ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~ 作:零たん
スカイとプリズムが参戦し、ランボーグとの本格的な戦いが始まった。
「「ランボーグゥゥ!!」」
二体に増えた桜ランボーグは、両手から桜吹雪ビームを発射する。だがサンライト達はそれを即座に回避する。
「オラァァッ!!」
「てやぁーっ!」
そしてサンライトは盾をランボーグの片割れに投擲する。プリズムもそれに合わせるように光球を発射し、もう一体のランボーグを攻撃した。
「「ララァァ!?」」
攻撃を喰らって怯むランボーグたち。そこにスカイの必殺技が迫る。
「ヒーローガール!スカイパンチ!!」
青いオーラを纏ったスカイの鉄拳がランボーグに命中。続けて隣にいたもう一体のランボーグにも追撃のスカイパンチを叩き込んだ。
「「ランボォォグゥゥ!?」」
強烈な連続攻撃を受けランボーグたちは大きくのけ反った。だがこれでも浄化するには至らない。二体のランボーグはよろめきながらも体勢を立て直す。
「カバトンの言う通り、あのランボーグは相当しぶといみたいですね…」
スカイが苦々しげにつぶやいた。
「でもこっちが押してるよ!このまま一気にやっつけよう!」
プリズムがスカイにそう言うと、自身も必殺技を発動すべく両手に力を込め始める。スカイとサンライトも再びランボーグを攻撃しようと飛び出した。
「何してるのねんランボーグ!2体もいるんだからもっともーっと舞い散らせるのねん!」
焦ったカバトンが命令する。すると二体のランボーグが頭の桜から大量のエネルギー波を拡散させた。
「プリズム危ない!」
「任せろ!!」
スカイの声を聞いたサンライトがプリズムに向かって盾を投擲。巨大化したサンライトシールドが地面に突き刺さり、敵の桜吹雪ビームからプリズムを守った。だがサンライトとスカイは敵の攻撃で吹き飛ばされ、校舎の壁に叩きつけられた。
「スカイ!サンライト!」
「ギャーッハハハ!どんなもんなのねん!」
地面を転げるサンライトと校舎の壁にめり込むスカイを見て、カバトンが高笑いを上げた。
「よーし、この調子でプリキュアを…んんっ?何だアイツらは?」
カバトンは校舎の屋上から何者かがこちらを見ていることに気付いた。
「すげえ!あのプリキュアと怪物がこの学園で戦ってるぞ!」
「ちょっと軽井沢くん、危ないって!」
そこにいるのは軽井沢、るい、つむぎの三人だ。彼らは少し遅れてハルト達を探しに向かったところ、プリキュアがランボーグと戦っている現場を目撃したのである。今話題のプリキュアを撮影するチャンスだと思った軽井沢は、彼らを撮るべく屋上まで上がってきたのだ。そんな彼をるいは必死に止めようとしていた。
「アイツら何やってんだ!?巻き込まれたらどうする気だ!」
起き上がったサンライトが軽井沢達を見て顔をしかめる。
「あれはお前の知り合いか?余計なことされたら鬱陶しいから始末してやるのねん!いけランボーグ!」
命令を受けたランボーグの片割れは、屋上にいる軽井沢達を排除すべく飛び上がっていった。
「やべぇ!アイツ軽井沢のところに!」
「サンライトは軽井沢くんを助けに行って!こっちは私とスカイで何とかするから!」
「プリズム…わかった、行ってくる!」
サンライトはプリズムに向かって頷いた。そして地面に刺さったサンライトシールドを拾い上げると、軽井沢のいる校舎の方へ飛び立った。
「メソメソ野郎はあの連中を助けに行ったか。ギャーッハッハ!奴をお前らから引き離すことができたのねん♪」
カバトンはその場に残ったプリズムと、どうにか起き上がったスカイを見てほくそ笑んだ。
「お前ら二人じゃコイツには敵わねえ!さあ覚悟するのねん!」
勝ち誇ったように笑うカバトン。彼はプリキュアの中でサンライトが一番厄介な敵だと認識しており、スカイやプリズムのことは舐めているのだ。
「覚悟するのはそっちだよ!」
だがプリズムの瞳には強い意志が宿っている。どんなに強い相手だろうと、大事な友達や学園を守るために全力で立ち向かう覚悟だ。それは彼女の隣へ降り立ったスカイも同じである。
「そうです!勝負はここからです!」
スカイとプリズムは頷きあうと、再びランボーグと対峙し戦闘を再開した。
一方、屋上でプリキュアたちを撮影する軽井沢は興奮した様子でスマホのカメラを回していた。
「あんたいつまで撮ってるのよ!早く逃げないと危ないって言ってるでしょ!?」
「もうちょっとだけ!こんな近くでプリキュアを撮影できる機会はそうそうないから!」
るいが軽井沢に必死に呼びかけるが彼は聞く耳を持たない。るいに怒鳴られようが制服を引っ張られようが撮影をやめようとはしなかった。ネットでバズるチャンスをみすみす逃したくないのだろう。
「もう!キュアチューバーってみんなこんな感じなの!?いい加減にしてほしいんだけど!」
「でも軽井沢くんの気持ちもちょっとだけ分かるかも。私もキュアプリズムを間近で見られて嬉しいし、もう少し見学したいな~」
「いやつむぎもそっち側かい!?」
戦うプリズムをうっとり見つめながら呟くつむぎに、るいはガビーンとショックを受ける。
「キュアプリズムほんと可愛いよね~!この戦いが終わったらイラストのモデルになってほしいって頼んでみてもいいかなあ?」
「頼んでみれば?ダメなら後でプリズムのシーンを切り抜いた動画あげるから、それを参考にするといいよ」
「本当に!?ありがと~!前からキュアプリズムのイラスト描きたかったんだ~!」
「そうなんだ。あ、よかったらスカイも描いてくれる!?俺最近スカイ推しなんだ~!」
軽井沢とつむぎは、るいをそっちのけにして盛り上がっていた。そんな二人の姿を見て るいのイライラはピークに達してしまう。
「ああもう!二人ともいい加減にしてよね!?早く避難しないといつ戦いに巻き込まれるかわからな…!?」
そう言いかけたるいはギョッとした表情を浮かべる。ランボーグが自分達のいる屋上へ飛んできたからだ。側にいた軽井沢とつむぎも怪物の襲来に気づきみるみる顔色を変えていく。
「か、怪物がこっちに来る~!?」
「ほら言わんこっちゃない!皆早く逃げるよ!」
「う、うん!」
るいは軽井沢の腕を強引に引っ張りながら屋上の出口に向かっていった。その後をつむぎも慌てて追いかける。しかしランボーグに先回りされ退路を防がれてしまった。
「ランボォ~グゥ~!」
ランボーグは黄色い眼光を鋭く光らせ軽井沢たちを睨み付ける。怪物に睨まれた軽井沢たちはすっかり腰を抜かしてしまった。
「あ、あわわ…」
「どうしよう…これ絶対まずいよね?」
「だ、誰か助けて…!」
逃げ場を無くした3人は身を寄せ合う。ランボーグはそんな彼らに容赦なく襲いかかった。
「ランボォォグゥゥゥ!!」
「きゃあああっ!!」
ランボーグの拳が3人に振り下ろされる。そこへサンライトが間一髪で割り込み敵の拳を盾で受け止める。
「あっち行ってろ!この野郎っ!!」
そしてサンライトはランボーグの腕を抱き掴み、その巨体を豪快に投げ飛ばした。
「ランボォォォグゥゥゥ!?」
投げ飛ばされたランボーグは校庭に墜落し、地面を転がったあと伸びてしまった。
「な、何とか間に合った…」
「あんたは…キュアサンライト!?」
声をかけられたサンライトが振り返る。そこには地面にへたり込んでいる軽井沢達がいた。幸い3人とも怪我はないようだ。
「おいお前ら。ここで何してるんだ?」
「え、えーっと俺達は…」
バツが悪そうに顔を逸らす軽井沢。彼がスマホを急いで隠したのをサンライトは見過ごさなかった。
「おおかた俺らが戦ってるところをカメラに撮ってたんだろ?」
「は、はい…」
「…何でそんなことしたんだ?」
サンライトは軽井沢を睨みながら静かに問い詰める。彼の眼光に軽井沢は震え上がり、その両脇にいるつむぎとるいも涙目になる。
「う、噂のプリキュアが現れたからその…どうしても撮りたくなって…」
「バカ野郎!!」
サンライトは軽井沢を怒鳴りつけた。あまりの迫力に軽井沢達はビクッと身体を震わせる。
「お前自分がどんだけ危ない事してたと思ってるんだ!?これはヒーローショーみたいな見世物じゃねえ!命懸けの戦いなんだ!!」
サンライトは強い口調で彼らに言い放つ。
「もし俺が間に合わなかったら今頃3人仲良くぺしゃんこになってたところだぞ!そうなったらお前らの親兄弟や友達がどれだけ悲しむと思ってるんだ!?」
「は、はい!おっしゃる通りです!」
「すみませんでした!反省してます!」
「本当にごめんなさい!」
軽井沢は必死に頭を下げる。その巻き添えになったるいとつむぎも涙を流しながら謝っていた。
「…すまん言い過ぎた」
サンライトが気まずそうに謝罪する。3人の反応を見て流石にキツく言い過ぎたと思ったらしい。
「とにかく危険なことに首を突っ込まないでくれ。お前らに何かあったらソラやましろが悲しむからな。あと俺も…」
「えっ?」
軽井沢は首をかしげた。何故サンライトの口からクラスメイトのましろや、今日転入してきたばかりのソラの名前が出てくるのか分からなかった。隣のるいやつむぎも不思議そうにサンライトを見つめている。
ちなみに軽井沢がプリキュアを見つけたのはハルト達全員が変身を終えた後だ。なので幸運にもプリキュアの正体がハルト達であることは知られていない。
「ランボォォグゥ~!」
するとグラウンドの方からランボーグの唸り声が聞こえてきた。
「もう起きやがったか」
サンライトが忌々しそうに呟く。奴はまた軽井沢たちを襲うはずだ。その前に彼らを逃がさねばならない。
「三人とも、アイツは俺が何とかするから早く逃げな」
「わ、わかりました!」
サンライトに逃げるよう促された3人は慌てて退散しようとする。だがサンライトは軽井沢の持っているスマホを見て、まだやることが残っていたことを思い出す。
「おいかるい…じゃなくて眼鏡のお前」
「はい?俺のことですか?」
「そうだよ。そもそもお前以外に眼鏡いねーだろ?」
サンライトは眼鏡のお前こと軽井沢に近づく。
「下に降りる前に そのスマホで撮影した俺らの動画を消して欲しいんだ」
「え、これを!?いや、でも…」
軽井沢は渋る。せっかく撮影したプリキュアの動画を消したくないのだ。これをキュアチューブやSNSにアップすれば自分の知名度が一気に上がるだろう。
「消さないつもりか?その場合スマホを叩き割るか、お前をあの怪物に差し出すかの二択になるが…どっちがいい?」
「ひぃっ!?け、消します!今すぐ消しますから!」
だが流石にスマホと命の方が惜しいのだろう。サンライトに脅された軽井沢はすぐに動画を削除した。
「よし、もう行っていいぞ」
動画が消去されたのを確認すると、サンライトは軽井沢を解放した。
「トホホ…せっかくのお宝が…」
「落ち込んでる場合じゃないでしょ!また怪物が来る前に早く逃げないと!」
悔しがる軽井沢をるいが引っ張りその場を離れていった。つむぎもその後に続くが、途中で立ち止まりサンライトの方へ振り向いた。
「あの、サンライトさん…」
「何だ?」
「私たちを助けてくれてありとうございました!」
つむぎはサンライトに深々と頭を下げてお礼を言った。それを聞いたサンライトは複雑な表情を浮かべる。
「どういたしまして。気を付けてな」
「は、はい!」
つむぎはもう一度頭を下げると、るいと軽井沢を追いかけていった。
「ありがとうございました、か…」
一人屋上に残ったサンライトは暗い表情を浮かべながらポツリと呟く。
「アイツらが巻き込まれたのは俺のせいなのにな…」
サンライトは後ろめたそうな表情を浮かべながら俯く。軽井沢達が襲われた原因は自分の軽率な行動にある。スカイの言う通り最初から3人で戦っていれば、ランボーグも分裂することなく手早く浄化できてたかもしれない。それを無視して見栄を張った結果がこの様だ。
「みんな、本当にごめんな…」
漸く自分の愚かさを自覚したサンライトは力なく呟いた。
「でも落ち込んでる場合じゃねえ」
サンライトは屋上から先ほど投げ飛ばしたランボーグを見下ろす。敵は既に起き上がりグラウンドからサンライトを睨みつけていた。
「これは俺がしでかしたことだ。ケジメはしっかり付けないとな!」
サンライトは両手で顔をパンと叩いて気合を入れ直す。そして地上で構えるランボーグに向かって跳躍した。
「ここからは…ヒーローの出番だ!!」
「ランボォォグゥゥ!!」
ランボーグが宙を舞うサンライトに向かって桜吹雪を舞い散らせる。だが二体がかりならいざ知らず、単体でのビーム攻撃はサンライトには通用しない。
「サンライトシールド!!」
サンライトは空中で盾を構え敵の攻撃を防ぐ。そしてお返しと言わんばかりに巨大化した盾をランボーグ目掛けて投擲した。しかし二度同じ手は通じないようで、投げた盾はランボーグの手で弾き返されてしまった。
「学習能力はあるみたいだな」
グラウンドに着地したサンライトは、投げた盾を自分の元に引き寄せ腕に装着し直す。
「ランボーグゥゥゥ!!」
するとランボーグの頭部の桜がみるみる膨張する。そこから膨大な桜吹雪を舞い散らせ、サンライトを攻撃するつもりだろう。
「ならここはもう一つの新技だ!」
サンライトは巨大化した盾を前方に構え高速回転させた。
「吹き飛べ!サンライトハリケーン!!」
すると回転するサンライトシールドから竜巻が発生しランボーグを吹き飛ばさんと迫る。これがサンライトのもう一つの新技『サンライトハリケーン』だ。強力な竜巻を発生させるが、攻撃範囲が広く味方や周囲の建物を巻き込んでしまう制御が困難な技である。そのため中庭での戦闘では使用を控えていた。だが今いる場所は校舎から離れた無人のグラウンド。ある程度は周辺への被害を気にせず力を振るうことができる。
「ランボォォ…グゥゥッ!!」
竜巻に耐えるランボーグ。危うく吹き飛びそうになるが、地面に根を張り巡らせてどうにか踏みとどまった。そして竜巻がやんだ後、お返しと言わんばかりに桜吹雪をぶちかまそうとするが…。
「ラ…ララァァッ!?」
なんと全身の桜が綺麗さっぱり無くなっていた。サンライトハリケーンに全身の桜が吹き飛ばされてしまったらしい。このランボーグの最大の武器が見事に封じられてしまった。
「うわぁ…流石にやり過ぎたか?」
サンライトが冷や汗をかきながら呟く。また桜を無残な姿に変えてしまったからだ。この現場をプリズムに見られたら、彼女に再びショックを与えていただろう。
「と、ともかくこれで無力化できたな。スカイ達に見つかる前に一気に決めるぜ!」
スカイやプリズムが合流してくる前に片を付けておきたいサンライトは、丸ハゲになったランボーグに向かって行った。
一方、スカイとプリズムは校舎の壁を駆け回りもう一体のランボーグを翻弄していた。高速で走り回る二人にランボーグは闇雲に光線を撃ちまくるが全く当たらない。
「め、眼が回るのねん…」
「ランボ~グゥ~…」
やがてランボーグは傍にいたカバトン共々目をくるくる回してしまいフラフラになる。
「今です!」
「うん!」
それを見たスカイが号令をかけ、プリズムもそれに頷きランボーグの頭に光弾を撃ち込んだ。光弾が桜の花の中で炸裂し花びらが舞う。そこへ空高く飛んだスカイがランボーグの頭目掛けて勢いよくキックを繰り出した。
「大回転プリキュアキーック!!」
回転によって貫通力を高めたスカイのキックは凄まじく、これを脳天に喰らったランボーグは桜の花を爆散させながら吹き飛んだ。そして傍にいたカバトンを巻き添えにして校舎の壁に叩きつけられた。
「へぶぅぅぅ!?なんで毎回俺を巻き込むのねん!?」
壁とランボーグにサンドイッチにされたカバトンは悲痛な悲鳴を校舎中に響かせた。
「私たちの学校で!」
「あなたの好きにはさせません!」
共に並んでカバトンに告げるプリズムとスカイ。二人はランボーグを浄化すべくスカイトーンWシャイニングをスカイミラージュに装填した。
「「プリキュア!アップドラフト・シャイニング!!」」
スカイとプリズムが巨大な円盤を呼び寄せランボーグを吸い込んでいく。
「ひろがる!!サンライトバスタァァァ―!!!」
同じ頃、サンライトもランボーグ目掛けて炎の鉄拳を叩き込んだ。
「スミキッター…」
「モエツキタ―…」
2体の桜ランボーグは同時に爆散し浄化された。桜の木は元に戻り、戦闘の余波で傷ついた校舎も修復され学園に平和が訪れた。
「ち、ちくしょう!2体に増えたのに何で勝てないのね~ん!?」
地面を這いつくばるカバトンが悔しそうに叫んだ。
「何体増えても無駄です!大切な友達を傷付けようとする貴方なんかに、私たちは負けませんから!」
「そうだよ!もう二度と皆に迷惑をかけないで!」
スカイとプリズムはカバトンを睨みつけながら告げる。
「い、いい気になるなよプリキュア!次こそはめっちゃ強いランボーグを作ってお前らをブッ飛ばしてやるから覚悟しておくのねん!」
二人にビビったカバトンはそう吐き捨てると呪文を唱え去っていった。
「やったねスカイ!」
「はい、お疲れ様でしたプリズム」
変身を解いたソラとましろは安堵の表情を浮かべるのであった。
その後、戦いを終えたハルトがソラ達のところへ合流したのだが…。
「ソラ!ましろ!さっきは本当にごめん!」
ハルトは戻ってくるなり頭を深々と下げながらソラとましろに謝った。
「ソラとの約束を破って一人で戦ったうえに、ましろの大事な桜の木をぶった斬ってしまって…。二人には大変迷惑をかけました。ホントにごめんなさい…」
「大丈夫だよハルくん。桜の木も元に戻ったし反省してくれてるなら何も言わないから」
すっかりしょげたハルトをましろが優しく宥める。桜の木を真っ二つにされたのはショックだったが、彼も悪気があってやったわけではないので大目に見ることにした。
「ソラちゃんもハルくんをあんまり怒らないであげてね…?」
ましろは隣で話を聞いていたソラに視線を向ける。彼女は険しい表情を浮かべたまま無言でハルトを見つめていた。
「わかりました。ですがハルトさんにもう一つ伝えたいことがあります」
「何でもおっしゃってください…」
どうやらまだお話したいことがあるらしい。うなだれるハルトだが、今回ばかりは自分に非があるので覚悟を決めることにした。しかしソラのとった行動はハルトの予想とは違っていた。彼女はハルトの近くへ歩み寄ると、彼の両手を優しく握りしめたのだ。
「…もう無茶なことはしないでください」
ソラは不安げな表情を浮かべながらハルトに語り掛けてきた。
「私、怖いんです。ハルトさんがあの夢みたいに傷ついてしまうんじゃないかって…」
「夢?それってこの前の電車ランボーグの夢か?」
ハルトがそう尋ねるとソラはこくりと頷いた。
「俺達あのランボーグに勝ったじゃないか。あれが正夢になることはー」
「まだ分かりません!ハルトさんは私たちを守るために無茶ばかりしますから!」
ソラはハルトの言葉を遮るように叫んだ。突然大きな声を出されたハルトはビックリして口をつぐんでしまう。
「ごめんなさい…でもハルトさんはもっと私たちを頼って欲しいんです」
ソラの手を握る力が一層強く籠められる。
「カバトンとの戦いが続く限り危険な目に合うのは避けられません。それでも私たち3人が一緒ならお互い助け合って乗り越えられるはずです。それを教えてくれたのはハルトさん、貴方ですよ?」
「!?…ああ、そうだったな…」
ソラに諭されたハルトは彼女からプリキュアをやめてくれとお願いされた時のことを思い出した。あのとき自分は皆で力を合わせて戦うべきだとソラを説得した。彼女の力になりたい。もっと自分を頼って欲しいと思ったからだ。
恐らくソラもあの時の自分と同じ気持ちを抱いているのだろう。自分たちの為に無茶しようとするハルトの事が本当に心配でならないのだろう。
(ソラは俺の事をずっと気にかけてくれていたじゃないか。それなのに俺はクラスの連中にヤキモチ焼いたり 桜の木に八つ当たりしたり……本当に情けねえ…)
これまでの自分の振る舞いを反省したハルトは、不安げに自分を見つめるソラへ向き直る。
「ごめんよソラ。ソラがこんなに心配してくれてるのに俺はまた自分の事しか考えてなかった…」
ハルトはソラに再び頭を下げた。
「俺が悪かった。これからは自分勝手なことはしない。ちゃんと一緒に戦うって約束するよ」
「ハルトさん…ありがとうございます!分かってもらえてよかったです!」
暗い面持ちだったソラにようやく笑顔が戻った。隣で成り行きを見守っていたましろもホッと胸を撫でおろした。
「私の方こそ言い過ぎました。私だってこれまでハルトさんに沢山心配かけてきたのに…偉そうなこと言ってごめんなさい」
「いやソラが謝ることないよ。今回は俺が全面的に悪いんだから…」
今度はソラが申し訳なさそうに頭を下げるのでハルトは慌ててフォローした。
「じゃあ今度はハルトさんの番です!」
「え?俺の番って何が?」
「さっきハルトさん私に言ってましたよね?『俺の気持ちなんか知らないくせに』…と」
「…あ」
ハルトは間の抜けた声を上げた。そういえばソラに問い詰められた時そんなことを口走った気がする。
「私も話を聞いてもらったんです。ハルトさんも私に遠慮なくおっしゃってください!」
「ええっ!?そ、そんなこと急に言われても…」
戸惑うハルト。ソラと仲良くしようとするクラスメイトにイラついてたとか、自分に構ってくれなくて寂しかったとか、そんな子供っぽいことを口に出せるはずがない。
「ハルくんが思ってることを素直に伝えてみたらどうかな?ソラちゃんなら聞いてくれるよ」
「それはそうかもしれないけど…」
ましろの言う通り、ソラならハルトの気持ちをちゃんと聞いてくれるはずだ。でもこれ以上ソラの前で情けない姿を見せたくなかった。
「…あのなソラ」
それでもソラに伝えたておきたいことがある。ハルトは意を決して自分の想いを口にした。
「俺はソラのこと本当に大事な友達だって思ってる。今日は色々迷惑かけたけど、ソラの力になりたいって気持ちは本物だから…」
必死に言葉を紡いでいくハルト。
「だからソラ。これからも俺と友達でいてくれるか…?」
ハルトはソラを真っ直ぐ見つめながら思いを告げた。ハルトの告白を聞いたソラは目を丸くするが、やがて優しい笑みを浮かべて小さく頷いた。
「当たり前です!私にとってもハルトさんは大事なお友達ですから、これからも傍にいてほしいです!」
「ソラ…ありがとう!」
ハルトは嬉しそうに微笑みソラの手を強く握った。ソラが自分を大事な友達だと、これからも一緒に居たいと言ってくれた。それがたまらなく嬉しかったのだ。
「俺、次はソラの足を引っ張らないように頑張るからな!」
「ハルトさんはもう十分頑張ってますよ!ですがまた無茶したり、人の大事なものを傷つけたりしたら…めっ!ですよ?」
「き、肝に銘じておきます。取り合えずサンライトエッジの使い方は考え直さないとな…」
だがこの幸福感も束の間。ソラにしっかり釘を刺されたハルトは苦笑いを浮かべるのであった。
「一時はどうなるかと思ったけど、何とか丸く収まったみたいでよかったよ…」
ましろは元気を取り戻したハルトの姿を見つめながら呟いた。そして恐らく今日一番の功労者であろう、思い出の桜の木へ歩み寄りそっと樹木へ手を触れた。
「貴方もお疲れ様。今日は色々とありがとうだよ」
ましろは思い出の桜に感謝の言葉を伝える。それに答えるように、暖かい風が桜の花びらと共にましろの頬を優しく撫でたのであった。