魔法が忘れ去られた世界で願いを   作:六角ルビー

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プロローグ

 青い光が宙に浮く巨大で広い空間に複数の声が響く。物がなく誰もいない空間なのに声だけが聞こえる奇妙な状態。そんな場所で声の主達は空間に近づいてくるであろう人の事を気にしていた。

 

『我らが子孫が近づいてくるのが分かる』

 

『少し歪だが魔法が使える体のようだ』

 

『すでに我ら一族は滅びたと思っていたが、これほど幸運な事はないだろう』

 

『もうこれ以上、我らに魔物を押さえておく力はない』

 

『時間がない。あの子を覚醒させ魔物を消滅させるのだ』

 

『あの子がここまでたどり着けるように魔法に願おう』

 

『そうだな。我らの心を一つに……』

 

 声が沈黙するのと同時に空間が青い光を激しく帯びていく。宙に浮く青い光も呼応するように、より一層光り輝くと部屋中に大きく響くほどの声が駆け巡る。

 

『魔法よ導け‼』

 

 光はやがて誰かを祝福するような柔らかな光へと変化し、部屋全体を包み込むのであった。

 

 ♢

 

 ここはプラトディアと呼ばれた世界。人々は王の庇護の下、金属を使用して城下街や町村で生活をしている。主に作物を育てる者、武器を作る者、狩猟する者などの様々な職業に就いて人々の暮らしは回っていた。

 

 そんな生活を続けていたある日のことだった。海に浮かぶ島ディストリア諸島で古ぼけた書物が発見された。それは近隣諸国の王国デルキルタスの首都フューリへと運びだされ、王に献上されることとなる。その書物を開くと見たこともない文字が書かれていた。すぐさま研究機関へと預け解読を開始するのだが、彼らでも困難を極めるほどだった。結局、どれだけ時間を掛けても解読できず諦めかけていたその時。何を思ったのかデルキルタスの王は人類の新たな発展へと繋がると考え、一般にも写本としてだが公開することに。おまけに文字を解読できたものには数え切れない程の賞金を与えるとも提示した。

 

 賞金に目がくらんだ解読の専門家たちは誰よりも早く解読しようと急ぐ。その時に書物の名がつけられたのだ。名は未知なる神秘と出会いに心を込めて「福音」と呼ばれるようになった。ただ、ここで問題が発生。なぜなら何年経っても進歩しないのに嫌気がさした専門家が解読を諦めだしたのだ。次々に離脱していく専門家達に王は危機感を覚え、何とか繋ぎ止めようとしたが、その努力むなしく気が付けば誰もいなくなってしまったのだった。

 

 時が進み、ついぞ解読されることのなかった書物のことを誰もが忘れかけていた。そんな時代の中でも文字の解読を諦めない人物が存在した。故郷の実家から独り立ちして、首都フューリの住宅街に移り住んでいるアート・セルリアという名を持つ青年だ。彼は賞金に目がくらんだ専門家たちとは違い、未知なる冒険を夢見る青年であり、書物にはディストリア諸島の謎が隠されていると考えていた。現在は両親から福音が解読されていたと言われた街で、必死に本を噛り付いていたのだった。

 

 そんな彼が解読を始めてからいくつもの時が流れ、太陽が沈み、街明かりが点き始めたころの出来事であった。部屋にこもって複製本の文章を睨みつけていた彼が突如、叫び出した。

 

「ついに! ついに分かったぞ!」

 

 その書物の文章に書かれていたのはディストリア諸島の地下に巨大な建造物が存在しているという内容だった。更に聞いたこともない鉱物や生物の名前があり、彼が思っていた通りのことが書かれていた。

 

「早速、冒険の準備だ! 書物・お金・傷薬・解毒薬、それに保存食っと」

 

 彼は興奮を抑えきれないまま荷物を麻袋に入れて、出発準備の支度を始める。

 

「あとはーそうそう、これを忘れちゃあいけない」

 

 家の壁に立てかけてある短剣を腰につけ、躍り出るように外へと玄関を開けた。

 

「ん?」

 

 静けさが漂う暗くなった街を見たアートは、自身が徹夜していたことに気づいたが、些細なことだと気持ちを切り替えて目的地へと指を差した。

 

「さあ出発だ! 港はこっちだな!」

 

 彼は歩みだす。ディストリア諸島に存在する神秘を目にするために――




※途中から同じ文章が繰り返していたので修正しました。申し訳ない
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