ひろがるスカイ!プリキュア~ SUNLIGHT×STORY ~   作:零たん

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第5話:let's go home

 

「ハルくん!服脱いで!」

 

「いや、突然何言い出すんだ!?」

 

再度変身したキュアスカイのおかげで無事ビルの屋上から地上に戻ってきたハルト。そこに待ち構えていたのは、公衆の面前で脱衣を要求するましろだった。

 

「だってハルくんそのペンダントの力で姿が変わったり、さっきの怪物にボコボコーって殴られたり建物にドッカーンってぶつかったりしたんだよ?体に怪我や異常がないか確かめるの!」

 

「ああ、それなら大丈夫。傷は大したことないし体に異常も…っておいっ!聞けよ人の話を!?」

 

ましろがいきなり服の裾に手をかけ捲り上げようとしたので、ハルトは慌てて裾を手で押さえる。

 

対するましろも、んぎぎぃ~という声が聞こえそうなくらい顔を真っ赤にしながら片手で懸命に服を脱がせようとする。双方一歩も引かないのでTシャツの生地が裂けそうになる。

 

「俺は大丈夫だから。いやホントに大丈夫だから落ち着いてくれない!?あと服が破れそう!」

 

「ダメだよ!服はいくらでも替えはあるけど、ハルくんの体は一つしかないんだよ!?だからハルくんを調べさせて!お姉ちゃんのお願いだよ!」

 

「だからましろは俺のお姉ちゃんじゃない!てかこんな公衆の面前で肌を晒したら変態だと思われるわ!可愛い弟が社会的に死ぬのはいいのか!?」

 

「大丈夫!ハルくんが変態さんでも私は嫌いにならないから!」

 

「好き嫌いの問題じゃねえ!頼むから離れろぉおおお!!」

 

全然離れようとしないましろ。こういう時の彼女は超がつくほど頑固だ。双方譲らない中、赤ちゃんを抱っこしながら見守っていたソラが二人に声をかける。

 

「二人とも、お取込み中すみません。人がたくさん集まってきたんですが…」

 

「「えっ!?」」

 

ハルトとましろは慌てて振り向く。周囲にたくさんの人だかりができていた。ハルトとましろの攻防がヒートアップたせいで自分たちが周囲の注目を集めていたことに全く気づいていなかった。それでなくても先ほどの戦いで騒動を聞きつけた野次馬連中がゾロゾロと集まってきているのだ。

 

「めっちゃ注目されてるぅ~!?」

 

「当たり前だろ!ええい、とにかく今は一時休戦!今すぐここから離れよう!」

 

「そ、そうだね。ハルくんの体は家に帰ってからじっくり見ればいいし…」

 

「いや、絶対見せないから」

 

「皆さ~ん!安心してくださ~い!もう安全で~す!!」

 

「おぃいい!!わざわざ声かけて注目集めるな!!」

 

「あわわ…サイレンの音まで鳴り出したよ~!」

 

騒動を聞きつけた警察が出動したらしい。もし捕まって取り調べなんてされたら面倒くさいことになりかねない。

 

「やっべ早く退散しないと…っておいそこ!!勝手に人の写真を撮るな!肖像権の侵害で訴えるぞコラァ!!」

 

「怒っちゃだめだよハルくん!そ、それじゃあ、お騒がせしました~!」

 

ハルトとましろは、キョトンとするソラを連れて脱兎の如く走り去るのだった。

 

 

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その後、どうにか野次馬から逃げ切ったハルト達はましろの家までたどり着いた。

 

「ほわぁ~!ここがましろさんとハルトさんのお家!?もしかしてお二人は、この世界のプリンセスとプリンス…!?」

 

大きな家に感動しているソラ。だがハルトもましろも彼女の言葉に返答する気力はない。二人ともここまで全力疾走で走って疲れてしまったからだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…ごめんなましろ、体力ないのに走らせたりして」

 

「はぁ…はぁ…大丈夫だよ…。それよりおばあちゃんに二人の事をどう説明しよう?」

 

「う~ん、何から話せばいいものか…」

 

ましろとハルトは、ソラと赤ちゃんを見ながら悩まし気に話す。女の子が空から降ってきたーだの、変身して怪物と戦ったーだの、事情を知らない人からすれば到底信じてもらえないだろう。

 

「でもまあ大丈夫じゃない?ヨヨさん突然やってきた赤ん坊の俺を引き取ってくれたぐらいだし、二人の事だって何とかしてくれるよ」

 

ハルトはあっけらかんと言う。ましろの祖母のヨヨはハルトの父親と唯一面識のある人物だ。急に来訪し、詳しい事情を語らずに息子を預かってほしいと語る父親からハルトを快く預かってくれた。

 

時々謎めいた言動をすることはあるが、何事にも動じない懐の深さを持つ人だ。ハルトからすればヨヨは自分を救ってくれた大恩人であり、最も信頼している人物でもある。

 

そんなヨヨなら、突然現れたソラや赤ちゃんの事も快く受け入れてくれるだろうとハルトは思っていた。

 

「君も色々疲れただろ?もうすぐうちで休ませてあげるから、もう少し待っててな」

 

ハルトはソラが抱く赤ん坊にそう言いながら頭を撫でようとするが…。

 

「えるぅ!やー!」

 

「あれ!?ちょっと?どうしたの急に?」

 

突然首を振って拒絶する赤ちゃんに、伸ばした手を引っ込めるハルト。

 

「やぁーあ!うう…うぇえええん!!」

 

再度撫でようと試みるが今度は泣き出してしまった。

赤ちゃんに拒絶されてハルトはショックを受ける。

 

「そんな…俺、この子に嫌われるようなことしたかな?」

 

「そういえばこの子、ハルくんが変身した姿を見てすごく怖がってたんだ」

 

「俺のあの姿を…?」

 

ランボーグにやられそうになった時、ペンダントの力で黒い衣装を身にまとった自分の姿を思い出す。ましろによると髪の毛や瞳の色まで変化していたらしい。

 

「そりゃあ、そんな姿見たら怖がるか…」

 

「それだけじゃなくてね?ハルくんが不思議な力を使って怪物と戦ってた時、急にこの子が叫んだと思ったら体がピカッと輝きだして、そしたら…」

 

「はい、その光をハルトさんめがけて放ったんです。それが命中してから、ハルトさんは急に力を発揮できなくなった様子で…」

 

「光を俺に?そうか、この子が…!」

 

変身した直後のハルトは闇のエネルギーを自在に生み出せるようになり、その力を駆使してランボーグを圧倒していた。その力がうまく使えなくなったのは謎の光を浴びてからだ。戦いに集中していたので、その時は何が起きたのか分からなかったが…。

 

「この子が俺の邪魔をしたのか…」

 

この赤ちゃんは不思議な光でソラにキュアスカイへ変身する力を与えた。しかしハルトに対してはその逆の力を行使したらしい。この小さい赤ちゃんに何故そんな力があるのかはわからないが、おかげで能力が使えなくなりランボーグに危うくやられかけるところだった。

 

(余計なことをしてくれたな。おかげで死にかけたじゃないか…)

 

ハルトは赤ちゃんに対して一瞬そう思ったが、同時にこうも考えた。

 

(けどもしこの子が介入せずにあのまま戦っていたら、俺は今頃どうなっていただろう?)

 

変身した時のハルトはランボーグを傷めつける快感と体から湧き出る力の全能感に酔いしれそうになっていた。あのまま戦い続けていたら我を忘れて暴れまわっていたかもしれない。

 

それに怪物にとどめを刺そうと放った漆黒の球体。あれがもしソラやましろ、その他大勢の人々を巻き込んで全てを破壊し尽くしていたら…考えただけでゾッとした。

 

(もしかしたらこの子は暴走しかけた俺を止めてくれたのかもしれないな)

 

そう思いなおしたハルトは赤ちゃんを見る。

今だ怯えて泣いてる赤ん坊にハルトは優しく声をかけた。

 

「ごめんよ」

 

赤ん坊の頭に触れ、優しくなでる。やはりハルトを怖がっており嫌そうに顔を背ける。

 

「心配しないで。もう二度とあんな怖いことはしないから」

 

辛抱強くなでる。やがて赤ん坊は泣きやみ恐る恐るハルトの方を向いた。

 

「俺を止めてくれてありがとう。おかげで大切な人たちを傷つけずにすんだよ」

 

赤ん坊はハルトの顔をじっと見つめる。

まだ不安そうな表情だがさっきと比べたら警戒心は薄まったようだ。

 

「よし!俺を助けてくれたお礼だ!君に一発ギャグを見せてやる!」

 

「ええ?ハルくんまさかあれやるつもり!?」

 

「イッパツギャグ?なんですかそれは!?興味があります!」

 

「えるぅ…?」

 

目をらんらんと輝かせるソラと不安げな表情で首をかしげる赤ちゃん。一方その一発ギャグの内容を知ってるましろはハルトを止めようと試みる。

 

「ハルくんそれ絶対しらけるからやめようよ。それに今はこんなことしてる場合じゃないでしょ?早くおばあちゃんに説明しないと…」

 

「ましろさんや。まずは一旦落ち着こう。ちゃんとヨヨさんに事情を説明するためにもここは笑って和んで平常心を取り戻すことが大事なんだよ。それにこの気を逃せば俺はこの子に一生嫌われたままかもしれない。それは嫌だ。すごく嫌だ」

 

「だからってあれをしなくても…」

 

そう言うましろに目もくれず、ハルトはソラが抱いている赤ん坊に目を向けた。

 

「名も知らぬ赤ちゃんよ、俺の顔をよく見てな」

 

そして一世一代のギャグを繰り出す。

 

「ぺろぺろぺろぺろ~、ぱぁあああ~~~!」

 

手と舌を高速に動かし目をグルグル回しながら間抜けな表情を披露するハルト。アホ面を人前に晒すだけのギャグとして成立していない代物であった。

 

あちゃーと言わんばかりに片手で顔を覆うましろ。きょとんとするソラ。そして赤ちゃんは…。

 

「きゃぁい♪あいやぁい♪」

 

奇跡が起きた。赤子はハルトの間抜け面を見てキャッキャと笑っている。

 

「やった!笑った!みたか、ましろ!これがお笑いの力だぁっ!!」

 

「お笑いも何もただ変な顔しただけだよね!?でもほんとに笑った!?まさかハルくんのこの顔見て笑う子が他にいたなんて!?」

 

「ふふっ!ハルトさんは面白い人ですね!よーし!そのイッパツギャグというのを私もこんど弟にやってみます!え~っと、どうやるんでしたっけ?まずは舌を…」

 

「まってソラちゃん!これは女の子が絶対やっちゃだめな顔だから!」

 

ギャグを再現しようとするソラを止めようとするましろ。その際、赤ん坊を自分に預けてきたのでハルトが代わりに抱っこする。もう警戒心が解けたのか、赤子はハルトの腕の中で嬉しそうに笑っていた。赤ちゃんと少し仲良くなれて嬉しいハルトだった。

 

「ましろさん、ハルトさん、おかえりなさい」

 

玄関で騒いでいると不意に後ろから声を掛けられたので振り向く一同。

 

玄関の戸が開いており、そこに一人の老婦人が立っていた。白髪で眼鏡をかけた気品と貫録を感じさせる人物。彼女がましろの祖母の、虹ヶ丘ヨヨである。

 

「あ、ヨヨさん!ただいまです!」

 

「おばあちゃん!?あ、あのね!これ、絶対に信じてもらえないと思うけど聞いて!この子達が空の上からぴゅぅ~~~~って!モンスターがバーンって!それから、それから、ハルくんがぶわあああって真っ黒に変身して!この子もキラキラってなってフワーッて!」

 

「落ちつけよましろ。その説明じゃ全然わかんないから」

 

出迎えた祖母にましろが今まで起きたことを説明しようとする。が、語彙力が死んでて全然要領を得ない。ヨヨはというと、ハルト達を優しく微笑みながら声をかける。

 

「大変だったわね」

 

「「え?」」

 

「さ、お上がりなさい」

 

ヨヨは普段通り落ち着いた様子で三人を家の中へと招き入れる。

 

「えぇ…自分で言うのもなんだけど今の説明でOKっておかしくない!?」

 

「だから言っただろ?ヨヨさんなら大丈夫だって。さあ、ソラも上がってよ」

 

「はい!お邪魔します!」

 

家の中に入る三人。その様子を玄関前のアーチの上から、一匹の鳥がじっと見つめていた。

 

 

 

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家のリビングでハルト達は、ソラからこの世界に来るまでのいきさつを聞いていた。

 

ソラはこことは違う「スカイランド」と呼ばれる別の世界で暮らしてたらしい。とある目的のために王都へ向かっていた矢先に、女の子の赤ちゃんを攫っている現場を目撃したのだ。その人攫いがカバトン。先ほどハルト達が戦ったブタそっくりの怪人である。

 

ソラは赤ん坊を取り返す為にカバトンを追い、彼が生み出した謎の空間まで飛び込んだ。そこで運よく赤ちゃんを取り戻すことができたが、今度は違う世界の扉が開いて気づいたときにはソラシド市の上空に放り出されたという。

 

「そこでハルトさんとましろさんに助けて頂いて、今に至るというわけです」

 

「いや、俺全然助けになってなかったよ?ソラを救ってくれたのはこの赤ちゃんだし、俺は電柱にぶつかるドジかますし…」

 

「ハルくんちょっと静かにしてようか」

 

急にヘラりだすハルトにましろがやんわりとツッコミを入れる。

 

「それにしてもスカイランド…こことは別の世界があるなんて、まだ信じられないよ」

 

「私だって別の世界にいるなんて信じられません。それに自分がキュアスカイに変身したことも」

 

ソラは胸ポケットから取り出したミラージュペンを深刻な表情で見つめる。

 

「キュアスカイといえば…ソラ!変身するときに使ったアクセサリーも見せてくれる?」

 

「あ、はい!わかりました」

 

ソラはスカイトーンという水色のアクセサリーを取り出しハルトに見せる。ハルトも首にかけたアクセサリーとソラのスカイトーンを見比べる。

 

「やっぱりそっくりだ…俺とソラのアクセサリー。紋章まで似てる」

 

細部に違いはあるがハルトとソラのアクセサリーは似たような形をしていた。両方とも太陽の形の紋章が刻まれている。

 

「ということはハルくんのアクセサリーも、ソラちゃんの時みたいにこの赤ちゃんが生み出したものなのかなぁ?ハルくんもプリキュアかはわからないけど変身してたし…」

 

「まさか!?これは元々親父が13年前から持ってたやつだぜ?そんな昔にこの赤ちゃんがいるわないだろ!?」

 

13年前ハルトはこのアクセサリーと共にヨヨに預けられたが、この赤ん坊は生まれてすらいないはず。赤ん坊の年齢が見た目通りなら、ハルトのアクセサリーは彼女が作ったものでないだろう。

 

「ヨヨさん。前にも聞いたと思うけど、これについて何か親父から聞いてないですか?」

 

ゆっくりと首を横に振るヨヨ。彼女はハルトのアクセサリ-について何も知らないらしい。

 

ソラのスカイトーンとハルトのアクセサリー。双方怪物と戦うために持ち主を変身させる力を持っている。造形も似ていることから何らかの関りはあるのだろう。だが真相を語れる者はこの場にいない。

 

「このアクセサリーもそうだけど、その不思議なペンは何なんだろう?プリキュアって何だろう?」

 

「分からないことだらけだな…」

 

 

悩むハルト。ペンダントの正体も自分が変身したあの姿のことも気になる。

 

(でも、今一番気がかりなのは…)

 

ハルトはソラの腕に抱かれてすやすや眠る赤ちゃんを見つめる。すると向かいの椅子に座っていたましろが不安げな様子でヨヨに話しかける。

 

「ねぇ、おばあちゃん。お部屋の百科事典にプリキュアのこと載ってたりしないかな?」

 

「ましろ?」

 

「プリキュアだけじゃない。ハルくんの石やあの黒い姿のことも…調べていけばお父さんの手掛かりだって掴めるかもしれないし」

 

「ちょっとましろ、落ち着けって」

 

どうやらハルトに起きた異変や、その元凶である石のことについて祖母に調べてほしいらしい。ハルトの事を思っての事だろうが、ましろも心配なのだろう。普段の穏やかな彼女からは想像できないほどの焦燥感を感じさせる。

 

「だって何もわからないままじゃハルくんが可哀想だよ!ねえおばあちゃん!調べてあげてー」

 

「ターイムッ!」

 

ハルトは両手でTの字を作りタイムを要求、熱くなるましろを落ち着かせた。

 

「気になることは山ほどあるけど、今はこの二人を元の世界に返す方法を探すのが先じゃないかな?」

 

「ハルくん?」

 

「特にその赤ちゃん、無理やり誘拐された挙句、全く知らない世界に来たんだろ?可哀想すぎるだろ…」

 

ハルトは自分の事より赤ちゃんの事が気がかりだった。経緯こそ違うが自分も赤ん坊の頃に親から離れて暮らすことになった身だからだ。でも彼女の場合はもっとひどい。

 

突然誘拐されて、見知らぬ世界に連れてこられた挙句、怪物にその身を狙われて…。そんな赤ちゃんの境遇を思うとハルトは胸が張り裂けそうになった。

 

「待っててくれるパパとママがいるなら、早く帰らせてあげたいよ…」

 

「ハルくん…」

 

ハルトは今はすやすやと眠る赤ちゃんを起こさないよう、労るように優しく頭を撫でた。

 

「ハルトさんの言うとおりです。私もこの子に約束したんです。パパとママの所に帰してあげるって…!」

 

ソラはすくっと立ち上がって叫んだ。

 

「ヒーローは泣いてる子供を絶対に見捨てませんっ!!」

 

赤ん坊が寝ているのに突然大声で叫ぶソラ。案の定寝ていた赤ちゃんはその声で目覚め、泣き出してしまう。

 

「えるぅっ!?ええ…ええーるぅっ!!」

 

「おぃいいっ!?むしろ泣かせてどうするんだぁヒーローっ!?」

 

「うわぁ、ごめんね!ごめんね!?」

 

泣き出した赤ちゃんを必死にあやすソラ。

 

「ほら!べろべろ~…ばぁ!」

 

ましろも赤ちゃんをあやすべく変顔を披露する。

 

「おいおい、なってないな~ましろ。手本を見せよう、こうするんだ!ぺろぺろぺろぺろ~…ぱぁあああ~~~!」

 

「っ!?うっ…うえええええええん!!」

 

ましろに負けじと再びアホ面を晒すハルトだが、今度は通用せず逆にギャン泣きしてしまう。

 

「バカな…俺の一発ギャグが通用しない、だと…?」

 

「当たり前だよ!ダメだよハルくん!泣いてる赤ちゃんにふざけた顔見せちゃ!?」

 

「いやいやましろの顔芸だって似たようなもんだろうが!?」

 

言い争いを始める二人。一方ソラはある予感がしたのでそれを口にする。

 

「もしかしたら、お腹がすいているのかも…?」

 

「それだ!ほらハルくん!しょんぼりしてないでミルク買いに行こ!」

 

「お、おっけーわかった、大至急買いに行こう!…で、ミルクってどこに売ってるの?」

 

あたふたする3人。その様子を眺めていたヨヨが余裕そうな様子で話す。

 

「キッチンの棚。一番下に粉ミルクとマグがあるわ」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ミルクは人肌でね。ふふ…♪」

 

お茶目な感じで笑うヨヨ。その後も彼女のアドバイスを受けながらミルクを完成させた。ソラは手慣れた手つきで赤ちゃんにミルクを飲ませてあげる。飲み終えた赤ちゃんにげっぷをさせる手際といい、赤ちゃんの扱いに慣れているようだ。

 

「すごーい!ソラちゃん、赤ちゃんあやすの上手なんだね~!」

 

「はい!家に年の離れた弟がいるので、慣れてるんです!」

 

「そう言えば弟がいるってさっきチラッと言ってたな。大したもんだよ。どころでヨヨさん、なんでうちに赤ちゃんがいないのに粉ミルクが置いてあるんですか?」

 

「オムツだってあるわよ」

 

「だからなんで置いてるの?ねえなんで置いてるの?」

 

ハルトの質問には答えず余裕そうな笑みを浮かべるヨヨ。自分が虹ヶ丘家にやってきたときもこんな感じだったんだろうか?

 

「出会いに偶然はない、人と人が巡り会うこと。それはいつだって必然、運命。物語の始まり…」

 

突然どや顔で何を語りだすんだよ、おばあちゃん。という言葉は死んでも口に出せないので黙って聞くハルト。隣で話を聞いているソラとましろも首をかしげている。

 

ヨヨの事は大好きだし尊敬しているが、彼女のマイペースっぷりにはいつも振り回されてる気がした。

 

「あなたの世界に戻る方法が見つかるまで、二階の空いている部屋を好きにお使いなさい」

 

「え?ちょっとおばあちゃん!?」

 

ヨヨはソラにそう伝えると、自室へ戻っていった。残された三人は、去っていくヨヨの後ろ姿を呆然と見送るしかなかった。

 

 

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夕焼けの日が差し込む二階の空き部屋。そこで三人はゆりかごで眠る赤ちゃんを眺めながら会話していた。

 

「今日は大変な一日だったな…」

 

「そうだね。いろんなことが起こり過ぎて頭の中がパニックだよ…」

 

ハルトとましろは、現状を振り返りながらため息をついた。ソラは申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「ハルトさん、ましろさん。ごめんなさい…私、できるだけ早く出ていきます!」

 

「えっ!?」

 

突然そんなことを言い出すソラに、ハルトとましろは顔をしかめる。

 

「家のお手伝いもします。お世話になっている間、なるべく迷惑かけないようにしますから…!」

 

「ソラ、落ち着いて」

 

ハルトはソラの言葉を遮った。

 

「そんなに気を使わなくてもいいよ。出会って一日も経ってないけど、俺たちはこの赤ちゃんを守るために一緒に戦った仲間じゃないか」

 

「ハルトさん…?」

 

そしてソラに優しく語りかける。ハルトの言葉にソラは目を瞬かせた。

 

「それに俺だってこの家に世話になってる居候みたいなものだし、お互い変な気を使わないで気楽にやっていこうよ」

 

「そうだね、ハルくんのいうとおり。焦って出ていこうとしなくて大丈夫だよ、ソラちゃん」

 

ましろも笑顔で頷いてくれた。

 

「でも一つ異議ありだよ。ハルくんは居候じゃなくて、私たちの家族だっていつも言ってるでしょ?」

 

「あ、いっけね。ごめんよ、つい…」

 

「もう…次言ったら怒るよ?朝だって起こしてあげないからね?」

 

「す、すみませんでした!もう言いませんから怒らないで!あと朝起こしてもらえないのも嫌だ…」

 

そんなやり取りをする二人を見ながら、ソラはくすくすと笑いだした。

 

「フフッ…ハルトさん、ましろさん。本当にありがとうございます」

 

そしてソラはハルトとましろに向かって膝をつくとこう言い始めた。

 

「今日のご恩は決して忘れません。今より私、ソラ・ハレワタールはハルトさんとましろさんを守る騎士となり、あなた方をお守りする事を…」

 

「待て待て、そんな畏まらなくても大丈夫だって」

 

自分たちに忠誠を誓い始めたソラをハルトが慌てて止めに入る。隣のましろも「時代劇かな…?」と困った様子で呟いていた。

 

「じゃあどうすれば…?」

 

「いや、どうすればって言われても…」

 

逆にどうすればいいのか尋ねられたハルトもまごついてしまう。ソラが自分たちに恩義を感じてくれているのは分かるが、ファンタジーのお姫さまみたいに特別扱いされるのはやめてほしかった。ソラとはちゃんと対等な関係でいたいのだ。であれば、自分たちに相応しい関係は…。

 

「じゃあ…友達じゃあダメか?」

 

「え、友達…?」

 

ソラはキョトンとするがハルトは構わず言葉を紡ぐ。

 

「ああ、俺達はお互い助け合ってピンチを乗り越えた仲だ。それって友達ともいえるんじゃないか?」

 

「うん。ハルくんの言う通り、私たちとソラちゃんは友達だよ!」

 

ましろも笑顔で肯定してくれた。一方、友達と呼ばれたソラは嬉しそうに目を輝かせると、がばっと立ち上がりハルトとましろの手を取った。

 

「ハルトさん、ましろさん!ありがとうございます!不束者ですが、よろしくお願いいたします!」

 

「お、おう…よろしく」

 

「プロポーズ、かな?」

 

嬉しそうに身を乗り出すソラにたじたじになるハルト。ましろもちょっと照れくさくなったのかソラから視線を外しながら伝える。

 

「あ、そうだ!着替えは取り合えず私のジャージでいいかな?ちゃんとしたのは明日買いに行こ!もし足りないものがあったら、私隣の部屋にいるから何でもー」

 

「ましろ、ましろ」

 

「うぇっ!?何かなハルくん!?」

 

「ソラ、もう寝ちゃったよ」

 

「あ…ほんとだ。ていうか秒速過ぎるよね!?」

 

ソラはベットで横になりすやすや寝息を立てている。ハルトは彼女に毛布をかぶせてあげた。

 

「疲れが溜まってたんだね…」

 

「そりゃそうだよ。ソラだって違う世界に来て大変なはずなのに、赤ちゃんを守るために必死で戦って…」

 

ハルトはそう言いながら眠るソラの頭を優しく撫でる。毛布に包まるソラの体は、プリキュアになった時もよりもずいぶん小さく見えた。

 

「お疲れ様、ソラ。それとありがとう、俺たちを助けてくれて…」

 

「それを言うなら、ハルくんもだよ」

 

眠っているソラにそう話しかけるハルトに、ましろはそう返す。

 

「俺も?」

 

「うん、ハルくんだって頑張ってたよ。私たちを守るために勇気を出して、怪物に向かって行ったんだもん」

 

「俺は大して役に立ってなかったよ。ソラがプリキュアにならなかったら今頃どうなっていたか…」

 

「そんなことないよ。ハルくんが勇気を出したから、きっとソラちゃんだって闘うことができたんだし、赤ちゃんだって守ることができたんだよ?」

 

ましろはハルトの瞳をまっすぐ見つめながら、自分の気持ちを伝える。

 

「ソラちゃんだってカッコいいけど、ハルくんだって負けないくらいカッコよかったよ。本物のヒーローみたいで、お姉ちゃんすごく誇らしかったよ」

 

「大げさだよ…。ヒーローはソラの方が似合ってるし、大体いつまでも俺のお姉さんぶるーっ!?」

 

突然ましろがハルトに抱き着いてきた。結構豊満で柔らかな胸の感触がハルトの胸板にダイレクトに伝わる。

 

「だからこれは、頑張ったハルくんにお姉ちゃんから、ご褒美のギューっだよ♪」

 

「あっああ、ああ~ましろさん!?は、離れて!?む、むねが!?」

 

久しぶりにギューされてドキドキするハルト。ましろは幼い時からハルトが落ち込んだ時や頑張った時に、いつもこうしてハグするのだ。

 

「よしよし、よく頑張ったね…ハルくんは私の自慢の弟だよ♪」

 

「だから俺を弟扱い…ああ、いい香り…」

 

だが最近のましろは女性として魅力的に成長しており、そんな彼女から抱擁されるのは思春期の少年には刺激が強すぎる。女の子特有のいい香りもするしでハルトの頭はくらくらしてきた。

 

「でもあんまり無茶なことしたらダメだよ?ハルくんが傷だらけになって倒れている姿を見て、私すっごく怖くなったんだからね?」

 

「ああ、心配かけてごめん。次はなるべく気を付けるから、そろそろ離して…」

 

「なるべくじゃなくて、絶対だよ!でないと離してあげないよ!?」

 

「わかりました!もう絶対無茶しません!だから離して!お願いします!」

 

そろそろ理性の限界が来そうなので必死に訴えるハルト。ましろはそんなハルトに「よろしい!」と言って離れる。

 

「もう、そんなに照れなくてもいいのに。ギューするの小さい頃からずっとやってきたでしょ?」

 

「子供の頃と今とじゃ破壊力が違うんだよ。童顔なのに出るとこ出てるし、いい匂いするし…」

 

「ん?なんのこと?」

 

「もういい!俺も疲れたからちょっと休んでくる!」

 

ハルトは顔から湯気を出しながら、そそくさと部屋から出ていた。と思ったら、ドアの隙間からそっと顔をのぞかせ、ましろに声をかける。

 

「お夕飯、できたら起こしてくれる?」

 

その一言にましろは頬を綻ばせ、ハルトの問いに元気よく応える。

 

「うん、いいよ!お疲れ様、ハルくん♪」

 

「うん、お疲れ様。それじゃあ…」

 

そう言うとハルトは、今度こそ部屋を出ていった。ましろは閉まったドアをしばらく眺めていたが、やがて微笑みながら呟く。

 

「本当にお疲れ様、ハルくん。おやすみなさい…」

 

 

 

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__

 

 

「ちくしょう、ドキドキして眠れねーじゃねーか」

 

自室に戻ったハルトはベットで横になっていた。しかしましろの柔らかい身体の感触が脳裏に焼き付いて寝付けずゴロゴロしていた。

 

ふと首にかけたアクセサリーが視界に入り、ハルトはそれを掴み見つめる。一次は漆黒に染まったのが嘘のように元の色に戻っていた。

 

「親父はコイツをお守りとか言ってたけど、実は呪いのアイテムの間違いじゃないだろうな?」

 

実際これの力で姿が変わったり、敵に目をつけられたりと散々な目に遭った。

 

でもソラに会うこともできた。夢と現実で自分を救ってくれたヒーロー。彼女は強い相手にも屈することなく、信念を貫き立ち向かうことができる強い意志を持っている。その姿をみたハルトも勇気を振り絞って怪物に立ち向かうことができた。

 

「ましろの後ろで泣いてたあの頃と比べて、ちょっとは成長できたかな?」

 

ハルトはアクセサリーを見つめながら呟く。その呟きに反応するように太陽のエンブレムが少しだけ輝いたような気がした。

 

「今夜はいい夢、見れるといいなぁ」

 

そう呟き目をつむる。

夕焼けの光に心地よい暖かさを感じながら、ハルトは眠りについたのであった。

 

 

 

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