ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~ 作:零たん
スカイ達と別れたサンライトは、隣のビルの屋上へ飛び移り、その上空で待ち構えている電車ランボーグと対峙した。敵は全身に黄色いオーラを纏っており、サンライトに向かって両腕を上げて威嚇している。
「おいメソメソ野郎!お前さっきまでいなかったのに何で急に現れた!?」
運転席に乗っているカバトンがサンライトに向かって吠えた。
「ヒーローは遅れてやって来るってな。この世界のことわざだ、覚えときな」
サンライトもカバトンを睨みつけながら言い返した。その直後、カバトンがガリガリに痩せ細っているのに気づき、その異様さに思わず眉をひそめた。
「ていうかお前、ちょっと見ないうちにかなり痩せたなぁ。生活態度を改めるにしてもやりすぎじゃない?急激なダイエットはリバウンドしやすい体質になるからお勧めしないぞ?」
「余計なお世話だ!それに痩せたくて痩せたわけじゃないのねん!」
カバトンは青筋を浮かべながらサンライトに怒鳴り散らす。しかし直ぐに冷静になると、ミイラのようにやせ細った顔を醜く歪めながら叫んだ。
「やい聞けメソメソ野郎!今回俺様はプリキュアを倒すために、俺様のアンダーグエナジーを限界ギリギリまでコイツに注ぎ込んだのねん!そして生まれのが、この最強のランボーグだぁ!!」
「なるほど、コイツから感じるアンダーグエナジーが異様に強いのはそのためか…」
サンライトは納得したように呟いた。ランボーグは物質に注がれたアンダーグエナジーの量が多いほど強い個体が生まれる。ランボーグ一体を生み出すのに必要なアンダーグエナジーに加え、カバトン自身のエネルギーをほぼランボーグに注いだことで、目の前の電車ランボーグはこれまでの敵とは比較にならないほどの力を得ているのだ。
(だからと言って引くわけにはいかない。相手がどんなに強くても、正しい事を最後までやりぬく。それがヒーロー…!)
サンライトが後ろを振り返り、向こう側のビルの屋上で自分を見つめるスカイに目を向けた。彼女はサンライトを真っすぐ見据えながら小さく頷く。それに答えるようにサンライトも力強く頷き返すと、再びカバトンの方へ向き直った。
「残念だったなカバトン。お前の努力は無駄に終わりそうだぜ」
「な、何だと!?」
サンライトの言葉にカバトンは動揺する。
「何故ならそのおもちゃを、今から粉々のスクラップに変えてやるからだよ…!」
サンライトは拳をランボーグに向かって突き出し、不敵な笑みを浮かべながら言い放った。
「カァー!ちょっと不意打ちでぶっ飛ばしたくらいで調子に乗りやがって!もう頭きたのねん!」
最高傑作をバカにされたカバトンは、手をバタつかせて怒り狂う。
「そうやって余裕ぶっこいていられるのも今のうちなのねん…!ランボーグ、パワーアップなのねん!!」
カバトンがそう命令すると、電車ランボーグの額の表示が再び動き『特急』から『超特急』へと替わった。するとランボーグが纏っていたオーラが赤色に変化する。放出されるエネルギーも激しさを増し、ランボーグの力も更に増幅した。
「どうだ!こうなったランボーグのパワーはさっきまでの比じゃねえ!今日こそはお前のムカつく面を血祭りに上げてやるのねん!いけランボーグ!」
「ランボォォグゥゥゥ!!」
ランボーグは雄たけびを上げると、サンライト目掛けて猛スピードで突進してきた。
「頭にきた?ムカつくだ?それはこっちのセリフだこの野郎・・」
対するサンライトもランボーグを睨みつけながら、拳を強く握り締める。
「よくも皆を傷つけやがったな…!」
怒りの炎を燃やしながらサンライトは拳を振りかざす。相手が強敵なのは百も承知だ。それでも、大切な友達を傷つける奴は許さない。
「お前らだけはっ!」
サンライトは突っ込んでくる電車ランボーグ目掛けて弾丸のように跳躍し、一気に距離を詰める。そして振り上げた拳を敵の顔面に叩きつけた。
「絶対に許さねえぇ!!」
強烈な打撃音と共にランボーグの顔面にサンライトの拳が深くめり込む。そしてその巨体を遥か後方へ吹き飛ばした。
「へぶぅぅぅーっ!?」
運転席にいるカバトンも派手に転げまわり、全身をバチボコに打ち付けた。
「ランボォォグゥゥ…!」
どうにか空中で体勢を戻した電車ランボーグも痛そうに悶えている。一方、サンライトは一度ビルの屋上に着地したあと再び跳び上がり、ランボーグに向かって追撃を仕掛けるべく飛び上がった。
「く、来る!おいランボーグ!反撃しろぉ!!」
慌てて指示を出すカバトン。電車ランボーグは飛んでくるサンライト目掛けて再びパンチを繰り出した。対するサンライトも、ランボーグの拳目掛けてパンチを叩き込み、両者の拳が激突する。しばらく拮抗するが、サンライトの怒りの鉄拳がパワー勝ちし、電車ランボーグの拳がはじかれ後ずさる。
そこへすかさずサンライトが敵の腕を両手で掴み、その巨体をジャイアントスイングの要領でぶん回すと、地上目掛けて放り投げた。
「ランボォォグゥゥ!?」
地表を砕くほどの勢いで叩きつけられたランボーグは悲鳴を上げながら転がる。そして社長の車を下敷きにしたところでようやく止まった。
「わしの愛車がー!」
「しゃちょー!」
街に社長の悲痛な叫びが響き渡るが、誰もそんなこと気にしないのであった。
そしてサンライトも地上へ降り立つと、両手をボキボキ鳴らしながら、横転したランボーグの元へ歩みを進める。
「どうした、早く起きな。こっちはまだ本気を出してないぞ!」
「これで本気を出してないって冗談だよね!?」
屋上で戦いを見守っていたプリズムがたまらずツッコんだ。
「でも流石だよサンライト!あんなに強いランボーグをたった一人で退けてる…!」
「える!えるぅ!」
それでもプリズムはサンライトの圧倒的なパワーを称賛した。エルもサンライトを応援しているのか、「やっちゃえ!」と言わんばかりに両手をパタパタ振っている。
「ねえスカイ、この勢いならサンライトが勝っちゃうかもしれないよ?ちょっと派手にやり過ぎな気もするけど…」
プリズムが同じく戦いを見守るスカイに話しかける
「確かにサンライトの力は圧倒的です。でもまだ分かりません」
しかしスカイは険しい表情でサンライトとランボーグを見つめていた。
「何でそう思うのかな…?」
「あのランボーグが夢で見たのと同じなら…あれもまだ本気を出していないからです」
「え!?ランボーグもあれで本気じゃないの!?」
スカイの言葉に耳を疑うプリズム。今回のランボーグはパワーアップする前でもスカイとプリズムの必殺技を破るほど強いというのに、まだ力を温存しているというのか?
「め、メチャクチャTUEE~…俺様の最高傑作をぶっ飛ばすなんて、あのメソメソ野郎はほんとに人間か!?」
一方、ランボーグの運転席で派手に転げまわったカバトンが起き上がる。彼もサンライトの力に驚愕していた。
「ちくしょう…!やはりアイツをぶっ倒すにはこれを使うしかないのねん…!」
カバトンはこちらに向かってくるサンライトを見て切札を使うことを決断した。
「ランボーグ!奥の手なのねん!!」
カバトンの命令と共に、電車ランボーグを纏っていたオーラがより禍々しい赤黒い色に変わり、頭部左右に鋭い角が生え目が吊り上がり、全身の装甲が禍々しい形へ変化する。
「ランボォォォグゥゥゥーッ!!!」
より凶悪な見た目となった電車ランボーグは雄たけびと共に全身に漲るエネルギーを爆発させた。その凄まじい衝撃波は、ランボーグにとどめを刺そうとしたサンライトを一瞬で吹き飛ばした。
「ひろがる…!うっ…ぐぁああっ!?」
ビルの壁に叩きつけられたサンライトは、あまりの衝撃に意識が飛びかけた。
しかし何とかこらえて起き上がりランボーグを見据える。
敵の体表にはバチバチとスパークが走り、先ほどまでとは比較にならない威圧感を放っていた。
「これがお前の本気の姿か?いいぜ、相手になってやるよ!」
「!?ダメですハルトさん!!一旦離れて!!」
スカイがサンライトを止めようと叫ぶが彼の耳にはとどかない。ランボーグに突撃するサンライト。それを迎え撃つように、敵は全身から無数の赤い稲妻をサンライト目掛けて放出した。
「!?っくぅぅぅ…!!」
咄嗟に盾を召喚し攻撃を防ぐサンライト。辛うじて防げたが、あまりの威力にサンライトの体勢が空中で崩れる。その隙に電車ランボーグは目にもとまらぬスピードでサンライトに突進し、彼を跳ね飛ばした。
「うぉあああーっ!?」
またしてもビルの壁に叩きつけられたサンライト。体中に激痛が走り、意識が飛びそうになる。
「げほっ!ごほっ!す、凄まじいパワーだぜ…!」
また電車ランボーグが突っ込んできたので、サンライトはその攻撃をジャンプで躱す。そして向かいのビルの壁に着地し飛び上がると、再びこちらへ突進してきた電車ランボーグに拳を振り下ろす。
しかし、サンライトの攻撃は敵の拳に阻まれ弾かれてしまう。そこへ追撃の左フックがサンライトの体に直撃し、勢いよく吹き飛ばされた。
「ぐぁぁぁ!?」
今度はサンライトが地面に叩きつけられた。彼の体はアスファルトを砕きながらゴロゴロと地面を転がっていく。
「そんな!?サンライトが!!」
あのバーガーショップランボーグの巨体をパンチ一発で地に沈め、軽々持ち上げるほどの怪力を誇るサンライトが、初めてパワー負けした瞬間である。
「ギャーッハハハ!思い知ったかメソメソ野郎!どうだ!お前なんかより、俺様の方がTUEEEんだ!!」
カバトンは勝ち誇ったようにサンライトに向かって叫ぶ。
「さあランボーグ!メソメソ野郎に引導を渡してやるのねん!」
カバトンの号令と共に、ランボーグはサンライトに止めを刺すべく突進する。
「スカイ!これ以上は…!」
「はい!ハルトさんを助けに行きましょう!」
ここで黙って見ているわけにはいかない。
サンライトを助けにいこうと、スカイとプリズムは彼の元へ向かおうとした。
「まだくるのねん…?もう寝てろ!!このお邪魔虫どもめ!!」
電車ランボーグから放たれる赤黒い稲妻がスカイとプリズムを攻撃する。
「「キャァァァーッ!!」
電流を浴びた二人は吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「える!えるぅ!!」
地に伏せた二人の元へエルが飛んできた。
エルはスカイとプリズムを目に涙を溜めながら呼びかける。
「何度も何度も立ち上がって、いい加減目障りなのねん。ランボーグ!二匹まとめて潰してやるのねん!」
カバトンはスカイとプリズムにとどめを刺すよう命令する。
それに従ってランボーグは二人目掛けて拳を振り下ろした。
「えるぅ~!」
エルが二人を庇うように、ランボーグの前に立ちはだかる。
「あっ!しまった!プリンセスが!やめろランボーグ!!」
このままではエルまで巻き添えになる。
カバトンはランボーグに攻撃を中止するよう指示したがもう遅い。
アンダーグエナジーの力を纏った巨大な拳がエルの体に振り下ろされるその瞬間ー。
「うぉあああーっ!!」
なんとか起き上がったサンライトはエルを庇うように飛び出した。
「みんなに手を出すんじゃねえええ!!」
そして右手に浄化の力を込めて必殺技を発動する。この技のデメリットは百も承知だが、友達に危機が迫っている。出し惜しみしている場合ではない。
「ひろがる!サンライトバスタァァァ!!」
拳を振り下ろしたサンライトの体を炎のオーラが包み込み、巨大な拳を形成する。それがランボーグの拳と激しくぶつかり合う。
「ランボォォグゥゥ!!」
しかしランボーグも負けじとさらに力を解放し、パンチの威力を底上げしてきた。両者の力が拮抗し、辺り一帯が振動する。
「負けて…たまるかぁぁぁ!!」
雄たけびを上げながら更に拳に力を込めるサンライト。その思いに答えるようにサンライトバスターが徐々にランボーグを押し返す。そして遂にサンライトバスターがランボーグの攻撃を打ち破った。
「ランボォォグゥゥ!?」
ランボーグは悲鳴を上げて吹き飛び、背後の建物に激突する。
「はあ…はあ…エル、大丈夫か…?」
「えるるぅ…」
どうにかエルを守ったサンライト。しかし今まで受けたダメージが蓄積しており、フラついている。
一方、吹き飛ばされたランボーグは瓦礫の中から起き上がり、怒りの形相でサンライトを睨みつけてくる。
「マジかよ、まだやる気かよ…!」
焦るサンライト。流石のサンライトバスターも、超強化したランボーグを倒すことはできなかったようだ。
「ち、ちくしょう…この期に及んでなんて馬鹿力なのねん!」
運転席にいるカバトンが全身ボロボロになりながらも起き上がり悪態をつく。
「でも助かった…プリンセスまでぺしゃんこになったら俺様も処分されるとこだったのねん…礼を言うのねん、メソメソ野郎」
「お前に礼を言われたって嬉しかねえよ…ハァハァ…うっ!?」
カバトンに文句を言った直後、サンライトの体からガクッと力が抜ける。サンライトバスターを使った影響でパワーダウンしてしまったらしい。それでなくてもこれまでの攻撃でかなりのダメージを受けているというのに。
対するランボーグはまだ強化形態を維持したままだ。あの状態ではこちらの攻撃が通用しないうえに、接近しようにも電撃や衝撃波で返り討ちに遭ってしまう。
「二人とも、大丈夫か!?」
サンライトは後ろにいるスカイとプリズムに声をかける。
「はい…なんとか…」
「大丈夫とは言えないけど…生きてるよ~」
スカイとプリズムもフラフラと立ち上がる。
3人ともボロボロで、次の攻撃を食らったらただでは済まない。
「お前ら、もう立っているのもやっとなのねん。ギャーッハハハ!これは今度こそ勝ったも同然なのねん!」
カバトンは今度こそ勝利を確信し高笑いする。
「お前ら!いい加減降参してプリンセスを渡すのねん!さもないと…」
電車ランボーグの角が変形し、先端にエネルギーが集約されていく。
「俺様のランボーグのTUEEE一撃で、お前らをまっ黒焦げにしてやるのねん!!」
あのランボーグの角に貯まったエネルギーが放たれた瞬間、サンライト達は跡形もなく消し炭にされるだろう。サンライトの盾もあの怪物の一撃に耐えられるかはわからない。
(やっぱり勝てなかった…きっとあの夢の通りになるんだ…)
絶体絶命の状況の中、スカイは目に涙を浮かべながら諦めかけていた。
(でも、最期にハルトさんと仲直りができてよかった…)
それだけが唯一の救いだとスカイは思った。そんな彼女にサンライトが声をかける。
「まだ諦めるのは早いぞ、スカイ」
「え…?」
顔を上げるスカイ。彼女の目には自分に微笑むサンライトの姿があった。散々ダメージを受けて立っているのもやっとなのに、その表情に絶望の色はない。
「あいつの攻撃は俺が塞ぎ切ってやる。その後、プリズムと二人でランボーグにとどめを刺してくれ」
「えっ!?ですが、あのランボーグに私たちの攻撃は…!」
「さっきから奴のアンダーグ・エナジーの消耗が激しい。あのパワーアップ、そんなに長くは持たないはずだ」
特殊なスカイトーンを持つサンライトだけにわかることだが、電車ランボーグのアンダーグ・エナジーの出力が強化直後と比べてがた落ちしている。奴の強化は通常時や特急形態よりもエネルギーの消耗が激しいのだろう。
そんな状態であの一撃を放とうものなら、その反動であの怪物は身動きがとれなくなるはずだ。
「だからあいつの攻撃は俺が絶対に止める!スカイ!プリズム!俺の後ろに下がれ!」
「サンライト…うん、わかった!スカイとエルちゃんも早く!」
プリズムはスカイとエルを連れてサンライトの後ろに立った。
サンライトも盾を巨大化し、敵の攻撃に備えるべく盾を構える。
「でも…ハルトさん…!!」
「大丈夫だ!!」
涙ぐみながら心配そうに叫ぶスカイを、サンライトは自信に満ちた表情で答える。
「言っただろ…今度こそスカイの力になるってな。だから、俺を信じてくれ…!」
「ハルトさん…!」
サンライトの言葉を聞いたスカイの目から大粒の涙がこぼれる。彼だってボロボロのはずなのに、それでも自分のことを気遣ってくれている。その優しさに彼女の胸が熱くなった。
「スカイ…サンライトなら、きっとやってくれるよ!」
「える!えるぅ!」
プリズムもスカイの手を握りながら励ます。エルもスカイを励ますように笑いかけた。
「当たり前だ!せっかくスカイと仲直りできたのに、こんなところで終わってたまるか!」
「ましろさん…エルちゃん…ハルトさん…!」
皆に勇気づけられたスカイの瞳に再び希望の光が灯る。
「はい…私もハルトさんを信じます!」
涙を流しながらも、スカイは笑顔で答えた。それを見たサンライトは嬉しそうに笑うと、表情を引き締めランボーグの方へ振り返る。
「そういうわけだカバトン!降伏する気はさらさらねえ!撃ちてえならご自由にどうぞだ!」
「はぁっ!?お前正気か!?このランボーグの攻撃を受けたら、お前らみんな吹っ飛ぶんだぞ!?」
「御託はいいからさっさと撃ちな。なんなら逆に弾き返してやるよ。それともおじけづいたかこのチキン野郎!…ああ、お前は豚だったか」
「こっこっ…このメソメソ野郎の分際で!上等なのねん!お望み通りくたばるがいいのねん!!」
カバトンはエルがサンライト達と一緒にいるにもかかわらず、電車ランボーグにとどめの一撃を放つよう指示した。超特急モード最強の必殺光線が放たれる直前、サンライトは盾を構えた。
「そうだ…俺は負けない!ソラやましろやエルと…大切な友達と、まだまだやりたいことがたくさんあるんだ!!」
自分が終わる場所はここじゃない。
ましろの雲パンを食べたいし、ヨヨとまたお茶をしたい。
あげはと久しぶりにお出かけもしたい。
エルを新しい一発ギャグで笑わせたい。
そして、ソラと一緒にまた朝日を見に行きたい。
大切な家族や友達と、もっとたくさん思い出を作りたかった。
「だからこの力で、絶対に皆を守って見せる!!」
サンライトは強い決意と共に盾を前に突き出した。そんなサンライトの後ろ姿を見たエルは、何かを決意したかのような表情を浮かべると、大きく息を吸い込んでこう叫んだ。
「ぷいきゅあああ!!」
エルが大きな声で「プリキュア」と叫ぶ。それに答えるようにサンライトのスカイトーンが金色の輝きを放ち始めた。
「こ、これは一体!?」
突然の出来事に驚くサンライト。その瞬間、彼の脳裏にある光景が浮かび上がった。
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暗雲立ち込める空の下、とある平原で金色の髪とドレスを纏った少女が、女の子を庇うように立っている。彼女の前には巨大な赤い竜のような怪物がおり、勝ち誇った表情で少女を見下ろしていた。
「ふん、これがプリキュアの力か?てんで大したことないじゃねえか…」
「はあ…はあ…!」
怪物の圧倒的な力の前に、金髪の少女は満身創痍の状態だ。彼女が手にもつ巨大な盾も、怪物の猛攻でボロボロになっている。
「とんだ期待はずれだったな…もういい、妹ともどもあの世へいきな!!」
怪物はそう言うと口から巨大な炎を少女達目掛けて吐き出した。炎は二人を飲み込まんと少女へ迫る。
「お、お姉ちゃん!私の事はいいから逃げて…!」
「大丈夫だよ、ツキ…!」
恐怖に震える妹を励ますように金色の少女は微笑むと、迫りくる業火に向かって盾を構えた。
「一番星から預かった力で、貴方を守って見せるから!」
そして彼女は妹を守るべく、ありったけの力を開放する。
「ヒーローガール!シャイニングサン・ディフェンド!!」
少女の盾から金色に輝く巨大な太陽の結界が展開され、怪物の放った炎を受け止めた。そして眩い光と共に敵の攻撃をかき消してしまった。
「な、何だと!?」
予想外の事態に驚愕の表情を浮かべる怪物。
「お、お姉ちゃんすごい…」
そしてツキと呼ばれた少女も、姉の勇姿を目に焼き付けながら感嘆の声を上げる。
「これが私の力よ、悪い竜ちゃん」
必殺技を解除した少女は怪物に向かって告げる。
「ほう、ちったぁやるじゃねえか…お前、名はなんて言った?」
赤い竜は、自身の炎を防ぎ切った少女に少し興味を抱いたのか、彼女に名を尋ねる。
「あなた物覚えも悪いのね。でもいいわ、もう一度名乗ってあげる」
少女は竜に呆れながらも、凛とした声で名乗りを上げた。
「私の名前はキュアシャイニングサン!妹たちとスカイランドの平和を守るヒーローよ!」
キュアシャイニングサンは堂々と名乗ると、竜に向けて指を突き付けた。不敵な笑みを浮かべる彼女の強い眼差しは、まるで太陽のように輝いていた。
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(今のは…一体…?)
サンライトの意識が現実に戻る。今の光景は、ソラたちがスカイランドに来た頃に彼のスカイトーンが見せたものと似ていた。だが、先ほど見た金髪の少女は何者だろうか?
サンライトは思案する。そして思い出した。
(あれはヨヨさんの本に乗っていた、昔スカイランドを救ったプリキュアの片割れ…!?)
サンライトが見た少女はヨヨが調べた古本に書いてあった、太陽と盾のプリキュアにそっくりだった。そのプリキュアが戦ったという竜の怪物の姿もあった。状況的に、サンライトはスカランドの言い伝えの一部を目撃したらしい。
(それにしても、今見た光景に何の意味が…!?)
その直後、サンライトの脳内に彼女の技のイメージが流れ込んできた。
(これは…まさか俺にも使えるのか?あの伝説のプリキュアが、妹を守った技を…!?)
ふとこの光景を見せたスカイトーンとエルを見比べる。
エルはサンライトに頷き、スカイトーンも金色の光を放ち続けていた。
「また助けられたな…」
サンライトはエルに微笑みかけると、眼前に迫るランボーグのビームに再び向き直る。
「ありがとう…それとお前の力を借りるぞ…キュアシャイニングサン!!」
サンライトは特大のビームを放った電車ランボーグに向かって盾を構える。
そして金色の少女…キュアシャイニングサンと同じ技の名前を叫んだ。
「ひろがる!!シャイニングサン・ディフェンドォォォー!!!」
サンライトの盾から彼女に似た太陽のエンブレムを模した巨大な結界が展開された。
それは電車ランボーグから放たれた光線を受け止める。
「なっ!?なんだとぉぉぉーっ!?」
渾身の力を込めて放った必殺技が受け止められ、カバトンは動揺する。
しかしサンライトの盾は受け止めるだけにとどまらない。
「オラァァァーッ!!!」
サンライトは盾構えたままランボーグに向かって突撃した。
それと当時に太陽の結界も敵の放ったビームごとランボーグを押しつぶした。
「ランボォォォグゥゥゥ!!」
巨大な太陽の結界に押しつぶされたランボーグは、ビルにめり込み身動きが取れなくなった。
そしてサンライトも力を使い果たしたように膝をつく。
「はあ…はあ…やってやったぜ、ざまあみろ!」
「サンライト!大丈夫!?」
「ハルトさん!しっかり!!」
「えるぅ~!」
プリズム、スカイ、エルの三人がサンライトの元に駆け寄る。
「ごめん二人とも…もう限界みたいだ…あとは…任せた…」
その言葉と共にサンライトの変身が解け、元のハルトの姿に戻りその場に倒れた。
「ハルトさん…ハルトさん!?いや…いや!!返事して!!」
スカイが目から大粒の涙を流しながら、ハルトにすがりつく。
「ダメですハルトさん!お願い…目を開けて…!!」
「大丈夫だよ、スカイ」
プリズムが泣きながらハルトを揺り起こすスカイにそっと寄り添う。
「ハルくん、疲れて寝ちゃっただけだから」
「え?…あ!」
プリズムの言葉でスカイはようやくハルトが無事だとわかった。
彼は疲れたように眠りについてはいるが、確かに息をしている。
「よかった…ハルトさん…!本当に良かった…!」
「える!える~!」
スカイは安堵して、再びハルトの体を抱きしめた。
エルは嬉しそうに笑い、プリズムも優しく微笑んだ。
「ハルくんはすごいよね…友達を守るために、自分の運命だって変えちゃうんだから!」
「はい…本当にハルトさんはすごい人です」
スカイは涙をぬぐいながら、眠っているハルトを優しく見つめた。
「でもやっぱりハルトさんのことが心配です。彼は私たちの為に無茶ばかりするから…」
「そうだね、私もそう思うよ…」
プリズムも同意するように苦笑する。
「けどスカイだってハルくんのこと言えないと思うよ?一人で戦うとか言って、ランボーグに飛んでった時は本当に焦ったんだからね?」
「うっ…すみませんでした。面目ないです」
スカイはプリズムに申し訳なさそうに頭を下げた。
「だから、私も二人の力になるよ」
「えっ…?」
スカイは驚いた表情を浮かべ頭を上げる。自分を優しい表情で見つめるプリズムと目が合った。
「私もスカイと同じ気持ちだよ。ハルくんのことが心配でほっとけない。けど、私はスカイにも無理してほしくない…だって、あなたも私の大切な友達だから」
そう言ってプリズムはスカイに手を差し伸べた。
「私は二人と違って強くはないけど…それでも二人の力になりたい、助けたいって思うんだ!それって、一緒に戦う理由にならないかな…?」
「ましろさん…」
スカイは目を大きく見開きプリズムを見つめる。彼女だって戦うことへの恐れや不安はあるだろう。それでもハルトやソラを助けたい。大切な家族や友達の力になりたいと歩み寄ってくれようとしている。そんな彼女の優しさにスカイの心は温かいもので満たされた。
「いいえ、そんなことはありません…!」
スカイは差し出されたプリズムの手を取りしっかりと握り返した。
「私も同じ気持ちです…だから力を貸してください!プリズム!」
「スカイ…やっとその名前で呼んでくれたね!」
スカイとプリズムは微笑み合う。するとガラガラと音を立てながら、ランボーグが崩れた瓦礫の中から姿を現した。
「今度は私たちの番だね、スカイ」
「はい!ハルトさんの頑張りを無駄にはしません!」
そして二人はハルトとエルを庇うように前に出て並び立つ。彼女たちの表情に迷いはなく、瞳には強い意志が宿っている。
そんな様子を見つめていたエルは、思い切り息を吸い込んで力いっぱい叫んだ。
「ぷぃきゅあー!!」
エルが本日二度目の「プリキュア」と叫ぶと、彼女の両手から二つの光が解き放たれた。
それはスカイとプリズムの元へと舞い降り、新しいスカイトーンに変化したのである。
「これは…エルちゃんの新しい力?」
青とピンク、二つの色が重なり合ったスカイトーン。
スカイとプリズムは頷きあい、新しいスカイトーンをミラージュペンに装着した。
「お、おい…あれは一体何なのねん?」
一方カバトンは、エルが生み出したスカイトーンを見て嫌な予感を感じていた。
「あれは止めないとヤバい気がするのねん!おいランボーグ!早くアイツらに止めを刺すのねん!!」
「ら、らら…ランボーグゥ…」
カバトンは急いで命令するが、ランボーグは思うように動けずにいた。先ほどの大技を使った反動と、サンライトの必殺技を立て続けに喰らったことでダメージが限界にまで達しているのだ。
「敵はもう身動きが取れない…今ですプリズム!」
「うん、やろう!スカイ!」
スカイとプリズムは手を繋ぎ、お互いのスカイミラージュを天にかざした。
「スカイブルー!」
「プリズムホワイト!」
エネルギーを装填された二つのスカイミラージュは、青と桃色のエネルギーを頭上へ照射。
スカイミラージュの盤面を模した円盤状の物体が上空に出現する。
「らっ…ランボォォォグゥゥゥー!?」
電車ランボーグは円盤から放たれた光に捕らえられ身動きが取れなくなる。
そしてそのまま円盤の中に吸い寄せられる。
「ひっ!?ここまでか…カバトントン!」
敗北を悟ったカバトンは呪文を唱えて運転席から脱出した。
「「プリキュア!アップドラフト・シャイニング!!」」
そして電車ランボーグが円盤に吸い込まれたその直後、中で大爆発が起こり爆風が外にまで噴き出る。スカイとプリズムはそれを背に受けながら前へ滑り出すように去っていく。
「スミキッター…」
ランボーグは浄化され、元の電車に戻った。
戦闘の余波で破壊されたビルも元通りになり、街に平和が訪れたのであった。
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「えるぅ~!えるぅ~!」
「う、ううん…?」
眠っていたハルトは、頭を撫でられる感触を感じて目を覚ました。
目を開けると自分をニコニコ見つめるエルと目が合った。
「あれ?エル…?」
「えるえる~♪」
エルはご機嫌な様子でハルトの頭を撫でていた。
「ハルトさん、眼が覚めましたか?」
「おはようハルくん、大丈夫!?」
エルの傍にいるソラがハルトに声をかける。ましろも心配そうにハルトを見つめていた。
「ソラ、ましろ…ああ、俺は大丈夫だよ…」
ハルトがそう答えると、ソラとましろはホッと胸をなでおろした。
「そうですか…よかった!ハルトさんが目を覚ましてくださって安心しました!」
「ホントにね。ハルくんこのまま起きないんじゃないかって、皆心配してたんだよ?」
「え?いや、寝てたくらいでそんな大げさな……!?」
意識がはっきりしてきたハルトは、自分の後頭部に温かくて柔らかい感触がするのに気づいた。そしてそれがましろの太ももだとわかると、慌てて体を起こした。
「うぇぇ!?俺なんでましろに膝枕されてんの!?」
「ひゃあ!?は、ハルくん!?急に起き上がったらビックリするよ~!?」
突然起き上がるハルトにましろも驚いて肩をビクリと震わせた。
「ていうかここどこ…?」
「公園です。あの戦いの後、私たちはハルトさんを連れてここへ来たんです」
「あの戦い…そうだ!ランボーグは!?」
ソラの言葉でようやく全てを思い出したハルトは、周辺をキョロキョロと見渡すが、ランボーグはどこにもいない。ちなみに今ハルトたちがいる場所は、街から少し離れた人気のない公園だった。気絶した自分はソラ達にここへ運ばれ今までましろに膝枕されていたらしい。日も暮れはじめており、空が夕焼け色に染まりかけている。
「もしかして…もう戦いは終わった?」
「うん!エルちゃんから貰った新しい力でやっつけたよ!」
ましろはエルから授かったスカイトーンWシャイニングを嬉しそうに見せた。
「そっか…俺達みんな、エルの不思議パワーに助けられたわけだな」
「はい。ですがあのランボーグに勝てたのは、ハルトさんのおかげでもあります」
「そうだね。ハルくんが駆け付けてくれなかったら、今頃どうなってたかわからないよ」
ソラとましろはハルトに感謝するように微笑みかけた。
「ハルトさん、私たちを助けてくださってありがとうございます!このご恩は一生忘れません!」
「私からもお礼を言わせて!ハルくん、助けてくれてありがとうだよ!」
「あ、いや、どういたしまして!そんな、友達を助けるなんて当たり前だし…」
二人に改めて感謝されて、ハルトは気恥ずかしくなり頬をポリポリと掻く。
「それに、皆を助けることができたのは、シャイニングサンのおかげだから…」
「しゃいにんぐ…さん…?」
ハルトがポツリと呟いた「シャイニングサン」という名に、ソラもましろも首を傾げた。
「それって、さっき私たちを守るためにサンライトが使った大きな盾の名前だよね?」
「あの盾はすごかったです!パワーアップしたランボーグの一撃を防いで見せたんですから!」
「ホントだよね!あれもエルちゃんのプリンセスパワーのおかげかな?」
「えーっと…まあ、そのことについては追々話すよ」
ハルトは苦笑いを浮かべながら答えを濁した。自分に起きた出来事について、まだ整理がついていないのだ。
「じ、じゃあ、そろそろ帰ろうか!日も暮れてきたみたいだし、ヨヨさんも俺らのこと心配してるんじゃないかな~?」
ハルトはわざとらしい口調で話を切り上げと、二人に背を向け家に帰ろうとする。が、ソラとましろに左右から腕を掴まれ、引き留められてしまった。
「え…?なになに?」
「ハルトさん、もう少しだけお時間よろしいですか?」
「時間?大丈夫だけど、どうしたの?」
「実は家に帰る前に、ハルくんと寄りたいところがあるんだよ。ね、ソラちゃん!」
「はい!そうなんです!というわけで、ついて来てください!」
「え!?寄りたいとこってどこ!?ていうか二人とも離して!?」
ハルトは抵抗するが、二人は強引にハルトの腕を引っ張りながら歩き出した。そして二人に連れてこられたのは、ましろの行きつけの『Pretty Holic』だ。店につくなりソラとましろはある商品を探しに行った。
「な、何だよ一体…」
解放されたハルトは気まずい表情を浮かべながら二人の背中を見る。もう閉店間際のせいか周囲にお客さんはいなかったが、それでも女の子向けショップに男一人というのはなかなか落ち着かない。
「ましろさん!ありました!」
「ホントに!?よかった~!まだ残ってたんだ~!」
するとお目当てのものを見つけたらしいソラとましろが戻ってきた。ソラの手には、以前ハルトがプレゼントしたのと同じ手帳が握られていた。
「ハルトさん、これ受け取ってください!」
「ええっ!?」
ハルトは思わず声を上げて驚いた。まさかこのタイミングでプレゼントされると思っていなかったからだ。
「えっと…理由を聞かせてくれる?」
「私たちを助けてくださったお礼と…仲直りの証に…」
そう言うソラの顔は赤く染まっていた。多分友達に、それも異性にこういう贈り物をするのは初めてなのだろう。
「けど、ソラはこの世界のお金を持ってないよな?」
「お代なら私が払うから大丈夫だよ!だからこれは私とソラちゃんからのプレゼントってことで、受け取ってくれないかな?」
ましろもにこやかにハルトに笑いかける。が、ハルトはまごついていた。この手帳はどう見ても女の子向けのデザインだ。これを所持するのは正直恥ずかしい。そもそも何故二人が突然自分にプレゼントを渡そうとするのかわからなかった。
「どうしてこれを俺に…?」
だからハルトは二人に理由を尋ねてみた。するとソラとましろはお互いに顔を見合わせると笑みをこぼす。そして二人はハルトに向き合いこう言った。
「「本物のヒーローを、見てしまったから(です)(だよ)!」」
二人の言葉にハルトは一瞬呆気に取られた。だが同時に胸が熱くなるのを感じた。夢と現実で自分を救ってくれたソラ。幼い頃からずっと傍にいて支えてくれたましろ。ハルトにとってヒーローともいえる二人に認めてもらえた。それがたまらなく嬉しかった。
「ありがとう二人とも…大事にするよ…!」
ハルトはソラから手帳を受け取ると、二人に満面の笑顔を向けお礼を言った。ソラも嬉しそうに微笑み、ましろと彼女に抱っこされたエルもニコニコと笑顔を浮かべるのであった。
「試練を乗り越えたわね、ハルトさん」
そんなハルト達の様子を、ヨヨがミラーパットの映像越しに見つめながら呟いた。彼女は家の庭のガーデンチェアーに腰掛けている。
「
ヨヨはとある人物に語り掛けるように呟いた。
「ねえ、貴方は今どこにいるの…?」
夕焼けを寂し気に見つめるヨヨの脳裏に、13年前赤子を預けて去っていくハルトの父親の後ろ姿が浮かび上がっていた。