魔法が忘れ去られた世界で願いを   作:六角ルビー

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第十二話 未知なる石の可能性

 アートとコミとベルは武器屋に向かうため港町に来ていたが、前にアートとコミが来ていた時よりも人の通りが少ないように見える。それに賑やかだった人の声が少なく、どことなく薄暗い空気をかもし出していた。

 

「おかしいですね……この前来た時よりも活発さがないというかなんというか……」

 

「どういうことでしょうか。少し様子がおかしく感じます」

 

「ここはいつ来てもにぎやかな場所であるはずじゃが……何かあったのかの」

 

 様子がおかしい町を歩きながら目的である武器屋を目指す。すれ違う人々は、どこか暗く、下を向いて歩いている。そんな町の様子を三人は不気味に感じていた。歩き始めて、しばらくすると赤い屋根が視界に見えてきたのだが、突然、怒鳴り声が聞こえてきた。どうやら武器屋の玄関前で三人の男のうち、一人が怒鳴っているようだ。

 

「どうして武器の購入ができねぇんだ! こっちはすぐにでも武器がいるんだ! 昨日の夜みたいにあの化け物が現れたらと思うと怖くて震えが出てきちまう」

 

「お前さんの言い分は分かるんだが、こっちは売れる武器がねえんだ。それに新たに作ったところで、霧の獣に使ってしまったら壊れてしまう。これが毎日続いてしまうと俺の店だけじゃ供給に間に合わん。だから、ここに滞在しているゲーマ王国の軍に守ってもらった方がいい」

 

「だからといって武器が購入できない理由にはならないだろうが!」

 

「少し待て」

 

 怒鳴っていた男の付き添いであろうか。後ろで様子を見ていた男が怒鳴っている男の肩に手を置き止める。

 

「どうしたんだ? トビー」

 

 トビーと呼ばれた男は自身にかけられた言葉を無視して目の前にいる店主の男に視線を向けた。

 

「武器が壊れてしまうのは分かる。軍に守ってもらうのも一つの手段だ。それでも俺達には今、身を守る武器が必要なんだ。どうか作ってくれ」

 

 頭を下げてお願いするトビーに店主の男が腕を組んで溜息を吐く。

 

「黒い霧の獣に対抗できる武器が作れる可能性を見つけたんだ。それまでは何とか耐え忍んでほしかったんだが……そこまで言うのであれば作ってやろう」

 

「待ってくれ、対抗できる武器だと? それは本当なのか?」

 

「あくまで可能性だ。だけど信憑性は高い。それを提案してくれた方が、丁度来てくれたのだからな」

 

 腕を組んでいた店主の男が、近くまで来ていたアートとコミとベルがいる方へと顔を向ける。

 

「昨日ぶりだな。アートさんとコミさん」

 

 店主の男が顔を向ける方へと焦っていた男の二人が目を向けると、その先にいる青年を見て男達は驚いた。そんな様子に特に動じることなく見られているアートは店主に返事を返す。

 

「はい。ゲングさん昨日ぶりです。それとトビーさんとアレックスさんもお久しぶりです」

 

「……久しぶりだな兄ちゃん……もしかして武器屋に用があるのか?」

 

 アレックスの質問にゲングが答える。

 

「用があるも何も、提案してくれたのがアートさんとコミさんだ。そしてここにいるということは紫色の欠片を指定した量、持ってきたんだな?」

 

 ゲングの言葉にコミが頷く。

 

「はい。持ってきました。早速、作ってもらいたいのですがよろしいでしょうか? どうやらお取込み中だったようですけど」

 

「問題ない。店の中に入ってくれ。そこの二人も知り合いであるなら入るといい」

 

 ゲングが店の扉を開け、先に入っていく。五人が、その後に続き中へと入店するのであった。

 

 店の中で六人が椅子に座り机を囲むとゲングが口を開く。

 

「では紫色の欠片を出してくれるか?」

 

 彼はベルから紫色の欠片が入った麻袋を受け取ると、すぐに麻袋を開き中身を確認した。

 

「これだけあれば問題ない。早速、作らさせてもらおう」

 

 ゲングは紫色の欠片が入った麻袋を持って細い長机の奥にある扉の中へと入っていった。中から音が聞こえてくる。どうやら作業を開始したみたいだ。

 

「あとは待つだけじゃの」

 

 ベルの何気ない一言に、何かに気づいたアレックスとトビーが驚いた。

 

「あんたは! いつも石の壁に向かって踊っていたオッサンじゃねーか。なんでアートと一緒にいるんだ⁉」

 

「何も、アートはわしの助手じゃ。一緒にいてもおかしくはあるまい」

 

 ベルの返答に困惑するアレックスを他所に、コミが少しお辞儀をする。

 

「始めまして、この方はゲーマ王国軍所属の研究者ベル博士です。そして私はアートさんと共に助手をしているコミです。よろしくお願いします」

 

「……これはご丁寧に……俺は何でも屋のトビーで隣の男が相方のアレックスだ。こちらこそよろしく」

 

 トビーがお辞儀を返すと、慌てた様にアレックスが続いてお辞儀をした。

 

「アレックスさんとトビーさんはどうしてここに? 何か揉めていたようですが……」

 

「あぁ。なに、武器を新調したくてな。黒い霧の獣と戦ったら使い物にならなくなってしまってよ。武器屋に寄ったら、あの有様ってわけさ」

 

 アレックスは何かを思い出すように少し怯えた様子でアートの質問に答えた。

 

「黒い霧の獣と戦ったんですね。何か情報はありますか?」

 

「知っているのか……確か、夜になると現れる怪物って聞いている。昨日の夜も警備に出ていた何でも屋の仲間が、何人も怪我を負い、更に重傷者が出たと聞いた」

 

「ほとんどよく分からないが、この島でよくないことが起きようとしていることだけは俺たちでも理解しているつもりだ」

 

「ますます事態が悪化しているようじゃの。黒い霧の獣と戦っても壊れることのない武器。本当に作れたのであればこの事態も収束するじゃろう」

 

「でも……それができなかったらどうするんだ? 他に方法はあるのか?」

 

「他に方法は見つかっておらぬ。じゃが、作れる可能性は大きいはずじゃ。お主たちも見たことがあるはずじゃろう。黒い霧の獣が残す紫色の石を、の」

 

「もしかして先ほど渡した物は、その紫色の石なのか?」

 

「その通りじゃ。あれは未知の物体じゃ。可能性はありそうじゃろう?」

 

「そう言われると……まあそうなんだが……」

 

 五人が会話をしていると、奥にある扉からゲングが出てきて、手に持った一本の棒を机の上に全員が見えやすいように置いた。

 

「何とか、鉱石と混ぜることが出来た。皆が見ているところで少し耐久実験がしたいが為に、簡単な棒にして持って来させてもらった。この棒を紫色の欠片に衝突させたら、どうなるのかを試しておきたい」

 

「ふむ、そうじゃな。武器として作る前に実験しておいた方がいいのじゃ。皆もいいかの?」

 

 ベルの言葉に全員が頷く。

 

「それじゃあ。俺についてきてくれ」

 

 ゲングの案内の元、五人は店の裏庭へと出る。ゲングは五人が見守る中、用意した石の上に紫色の欠片を置き、棒を構えた。そして力強く振り下ろされた棒は、紫色の欠片と衝突する。すると何かが割れる音が辺りに響いた。

 

「どうですか? ゲングさん」

 

 離れて見守っていた五人は叩きつけた棒と紫色の欠片を交互に見つめているゲングに近寄る。

 

「この棒をよく見てみろ。どこにも傷らしきところは見えない」

 

 ゲングは手に持つ棒の一部を。よく見えるように突きつけた。

 

 突きつけられた棒を五人が確認すると。ゲングの言う通り、棒には一切の傷が見当たらなかった。それに紫色の欠片の方を見ると更に細かく割れているのが確認できる。

 

「はっはは! これはいけるかもしれない。よし! アート、今持っている武器を渡しな。それと似た形状の武器を作るぞ!」

 

 アートはゲングの言われた通りに腰につけていた短剣を鞘ごと彼に渡す。すると五人を置いて一目散にゲングは店の中へと戻っていった。

 

「ベル博士って言ったな……」

 

「そうじゃが、どうかしたかのアレックスよ」

 

「あの武器を作るには紫色の欠片が必要なんだな?」

 

「そうじゃの。黒い霧の獣が残す石が必要じゃ」

 

「そうと分かれば、トビー!」

 

「分かっている。同業者と一緒に紫色の欠片を探すぞ」

 

「というわけで俺たちは用事が出来たから、店から出るわ。情報ありがとな!」

 

 アレックスとトビーは駆け足で裏庭の扉を開き、中へと入っていった。

 

 取り残された三人は少し困った顔して目を合わせる。

 

「わし達も行くのじゃ」

 

 のんびりとした足で三人も店の中へと戻るのであった。彼らは扉を開けて裏庭から武器屋へと足を踏み入れると、すでにアレックスとトビーの姿は見当たらず、金属の音だけが響いていた。

 

「二人とも早いですね」

 

「足取りが軽かったですから、よほど嬉しかったんだと思います」

 

「まあ、そのうち戻ってくるじゃろう。わしたちは椅子に座って待たせてもらうのじゃ」

 

 三人は椅子に座り武器の出来上がりと先ほど出て行った二人を待つのであった。

 

 待っている間、会話をしていると玄関の扉が開かれる。どうやらアレックスとトビーが戻ってきたようで、三人と共に机を囲む。

 

「紫色の欠片は見つかったのじゃ?」

 

 少し息切れをしている二人にベルは探しに行った成果を聞いた。

 

「意外と簡単に見つかったぜ」

 

 アレックスはそういうと片手に持っていた麻袋を机の上に置く。中には沢山の物が入っているようで麻袋の形が少し変形していた。

 

「一部の同業者が集めていたんだ。少し分けてもらう代わりに武器の作成依頼を頼まれてな──」

 

 机の上にトビーが麻袋を置く。こちらも同様に麻袋の形が変形しているようだ。

 

 恐らく今出された麻袋の中身は、すべて紫色の欠片だと思った三人は、自分たちが予想している以上に事が重大になっていると改めて認識するのだった。

 

「まさか紫色の欠片が、これほどあるとはのう。黒い霧の獣は想像以上に多いようじゃ」

 

「これでも一部だけなんですよね……」

 

 アートの疑問にアレックスは神妙な面持ちで頷く。

 

「一部だけだと思うぜ。何せ、ほとんどの同業者は拾っていないらしい。今でも道端に落ちている可能性はあるかもな」

 

「俺たちの話を聞いて一目散に走っていったから、もう落ちてないかもしれないがな」

 

「さて、俺たちはこのままゲングさんが戻ってくるまで待つつもりだが、あんたたちはどうするんだ? あの様子だと時間が掛かりそうだが」

 

 アレックスは奥にある扉を見る。先ほどから五人で会話をしているが、扉の奥から聞こえる金属音が止む気配がない。

 

「もし店から用事で出ていくのであれば、ゲングさんが出てきたときに伝えておくが」

 

「いや、わしたちも待たせてもらうのじゃ。用事と言っても特にないしの」

 

「分かった。それじゃあ、みんなで待つとしようか」

 

「そうです。待っている間に町の様子について教えて貰えませんか?」

 

 何かを思い出したコミが二人に質問した。

 

「町の様子か……まあ、歩いていれば分かるか。普段と違うもんな」

 

「簡単な話だ。単純に黒い霧の獣が原因だよ」

 

「黒い霧の獣が原因?」

 

「俺たち何でも屋以外にも被害があったんだ。それで町の人々は委縮してしまっている。次の被害者は自分たちじゃないかと」

 

「やはり事は深刻になっておるようじゃの。帰ったら軍の者に話をつけておくのじゃ」

 

「それは良かった」

 

 ベルの言葉を聞いたアレックスとトビーは、少し安堵したかのように肩の力を抜いた。

 

「俺たちも聞いていいか? あんたたちが知っていることを」

 

「別によいのじゃ。それで何を聞きたいのじゃ?」

 

「それはもちろん黒い霧の獣について知っていることをさ」

 

 三人はアレックスとトビーの食い気味な質問に対して答えられる範囲で答えていく。その様な事をしているうちに、細長い机の奥にある扉からゲングが出て来た。いつの間にか、かなり話し込んでいたようだ。

 

「確認してくれ。早急に作成したため不恰好だが、武器としての役割は出来るはずだ」

 

 アートの目の前に出来上がったばかりの不恰好な短剣が置かれる。ゲング以外の四人が、よく見ようとアートを取り囲む様にして移動した。

 

 彼が短剣を手に取り眺める。一見すると銀色に鈍く光る刀身であり、他の武器と比べ形が不恰好以外、何も変わらないように見えるが、少し角度を変えると淡く紫色が浮かび上がった。

 

「少し不思議な感じ、じゃのう」

 

「はい。ただの剣に見えますけど、違う角度から見ると紫色がかって見えます。不思議ですね……」

 

「大丈夫なのか? 棒の時は良かったんだが武器になった途端、脆くなっているなんてことないよな」

 

「それなら、棒の時と同じ様に試してみるといいんじゃないか?」

 

「それもそうか……アート、試してくれないか?」

 

 アレックスの言葉にアートは頷き、ゲングに確認を取る。

 

「試してみてもいいですか?」

 

「構わない。もし使用に問題なければ、そのまま仕上げさせてもらう」

 

 六人は武器の性能を確認するため再び裏庭へと出る。ゲングが試した時と同じ様に石の上に紫色の欠片を置き、アートは短剣を構えた。五人が見守る中、短剣を紫色の欠片に向かって振り下ろす。何かが割れる音が響いた。アートは振り下ろし終えた短剣を、握っていない片方の手の上に刀身の側面を置き、横向きになるように添えた。

 

 刀身を確認するアートに見守っていた五人が近づく。

 

「どうだ? 問題なかったか?」

 

「問題ないですゲングさん。刀身が欠けている様子もないですし、紫色の欠片の方はきちんと割ることが出来ました」

 

 そう言って短剣を渡そうとする彼からゲングは短剣を受け取った。刀身を横向きにして注意深く確認するとアートの言う通り、刃が欠けているような所は見当たらない。

 

「問題なさそうだ。仕上げをしてくる。あともう少しだけ待っていてくれ」

 

 六人は店の中へと戻り、ゲングは仕上げをおこなうため再び奥の扉へと入っていく。残された五人はゲングが戻ってくるまで待つのだった。

 

「それにしても良かったぜ。問題なく紫色の欠片を破壊することが出来て。これでようやく黒い霧の獣に悩まされなくなるのか……助かった」

 

「しかし、不恰好でありながら作成するのが長すぎる。必要としている人、全員に渡るのはだいぶ先かもしれない。それに黒い霧の獣が消えた訳ではない」

 

「トビーの言う通りじゃ、アレックス。黒い霧の獣がいる限り、用心しなければいけないことには変わりないのじゃ。対応できる武器が出来たからと言って油断しておると足元を救われるぞ」

 

「分かっているって、ベル博士」

 

 三人が話し合っている中、コミがアートに向けて笑顔を送る。

 

「良かったですねアートさん。これでようやく宮殿の調査を再開できますね」

 

「ありがとうございますコミさん」

 

 アートがお礼を言うとコミが何かを思い出したかの様に口を開いた。

 

「そういえばアートさん。地下の宮殿と黒い霧の獣、どこか関係性があるような感じがしません?」

 

「僕も地下に眠る宮殿、黒い霧の獣。この二つはどこかで結びついている様に感じています。宮殿の奥、そこには一体なにがあるのか知りたいです」

 

「アートさんもなんですね。石の扉が開かれた時からおかしなことが次々に起こっています。私も宮殿の奥に何があるのか知りたいです。それに今でも早く向かわなければならないと感じています」

 

 二人が会話をしていると、ふと視線を感じ、感じた方へ顔を向けた。そこには呆れた顔をしたベルと二人の会話を聞き逃さないよう聞き耳を立てているアレックスとトビーがいた。

 

「アート、コミ。他の者に内緒にしようと思っておったのに言ってしまうとは、注意しておくべきじゃった」

 

「どういうことです?」

 

 二人は意味が分からず首を傾げる。

 

「わしたちが石の扉を開けたせいで、黒い霧の獣が出現してしまった可能性があることを言ってしまったことじゃよ。いわゆる、わしたちは加害者ですと言っておる様なものじゃ」

 

 ベルの説明に二人は、しまったとでも言うようにアレックスとトビーを見る。その二人は気まずそうに頭をかいたり極力、目を合わせないようにしていた。

 

「……今の話から察するに、わざとしたわけじゃないんだろう? なら仕方ないんじゃねぇかな。なっトビー」

 

「石の扉を開けたら黒い霧の獣が現れるなど、誰も予想ができないだろう。知っている者、以外はな。だが黒い霧の獣の対策や先程の会話を聞く限り、故意にしたわけじゃなさそうだ。だから、責めるつもりはない」

 

 二人の言葉にアートとコミとベルは安堵し感謝を述べる。

 

「いいってことよ。それに原因となった可能性のある場所に向かうんだろ? だったら、ここは俺たちに任せて安心して向かいな。それに、あんたたちが調査をする事で、こうなった原因を止めることも出来るかもしれないしな」

 

「ありがとうなのじゃ」

 

「お礼はいい。それよりもあんたたちが原因を止めてくれることを願うよ」

 

「分かっています。こうなってしまったのは僕たちのせいかもしれません。原因が本当に僕たちが思っているものであれば、勝機があるかと思います。絶対にとは言えませんが、全力で止めに向かうつもりです」

 

「そう言ってくれるだけで満足だよ」

 

「話は終わったか?」

 

 五人が互いに納得した事で、話し合いが終わろうとしていたところに、男の声が聞こえてきた。慌てて声のする方へ向けると鞘に入った短剣を持ったゲングが立っていた。五人は動揺する。

 

「いっ、一体いつからいましたか?」

 

「石の扉を開けたら、黒い霧の獣が現れたってとこかな?」

 

 コミの質問にゲングは答える。どうやら知られたくないところを聞かれていたようだ。

 

「まあ、俺も責めるつもりはないし、むやみやたらに言いふらしはせんよ」

 

「本当ですか?」

 

「故意ではないのだろう? それに石の扉がある限り、いずれ誰かが開けていた事だろう。それが、お三方だったってだけさ。他の誰かだったら解決しようとしてくれない可能性もあるわけだ。その点、俺は良かったと思う。現に解決しようと動いてくれているからな」

 

 ゲングは手に持った短剣をアートに渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 彼は少しだけ震えた手で大事そうに受け取ったアートを見てから、アレックスとトビーの方へ目を向けた。

 

「さて、机の上に置いてあるのは紫色の欠片が入った麻袋だろう? どんな武器が所望だ?」

 

 ゲングの言葉を聞いたアレックスとトビーは希望を述べていく。一通り希望を言い終えた二人は彼に麻袋ごと紫色の欠片を渡した。

 

 受け取ったゲングは、すぐに奥の扉へと向かおうとするが、アートに止められた。

 

「ちょっとだけ待ってください。約束の宝石を返します」

 

「ああー。忘れていたわ。ありがとうなアートさん」

 

 片手を頭に当てたゲングは、思い出したかのような声を上げるとアートたちに預けていた宝石を受け取る。

 

「それと伝言があります」

 

「伝言?」

 

「できれば、武器の作成を軍に優先して作ってはもらえないでしょか?」

 

「一応、どうしてか聞いてもいいか?」

 

「紫色の欠片を集める時に軍の方から、いくつか貰いまして……その時の条件に伝言をお願いされました」

 

「なるほどな。だが軍の人、全員分だと厳しいぞ。軍以外の人も欲しがるだろうし」

 

 彼がアレックスとトビーの方を見る。二人は深く何度も頷いている。

 

「全員って訳じゃないのじゃ。ただ、いくつかはって話じゃ」

 

「なんだ。そう言う事であれば問題ない。作って欲しいのであれば、材料を持ってこいと言っておけ」

 

 ゲングの了承に三人はお礼を言う。

 

「それじゃ。俺は作業に戻るわ」

 

 そう言うとゲングは奥の扉へと入っていった。

 

「武器が出来たんだし、早く軍に伝えた方がいいんじゃないか?」

 

「そうじゃの。アレックス、トビーありがとうなのじゃ」

 

 ベルに続きアートとコミもお礼を言うと三人は店の外へと出ていくのであった。

 

 先ほどまで賑やかだった店内が、金属音だけが鳴り響く空間へと変わる。残された二人は緊張をほぐす様に体を伸ばした。

 

「トビー」

 

「なんだアレックス?」

 

「俺たちも頑張らないとな」

 

「そうだな」

 

 アレックスとトビーは、しみじみしながら店の玄関の方を見つめるのであった。

 

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