魔法が忘れ去られた世界で願いを   作:六角ルビー

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海に浮かぶ島
第一話 ディストリア諸島


 波打つ音が聞こえ、髪をなでる潮風が眠気を誘う海の上で男の声が鳴り響いた。

 

「起きろ坊主!」

 

 誰かの声によりアートは重たい瞼を開ける。太陽の光がまぶしいのか、半開きにさせたまま欠伸を交えて目をこすり、まだ眠たそうにしている体を強引に起こした。

 

「徹夜明けは厳しかったか……」

 

 アートが眠気を取るために背伸びをしていると、また男性の声が船の操舵室の方から聞こえてきた。

 

「まったく、昨夜はディストリア諸島の謎を解くと息巻いていたじゃないか。大丈夫か? まあ、そんなことより前を向きな。見えてきたぜぇ、お待ちかねのディストリア諸島だ!」

 

 操縦士の男に言われるまま前へと顔を向ける。目の前に広がるそれは何の変哲のない海に浮かぶ、中央に大きな山がそびえ立つただの島だった。

 

「これがディストリア諸島」

 

 だがアートの目には宝島とでもいうかの如く輝いていた。

 

「坊主、妄想なんかしてないで準備をしな、船を近づけるぞ」

 

 そう声を耳にすると彼は妄想から意識を戻し急いで支度を始める。支度を進めるにつれ、船とディストリア諸島への距離が近づき船着き場に船が寄せられた。

 

「さあ着いた。フューリからディストリア諸島までの代金は千ゴールドだ」

 

 船から降り、麻袋から指定された金額を取り出し渡すと、お金を受け取った男は船のエンジンを掛け直しながら問いかけてくる。

 

「帰った時には坊主の冒険譚を聞かせてくれよ?」

 

「もちろん期待していてくれよ?」

 

 アートが答えると、男は満足そうに頷きながら船着き場から離れていった。

 

 船が見えなくなるまで見送ってから島へと向き直り気合を入れる。

 

「さて! 待ってろよ。絶対に見つけてやるぞ!」

 

 未知なる冒険に期待を込めながらアートは歩み出した。

 

 ♢

 

 あれから島中を探し回ったり、現地に住む人達から聞き込みをしたが。成果は上げられることはなかった。

 

「何も見つからない。過去に専門家たちが論文を発表した内容しか耳にしないし」

 

 今のアートは酒場の机に突っ伏しながら呟いていた。そのままの状態でいると気になる話が耳に入ってくる。

 

「なあ、町はずれに住むオッサンって、いつも何してるんだ? 数年前に島に来てから、山にある石壁に張り付いてばっかで気味が悪いんだよ」

 

「分からん。気味が悪いのは確かだ。たまにぶつぶつと呟いているのを見かける」

 

 会話を耳にしたアートは意を決し、話をしている男達の机へと向う。

 

「今の話、詳しく聞かせてもらえませんか? お礼はしますので」

 

 話題を振りかけた男は、横からの声に驚きながら振り向き、少し悩むそぶりを見せた後、相方に目を向けながら答える。

 

「勿論、お礼をしてくれるのなら喜んで話をさせてもらうぞ。なあトビー」

 

「ああ、問題ない」

 

 その後、彼らから聞いた話では、町の奥に石柱と一軒家があり更に奥へ進むと、いつからあったのか分からない石壁があるとのこと。ただ奇妙なオッサンが張り付き、ダンスを踊っているみたいだと言う。話を聞いたアートは石壁にとても興味をひかれたが、そこにいるオッサンは大丈夫な人なのかと不安にもなった。

 

「いい話をありがとうございます。お礼はこれぐらいでいいですか?」

 

 アートは机に千ゴールドを置いた。

 

「ああ、問題ない。そうだろ? アレックス」

 

「トビーの言う通り何も問題ないが、こんな情報に支払う金額にしては多いと思うんだが」

 

「いや、僕にとってはそれぐらいの価値があったんだ」

 

「兄ちゃんがそう言うなら、ありがたく貰っておくぞ」

 

 アレックスは満足そうに微笑むと相方のトビーと金を分け合う。それを確認したアートが席を立ち、外へと足を運ぼうとすると、先ほど会話していたトビーから声が掛かる。

 

「もし行くのであれば止はしないが、あそこにいるオッサンには近づかないほうがいいぞ」

 

 それだけを言ったトビーはアレックスとの会話に戻った。

 

「ありがとう」

 

 トビーの言葉に感謝の言葉を述べたアートは外へと続く扉を開けるのだった。

 

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