ニャンコ・ファミリア大戦記   作:薔薇尻浩作

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エタッてはいないですが、不定期更新となります。
今回は短いので加筆修正するかもです。


戯言日記 其の十六

 

✕月Å日 長過ぎる追記

 

 

 この日記の読者からすると、もはやくどい程に繰り返している主義主張であるが、私は平和主義者である。

 故に荒事は嫌いだし、暴力は言うまでもなく、殺人など以ての外である。

 世の中には喧嘩自慢なるものを生き甲斐とする血の気の荒い獣のような人種もいると聞くが、それの何が良いのかとんと分からぬ。

 

 とは言えこのファンタジー世界は命の価値が非常に安い。

 世界の中心と呼ばれるここオラリオですら、ダイダロス通りの路地裏には痩せ細った孤児達が腐臭を放ちながらボトボトと死んでいき。

神の恩恵が生み出すステータス差によって、格下の人間は格上の人間の気紛れな暴力であっさりと死ぬ。

 何なら酒場の喧嘩で死人が出ることも珍しくない。

 もちろんダンジョンの中ではモンスターに喰われて毎日のように人が死ぬ。

 

 なんと殺伐とした世界なのだろうか。

 とかく、此の世は住み難い。

 

 故に私は強くならねばならなかった。

 弱い人間は無惨に死ぬか、気まぐれに死ぬか、運が悪くて死ぬか。まあ、結局のところ弱者は惨めに死ぬしかない。弱者は強者の食物にされる運命なのは異世界だろうが、前世の現代だろうが変わる事の無い絶対真理である。

 ならば自己防衛の為に、自分の平和を守る為に。

 大切な身内を守る為に、強くならねば生きられぬ。

 

 

 強くなる為に、暴力を纏い。

 平和の為に、人を殺し。

 幸福の為に、戦争を行い。

 やりたくもない事を繰り返す事で、この年まで五体満足で生き永らえた。

 

 私は平和主義者である。故に暴力は嫌いだ。

 私は平和主義者である。故に暴力を使わざるを得ない。

 

 詰まる所、私はそういう下らない矛盾に苛まれながら、ただ惰性で生き続けているだけの矮小で卑劣な猫人なのである。

 

 吾輩は猫人である。名前はモネコ。

 今日も今日とて平和に猫人生を謳歌している。

 

 

 

「……ぅ……ぁ……」

 

 

 

 三日月に導かれるようにして薄暗い夜空の下をフラフラと歩く事、少しして。

 綺麗に整地された地面の中にボッコリと空いた大穴の前で私は立ち止まった。

 目の前には、半分潰れかけた人形がやっぱり潰れた蜘蛛みたいにその身を埋ずめている。

 

 四肢はすっかり骨が砕けたのだろう、腕も脚も関節が五、六個は増えているのは間違いなく、薄暗い月明かりの下て薄目でみやれば、まるで蛸のような軟体状態だ。ところどころから砕けた骨の欠片が飛び出ており、満身創痍という言葉がピッタリの有様である。

 野性味を残しながらも美麗に整っていた顔立ちは見る影もなく腫れ上がり、鼻は潰れて顎は砕け、恐らく片目はまともに見えていないのでは無いだろうか。

 ファンタジー世界ならではの神秘的な輝きを放っていた銀色の髪や、狼の耳もすっかり赤黒く染まっている。

 

 

 ふと、私は深呼吸した。

 夜空の香りと、月の香り。

 消えかけた命の仄かに甘い腐臭に、錆鉄のような汚血の香り。

 

 嗚呼、何とも。感じ入るモノが何一つ無い。むしろ余りの殺風景に心寒さを覚えた位である。

 結局のところ。やはり、何度味わったところで私には『暴力』の味わい深さとそれに付随する愉悦と快楽と言うモノが、とんと理解出来なかった。

 

 

 私は小心者の平和主義者ではあるが、自らが誤解を受けやすい人種である自覚はある。

戦争狂(ウォー・モンガー)』の二つ名など、まさにその象徴だろう。

 私という猫人は、オラリオに住む殆どの人間や神々から暴力を好み、血に酔い、殺戮に狂い。悲痛の断末魔を上げながら蹂躙される人間の死に様に性的興奮を覚えるサディストだと思われているらしい。

 

 もちろんこれは事実無根の話であり、私としても甚だ遺憾である。

 

 

「ニャーンソー」

 

 

 私は目の前で仰向けに倒れる敵対生物の側に『ネコチェーンソー』を召喚した。

 真っ白なヘルメットとデフォルメされつつも凶悪な切れ味を感じさせる物々しいデザインのチェーンソーを両手で抱える姿は愛嬌を感じる。

 

 結論から言ってしまえば、特に理由は無いのだ。

 強いて理由をでっち上げるならば、私の顔面を蹴飛ばしたのが右脚だったから。精々はそんな下らない点だ。

 ダメージも想像以下であったし、煽った時点で見るからに短気な狼人なら直ぐに攻撃してくるだろうと予想もしていたので、特に怨恨も無ければ禍根を残すつもりも無い。

 

 だって、ほら。そもそも、敵対者となった時点で、どうせ殺すのだ。

 

 直ぐに糞袋となる『物』に対して恨みだとか辛みだとか抱くのは、何ともバカバカしい話ではないだろうか。

 だから実際のところ『標的』を態々、右脚に指定したのは、単純に一番距離が近くて目についた。本当にただ、それだけなのである。

 

 

「ニャーンソー」

 

 

 怪物の唸声のようなエンジン音に拍子木を打ち鳴らすような甲高い打撃音。

 きっとオラリオに住む人間には聞いたことの無い、未知の音だろう。

 もしかしたら新手のモンスターの威嚇の声にも聞こえたかも知れない。前世で聴き慣れたモーター音に近い電動工具の息吹はファンタジー世界とは非常にミスマッチだ。夜も更けて来たこの時間、近所迷惑に違いない。

 

 

「……グッギャアアアアアアッッッ!!」

 

 

 だが、結局。そんな奇妙な機械音も、劈く悲鳴に塗り潰されてしまった。

 

 蒼と黒が混ざった夜空に真っ赤な血飛沫が迸る。

 背骨がへし折れんばかりに、背筋を仰け反らし泡拭きながら悲鳴をあげる狼人の姿は、まるで悪魔に取り憑かれた気狂いのようだった。

 次第に肉の焦げる香りが立ち上り、食べたばかりだと言うのに、仄かに食欲を唆る。

 恐らくは私と同じ第一級冒険者であろう狼人の肉体は堅牢で、その骨だってダイヤモンドよりも硬いのだろう。

 ビチャビチャとした水音はやがて、鋼鉄を無理やり削り取るような耳障りな金属音へと近いものに変わっていった。

 

 さて。生きたまま片足を鎖鋸でゆっくりと削り落とされるその苦痛は如何程だろうか。

 少なくとも、オラリオ中に響き渡っているであろう、この苦痛の騒音から察するに筆舌に尽くしがたいものなのだろう。

 

 だが、まあ、それでも。

 やはり、私にとっては何も特別な感情は浮かんで来なかった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

 

 暴力で敵対者を捻じ伏せた時に湧き上がる感情は愉悦ではなく倦怠感。

 肉が千切れて血飛沫が舞う光景に感じるのは興奮ではなく嫌悪感。

 死にゆく人間が命乞いをする様を見て感じるモノなど、もはや無である。

 

 私にとって敵を攻撃する事は自己防衛の為の手段である。

 だからぶっちゃけ面倒臭いとしか思えない。

 やりたく無いけど、やっておかないと後々困るから、仕方なくやっている。

 そういう感覚だ。

 

 他者の血液には沢山の病原菌が混じっている可能性がある。

 愛しき人の破瓜の血ならばまだしも、何が悲しくてただの肉塊の血潮を被って興奮する事が出来ると言うのか。普通に汚い。感覚的に言うなら他人の糞尿等まかり間違っても触りたくもない。それに似ている。

 

 死にゆく人の最期など、そもそも興味がない。敵対した時点で殺す事は決まっているのだから。

 自分が不利になったからと命乞いされたところで、「いや、そういうのいいから」としか思えないのは普通の事だろう。

 

 いつかの戦争遊戯で見目麗しいエルフの女性を致し方なく拷問していた時も同じだ。

 私も男であるから、美人についつい見惚れたりだとか、お近付きになりたいだとか、健全な青少年としての青い欲望は持っている。

 だが先程も言った通り、敵対者になった時点で殺すのは決まっているのだ。

 その時点で目の前の女性がどんなに魅了的で美しい『者』でも、私にとっては『物』である。

 最終的に廃棄処分する物の見た目がどうこうとうのは、気にする必要も無い筈だ。

 

 

「アアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!」

 

 

 私は夜空を見上げて溜息を吐いた。

 何と言うか。やはり、私は根っからの平和主義者なのだろう。

 暴力や殺戮と言ったものに、尽く向いていない平穏な猫人なのだから。

 

 月光と狼の悲鳴が混ざり合うオラリオの片隅で、私はふと泣きそうになった。

 物悲しい。と言うには大袈裟で、虚しい。と片付けるには冷たいこの感情はサンチマンタリスムである。

 何故、私はこんな事をやっているのだろうか。つい先程まで軽口を叩き合っていた初恋の人の顔が脳裏に浮かぶ。

 

 青白い月明かりの下、彼女と一緒に抱き合いながら口付けを交わし、くるくると踊り明かせたら、それはきっと。何と素敵な事だろう。

 

 

「アガッ……グギャッ……グゾガァッ……あ、脚ぃ……お、俺の脚ガアアアァァッッ!!」

 

 

 幸せな私の妄想に無粋な横槍を入れたのは件の狼人だった。

 血混じりの泡を吹き出しながらも、キャンキャンと吠える彼の右脚は切断されていた。

 

 

「ニャーニャー。ニャーンソー」

 

 

 褒めて褒めてと言わんばかりに飛び跳ねながら私にアピールするネコチェーンソーの白い身体は赤黒く染まっていた。

 その右手には、かの狼人の膝から下に付随していたパーツだったモノが握られている。

 

 バッチィからポイしなさい。あと次は左脚ね。脳内でそんな指令を出すと、間を置かずにエンジン音と狼人の悲鳴が響いた。

 やや物騒なバックサウンドを聞き流しつつ、コキリコキリと首を曲げて音を鳴らす。

 再び瞳を閉じてスキル【遊人視点】を発動。

 

 前世のスポーツカーでは比較にならない程の超スピードで此方に向かってくる人影は三人。其の内二人が突出して、後の一人がやや遅れている。

 前者がアマゾネスの姉妹。後者が恐らくはアイズ・ヴァレンシュタインだろう。

 

 

「ベートを離しやがれ糞猫野郎があアアァァッッッ!!!!」

 

「ティオネッ油断しないで!!」

 

 

 美貌をグチャグチャに崩した女の名前はティオネらしい。般若めいた表情にはメロンのように無数の青筋が走っており狂戦士の名前が相応しい。

 片割れらしい慎ましやかな胸を持つ少女も台詞だけ聞けば冷静に見えるが、所詮はアマゾネス。義憤か、それとも抑えられない戦闘本能が故か。炯々と目を光らせ、荒ぶる竜のような殺気を垂れ流している。

 

 全く、野蛮な事である。私のような小心者で平和を愛する猫人とは全く合わない人種である。やれやれ、これだからアマゾネスは。

 

「「「「「ニャックスー」」」」」

 

 

 すかさずスキル【怪猫軍団】発動。

 百匹単位で召喚したのは『にゃんこ城Max』だ。

 

 

「アァン⁉ 気色悪ぃモン出しやがって⁉」

 

「ちょ、ちょっと待って⁉ あれ確か前の戦闘遊戯で見た……⁉」

 

 

 2メドル近いキャタピラ式の脚を持った謎の生命体にアマゾネス達から僅かな動揺が見て取れる。

 そして貧乳娘の言葉の通り、このキャラクター達は戦争遊戯でも何度かお披露目している使い勝手が良いキャラなのだ。

 

 その理由は、非常に単純。

 攻撃範囲が凄まじいのだ。

 

 

 ヨシ、取り敢えず一斉掃射で。

 

 

「「「「「ニャックスー!!!!!」」」」」

 

 

 取り敢えず生で。

 そんなノリで呟いた私の攻撃命令に忠実なにゃんこ城達は、被り物の大きな口から。

 否、黒光りする大きな砲口から凄まじい勢いでエネルギーを充填。バチバチとプラズマをスパークさせたかと思うと一瞬。ほんの一瞬大きく発光。

 すると同時に爆発的な超高熱と共にピンク色のエネルギー砲を発射した。

 

 

 にゃんこ大戦争に置ける一発逆転の必殺技コマンド、『にゃんこ砲』。あらゆる敵に大ダメージを与え、確定でノックバックを与える。

 そんなにゃんこ砲を模した攻撃モーションが特徴のキャラクターこそが、この『にゃんこ城Max』だ。

 それが百単位で一斉に攻撃するとどうなるか。

 

 

「「……!!!!」」」」

 

 

 雑音を消失させる無数の波動攻撃は月夜を明るく照らし、一分にも満たない短時間ではあるが月から夜を奪った。

 ゴウッと音立てながら全てを薙ぎ払う破滅の閃光は灼熱の波動砲となり、大戦争に相応しい轟音と破壊。そして特大の大爆発を起こすのだ。

 

 

 何と言う事でしょう。

 

 そんなナレーションが頭に響いた。正に劇的ビフォーアフターである。

 活気あるオラリオの町並みはこうして、目測50メドルの風景を、あっという間に、何もかも、綺麗サッパリ消失させたのだから。

 

 

 生温い風が頬を撫でる。私は何かが燃える煙たい臭いを、肺いっぱいに吸い込んだ。

 

 全く戦場は地獄だぜ。

 何処かで聞いたそんな台詞がリフレインし、懐古にも似た暖かい気持ちに、私は思わず微笑みを隠しきれなかった。

 

 

 

 

 

-追記-

 

 

蹂躙開始

 

 

 

 

 

 





・ネコチェーンソー

恐るべき敵の襲来に備えチェーンソーを手にしたネコ。
開かないドアもこれ一つで簡単に開けられる。
ごくたまにゾンビの動きを一瞬止める。540ヴァリス。


・にゃんこ城Max

理想のにゃんこ城を完成させたにゃんこ。
最新式キャタピラは地球温暖化に配慮した立ちこぎ式。
波動はあいかわらず気合で出す。990ヴァリス。


グロ描写

  • 入れろ。内臓抉り取れ。
  • 止めろ。自重しろ。
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