ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~ 作:零たん
朝日ハルト。彼はソラシド市の虹ヶ丘家で暮らしている少年だ。
髪色は黒。ツリ目のブラウンアイの瞳を持ち中性的な顔立ちをしている。私立ソラシド学園の中等部に通っており、今年の7月で14歳になる。
彼の一日は幼馴染の虹ヶ丘ましろに起こしてもらうところから始まる。
朝が弱いハルトは自力で起きれないので必ずましろに起こしてもらっている。ハルトが遅刻せずに学校に通えるのは間違いなく彼女のおかげだろう。
そして春休み初日の正午。いつも以上に遅い時間に起きたハルトは、キッチンで遅めの朝ご飯を食べている。ハルトは食事をとりながら、向かいに座るましろに先ほど見た夢の内容を話した。
「夢の中で本当のお父さんに会えたんだ!どんな人だったの?」
「意外と優しそうな人だったなぁ。あとロマンチストな感じ?この世界を美しく光り輝かせたいとか赤ん坊の俺にいろいろ言ってたな」
「ハルくんが赤ちゃんってことは、昔の出来事が夢になって現れたってことかな?」
「どうだろうな。一応親父を名乗る男はこれと同じの持ってたけど」
ハルトは首にぶら下げているアクセサリーをましろに見せた。
「いつ見ても綺麗だね、そのアクセサリー」
「欲しいならあげるけど?」
「受け取れないよ!それはハルくんのお父さんが託した大事なものなんでしょ!?お父さんを探す手掛かりになるかもしれないよ?」
「もう13年近く息子をほったらかしてる父親なんか、今更会いたいとも思わねーよ」
ハルトはましろにそう言いながらアクセサリーを戻した。彼は両親と過ごした記憶が一切ない。物心ついた時には虹ヶ丘家で暮らしていたのだ。ましろの祖母のヨヨの話によると、13年ほど前に一人の男が赤ん坊を抱いてヨヨの家にやってきたらしい。
ハルトの父親を名乗る男は「しばらく息子を預かってほしい」とヨヨに伝え、ハルトと例のアクセサリーを残して去っていた。それ以来その男がやってくることはなかった。
行き場のない赤ん坊はましろ夫婦に引き取られ、それ以降ハルトは虹ヶ丘家の一員として暮らしている。一人娘のましろとは兄弟同然に育った仲だ。
「ていうか親父とは会わない方がいいまであるな。実際に親に合ったら『自分の子供ほったらかして今まで何しとったんじゃクソッタレー!』ってキレてぶん殴るかもしれないし」
「殴ったりしたらダメだよ!?ハルくんのお父さんだって何か事情があるかもしれないよ!?」
「それはそうだろうけどさ…」
ハルトの表情が曇る。彼は親に捨てられ虹ヶ丘家に押し付けられたもらわれっ子だというコンプレックスを密かに抱えていた。昔は悪ガキにそのことで馬鹿にされたり周囲から色眼鏡で見られたり嫌な思いをすることも多々あった。自分を置いていった父親を恨んだ時期もあった。
「でも多分親父は俺の事なんかとっくに忘れて、気楽に生きてるよ…」
ハルトはぽつりとそう呟いた。その顔はどこか寂し気に見えた。
それを見たましろはハルトのそばに行き彼の両手を握りしめた。
「ハルくん、これだけははっきり言えるよ」
彼女は真剣な表情でハルトをじっと見つめる。
「ハルくんは私の家族だよ。パパやママだってハルくんはもううちの子だって言ってたでしょ?血は繋がってなくても、誰がなんて言おうとも、ハルくんは虹ヶ丘家の一員だよ」
両手を握る力が一層込められる。
「例えこの先ハルくんが本当のお父さんに会えなくても、ハルくんの居場所はここだからね。ましろお姉ちゃんも、ハルくんの傍にずっといるよ」
「お姉ちゃん…」
心のしこりが解けていくような気分になった。
ハルトはましろを見つめる。自分に優しく微笑む彼女にハルトは声をかける。
「うん、ないわ。ましろが俺のお姉ちゃんとか絶対ありえないから」
「えっ…えぇ~!?この流れでそれ言うの!?」
ハルトの言葉にましろはガビーンとショックを受ける。
「いやいやハルくんとは同い年だけど、私の方が誕生日早いよ!だから私はハルくんよりお姉さんだもん!」
「いやいや!たかが10日ぽっちの差でお姉ちゃんぶらないでくれる!?」
反論してくるましろにハルトがツッコミを入れる。
ましろは何かとハルトのお姉さんぶることが多いのだ。
だがハルトとしては同い年の女の子に弟扱いされるのはプライドが許さない。
なのでいつもこんな感じで反発してるのだ。
「そもそも姉ポジションはあげは
「うーん、弟扱いされるのが嫌ならまず私の助けなしで朝起きれるようになろうね?私がいないとハルくん何回遅刻してたかわからないよ?」
「はっはい、善処します…」
ましろに正論で返されたハルトはあっさり大人しくなった。実際ましろには実の姉のようにお世話になっているので頭が上がらないのだ。
しばしの沈黙。その後どちらからともなくクスクスと笑いだした。
「ありがとうましろ、おかげで元気出た」
「うん、どういたしまして。また辛いことあったらいつでも相談してね!」
「おう、それじゃあさっさとご飯食べて家の手伝いでもするか!」
いつものやり取りを経て元気を取り戻したハルトは、テーブルに置かれた朝ご飯に再び箸をつける。ましろの言うとおりだ。本当の親がいなくても自分には虹ヶ丘家という居場所がある。
何よりましろが傍にいてくれるから何も心配することはない。この幸せな日常がいつまでも続いてほしいとハルトは心の中で願った。
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その日の夜、ハルトはまた夢を見た。
暗闇に包まれ枯れた大地が広がる闇の世界。ハルトはその中で一人佇んでいた。
(あれ?この景色、どこかで…?)
ハルトはこの風景に見覚えがあった。それは昨日見た夢、自分の父親と名乗る男が赤子の自分に読み聞かせた絵本の挿絵の風景そのものだった。
(あの絵本と同じ、自分以外は誰もいない孤独な世界…)
ふとハルトは着ている服に違和感を感じ確認すると、全身の服が黒ずくめの衣装に変わっていた。黒をメインに銀色の差し色やラインが入ったスーツとズボンを身に着けており、背中にはこれまた黒いマントが羽織られている。
(な、なんだこの格好!?)
驚いたハルトは黒いグローブをはめた手で自分の服や顔をぺたぺた触る。
変わっているのは衣装だけではない。ハルトは気づいていないが髪は黒色から銀色に、瞳の色は血のような真紅に変色していた。
(一体どうなってるんだ?今いる場所も真っ暗だし…でもこれ夢の出来事だよな?)
ハルトは無意識に頬をつねろうとした。
その時、突如辺りを覆っていた黒い瘴気のようなものがハルトを包み込むように動き出した。
(!?一体、何が…!?)
ハルトは逃げようとするが、手足が自分の意志に反してピクリとも動かない。
(な、なんだこれ!?体が…動かない…!?)
その間に黒い瘴気はハルトに纏わりつき、彼の全身を蝕むように浸食していく。
(っ!、く、苦しい……!)
ハルトは苦悶の表情を浮かべる。心臓がバクバクと高鳴り全身を冷や汗が伝う。
同時に頭の中に誰かの声が聞こえてくる。
〔…を…!…せ…!〕
憎しみに染まったような荒々しい声が頭に響く。
〔ーを滅ぼせ!!〕
(嫌だ!俺はそんなことしたくない!!)
必死に拒絶するが、声は止まらない。
〔ーーーを!殺せ!!〕
(やめろおおおおおおおおお!!)
黒い瘴気はハルトを完全に包み込み、頭の中は謎の声の呪詛で埋め尽くされていく。
(だれか…助けて…)
救いを求める言葉も虚しく、ハルトは黒い瘴気に呑まれるように意識を失いつつあった。
その時、突如眩い光がハルトを包み込んだ。
ハルトを蝕んでいた瘴気はその光を浴びて消滅し、頭の声も止んだ。
(いったい何が…)
地に放り出されたハルトが宙を見上げると、真っ暗だった世界は眩い光に包まれ、空は澄み渡るような青い空に変わった。そして空から一人の少女がハルトのもとに降りてくる。
水色のツインテールが特徴的な少女は、青と白を基調としたワンピースドレスを身にまとい、左肩の長いマントがたなびかせながらゆっくりと着地した。
(…きれい)
その少女の美しい姿にハルトは目を奪われていた。まるで絵本から飛び出した王子様のようにも見えた。
「もう大丈夫ですよ」
水色の髪の少女はハルトに歩み寄る手を差し伸べる。
「ヒーローが助けに来ました!」
その言葉と共に、少女は全てを照らす様な眩しい笑顔でハルトに微笑んだ。