ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第2話:ボーイ・ミーツ・ガール

 

翌日の昼過ぎ、ハルトはましろと一緒にヨヨに頼まれたお使いをこなすべく市街へ向かっていた。

 

(昨日はとんでもない夢を見たなぁ…)

 

彼はましろの隣を歩きながら昨日見た夢の出来事を振り返る。

 

昔見たらしい絵本にそっくりの闇に包まれた世界。

黒い衣装を身にまとう自分。

迫りくる黒い瘴気と憎しみに染まった声。

そして自分を助けてくれた少女。

 

その夢は現実にはあり得ないものだったが、まるで実際に起こった出来事のようにハルトの記憶に焼き付いていた。

 

(あの夢、何か不吉なことが起こる前触れとかじゃないよな?妙にリアルな夢だったし。それにあの女の子…)

 

ハルトは夢の最後で自分を助けてくれた少女を思い出す。ヒーローと名乗る、澄み渡った水色の髪の少女のことが強く印象に残っていた。

 

(あの子はいったい何者だったんだ?あの子が助けてくれなかったら、もしかしたら今頃俺は…)

 

不吉な考えが頭をよぎる。そんなとき隣を歩いていたましろがハルトに声をかけてきた。

 

「ハルくんどうしたの?何か考え事?」

 

ましろは心配そうな表情でハルトを見つめる。今回見た夢の事はまだ彼女に伝えていない。

 

「悩んでることがあるなら遠慮なく話してね?ましろお姉ちゃんはいつでも相談に乗るよ!」

 

「大丈夫。そんなたいしたことじゃないよ。あとましろは俺のお姉ちゃんじゃねーから」

 

ハルトはまたお姉さんぶろうとするましろに軽くツッコミを入れると、彼女の持っているメモ書きを指さし話題をそらそうと試みる。

 

「それそれ。そのメモに書いてある商品がどこに売ってあるのかなーって考えてただけだよ」 

 

「ああ、これのことね~」

 

ましろが困った表情をしながらメモ書きをみる。

祖母から受け取ったメモにはローズオイル、シナモンスティック、干しカエルと怪しいラインナップが書いてある。

 

「ハルくん、干しカエルなんてどこで売ってると思う?」

 

「知らねえよ。てか前二つはさておきこれはお使いで頼む品じゃないだろ」

 

ましろの疑問にハルトは呆れ顔で返す。干しカエルなんて珍妙なものが近所で買えるわけがない。仮に買えたとしてヨヨはこれらを何に使うつもりなのだろうか。ハルトはもちろん、ヨヨの孫であるましろも見当がつかなかった。

 

「なあましろ、実はヨヨさんの正体って魔女だったりする?」

 

そんな中、魔女帽子とマントを着用し怪しい儀式を行うヨヨの姿を想像したハルトがましろに尋ねる。魔法の鍋をかき混ぜながら微笑むヨヨの姿はかなり似合っていた。

 

「え!?魔女だったりしないよ!私のおばあちゃんは普通のおばあちゃんだよ!?」

 

それを聞いたましろが手をぶんぶん振りながら否定する。

 

「部屋にいる時は魔法の実験をしてたり、魔女界に繋がるデカい鏡を隠し持ってたりとかは…」

 

「ないない!絶対にないから!もうハルくんったら変なこと言ってると置いていくよ!」

 

「あ、ごめんごめん!待ってくれましろ!」

 

ハルトの妄想に呆れたましろはスタスタと先へ進んでしまう。

そんな彼女をハルトは走って追いかけた。

 

(今はちゃんとお使いをこなさないと。ましろの機嫌を損ねるのはマズいからな~)

 

夢の事はいったん後回しにして、まずはお使いをしっかりこなすことに集中するハルトであった。

 

 

―――――――

 

 

「ジー…」

 

たまたま通りかかった女の子向けのコスメ店『Pretty Holic(プリティ・ホリック)

 

そのショーウィンドーに並べられた手帳をじっとみつめるましろ。

 

「これがましろの欲しい手帳?」

 

「そうだよ!これを買うためにコツコツお小遣いを貯めてるんだ~!」

 

ましろは目をキラキラさせながら嬉しそうに話す。彼女の視線の先にあるものは『Pretty Holic Stationery(プリティホリックステーショナリー)』というタイトルの手帳。ラメでキラキラと輝きリボンや天使の羽の模様がついている、いかにも女の子が好きそうなデザインだ。

 

「ねえハルくん、この手帳とっても可愛いと思わない?」

 

「確かに可愛いけど、これを学校に持っていくのは勇気がいるなぁ…」

 

ちょっと子供っぽいし…と野暮な事は心の中で呟きながら、ハルトはプリホリの店内をチラッと見た。可愛い文具や小物がたくさん並べられている。女の子のお客さんが多く、みんなましろのように楽しそうに商品を見て回っている。

 

「なあ、そろそろ行かない?ヨヨさんのお使い済ませてからゆっくり見ようぜ」

 

ハルトは今だ手帳に見とれているましろを急かす。今この場に男は自分一人だけ。場違い感と恥ずかしさから早くここを離れたい気分だった。

 

「うんそうだね。そろそろいこっか」

 

ようやくショーウィンドーから目線を外したましろと店を後にした。

 

「まずはどれから買いに行けばいいかな?」

 

ましろはメモを取り出すとう~んと考えこみ始める。

 

「まずは一番見つけやすそうな物から探してみる?干しカエルを扱ってる店が近所にあるかわからないし」

 

「じゃあまずはシナモンスティックを買いに行こ!これならお菓子の材料とかで売ってるよ」

 

「決まりだな。えーっとここから近い店は…」

 

その時、ハルトの首に下げたアクセサリーが突如光りだす。神秘的な光を放ちながらキラキラ輝いている。

 

「は?ええっ!?なにこれ!?」

 

「うわぁ!ハルくんのアクセサリーが光ってる!?」

 

持ち主のハルトも異変に気付いたましろも驚きの声を上げる。

 

「きれいだね~。ハルくんのアクセサリーこんな光るのはじめて見たよ。一体なにをしたの?」

 

「何もしてない!なんか急に光りだして…」

 

言いながらアクセサリーに手を取るハルト。すると今度は自分の頭の中に映像が浮かんでくる。

青色の髪の少女が、紫色の髪をした女の子の赤ん坊を抱きながら亜空間をさ迷っている。その少女の声も聞こえ始めた。

 

 

―――もう大丈夫です。パパとママのところに、おうちに帰ろう…

 

 

少女は赤子を優しく撫でながら語りかける。

 

(これは一体なんだ!?ていうかこの女の子、どこかで見たような気が…?)

 

「は、ハルくん大丈夫…?」

 

心配そうに声をかけるましろだが、ハルトはそれどころではなかった。

 

再び頭の中の光景へと意識を向ける。やがて少女の目の前に光り輝く出口が開いた。少女はきゅっと目をつむり、出口へ飛び込んだ。

 

その直後、何かの予感を察したハルトは空を見上げる。遥か上空に人影のようなものが見えた。

 

「まさかあそこにいるのか!?」

 

「ちょ、ちょっとハルくん!?」

 

先ほどみた青髪の少女がそこにいると確信したハルトは、自分を呼ぶましろの声を無視して一目散に駆け出した。

 

 

______

 

 

 

____

 

 

 

__

 

 

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

約1000メートルの上空に放り出された少女は現在地上の重力に従い猛スピードで落下していた。

ぐんぐん地上が近づいている。このまま地面に激突すれば自分も赤子ちゃんも無事では済まない。

 

それでもこの子だけは守りたい。そう思った少女は赤ちゃんをギュッと抱きしめる。

 

「おーいっ!!」

 

すると地上から誰かの呼ぶ声がした。少女は声のした方向を見ると、黒髪の少年がこちらを見上げながら走ってきている。まさか自分たちを助けようというのか?

 

「そこの人!危険です!来ないでください!!」

 

「ほっとけるわけないだろ!!」

 

ハルトはそう叫び返すと少女の落下予測地点に向かって全速力で走る。

 

「はあ…はあ…ハルくん待って…急にどうし…てっ!?えぇぇぇ!?なんなのこの状況!?」

 

一方遅れてやってきたましろは、空から降ってくる少女とそれに向かって走るハルトを交互に見ながらあたふたしている。

 

ハルトは数秒後には地面に激突する少女をどうやって救うか考えていた。

なんとか少女を受け止められないか。もしくは自分がクッションになればあるいは…。

 

(もう時間がない!)

 

考えている猶予はない。意を決して地面を蹴り上げで前方に向かって勢いよく飛び出す。

 

「間に合えっ!!」

 

少女に向かってダイブするハルト。伸ばした手は少女に触れることはできなかった。

何故なら赤ちゃんから不思議な光が放たれ、その光に包み込まれた少女と赤ちゃんが空中に留まったからである。

 

ほんの一瞬、受け止めるタイミングがずれたことでハルトの体は少女と地面の間を通り越した。

 

「…あれぇ?」

 

間抜けな声を出しながら、ふと後ろを振り返るハルト。

突然の出来事で思わず赤子を離した少女だが、ふたりとも不思議な力でゆっくりと地面に降下している。

 

彼女たちは助かったらしい。だが自分はそうはいかない。

 

「ぐぇぇっ!?」

 

ハルトは飛び出した勢いそのままに前方にある電柱に激突した。

 

「きゃああっ!ハルくぅぅん!?」

 

ましろは電柱にぶつかり倒れ伏すハルトを見て悲鳴を上げる。

一方無事地面に着地した少女は不思議な光を放ちながらゆっくり降りてくる赤ちゃんを腕に抱き直す。

 

「せ、セーフ…」

 

「きゃ~い♪」

 

安堵のため息をつく少女とはしゃぐ赤ちゃん。だが少女は先ほど自分を助けようとした少年の事を思い出し、今だ倒れ伏す彼のもとへと駆け寄る。

 

「ごっごめんなさい!!大丈夫ですかっ!?返事をしてくださいっ!!」

 

「はぁはぁっ…ハルくん~!だいじょうぶぅ~!?」

 

必死にハルトを揺り起こす少女と、息を切らしながらよろよろと駆け寄ってくるましろ。

 

「ああ大変です!早くお医者さんを呼ばないと!あっ!?そこのあなた!!」

 

「ほえぇっ!?」

 

少女に急に呼びかけられたましろは素っ頓狂な声を上げる。

そんな事はお構いなく少女はましろにツカツカと歩み寄る。

 

「すみません!実はこの人が私たちを助けようとして!!呼んでも返事がないし起き上がれないほど重傷のようで!!早くお医者さんを呼びたいのですがどこにいらっしゃるんですか!?」

 

「え、えーっと…」

 

「ごめんなさい!ビックリしちゃいましたよね!?実は私も相当ビックリしててぇ!?偶然誘拐現場に出くわしてこの子を追いかけて不思議な穴にえいやと飛び込んだら空の上にポコって!!それでピュ~~~~って!!」

 

「たっ…たいむぅ…」

 

少女のマシンガントークにたじたじになるましろ。今にも息が切れそうなのに、空から人が落ちてくるわ、幼馴染は大事故に遭うわの怒涛の超展開に頭はパンク寸前だった。

 

「はっ!?え?うぇええっ!?なんですかこの変な街!?あれっなんですか!?あれは!?もっもしかしてここって魔法の世界~~~!?」

 

「た、ターイムっ!!」

 

我慢の限界に達したましろは両手でTの字を作り、慌てふためく少女にタイムを要求した。

 

一方ハルトはゆっくり起き上がり絞り出すような声でポツリと呟いた。

 

「ましろ…ハンカチ貸して…鼻打った…」

 

鼻を抑えながら呻くハルト。

首に下げられたアクセサリーの光は収まり、代わりに滴る血でぽつぽつ汚れていた。

 

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