ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第3話:空からの来訪者

 

「「これぇ…夢だぁ~!」」

 

「えるぅ?」

 

「夢でしたか~♪」

 

「うんうん、ゆめゆめ♪」

 

「いや絶対夢じゃねえよ!痛いもん!顔とか腕とか色んなところがっ!!」

 

ハルトは現実逃避をする少女たちにツッコミをいれた。

 

「すみませんでした、夢の中の人。私たちのためにこんな大けがを負ってしまって…」

 

「あくまで夢で押し通す気か…いててっ」

 

申し訳なさそうに頭を下げる青髪の少女と、痛そうに鼻を摩るハルト。

 

「ですが、己の危険を顧みず私たちを助けようとしたあなたの姿はヒーローのように勇敢でしたよ!」

 

「い、いやいや!ヒーローなんて大げさな……ん?ヒーロー?」

 

ヒーロー。つい最近聞いたワードである。確か昨日の夢に出てきた少女がハルトを助けた時に口にした言葉だ。

 

(そういえばこの子、夢に出てきた女の子と似ている。声もそっくり…)

 

「どうしましたか?」

 

「ああ、その…君の名前は…?」

 

「あ、申し遅れました!わたしはソラ・ハレワタールといいます!」

 

ソラは自己紹介をした後、礼儀正しくお辞儀をした。

 

「私はましろ。虹ヶ丘ましろだよ」

 

「俺はハルト。朝日ハルトだ。あの、ソラさん?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「変なこと聞くけど、俺たちどっかで出会ったことないかな?」

 

「?いいえ、ハルトさんとお会いするのは今日が初めてです」

 

「ああ、そうなのか…」

 

ハルトはソラの容姿を改めて見てみる。

 

長い髪を右側のサイドテールにまとめており、瞳の色も髪色と同じ。服装はV字ネックのシャツと灰色のズボン、地下足袋のようなショートブーツを履いている。

 

髪型や服装は違うが、顔だちは夢で出会った少女と同じ。幼さを残しながらもキリっとした力強い印象を感じる。ただソラはハルトの事を全く知らないようだ。

 

(俺の勘違いなのか?でも夢のあの子と全くの別人って風にも見えないんだよなぁ…)

 

じーっとソラを見つめるハルト。そんな彼にましろが声をかけてきた。

 

「ハルくん、ソラちゃんをジロジロ見過ぎだよ。もしかしてナンパしてるの?」

 

「え?いや違うよ!?ちょっと前に出会った知り合いに似てる気がしてさ、ははは…」

 

「う~ん確かにソラちゃんは可愛いけどナンパはいけないと思うな。それに仮に付き合えてもソラちゃん夢の人なんだから目が覚めたら全部なかったことになっちゃうよ?」

 

「だからナンパじゃないって。てかまだ夢見てるつもりなんか~い」

 

ソラと同様、現実逃避を続けるましろにハルトはツッコみを入れる。

 

一方ナンパの意味がわからずキョトンとするソラと赤ちゃん。

 

「お二人ともずいぶん仲がいいんですね!もしかして恋人同士ですか?」

 

「恋人?違うよ~。私とハルくんは幼馴染みだよ。ちなみに私の方が年上で、ハルくんが赤ちゃんだった頃オシメを替えてあげてたんだ~♪」

 

「いや嘘つくなよ!俺とましろは同い年だから俺が赤ちゃんの時はましろも赤ちゃんだろっ!?赤ちゃんが赤ちゃんのオシメ替えるとか不可能に決まってるだろいい加減にしろっ!っててぇ…」

 

夢の出来事だからと偽りのエピソードまで語りだしたましろに更にツッコミをいれるハルトだが、脇腹に急に痛みが走りうずくまる。

 

「そうでしたハルトさんは怪我を…!大丈夫ですかハルトさん!やっぱりお医者さんのところへ行きましょう!」

 

「大丈夫だよソラちゃん!これは夢の出来事だから傷なんか念じただけですぐ治っちゃうはずだよ!」

 

「いやだからこれは夢じゃなくて…」

 

「きっとこのおまじないでハルくんの怪我は治るはず。せーのっ『なんとかなれッ~!』…はい、ソラちゃんも一緒に!」

 

「わかりました!なんとかなれッ~」

 

「なぇ~♪」

 

「何とかなるわけねえだろ!?ダメだろガチで怪我してる人の前でそんなやけくそなセリフ言っちゃあ!?」

 

盛大にツッコミをいれた後、もう付き合ってられねぇと言わんばかりに二人から顔を背けるハルト。すると地面に何か落ちてるのを見つけた。痛みをかばいながらよろよろと近づき拾い上げる。

 

それは手帳だった。随分使い込まれており所々傷んでおり、表紙にはよくわからない文字が書いてある。

 

「…何これ?」

 

「ああっ!それは!?」

 

ソラがハルトの持つ手帳を指さし言う。どうやら彼女の物らしい。

 

「ああ、これもしかしてソラさんの?そこに落ちてたけど」

 

「私のです、拾ってくれてありがとう!とても大事な手帳なんです!」

 

手帳をソラに差し出すと、ソラは満面の笑みを浮かべながら受け取った。

よほど大事なものらしい。ニコニコとほほ笑む彼女がとても可愛くてハルトはちょっとドキッとした。

 

「お、おう…どういたしまして」

 

「その手帳知らない文字が書いてあるけど、なんて書いてあるの?」

 

「これですか?スカイランドの文字で、私のー」

 

ソラが解説を始めようとした直後、突然何かが空中から落下してきたらしい。

どかーんっ!とものすごい音が響き渡り大量の砂ぼこりが舞う。

 

「おぃいいっ!!今度は何だぁっ!?」

 

「夢の中はホントなんでもありだよぉっ!?」

 

落下音がした方向へ一同が振り向く。

 

「許さないのねん、ソラ…!」

 

砂ぼこりが晴れて落下してきた人物の正体が露わになる。

 

「お前達をボコボコにして、それからプリンセスを頂くのねん!」

 

モヒカンヘアーをしたブタの怪人が怒り心頭という顔でソラを睨みつけている。

 

「ハルくんあの人誰だろう?豚さんのコスプレした人?」

 

「あ~北斗の拳のハート様にちょっと似てるかも。でもどうせやるならTシャツも脱がなきゃ。そこまで似せといて何素肌見せること躊躇しちゃってるの?」

 

「いやお前らこそ意味わからん会話で話の腰を折るのはやめるのねん!せっかく悪役らしく登場したのに台無しなのねん!!」

 

怪人がハルトとましろの会話にツッコミを入れる。

 

「えぇ~るぅ~!」

 

「怖くないですよ、私が守ります!」

 

怪人を見て怯えだした赤ちゃんをソラが優しくあやしている。二人はあの怪人と何か因縁があるようだ。

 

「守れるかな…?」

 

ハートの刺繍がついたハンカチで顔を拭いていた怪人は、仕切り直しと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべ、近くのショベルカーに向かってこう叫んだ。

 

「カモン!アンダーグエナジー!!」

 

怪人が地面に手を当てると黒いエネルギーが吹き出しショベルカーに向かって伸びていく。

 

「ランボォーグゥー!!」

 

エネルギーを取り込んだショベルカーはたちまち巨大な人型の怪物へと変貌した。

 

「っ!?」

 

その直後、ハルトのアクセサリーから心臓の鼓動のような音が響く。

ふとペンダントを手に取ると、アクセサリーが先ほど怪人が放ったエネルギーと同じ黒い不気味な光を放っていた。

 

「ハルくんアクセサリーがまた!?」

 

「ああ、こんな光を放つなんて…!」

 

一方怪物が出現したことで周囲に野次馬が集まりちょっとした騒ぎになっている。

 

「ランボォ…グゥウウウッ!!!」

 

怪物は両腕を大きく広げ、自分の拳同士を激しくぶつけ合わせる。

その衝突で放たれた衝撃波が周囲を吹き飛ばし人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。

この現実ではまずありえない状況に、ましろが自分の頬をつねって夢かどうか確かめ始めた。

 

「普通に痛いよ!これ夢じゃないの!?」

 

「さっきからそう言ってるだろ!」

 

「ハルトさん!ましろさん!」

 

「はっはい!?」

 

「この子を頼みます…」

 

ソラは抱いていた赤子をましろに預け、ショベルカーの怪物の方へ向き直る。その表情は先程までの彼女とは打って変わって険しい。

 

「待てよ、何するつもり?」

 

「私が時間を稼ぎます。その隙にお二人はその子を連れて逃げてください」

 

「馬鹿言うな!あんな怪物にかなうわけないだろ!一緒に逃げよう!」

 

怪物の方へと向かうソラをハルトは手を掴んで引き留めた。

そして気づいた。少女の手が恐怖で震えていることに。

 

「ソラさん…?」

 

呼びかけるがソラはこちらを向かない。今どんな表情をしているのかはわからないが彼女は怖いはずだ。あの怪物と戦うのが。

 

「なぁ~にをごちゃごちゃ話してる!」

 

一方しびれを切らしたブタ怪人がハルトたちに怒鳴りかかってきた。

 

「みんなまとめてぶっ飛ばしてもいいのねん!?」

 

ショベルカーの怪物もハルトたちを追い込もうとじりじりと近づいてくる。

 

「はぁ…ふぅ…!」

 

ソラは意を決したように目をつぶると左手を胸元に当てた。

 

「相手がどんなに強くても、最後まで正しいことをやり抜く…」

 

そして目をカッと見開き叫んだ。

 

「それが、ヒーロー!」

 

「!?」

 

その言葉はハルトの胸を貫いた。

幼い頃の自分を思い出す。いじめっ子にお前は虹ヶ丘家の居候だと馬鹿にされた嫌な記憶がよみがえった。昔のハルトは気が弱く、自分をからかういじめっ子に何も言い返せずただ黙っていた。だが幼いましろはハルトをかばい、いじめっ子たちに言い返していた。

 

「これいじょう、ハルくんをからかわないで!」

 

ましろは泣きそうな顔を浮かべながらも、小さい腕を一杯広げてハルトをかばっていた。

 

「ハルくんはいそうろーなんかじゃないもん!わたしのかぞくだもん!」

 

そしていじめっ子に向かって叫んだ。

 

「これいじょうハルくんをバカにしたら、ゆるさないから!」

 

嬉しかった。自分を家族だと言ってくれて。守ろうとしてくれた。

ましろだってとても怖かったはずだ。それでもいじめっ子相手に負けなかった。

目の前にいるソラだってそうだ。幼い日のましろと同じ、自分よりも大きい相手と戦おうとしている。

 

(ましろに庇われてばかりだった、あの頃の俺には戻りたくない…!)

 

だからハルトは動いた。恐怖を振り払い、少女の隣に立つ。

 

「わかったよソラさん。一緒に戦おう」

 

「えっ!?」

 

「ハルくん!?」

 

ハルトの言葉に驚くソラとましろ。

 

「相手は二人だ。こっちも二人で動けばお互いカバーし合える」

 

「ですが、ハルトさんは怪我を!?」

 

「大丈夫!さっきのおまじないが効いてきたみたいで、痛みはもう殆どないから!」

 

嘘だ。全身が痛いし心臓もバクバクいっている。

でも今はどんなに痛くて怖くても、恰好つけたい。

あの日、自分を守ってくれたましろのように。今度は自分がいじめっ子に立ち向かう番だ。

 

「聞いたなましろ!俺とソラさんが時間を稼ぐから赤ちゃん連れて逃げるんだ!」

 

「でっでも!」

 

「早く行けっ!!」

 

「―ッ!」

 

ましろは赤ん坊を抱いてその場から走り出した。腕の中の赤ん坊は涙目になりながらソラたちに向かって手を伸ばす。ましろが走り去ったのを確認すると、ハルトは改めて怪物たちと向き合った。ショベルカーの怪物が今にも襲い掛かろうと身構える。

 

「ハルトさん、あの怪物は私が。あなたはブタドンの注意を引き付けてください」

 

「ブタドン?」

 

「あのモヒカンの男です」

 

「了解、任された」

 

ハルトの傷を察したソラがショベルカーの怪物を引き受ける。遂に動き出した怪物はブタドンの指示を受け大きく腕を振りかぶりソラ目掛けて拳を叩きつける。その攻撃をソラは素晴らしい身のこなしで避けて敵をかく乱するべく動き回る。

 

確かに負傷した自分ではあの怪物の動きに対応できない。ならば奴を指示する司令塔を無力化し、ソラに有利な状況を作るべきだろう。ハルトは、ソラと怪物が戦っているところを腕を組みながら眺めるブタドンに向かって叫ぶ。

 

「おいブタドン!」

 

「ああっ!?俺様はカバトンなのねん!誰なのねん俺様の名前を呼び間違えるやつは!?」

 

ブタドン、改めカバトンの注意がこちらに向く。自分が負傷していることを悟られないようにハルトは強気な表情で挑発する。

 

「そうかカバトンっていうのか。アンタさあ、知り合いに北斗の拳のハート様に似てるって言われたことない?」

 

「言われたことないのねん!というかハート様って誰なのねん?」

 

「だよなー。あんた屠殺場に送られそうな見た目以外に共通点なさそうだしなー」

 

「トサツジョーオクリってなんなのねん!?人の質問を無視して変なこと言うのはいけないのねん!」

 

ハルトの挑発にまんまと乗っかったカバトンは、右腕をブンブン振りながら怒っている。

一方ショベルカーの怪物はカバトンの指示が受けれずソラの動きに対応できていない。

 

(よし、この調子でこいつの注意を引きつけよう)

 

「ごめんごめん。カバトンさんだっけ?このソラシド市には何しに来たの?」

 

「決まってるのねん!プリンセスを誘拐するためなのねん!そして任務達成の暁にはたっぷりご褒美を…♪」

 

(プリンセス?ソラさんが抱っこしてた、あの赤ちゃんのことか?)

 

「ってなんで脇役にこんなこと説明しなきゃいけないのねん!?」

 

「ノリツッコミ下手だなぁ。お前さぁ、お笑い芸人の才能皆無だから事務所やめて実家の家業継いだ方がいいんじゃねえの?…あ、お前の行く先は屠殺場だったか」

 

「だからオワライゲーニンとかトサツジョーってなんなのねん!よくないのねん!違う世界から来たばかりの人を知らない言葉で混乱させたら!?」

 

ハルトの言動に翻弄されるカバトン。だがもう我慢の限界なのか腕を大きく振り上げてハルトへ殴り掛かろうとする。

 

「ぐぬぬ…脇役の分際で俺様をおちょくるとは許さんのねん!」

 

「挑むつもりか?北斗神拳継承者の俺に?」

 

「もうその手には乗らないのねん!脇役!名を名乗るのねん!」

 

「ブタドンだが?」

 

「いや嘘つくななのねん!ブタドンは俺様の名前…いやちがう俺様はカバトン!ああもうややこしいのねん!」

 

「冗談だよ、俺はハルト。朝日ハルトだ」

 

「ハルト!お前の名前は覚えたのねん!お前をメタクソにやっつけて墓石に名前を刻んでやるのねん!」

 

「おう、お前こそ今宵屠殺場にぶちこまれて全身をメタクソに切り刻まれて死ぬぞ」

 

「いい加減にするのねん!言っちゃダメなのねん!ニチアサの女児向け番組で切り刻むとか死ぬとか怖い言葉を言っちゃ!!」

 

敵の注意を引くつもりがハルトとカバトンが漫才のようなやり取りをしている。

その時何か巨大なものが倒れる音と共に地響きが鳴り響く。

 

見るとあの巨大な怪物がソラに倒されて地面に横たわっていた。司令塔を失い、動きに精細を欠く怪物の隙を突き、ソラが何か不思議なモーションをした後、強烈な正拳突きを叩き込んだのだ。

 

「なんとぉっ!?」

 

「やった!すごぞソラさん!」

 

ハルトの言葉にソラは笑顔を返す。息を切らしながらも堂々と立っている。

地に伏せる怪物を見てカバトンは唖然としていた。

 

「さあ、まだやるつもりですか?」

 

ソラはカバトンに向かい構える。カバトンは冷や汗を浮かべながら後ずさりをした。

 

「少しはやるようなのねん!だが…」

 

しかしカバトンは不敵に笑う。

 

「何を勝った気でいるのねん?」

 

「!?ソラさん!危ない!」

 

「なっ!?」

 

怪物はまだ生きていた。上半身を起こした怪物は左腕を振りかぶってソラの背後から殴りかかってきた。

 

「くっ!」

 

紙一重でかわしたソラ。だが体力を消耗しており動きに先ほどまでのキレがない。

 

(もう十分時間は稼いだ!なんとかして撤退しないと…!)

 

「何よそ見してるのねん?」

 

背後から声。振り返るとカバトンがハルトの目の前に立っていた。

カバドンは腕を大きく振りかぶり、ハルトの顔面を思い切り殴り飛ばす。

ハルトの体は宙を舞い、地面へ叩きつけられた。

 

「!?ハルトさん!!」

 

殴り飛ばされたハルトを見てソラが叫ぶ。

地面に倒れたハルトは体を襲う激痛に呻いている。落下の際に頭を打ち血が頬まで伝っていた。

 

ソラはハルトを助けるために駆け出そうとするが、動揺した一瞬の隙を見逃さなかった怪物の拳がソラを襲いアスファルトを砕く。

直撃はしなかったが、地面を殴った衝撃に巻き込まれ吹き飛ばされるソラ。ソラは地面をゴロゴロと転がりながら壁に激突する。

倒された二人は起き上がることすらままならない。

 

「ギャハハハハ!なぁ~にが何とかしんけんの使い手なのねん!パンチ一発倒れてやんの!YOEEE~!そして俺TUEEEEE~!」

 

カバトンは倒れているハルトとソラを見て勝利を確信し笑い声を上げた。

 

(ごめん…ソラさん…ましろ)

 

意識がもうろうとする中、ハルトは自分の無力さを悔いていた。

 

(やっぱり俺じゃ…ヒーローは無理か…)

 

ハルトの意識は暗い闇の中に沈んでいった。

主と同じく地に落ちたアクセサリーはじわじわと黒に染まり、不気味な光を纏っていた。

 

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