ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第18話:ハルトとおばあちゃん

 

ソラたちが電車ランボーグと遭遇する少し前、ハルトは虹ヶ丘家の庭でヨヨとお茶を嗜んでいた。

 

「美味しい?ハルトさん」

 

「え?あ、はい!美味しいです!」

 

自分の入れたお茶の感想をにこやかに尋ねるヨヨに、ハルトはぎこちない様子で答える。

 

「お茶だけじゃ物足りないでしょ?クッキーもいかがかしら?」

 

「あ、ありがとうございます!頂きます…」

 

ヨヨが差し出したクッキーが乗ったお皿を、ハルトはおずおずと受け取る。

 

(どうしてこんなことになったんだけ…?)

 

クッキーを口に運びながら、ハルトはこの状況に至った経緯を思い出していた。

 

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ましろがソラを連れて出かけてしばらくたったころの事。ハルトはまだ自分の部屋に閉じこもっていた。彼はベットに横になりながら、先ほどの出来事を思い返す。

 

「どうしてあんな事言っちゃったんだろ…」

 

ハルトはソラと喧嘩したことを後悔していた。彼女の相談に乗ると息巻いておきながら、逆にソラを傷つけるような発言をしてしまったからだ。

 

「もっとソラの気持ちに寄り添って、話を聞くべきだったのに…」

 

友達をやめるとソラに言われて、ついカッとなってしまった。友達想いのソラが、あんな発言をするほど追い詰められている事にちゃんと気づいてあげるべきだった。あの場はすぐに謝るなり、ましろを呼ぶなりして穏便に対応する手段はいくらでもあったはずだ。

 

それなのに自分は彼女の気持ちを考えずに怒りをぶつけてしまった。絶交するなんて言ってはいけない言葉もぶつけてしまった。

 

「謝らないと…ソラと友達でいられなくなるのは嫌だ。でも…」

 

ハルトはまた自分が彼女に余計なことを言って傷つけてしまわないか心配だった。

 

「そもそも友達を傷つけるような俺に、ソラと会う資格なんてないよな…」

 

だから資格がないとか理由を付けて、ソラから逃げようとしている。

彼女は自分と仲直りしようと歩み寄ってくれているらしいのに。

ハルトはそんな臆病な自分が許せなくて、情けなくてたまらなかった。

 

その時、コンコンッとまたドアをノックする音が響いた。

またましろが様子を見に来たんだろうか?でも今は誰にも会いたくない。

無視を決め込み布団をかぶろうとするハルトだが…。

 

――ハルトさん、ちょっといいかしら?

 

声の主はヨヨだった。彼女の声を聞きハルトは飛び起きる。

 

「よ、ヨヨさん!?はい待ってください!今行きます!」

 

ある意味ましろ以上にお世話になっている彼女を無視するわけにはいかない。

ハルトは急いで身だしなみを整えると、部屋のドアを開けた。

ヨヨはいつものように優しげな笑みを浮かべて廊下に立っていた。

 

「お昼寝中だったかしら?ごめんなさいね、お邪魔しちゃって」

 

「いえいえ大丈夫です!起きてましたよ!それで、何か用ですか?」

 

ヨヨはニコニコしながら用件を伝える。

 

「今から私とお茶でもいかがかしら?」

 

「お茶?俺がヨヨさんと…ですか?」

 

キョトンとするハルト。ヨヨは相変わらずニコニコと微笑んでいる。

 

「ええ、ちょっとお茶の相手をして欲しいの。お願いできるかしら?」

 

「あ、ああ…もちろん!俺で良ければ喜んでお付き合いさせていただきます!……あれ?」

 

ふとハルトは辺りをきょろきょろ見回す。家の中が自分たち以外の人の気配がない気がする。

ソラやエルが来て賑やかになった家の中が久しぶりに静かに感じられた。

 

「あの…ましろとソラは?」

 

「二人ならエルちゃんを連れてだいぶ前にお出かけしたわ」

 

「そうですか…」

 

ホッとしたような、寂しいような気持ちのハルト。

そんな彼の様子を見て申し訳なさそうな表情でヨヨは喋りだした。

 

「ごめんなさいね。本当はこんなおばあちゃん相手するより、若くて可愛い女の子達とお出かけしたかったでしょ?」

 

「いえいえ!とんでもないです!ヨヨさんだってまだまだ若いし、綺麗ですよ!」

 

ハルトはブンブン首を横に振って必死に否定する。

 

「ふふ、ありがとう。じゃあ私はお茶の準備をするから、ハルトさんは庭で待っててくれる?」

 

「いやいや!俺も手伝いますよ!お茶……の準備とかは無理だから、入れ物とか用意します」

 

「慌ててこけたりしないようにね」

 

ヨヨはくすくすと笑いながら、走って1階に降りるハルトの後を付いていった。

 

 

 

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そして今に至る。

ハルトはガーデンチェアに腰掛けながらヨヨと向かい合い、クッキーを食べながら紅茶を啜っている。ヨヨの入れる紅茶はめちゃくちゃ美味しい。クッキーもサクサクで絶品だ。外の空気を味わいつつ、色とりどりの花が咲く中庭の景色を眺めながら頂くティータイムは最高だった。

しかしどうにも腑に落ちない点があった。

 

(なんででヨヨさん急に俺をお茶に誘ったんだろ……?)

 

ハルトは頭を悩ませる。

ヨヨは度々怪しかったり思わせぶりなムーブを見せることがある。

でも意味のないことはしない人だ。こうしてハルトを誘ったのには何か理由があるのだろう。

 

(もしかして、ソラと喧嘩した俺を慰めるために…?)

 

ヨヨは人の気持ちを察するのが上手いから、ハルトがソラと喧嘩したことも知っているだろう。

でも彼女はその件に一切触れることなく優雅に紅茶を啜っている。

その様子が今のハルトにとってありがたくもあり、同時に怖さも感じた。

 

(そもそも俺、こんな呑気にお茶してる場合じゃないよな…)

 

ましろの言うように、早くソラと仲直りして今後の事についてよく話し合わなければならない。

今すぐにでも彼女たちに会いに行くべきなのだが、ハルトがお茶を飲み干す度にヨヨがおかわりをついでくるので離れるタイミングがつかめない。

ちなみにもう4杯目でハルトのお腹はたぷたぷだ。

 

ヨヨの気持ちはありがたいが、どうにかこの場を離れられないものか。

そう思っているとハルトのポケットの中から突然黒い光が放たれ始めた。

 

「これは…またランボーグか!?」

 

ハルトは咄嗟にポケットの中にあるスカイトーンに手を伸ばす。

今までにないほど強いアンダーグ・エナジーの気配を感じる。

 

「とてつもない力を感じる…早く向かわないと!」

 

そう言ってスカイトーンを取り出す。

だが取り出したスカイトーンを見てハルトは驚きの声を上げた。

 

「また真っ黒に染まってる…!?」

 

スカイトーンがまた黒く染まっていた。太陽のエンブレムも真紅に代わり、不気味な光を放っている。スカイトーンがこの色に染まるのは、ハルトが最初に変身した黒いプリキュアらしきもの…便宜上『黒いサンライト』と呼んでいる姿になった時以来である。

 

「何で?サンライトに変身してから一度も黒く染まってないのに…。どうして急に?」

 

突然の出来事にハルトは戸惑いを隠せない。だが心当たりがないでもない。

ハルトは最初に黒いサンライトに変身した時を思い出す。

あの時の自分はソラを侮辱したカバトンへの怒りと憎しみで心が一杯になっていた。

今だってソラに拒絶されてハルトの心は悲しみと悔しさで満ち溢れそうだった。

 

反対にサンライトに変身する時は、友達を守りたいという強い使命感と正義の心に反応するように、スカイトーンは赤く輝く。

 

(まさかこの石、俺の心の状態がスカイトーンの色に反映されてるのか!?)

 

何故自分のスカイトーンだけ色がコロコロ変わるのか分からなかった。

だが、もしこのアクセサリーの色がハルトの心の状態を表しているのだとしたら…?ハルトの怒りや悲しみといった負の感情に反応して、スカイトーンが黒く染まっているのだとしたら…?

 

(もしそうなら…今変身したら、また黒いサンライトに……?)

 

黒いサンライト。あれに変身した当初は闇の力を存分に奮ってランボーグを圧倒したが、エルの力で弱体化してしまった。変身したところで本来の力を出せるかは分からない。だが力を使えたとて、気持ちが不安定な今の自分ではその力に呑まれてしまい、ソラやましろを守るどころか彼女たちに危害を加えるかもしれない。

 

それにエルは黒いサンライトを恐れている。彼女に二度と変身しないと誓ったのに、その約束を破ってしまえばまた拒絶されるかもしれない。

 

(嫌だ…俺はもう誰にも嫌われたくない…)

 

ハルトの表情が曇り、目線を下に落とす。

黒いサンライトにはなれない。かといってキュアサンライトに変身できる自信もない。

黒く染まったスカイトーンは不気味な光を放っていた。

 

(どうする……どうすればいい……?)

 

八方塞がりだった。どうしたらいいのか分からない。

ハルトが途方に暮れていたその時、ヨヨが優しく語りかけてきた。

 

「どうしたの?ハルトさん」

 

「ヨヨさん…?」

 

ヨヨはハルトをじっと見つめながら、優しい笑みを浮かべていた。

 

「何か悩みごとでもあるのかしら?」

 

「悩みごと…悩みごとなんて別に…」

 

いや、本当はある。でもハルトはヨヨに悩みを話したくない。

自分の情けない一面を知られて、ヨヨにどう思われるのかが怖かったのだ。

 

「大丈夫よ」

 

「えっ!?」

 

ヨヨはそんなハルトの気持ちを見透かしているかのように、静かに微笑みながら口を開いた。

 

「ハルトさんがどんな悩みを抱えていても、決してバカにしたり笑ったりなんかしないわ」

 

ヨヨは立ち上がり、ハルトの座るガーデンチェアに近づく。

そしてハルトの隣に座ると、優しくハルトの手を取った。

 

「私もあなたの力になりたいのよ。おばあちゃんにお節介、させてもらえないかしら?」

 

「ヨヨさん…」

 

ヨヨの手は皺だらけだがとても暖かい。

その温もりと彼女の優しい眼差しがハルトの心を溶かしていった。

 

「俺…実はソラと喧嘩したんだ…」

 

気がつくとハルトは、ぽつりぽつりとソラとの間に起きた出来事の一部始終をヨヨに話した。

その間、ヨヨはハルトの話しに一切割って入らず、静かに耳を傾けていた。

 

「最低ですよね…ソラは俺のためを思って言ってくれたのに、そんなソラの気持ちに寄り添えず、酷いこと言っちゃって……」

 

ハルトは喋っているうちにあの時の事を思い出して、段々泣きそうになってきた。

 

「ハルトさんは、今どうしたいと思っているの?」

 

ヨヨはそんなハルトの手を優しく握りしめながら問いかけた。

 

「謝りたいです…仲直りして、また友達に戻りたいです…!」

 

ハルトは今の自分の正直な気持ちをヨヨに打ち明けた。

 

「それならソラさんとしっかり向き合って、今の気持ちを伝えてみたらどうかしら?」

 

ヨヨは優しく微笑みかけながら語りかける。

 

「でも、正直不安なんです。ちゃんと仲直りできるか…。それにまたソラを傷つけてしまわないか、怖くて…」

 

まだ不安が拭いきれないハルトは一歩を踏み出せずにいた。

 

「ハルトさんもソラさんも、本当に優しい子ね」

 

そんなハルトをヨヨは温かい眼差しで見つめる。

 

「え?ソラはわかるけど…俺も優しいですか?」

 

「ええ、二人とも優しい子よ」

 

ヨヨはきょとんとするハルトに微笑みかけると、言葉を続けた。

 

「ハルトさんもソラさんも、相手の事を思いやれる優しい子。でも、今回の事で互いに歩み寄るのが怖くなっているんでしょうね…」

 

「そうかもしれません…」

 

「さっきハルトさんが不安に思ったこと、ソラさんも同じように感じていると思うわ。仲直りしたいけど、自分や友達が傷つくのが怖くて前に踏み出せないでいる。今のハルトさんと同じ」

 

ヨヨの言葉を受けて、ハルトはソラの事を考える。きっとソラもハルトと同じように、友達を傷つけた罪悪感で思い悩んでいることだろう。

 

「女の子はね、そういう不安を抱いたときは男の子にしっかり引っ張ってほしいものなの。だからハルトさんも勇気を出して、ソラさんの手を握ってあげて」

 

ヨヨはハルトの両手を包み込むように握って、優しい口調で語りかける。

 

「ソラさんも、本当はきっと待ってるわ。ハルトさんが会いに来てくれるのを」

 

「ソラが…俺を待ってる…?」

 

ヨヨの言葉を聞いたハルトは、彼女の目を真っ直ぐ見つめながら問いかけた。

 

「俺…今度はちゃんと、ソラの力になれるかな?」

 

「大丈夫、だってあなたは心優しい、私の自慢の孫ですもの」

 

「!?…ヨヨ…さん…!」

 

ヨヨの言葉がハルトの胸に染み込んでいく。こんな情けない自分を、自慢の孫だと言ってくれた。

そんなヨヨをハルトは優しく包み込むように抱きしめていた。

 

「うん…ありがとう…()()()()()()…!」

 

「まあ…!」

 

ヨヨは嬉しそうにハルトを抱きしめ返す。

 

「久しぶりね…ハルトさんにおばあちゃんって言われるの」

 

「だって照れくさいから。あとやっぱり…俺はよその子で、お世話になってるっていう負い目もあるから…」

 

昔はハルトもましろのようにヨヨをおばあちゃんと呼んでいた。しかし自分が虹ヶ丘家の子供ではない事を自覚した時から、ヨヨの事を名前で呼ぶようになった。

 

虹ヶ丘家の人たちはハルトの事を家族だと思っている。実際ヨヨやおじさん達からましろと同じくらい愛情を注いでもらった。ましろもずっと自分の傍にいてくれてる。それでも自分はよそ者のような気がして、どこか距離を置いてしまうところがあったのだ。

 

「ごめんね…このことはまだ吹っ切れそうにないや」

 

「いいのよ。でもこれだけは言わせて頂戴ね」

 

ヨヨはハルトを慈愛に満ちた表情で見つめた。

そして、ハルトにしっかりと言い聞かせるように言葉をかける。

 

「私も、ましろさんも、あきらさんとまひるさんも、あなたの事を大切に思っているわ。それはソラさんやエルちゃんも同じ。ハルトさんにはあなたを想う家族と友達がついてる。そのことを忘れないでね」

 

「うん…ありがとう!」

 

ヨヨの言葉を聞いて、ハルトの心に暖かな気持ちがこみ上げてきた。

ふとハルトは自分のスカイトーンを見てみる。黒く染まっていたアクセサリーはもとの半透明に戻っていた。

 

「元に戻った…?」

 

ハルトはスカイトーンを手に取り空にかざす。トーンに刻まれた太陽のエンブレムが日の光を浴びて輝いていた。

 

「今なら…戦える…!」

 

ハルトは決意を固め立ち上がる。

 

「行くのね…」

 

そんな彼をヨヨは優しく見つめている。

 

「うん、ソラに会いに行く。ちゃんと謝って、もう一度友達になってもらう!」

 

ハルトはヨヨに力強く答えた。

 

「そして…ソラを苦しめる悪夢をぶっ飛ばしてくる…!」

 

ハルトはスカイトーンから感じる気配の発生源、ソラシド市街の方へ目を向ける。

街から爆音が聞こえる。ソラたちが戦っているに違いない。

 

「友達がピンチなんだ。早く行かないと!」

 

ハルトはそう言うと、スカイトーンを握ったまま走り出した。

そして何かを思い出したかのように立ち止まり、ヨヨに振り返る。

 

「俺が自分をよその子だって言ったこと、ましろには内緒にしといてくれる?知られたら怒られちゃうから!」

 

「まあそれは大変ね。わかったわ、内緒にしておく」

 

ヨヨはふふっと笑いながら答えた。

 

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

 

「うん、行ってきます!」

 

ハルトはヨヨに力強く答えると、足早にソラシド市街へと向かった。

 

「今ソラに会いに行ったら、どんな顔されるかな?」

 

道を走りながらハルトはふと考える。ソラからはきっと「何で来たんですか!?」と言われるだろう。また戦いから遠ざけようと拒絶されるかもしれない。

 

でも何といわれようが関係ない。彼女に伝えたいことがあるのだ。謝って、仲直りして、もう一度ソラと友達になりたい。

 

「だから、俺は絶対に負けられない!それに許せないこともある…!」

 

もとはと言えばソラと仲違いした最大の原因は、彼女の悪夢に現れたランボーグだ。

夢の中で自分を殺したという悪夢の怪物。だがハルトはそれに恐れを抱くどころか、そのランボーグと戦いたい気持ちでいっぱいだった。

 

「お前は絶対にぶちのめす…!ソラを怖がらせた落とし前は、しっかりつけさせてもらうからな!」

 

一発…いや、百発はぶん殴ってやらないと気が済まない。そのランボーグに必ず勝つ。そして今、戦っているであろうソラ達を救って見せる。

 

ハルトは強い意志を持ってスカイトーンとミラージュペンを構える。

アクセサリーは黒い光を吹き飛ばすように赤い輝きを放ち始めた。

 

「スカイミラージュ!トーンコネクト!」

 

そしてマイク状に変形したミラージュペンにスカイトーンをセットする。

 

「ひろがるチェンジ!サンライト!!」

 

眩い輝きと共にキュアサンライトに変身したハルトは、大地を蹴って空へと飛び上がった。

 

「ソラ、ましろ、エル…今行くぞ!!」

 

そして大切な友達を助けるために、サンライトは戦場へと向かったのであった。

 

 

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