オイラはパイモン。旅人の為に璃月におつかいに来てるんだぞ。
そんな偉いオイラに纏わりつく厄介者が現れる。胡桃だぞ。
さらにまた凡人が現れる。凡人だぞ。
またまたオイラの前に現れるのはなかよし三人組。香菱行秋重雲だぞ。
そんな厄介者から逃れる為オイラは必死こいておつかいを遂行しようとするぞ。
それは全て旅人によしよしされる為!
だからオイラに構わないでくれ!

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おつかいパイモン! 璃月編

 

【挿絵表示】

 

 

 オイラはパイモン、料理で使う材料を購入する為璃月におつかいに来てるんだぞ。

 

 旅人はデイリーやら樹脂消費やらで疲れて寝込んじゃったんだ。毎日お疲れ様な旅人の代わりにオイラが肩の荷を少しでも減らしてやるんだぞ。

 

 確か万民堂はここら辺なはず…

 

「あぁ! パイモンいい所に! ほんの少~し話に付き合ってよ!」

 

 向こうから走ってくるのは……うわっ胡桃だぞ!

 今日に限って一番会いたくない奴に見つかるなんて、オイラはついてないぞ……

 

「なんで無言で逃げるの? ちょっとだけだから、ね? 冒険者協会から聞いたよ、パイモンが最近非常食イジりされてないって」

 

 ナチュラルにオイラを掴んでグイッと寄せられるぞ。

 無自覚をいい事に乱暴な振る舞いをするのはいけないんだぞ。

 

「それがどうしたんだよ! オイラは忙しいからほっといて欲しいぞ」

 

 自分に不利な言葉は排除し、どうしたんだよの一言しか頭に入らない高性能な処理脳をお持ちな胡桃。元ある目の星がさらに煌めきが増す!

 

「そこで私に任せれば第二の非常食ブーム到来間違いなし! パイモン弁当を万民堂に依頼して作って貰うの。魚ベースにしたほっかほかなパイモン弁当は瞬く間に売れ、往生堂の広告が一緒に入った袋を受け取った人達は大満足! お腹をぷくーっと満たした後、パイモンは非常食という概念を再び呼び起こし、次いでに往生堂の広告に目が行けば……ってあれ?」

 

 胡桃はキョロキョロして違う方向に走って行くぞ。ふぅ、物陰に隠れてどうにか巻けたんだぞ。

 というか、オイラは第二非常食ブームなんて全く来て欲しくないし、寧ろみんな忘れていて楽になってきてたんだ。もう掘り起こさないでくれ。

 

 万民堂に表から行くとまた胡桃に見つかりそうだし、ここは裏から回ろう。

 

 うぅ、快刀陳から美味しそうなチ虎魚焼きの匂いがするぞ。けどこのモラは旅人から預かったモラだぞ、買わずに我慢して通り過ぎないと……

 

 あ、快刀陳の前に居るの鍾離じゃないか?

 なんか黙って立ち尽くしてるけど、チ虎魚焼き食べないのか?

 ああそういえば海産物が苦手とか言ってた気がするぞ、じゃあきっと豚肉の油炒めの方を頼みたいんだ。

 ……それはそれでなんか嫌な予感がするんだぞ。

 

「あ、久々に会ったなパイモン。ちょうどいい所に」

 

 やっぱり貧乏人に目をつけられたぞ。

 そのまま凡人らしく突っ立ってればいいんだぞ。

 

「オイラは忙しいんだぞ。じゃあまたな……っておい! 翼を掴むな離してくれ!」

「最近公子殿を見かけなくなってな、店を訪れる度どこからともなく現れ奢ってもらっていたんだが、今モラを切らしてて」

 

 ほらこんな感じにと言いたげに、財布を裏返しモラなしアピール。

そんな事しなくても鍾離が一文無しなのは百も承知だぞ。

 

「要するにオイラに、俺が払うよ(パイモンお得意全力モノマネ)して貰いたいんだろ!?」

 

 タルタリヤは監獄にぶち込まれた後、クジラと追いかけっこしていたと言うのに、鍾離は呑気に豚肉の油炒めと睨めっこしているんだぞ。全く、鍾離も困ったもんだぜ。

 

 それにオイラはおつかい代のモラとこっそり持ってるへそくりしか無いぞ。おい、頼むからそんな目でオイラを見ないでくれ……!

 

「俺が払うよ(パイモン)」

 

 もう仕方ないんだぞ。これが最後なんだぞ。

 

「申し訳ない、共に酒を交わしたいところだが、相手がパイモンな上酒を購入出来るモラも無い。いつかまた出会った時に御礼をさせて欲しい」

 

 と言いつつ受け取った豚肉を即食べだす鍾離、まるで遠慮が無い。

 

「いつかっていつになるんだか……それにその豚肉をオイラに少し」

「パイモンの少しは信用出来ないんだ。いつかまた出」

「じゃあまたなー」

 

 へそくりが減った上オイラの目の前で美味しそうにモサモサ食いやがって!

 まあこれも旅人へのおつかいの為、旅人がオイラを褒めてくれるのであれば……へへっ。

 

 良し、ようやく万民堂の裏まで来れたぜ。後は胡桃に気づかれずに警戒しながら購入すれば……

 

 そんなオイラに背後から迫る声!

 

「待ちなさ~い!」

「だから言ったじゃないか行秋! 嫌な予感がするって! 毎回ぼくを巻き込まないと気が済まないのか!?」

「これはあれだよ重雲、お決まりの展開と言うやつさ。妙な食材で調理した香菱の激辛料理の試食をせがまれるのもまた、重雲が食べる展開に打って付けと言う訳だ」

「なんでぼくが食べる前提なんだ? せめて行秋にも道ずれになってもらおうか」

 

 香菱、行秋、重雲のなかよし三人組がやってくるぞ!

 

 全く次から次へとなんなんだ!?

 もしかして、オイラはまたあの言葉を……早く物陰に。

 

 逃げ惑う青い二人組がオイラを視界に見つめるなり、視線を一点集中させ呪文のように唱える。

 

「「あ! パイモンいい所に!」」

「もう嫌なんだぞー!!!」

 

 どうにかして逃げないとやばいぞ!

 オイラだって激辛料理は得意じゃないぞ。誰かに匿って貰うしか……

 

 全力で逃げるオイラの前方に、目を常に輝かせる厄介者が現れる!

 

「あ~ようやく見つけたよパイモン! さあ! 私の言う事を素直に聞いて!」

 

 胡桃!?

 胡桃と香菱達に挟み撃ちにされたぞ!

 もう逃げ場も無いぞ、誰か、誰かオイラを助けてくれ───!

 

「もう辞めないか、パイモンが震えている。弱い者いじめは良くないだろう?」

 

 オイラの背後から聞こえる声。

 

 この声、鍾離じゃないか!

 オイラを庇ってくれたんたぜ……って。

 

「オイラは弱くなんてないぞ!」

「私は話を聞いて欲しいだけなのにー」

 

 胡桃は頬を膨らませてプンプンしてるんだぞ。

 お前が一番厄介なんだぞ。

 

 香菱がどこから出したのか検討がつかない早業で、手に謎料理を持ち掲げる。

 

「じゃあ鍾離さん、アタシが作ったこのハトの胸肉と爆炎樹激辛炒め~草スライムの葉を添えて~を食べてみてよ! 今日の朝、モンドの橋でハトを狩ってたらお肉が余っちゃって、とりあえずその場にあった食材で作ってみたの。はいどうぞ!」

「鍾離殿……!」

「鍾離先生……!」

「「この通り!」」

 

 重雲と行秋が頭を下げて合掌してるんだぞ。海灯祭の宴会での記憶がフラッシュバックしたぞ。もしかしてまた押し付け合いが発生するんじゃないだろうな?

 

 それにしても香菱の奴、また爆炎樹を調理してたのかよ。地味にティミー虐してるけど、旅人も真顔でいつもしてるしまあいいか。

 

「っ……! そ、そういえば先程快刀陳で豚肉の油炒めを頂き、俺は腹を満たしているんだ。いつも腹を空かせているパイモンでも」

 

 やっぱり始まったぞ。だけど残念だったな!

 オイラにはあの切り札があるんだぜ?

 

「鍾離、豚肉のお礼をまだ貰ってないぞ。今がその時なんじゃないか?」

「なっ……! わかった、これも試練なのかもしれない。俺が凡人に並ぶ経験として必要な道のり……では、有難く頂こう」

 

 有難そうじゃない青ざめた鍾離は、おどろおどろしいオーラを放つそれを口に運び───

 

 その時、濃緑の煙が空中から瞬く間に現れ、そこから鍾離と旅人大好きなあいつが手を伸ばす!

 

「危険です帝、鍾離様……! その忌々しい物を口にしては! せめて、せめてこの我が毒味を……!」

「魈!?」

「「「降魔大聖!?」」」

 

 魈が鍾離の身の危険を察知して駆けつけたのか!?

 やばいやばいぞ、魈の奴ディオナの時みたくワンチャン大丈夫だと思ってないだろうな?

 香菱の料理は美味い時は美味いけどディオナみたいな加護は無いんだぞ!?

 

 オイラ同様に驚き慌てふためく一同。

 重雲が必死になって激物を取ろうとする!

 

「いくら降魔大聖でもそれだけはおやめ下さい! ここはぼくが!」

「降魔大聖の代わりに重雲が頂くべきです!」

 

 と腹黒。行秋のやつ、足を引っ張るのはおちゃのこさいさいだな。

 ショタ三人の手を凡人を越えた動きで避ける岩神。

 いつもの済ました顔をしながら言う。

 

「これは俺が頂くと決めた事だ。これでは覚悟と決心をした意味が、ちょ、服を引っ張らないで欲しいのだが」

「わぁ、アタシの試作品をみんなして食べたいなんて……! しかも仙人さんまで!」

「わーすごいすごいみんながんばってー」

 

 外野の声が上がる中、避けきれない服を行秋に容赦なく引っ張られ、鍾離はとうとう体制を崩す。あ、これはヤバイぞ!

 

「鍾離! ちゃんと持たないと炒めものが!」

 

 もみくちゃにされた鍾離の手に持つ、激辛炒めを乗せた皿が傾く!

 そのまま激辛炒めがスルッと落ち───

 

「靖妖儺舞!」

 

 岩神の隙をカバーする完璧仙人。

 魈が旋風と共に高く飛び、その風力で激辛炒めが宙を舞う!

 

 空飛ぶ激辛炒めが着地したその先は。

 

「何!? 店主! 空から料理が!」

「五秒で受け止めろ!」

 

 五秒も経たずに皿で受け止めた人物はジェリー!

 七国の料理を巡る目標があるにも関わらず、璃月で三年間毎日中原のもつ煮と対峙しているあのジェリーだ!

 

 そんなジェリーが恐る恐るその料理を食して。

 

「……! なんて、なんて美味しさ! ああ風神様、有り難き幸せ……」

「「「「「なんだって!?」」」」」

 

 香菱を除く全員が驚愕だぞ。

 魈まで空いた口が塞がらないぞ。

 

 良かったなジェリー、これでスメールに旅立てるぞ。それでスメールでまた三年間デーツナンと対峙するんだな。

 

 そんなジェリーが喉の異変に気づき両手で喉元を摩る。

 だがもう遅い!

 

「……うぐッ……急に喉が……焼け……(ガタッ)」

「「「「「「「……」」」」」」」

 

 俺達は何も見ていなかった。

 いいな?

 

 ───✓ ジェリーのモンドグルメメモリー 任務完了───

 

 ん?

 これは璃月の評判任務?

 そうか、香菱の試作品の素材はモンドの鳥肉と爆炎樹だ。モンドの味をジェリーが堪能したのか!

 ……璃月の味じゃないしジェリーはやっぱもつ煮と共に一生を過ごすんだな。

 

 いやいやそんな事よりも。

 

「やったぞ! 旅人に内緒で二万モラゲットだぜ! えへへへへへ」

「……旅人!」

 

 魈の奴なんか急にこっち見てくるぞ。オイラもしかして失言を!

 

 焦ったオイラは咄嗟に一枚の紙切れを落とし、魈がすかさず拾い上げる。

 

「……料理の材料表?」

「あーそれはオイラが旅人におつかいを頼まれて」

「この材料費は?」

「ここにあるぞって何するんだ魈! しかも二万モラまで、オイラのモラを返すんだぞ!」

 

 魈はモラ袋とメモを見つめて。

 

「……後は我に任せろ」

 

 スっと姿を消した。

 

 ああああああああぁぁぁ!!!

 あいつ旅人と会う口実の為におつかいを済ませる気だぞ!

 しかもちゃっかり魈が評判任務クリアしたみたいになっちゃうぞ!

 旅人がオイラをよしよしするはずが、魈をよしよししちゃうんだぞー!!!

 

 魈とオイラの一連の騒動まで見なかったことにした幼馴染組と凡人。

 香菱が空気を一旦切り替えるようにして。

 

「あの人がアタシの料理を美味しそうに食べてくれて嬉しいけど、あなた達の感想をまだ聞いてないよ。ほら、まだ残ってるからじゃんじゃんお食べ!」

「どこから激辛料理を出したんだ!?」

 

 と言い残し行秋は即踵を返す。

 

「え!? 香菱、せめて冷ましてから……って行秋待て! 一人だけ抜け駆けなんて卑怯者にも程がある!」

「あー私急に超~大事な用事を思い出しちゃった! じゃあみんなお疲れさーん」

 

 すたこらさっさと重雲と胡桃が去って行くのを見た鍾離は、神様顔負けな凡人らしい行動に出る。

 

「うッ急に腹痛が……豚肉の油炒めでも当たったか……?」

 

 嘘つきは泥棒の始まりなんだぞ、凡人より成り下がったらタダじゃ置かないからな。

 

 そして香菱は残ったオイラにキラキラおめめで追い詰める。

 

「パイモンパイモン! あなたいつもひもじい思いをしてるでしょ? た~くさん食べていいよ?」

「もう、もう勘弁して欲しいんだぞー!!!」

 

 魈が寝室にいる旅人(蛍)に会う描写が頭に過ぎったオイラは、二人の気を使い璃月でしばらく追いかけっこで時間を潰すことにしたぞ。

 

 ちなみにおつかいは魈がちゃんと完了してよしよしされたんだそうだぞ。今度あったら腹パン案件だぞ。


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