

「でも…私のわがままのせいでハルトさんを傷付けた。私の力になりたいと言ってくれたハルトさんを拒絶して…友達なんかやめるなんてひどいこと言って……わたし、最低だ…!」

 

ソラは両手で顔を覆い隠し泣き続ける。彼女の心は友達を傷つけた罪悪感で押しつぶされそうになっていた。

 

「ソラちゃん。そんなに自分を追い込まないで」

 

ましろはソラの手を握り優しく語り掛けた。

 

「ソラちゃんは最低なんかじゃないよ。ハルくんや私を助けるために頑張ってくれてる。今回はちょっと気持ちが空回りしちゃっただけだよ」

 

ましろは穏やかな口調でソラを慰める。ソラは俯いたまま ましろの顔を見ようとしない。それでもましろは言葉を紡ぎ続ける。

 

「それにソラちゃんに絶交だ!なんて酷いこと言ったハルくんもよくないと思うんだ。ハルくんにはあとでちゃんと注意しておくからソラちゃんはもう気にしないで」

 

ましろはそう言いながら泣き続けるソラを見つめた。彼女は責任感が強いあまりなんでも一人で背負い込もうとするのは知っていた。今回も友達を傷つけないために必死だったのだろう。けどましろにとってもソラは大切な友達だ。ソラに傷ついてほしくないし、悩んでいるなら力になりたい。

 

「ごめんねソラちゃん。ずっと怖い思いをしていたのに気づいてあげられなくて…」

 

ましろはソラにそう伝えると彼女の手を握りそっと寄り添った。

 

「やめてください。私は恐怖心に怯えて友達を傷つけるような未熟者です。ましろさんに優しくしてもらう価値なんて…」

 

「ソラちゃん。自分を未熟者だとか価値がないなんて言わないでほしいな。だってソラちゃんは私の大切な友達だから。ソラちゃんが自分を傷つけたら私だって辛くなっちゃうよ」

 

「ましろ…さん…」

 

そしてましろはハルトにしてきたように、ソラの事もギューッと抱きしめた。

背中に腕を回すと彼女の体が小さく震えているのが分かった。

この小さい背中で必死に恐怖と戦っていたのだろう。

 

「ソラちゃんは自分の悪いところを認めて反省してる。だからもう自分を責めなくていいんだよ」

 

ソラを抱きしめる力を強めるましろ。

やがてソラの瞳から再びボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちる。

 

「もう大丈夫。ソラちゃんの怖い思いは私も一緒に背負うから。だから全部一人で抱え込まないで。私たちの事をもっと頼ってくれていいんだよ」

 

「ましろさん…ひっぐ…うわぁぁあん!!」

 

ソラはましろの胸の中で再び泣き始めた。自分を包み込んでくれるましろの優しさに安心し、溢れ出す感情が止まらなかった。

ましろは泣きじゃくるソラを彼女が落ち着くまでずっと抱きしめ続けた。

 

それから数分後、しばらく泣き続けて落ち着いたソラは恥ずかしそうにましろから離れた。

 

「もう大丈夫?」

 

「は…はい!見苦しいところを見せてしまってすみません!」

 

まだ少し鼻声だが先ほどより随分マシになったようだ。そんなソラを見てましろは安堵する。

 

「ましろさん…」

 

「どうしたの?」

 

「ハルトさんの事どうしたらいいでしょう?あんなひどいこと言ってしまって…」

 

ソラはまた青ざめた表情を浮かべて、ましろにそう尋ねる。

そんな彼女にましろは「え?」と首を傾げる。

 

「どうしたらって、謝ればいいと思うよ?」

 

「で、ですが私はハルトさんに友達を辞めるなんて酷いことを言ったんです!罰でも何でも受ける覚悟です!!」

 

「大丈夫だよソラちゃん。ハルくんはソラちゃんが思ってるより優しい子だよ。この間の私との喧嘩も自分の悪いところを反省して謝ってくれてたでしょ?今だってソラちゃんに絶交するって言った事を後悔してるんじゃないかな?」

 

大げさなことを言いだすソラをましろは苦笑しながらなだめる。

 

「だからハルくんと仲直りしに行こ?そしたら3人で今後の事について話し合おうよ!」

 

「ましろさん…はい!ましろさんの言う通りです!」

 

ソラはハルトに謝る決心を固めたようで、おもむろに立ち上がると部屋から出ていこうとする。

 

「まって!ソラちゃんどこに行くの!?」

 

「もちろんハルトさんのところにです!誠心誠意、謝ってきます!」

 

「た、タイムだよソラちゃん!私が先にハルくんの様子見に行くからちょっと待ってて!」

 

ましろはソラに部屋で待つ告げるとハルトの部屋へ向かった。ましろはハルトの事も気がかりだった。ああ見えて彼は繊細な一面を持っている。だから先ほどまでのソラと同様自己嫌悪に陥っているかもしれないとましろは心配していた。

 

「ハルくん。私だよ」

 

ハルトの部屋のドアをコンコンっとノックした後、ましろは部屋の中にいるだろう彼に声をかける。返事はない。しかしノックした瞬間部屋の中から物音がしたため、ハルトが中にいるのは間違いない。

 

「大丈夫ハルくん?入ってもいい?」

 

やはり返事はない。どうしようか悩んだましろだが、突如スマホのバイブが鳴り始めた。スマホのアプリ通知に彼のメッセージが表示される。“今は一人にしてほしい”とのことだった。

 

「そっか…」

 

ましろとしては早くソラと仲直りしてほしかったが、彼の意志を尊重して今はそっとしておくことにした。それでも彼に伝えておきたいことがある。ましろは部屋の中にいるハルトに向かってドア越しに話しかけた。

 

「ソラちゃんならもう大丈夫。ハルくんと仲直りしたいって言ってくれてるよ」

 

部屋の中にいるハルトがましろの言葉にかすかに反応したような気がした。

 

「だからハルくんも落ち着いたら一緒に話をしよ。三人で、これからどうしたらいいか話し合いたいから」

 

またスマホに彼からの通知が来る。“少し考えさせてほしい”と書いてあった。

やはりハルトは相当思い詰めているらしい。こうなると無理に関わったところで逆効果だろう。

 

それに無理やり部屋から連れだしたとして、落ち込んでいるハルトの様子を見たソラがまた自分を責めてしまうかもしれない。

 

「わかった。また様子見に来るから、ゆっくり休んでね」

 

部屋に押し入って彼をギューして元気づけたい気持ちを抑えながら、ましろはハルトの部屋から離れて行った。

 

「ハルトさん大丈夫ですか?」

 

ソラが部屋に戻ってきたましろに心配そうな様子で尋ねる。

 

「ちょっと考え事してるみたいだから、今は一人にしてあげようと思って」

 

「そうですか…」

 

やっと元気を取り戻したソラの表情が、再びしゅん…と沈んでいく。

 

「だからハルくんの考えがまとまるまでの間、気晴らしに二人でお出かけしようよ!ソラちゃん朝から何も食べてないでしょ?プリホリに美味しいパフェがあるから一緒に食べない?」

 

ましろはそんなソラを元気づけようとお出かけに誘う。

ソラとしては早くハルトに会って謝りたかったが、彼にも一人考える時間が必要だろう。

 

「はい、わかりました…」

 

自分を気遣ってくれる彼女の好意を無碍にできない。

ソラは無理やり明るい表情を作ると、ましろと一緒に出かけるために準備を始めた。

 

 

 

_______

 

 

 

 

ましろはソラとエルを連れて、行きつけのコスメ店プリホリこと『Pretty Holic(プリティホリック)』へ訪れた。新作のパフェを二人で食べたり、新商品のフレグランスを体験したり、楽しい時間を過ごしていた。

 

しかしソラの表情は明るくない。ましろと会話しているときも上の空だったり、パフェやコスメグッズの感想を聞いても愛想笑いを浮かべるだけだった。

 

現在3人はプリホリを出て街の一角の広場で休憩している。

 

(ソラちゃんはハルくんのことが気になってるんだろうな…。やっぱり先にハルくんと会わせてあげるべきだったかな…?)

 

エルを抱っこするましろは隣で俯くソラを横目で見つめながら思う。ハルトの気持ちの整理がつくまでの間ソラの気分転換になればと思って連れ出した。だがかえって逆効果だったかもしれない。

 

時刻は午後2時頃。外出してから結構時間が経っている。ハルトの事も気になるし、そろそろ切り上げて家に帰るべきだろうか?

「ましろさん。ハルトさんはやっぱり私を嫌いになってしまったんでしょうか…」

 

ましろがそう思案していた時おもむろにソラが口を開いた。

 

「ど、どうしてそう思うのかな!?」

 

「だって、私が友達を辞めるなんて酷いこと言ったから…。さっきましろさんがハルトさんの部屋に行った時も、私に会いたくないって言ったんじゃないですか?」

 

段々表情が曇り悲しい顔つきになるソラ。そんな彼女の様子を見てましろは大慌てでフォローに入る。

 

「だ、大丈夫だよソラちゃん!ハルくんそんなことは言ってなかったよ!」

 

「でも、ハルトさん私と絶交だって…」

 

「うぅ…」

 

完全にネガティブな思考に陥っているソラ。ましろはどう声をかけていいかわからず言葉に詰まってしまった。

 

(ハルくん、ソラちゃんとお話してくれる気になったかな…?)

 

ましろはハルトにメッセージを送るためにスマホを取り出した。今彼がどういう状態なのか少しでも知りたかった。もしソラと仲直りする気があって通話も可能なら、早く彼女と会話して安心させてほしいと思った。

 

(ハルくんがちゃんと出てくれますように…!)

 

通知アプリを開いたましろは祈るような気持ちで文字入力ボタンに親指を添えようとした。

 

 

…その時だった。

 

 

「ま、ましろさん…空を見てください!」

 

「ソラちゃん?一体どうし…ええっ!?」

 

ましろは絶句した。ソラシド市の上空を覆いつくすほどの黒いエネルギーが建物の屋根から溢れ出していたのだ。それはやがて触手のようにうねりながらソラシド駅にある電車に伸びて車体を飲み込むと怪物の姿に姿を変えた。

 

「ランボォーグゥウウー!!」

 

複数の車両を連結し、頭部にモヒカンと巨大な両手を生やした怪物『電車ランボーグ』が誕生した。

 

「はぁ…はぁ…やったのねん!こいつが俺のカロリーを全て消費して生み出した…史上最高にTUEEEランボーグだぁぁーっ!!」

 

このランボーグを生み出した張本人、カバトンは空中に浮かぶランボーグを見上げながら歓喜の雄たけびを上げる。このランボーグを生み出すために自分の限界ギリギリまでアンダーグ・エナジーを注ぎ込んだ代償か、肥満体だった体がガリガリに痩せていた。

 

「もうこれ以上失敗は許されない…。でもコイツの力があれば憎いプリキュアをぶっ倒せる!今日がお前らの最後なのねん!!」

 

カバトンがここまでして強いランボーグを生み出したのには理由があった。先ほど彼の雇い主である上役の存在から「早くプリンセス・エルを見つけ出せ。いつまでもチャンスはないぞ」と釘を刺されたからである。

 

これ以上失態を重ねれば役立たずとして処分されるかもしれない。焦ったカバトンは屋台のおでん屋で山ほど爆食いしエネルギーを補充した後、自分の限界ギリギリまでアンダーグ・エナジーを生み出しこのランボーグを作ったのである。

 

「さあランボーグ!プリキュアとプリンセスを探し出すのねん!しゅっぱつしんこー!!」

 

カバトンはランボーグの運転席に乗り込み車掌帽子を被ると、怪物を空へ飛び上がらせる。

 

街は突然現れた怪物の襲来に恐れ逃げ惑う人たちでごった返していた。

ましろとソラもランボーグの姿を見て、驚愕で目を見開いていた。

特にソラはひどく怯えた様子で立ち尽くしている。

 

「あぁ…あれは…!夢で見たランボーグが…本当に…!!」

 

「夢で見た!?それじゃ、あのランボーグがハルくんを!?」

 

ソラの夢でキュアサンライトを殺害した怪物はあの電車ランボーグらしい。

ランボーグは抹殺対象であるプリキュアを探して街の上空を飛び回っていた。

 

「ソラちゃん!一旦逃げよう!」

 

「ましろさん…?」

 

「ランボーグはまだこっちに気づいてないよ!ここは一旦ハルくんと合流して、3人で戦おう!」

 

今だ恐怖で呆然と立ち尽くすソラにましろが提案する。

あのランボーグがソラの夢と同じくらい強い相手なら2人で挑んだところで敵わない。

それならばハルトと合流して対策をしっかり練って挑んだ方がまだ勝算はある。

 

「ハルトさんと……合流……!?」

 

だがソラはまた暗い表情を浮かべてましろの提案に逡巡する。

今はハルトに会いたくない、とでも言いたげな様子だった。

 

「ソラちゃん!今はハルくんに会い辛いかもしれないけど、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?だから……」

 

「嫌です……わたし…わたし1人で戦います!」

 

「えっ!?ソラちゃん!?」

 

「えるぅ~!」

 

ソラはましろとエルから逃げるように、ランボーグのいる方向に向かって走り出していった。

 

(無理…私には…ハルトさんに会う資格なんてない…!)

 

ソラの中にはハルトを傷つけた負い目が残っていた。彼女は自分がハルトに会う資格がないと思っている。いや、怖いのだ。次会った時にハルトにどんな言葉を言われ、どんな目で見られるのかと思うと怖くて仕方がないのだ。

 

(だって…嫌だ…!初めて私の事をヒーローって言ってくれた…孤独だった私のヒーロー仲間になってくれたハルトさんに…!)

 

ソラにとってハルトは特別な存在だった。

時々おかしなこと言ったり変顔したり、変わったところも沢山ある。

しかし彼は勇敢で優しい人だ。

 

初めて会った時もソラと一緒に戦ってくれた。

 

彼は自分を友達で、ヒーロー仲間で、守りたい存在だと言ってくれた。

 

恐怖で手が震える自分の手を握り励ましてくれた。

 

自分のように強くなりたいと一緒にトレーニングに参加してくれた。

 

そしてプリキュアになって戦う時はいつも自分の傍にいてずっと支えてくれた。ハルトがソラを慕うように、ソラもハルトの事を密かに憧れ尊敬していた。

 

そんな彼を傷つけた。自分を心配してくれたのに、心無い言葉を浴びせ突き放してしまった。

 

(謝っても許してくれなかったら…!また絶交だなんて言われたら…!私…わたしっ…!)

 

また一人ぼっちになってしまう。

ヒーローになるのに夢中で、周りの人間と馴染めず孤独に過ごした昔の頃の自分に。

 

(でも…これは罰だ…ハルトさんを傷つけた、未熟者で最低な私に相応しい…罰…)

 

仮にそうなってもまた昔の自分に戻るだけ。なら喜んでその罰を受け入れよう。

変な方向に吹っ切れたソラは、今はカバトンに破られ失った前のヒーロー手帳に書き記した言葉を思い出す。

 

「ヒーローは…一人ぼっちを恐れないっ!!」

 

そして彼女はスカイトーンをミラージュペンにセットしキュアスカイへと変身した。

 

「うわぁあああっ!!!」

 

名乗り口上を上げる余裕もないキュアスカイは、獣のような咆哮を上げて空高く飛びあがる。

そのままビルの屋上へ着地すると、空に浮かぶ電車ランボーグと対峙した。

 

「見つけたのねん!プリキュア!」

 

スカイを見かけるや否やカバトンは嬉しそうに口角を吊り上げて笑みを浮かべた。

 

「あれ?いつものメソメソ野郎と脇役がいないのねん?今日は一人か?」

 

一人…その言葉がスカイの心に深く突き刺さる。

しかしスカイは悲しみを振り払うようにカバトンを睨みつけた。

 

「たとえ一人ぼっちでも…あなたに勝ってみせる!」

 

そして震える手を抑え込むように拳を握りしめる。

 

「そしてエルちゃんを…ましろさんを…ハルトさんを守って見せます!!」

 

彼女は震えを誤魔化しながらも堂々とカバトンに言い放った。

 

「ほう…プリンセスやメソメソ野郎を守る?お前ひとりで…?」

 

スカイの言葉を受けてカバトンは笑鼻で笑いながら彼女に言葉を返す。

 

「コイツを目の前にして…ちょっと調子に乗り過ぎじゃないのねん…?」

 

そういった瞬間、戦闘態勢に入った電車ランボーグがどす黒いオーラを全身から解き放った。

ランボーグから放たれる凄まじい重圧を、スカイは全身で感じ取っていた。

 

「ひっ…!?」

 

スカイは本能的に恐怖を感じた。必死に奮い立たせた勇気が一気に萎んでいく。

だからと言ってここで引くわけにはいかない。大切な友達の命は自分が守らなければならないのだから。

 

「うっ…うわぁあああーっ!!」

 

スカイは恐怖を払いのけるようにランボーグに向かって飛びかかる。

 

「ヒーローガールスカイパァーンチッ!!」

 

そして早急に目の前の怪物を葬るべく、必殺技であるスカイパンチを発動する。

対してランボーグも巨大な拳を振りかざし、スカイのパンチと真っ向から迎え撃った。

ランボーグの拳はあっさりと青い拳のオーラを薙ぎ払うと、本体のスカイを吹き飛ばしてビルの屋上に叩きつけた。

 

「ぐはぁっ!?」

 

スカイは床に叩きつけられた激痛で顔を歪ませる。

しかし即座に立ち上がると、もう一度必殺技を撃とうと拳を構えた。

 

「ひっ…ヒーロー…ガールッ…!!」

 

だが先程のダメージのせいで、彼女は息を切らせながら拳に力を集めるだけで精一杯だった。

ジッとスカイを見つめるランボーグ。その黄色い瞳が突如輝き光線をスカイ目掛けて発射した。

 

「キャアアアーッ!!」

 

爆風と共に吹き飛ばされたスカイはゴロゴロと床を転がり、仰向けに倒れこんだ。

 

「ソラちゃんっ!!」

 

「えるぅっ!!」

 

その光景を見たましろは悲鳴を上げ、エルも悲し気な声を上げた。

 

「早くソラちゃんを助けに行かないと…でもエルちゃんも守らなきゃだし…!」

 

途方に暮れるましろ。その時ましろが抱えているエルのゆりかごが突然輝きだし、虹色に輝く子船のような乗り物に変化してエルを乗せたまま宙に浮かび上がった。

 

「えっ!?これって…?」

 

そういえば、以前スカイジュエルを探しに行くときヨヨにこう言われた。

 

 

―――色々と役に立つと思うわ。

 

 

それがこの子船の事らしい。

どうやらエルの意思で自在に宙を動けるようで、エルもきゃいきゃい言いながら飛んでいる。

 

「おばあちゃん!ありがとうすぎるよ!!」

 

まさに地獄にヨヨとはこの事だ。エルを抱っこする必要がない今ならソラを助けに行ける。

 

「待っててソラちゃん!今助けに行くよ!」

 

そしてましろはスカイトーンとミラージュペンを構えプリキュアに変身する。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!ひろがるチェンジ!プリズム!」

 

ましろの体を眩い光の球体が包み込み、やがて中からピンクの髪に白いドレスを身に纏ったプリキュアが現れる。

 

「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」

 

お約束の変身ポーズをばっちり決めたキュアプリズムは、そのままスカイの元へ飛んで行った。

エルもプリズムの後を追って飛んでいく。

 

建物の間を壁キックで乗り越えビルの屋上へたどり着く。そこにはランボーグの攻撃のせいでボロボロに横たわるスカイと彼女にとどめを刺すべく拳を振り上げるランボーグの姿があった。

 

「これ以上スカイを傷つけさせない!」

 

彼女は掌から眩い光弾の雨をランボーグ目掛けて乱射した。

2人目のプリキュアの襲撃にランボーグは注意をプリズムに向け、彼女に向かって殴りかかる。

それを回避したプリズムはスカイの元へ駆け出し、彼女を抱きかかえて声をかけた。

 

「スカイ!しっかりして!スカイ!」

 

「ましろさん……」

 

意識を取り戻したスカイは、プリズムの顔を虚ろな目で見つめる。相当ダメージを受けたようだ。

 

「来たな2匹目…そして、3匹めぇ…!!」

 

カバトンはプリズムと宙に浮かぶエルを見つめ、不気味な笑みを浮かべながら舌なめずりした。

 

「ところで4匹目のメソメソ野郎はどこなのねん?…まさかまたどこかに隠れているのか!?」

 

辺りをきょろきょろ見回すカバトン。だがメソメソ野郎ことハルトの姿は見当たらない。

そもそもあのヒーロー気取りが仲間のピンチを黙って見ているわけがない。

 

「なーんだ、いないのか。何でいねーかは知らねーけど、好都合なのねん。ま、いたところでこの最強のランボーグの相手じゃないがなぁっ!!」

 

「ランボォオオーグゥウウウー!!」

 

ランボーグは巨大な拳同士を打ち付け、プリズムとスカイを挑発するように叫ぶ。

 

「これがスカイの言ってたランボーグ…確かにすごいプレッシャーを感じるよ。…でも!」

 

プリズムは目の前の敵に恐怖を感じながらも、意を決して拳を握る。自分だって友達を助けたい。ソラやエル、ハルトを守りたい。そのためにプリキュアになったのだから。

 

「!?まってましろさん…だめ…!戦ってはダメ!!」

 

スカイは必死になってプリズムを呼び止める。

だが彼女はそんなスカイの制止を聞かず、ランボーグに向かって必殺技を発動した。

 

「ヒーローガール!プリズムショット!」

 

プリズムは特大の光弾をランボーグ目掛けて撃ち込む。

だが当たる直前、ランボーグの全身から黒い衝撃波が放たれプリズムショットをかき消してしまった。

 

「「キャアアアーッ!!」」

 

あまりの衝撃波の勢いに吹き飛ばされるプリズムとスカイ。

その光景を見てカバトンは再び大笑いした。

 

「ギャーッハハハ!!YOEEE~!このランボーグの前には、プリキュアなんざ虫けらも同然なのねん!」

 

勝利を確信し上機嫌のカバトンは、地に倒れ伏すスカイとプリズムを心配そうに見つめるエルを目ざとく見つける。

 

「今度こそ俺様の勝ちだ!プリンセスは貰ったぁ!!」

 

スカイとプリズムは既にボロボロ。サンライトもいない。

 

絶望的な状況の中、電車ランボーグの魔手がエルを捕らえんと迫っていった。

 

 

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