期末テスト直前
授業中の居眠りが多い高松燈はピンチを迎えていた。
関係代名詞って何だっけ……。授業でやってたっけ……。
そんな彼女に救いの手が。
バツが悪かったり、くすがったかったり、決意になったり。
受け取り方は三者三様。それでも歩む方向は一緒。
『What is MyGO!!!!!』

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欲しいものはいつでも手に入れられる訳じゃない

どうしよう……。

 

高松燈は焦燥していた。

 

彼女の所属するバンド「MyGO!!!!!」が原因ではない。

 

一生やる。

 

そう決めて始めたバンド活動はやっと軌道に乗り始め、活動は順調だ。

 

色々な壁を乗り越え、ようやくライブが出来るようになってきた。

 

燈はこのバンドの作詞を担当している。

 

歌詞を書き、それを歌にする。

 

言葉では伝えられないものを詩にして、みんなの演奏と共に歌に表現する。

 

こうしてできた歌が燈は大好きだった。

 

その詩を書くためなら夜寝る間だって惜しむ。

 

でも、燈は人間だ。

 

不眠不休というわけにはいかない。

 

お昼間の授業中に意識が途絶えることがここ最近多くなってしまった。

 

そして……。

 

 

 

 

時期は期末テスト前。

 

テスト前に実施された英語の確認テスト。

 

これこそ諸悪の根源だった。

 

最近授業を聞かずに寝てしまっている燈の結果は散々だったのだ。

 

中でも

 

『関係代名詞whatを使って例文を書きなさい』

 

『What's this ? This is a pen .』

 

という答えは授業中の居眠りを不問にする訳にはいかないという判断を先生にさせるには十分だった。

 

その後、燈は先生に呼び出されてしまい……。

 

「燈さん、最近授業中寝てしまっているようだけど」

 

「はい。ごめんなさい」

 

「先生ね、大きな声では言えないけど、少しくらい居眠りしてしまうのはいいと思うの。楽しいことがたくさんある高校生だもの。でも、寝てしまった分は自分で取り戻さないと。努力で自分の失敗を何とかするのは大人になるためには必要よ。来週の期末テスト次第では、三者面談の時にお話しないといけないから、お勉強も頑張って!」

 

このままではお母さんとお父さんに知られてしまう……。

 

二人に心配はかけたくない。

 

うぅ……。どうしよう……。

 

 

 

 

「あのちゃん」

 

「どうしたの?ともりん」

 

燈は同じバンドメンバーで友達の千早愛音を頼ることにした。

 

愛音は勉強が得意で、頼りになる。

 

でも、燈は愛音を頼るべきかまだ迷っていた。

 

愛音はイギリスの留学に失敗している。

 

英語には苦い思い出があるはずだ。

 

もし愛音が嫌な思いをするのであれば燈は避けたい。

 

「ご、ごめん。何でもない」

 

燈は中々相談できずにいた。

 

かといって他に相談できそうな友達やバンドメンバーは……。

 

「ふーん。あ、そういえば来週期末試験だよね。ともりんは勉強してる?」

 

愛音から期末試験の話題が切り出される。

 

チャンスだ。切り出さなきゃ……でも……。

 

「えっと。あまり出来てない……」

 

「わたしもー。面倒だよねー」

 

そういえば友達に勉強を教えてなんて頼んだことない。

 

どうすれば……。

 

「よし、私はそろそろ帰って勉強しようかな」

 

「あ、待って。あのちゃん。あっ」

 

慌てて愛音を制止しようとして自分のカバンをひっくり返してしまう。

 

「ともりん?しょうがないなぁ。……あれ、これこの前の」

 

愛音が燈のカバンの中身を拾うのを手伝うと、プリントを見つけた。

 

例の英語のテストだ。

 

「あ、それ」

 

「……ぷっ……あはははは。What's thisって。なんで答えのThis is a pen.も書いちゃったの」

 

愛音が笑う。

 

「答えがないと寂しいと思って」

 

「なるほどね。ともりんらしいかも。……でも、これ怒られなかった?」

 

「怒られた」

 

「最近授業中も寝てたもんね。居眠りは作詞頑張ってくれてたせいだろうし、私が教えてあげる!」

 

「あのちゃん、ありがとう」

 

「じゃあこれからうち来ない?一緒に勉強しよ!」

 

「うん」

 

なんとか、燈は愛音に勉強を教えてもらえることとなった。

 

一人で教科書とにらめっこするのと誰かに教えてもらうことでは身につき方が違う。

 

先生が燈にとって仲良しな愛音であればなおさら良い。

 

期末テスト、なんとかなるかも。

 

 

 

 

「大体出題範囲は教科書通りだろうから出てくる文法を抑えておけば大丈夫。まずは確認テストのとこからやろっか」

 

早速、燈と愛音の勉強会が愛音の家で始まる。

 

「お願いします」

 

「まずは問題の関係代名詞のwhatだね」

 

「関係代名詞……」

 

「中学でも習わなかった?whoとかwhitchとか使う奴。こんな感じに」

 

愛音が燈に例文を見せる。

 

『This is a pen , Whitch I like』

 

「あ、やったことあるような気がする」

 

「でしょ?whatはthe thing witchの意味で使うの。例えば……なんだろ……ぱっと思いつかない。こんなときは」

 

愛音がスマホで検索を始める。

 

「あ、ロックバンドの歌詞にあるみたい。この曲で覚えちゃえばいいじゃん」

 

愛音が動画サイトで見つけた曲を再生する。

 

You can't always get what you want

 

But if you try sometimes

 

you might find

 

You get what you need

 

「……なんだか私達みたい」

 

燈は愛音に教えてもらった通りに頭の中で訳し、自分たちと重ねた。

 

「あ……あー……。ホントだ。……でもこれで覚えたでしょ」

 

愛音はなんとなくバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

燈はノートに書き残す。

 

『What is MyGO!!!!!』

 

「それで、ちゃんと覚えられる?」

 

 

 

 

愛音による燈の英語強化勉強会は順調だった。

 

燈も手応えを感じる。特に関係代名詞はバッチリだ。

 

しかし、英語だけなんとかできても、他の教科がダメだと元も子もない。

 

「あのちゃん、英語教えてくれてありがとう。……その、数学も教えてほしいんだけど」

 

覚えれば良い教科であれば自分で勉強すれば良いが、数学はそうもいかない。解き方が分からない箇所があり、できれば誰かに教えてもらいたかった。

 

「いいよ!じゃ、時間もないし、明日やろっか」

 

「ありがとう」

 

「私も誰かと勉強したかったし、ちょうどよかった。誘ってくれてありがとう」

 

愛音は快諾する。

 

「よかった」

 

燈はこれでなんとかなるだろうと安堵する。

 

「……ックシュン。あれ?誰か噂してるのかな」

 

次の日、愛音から風邪をひいてしまったという連絡が来るまでは。

 

 

 

 

次の日、いつも愛音が登校してくる時間になっても愛音が現れずに燈が不思議に思っていると電話がかかってきた。

 

「ともりんゴメン!今日勉強会できなくなっちゃった。風邪ひいちゃったみたいで」

 

「ううん。体調大丈夫?」

 

「んー。頭痛い。……けど月曜日のテストには何とか回復すると思う」

 

「良かった。お大事に」

 

「ありがと。……ちなみにともりん数学どれくらいヤバいの?」

 

「わかんない……」

 

「自分でも分かんないくらいか……」

 

「どうしよう……」

 

「うーん。あ、そよりん!」

 

「え?そよちゃん?」

 

愛音の言ったそよりんはバンドメンバーの長崎そよのことだ。

 

燈や愛音とは違う高校に通っている。

 

「そう、そよりん。学校違うけど、きっと大体カリキュラムは一緒だし」

 

「そよちゃん数学得意かな」

 

「よく知らないけど。計算得意だし、大丈夫でしょ」

 

「そうなの……かな……」

 

ここで愛音の言った「計算得意」は数学が得意とは違う意味なような気がした。

 

「よし、じゃあ私が声かけてみるから。それじゃあ来週ね」

 

「うん。お大事に」

 

愛音との電話を切るとすぐに、メッセージアプリの通知が鳴る。

 

『そよりん、ともりんが数学教えてほしいって』

 

『なんで私?愛音ちゃん勉強得意なんじゃなかった?』

 

『私、風邪ひいちゃってさ。テスト範囲被ってるとこだけでもいいから』

 

『それならいいけど。でも、もう一回聞くけどどうして私?数学が得意なんて話したことあったっけ?』

 

『そよりん計算得意だし、ともりんが数学教えてほしいんだって』

 

『ああそう。場所は?』

 

『そよちゃん、ありがとう。ウチでどうかな。学校近いよね』

 

燈が燈の家での勉強会を提案する。

 

『それじゃあ放課後』

 

そよちゃん、怒ってないかな。

 

燈は少し不安に思う。

 

あまり人間関係が得意でない燈は表情の見えない文字だけの会話がより得意ではなかった。

 

『計算得意』がやっぱり少し皮肉めいて見えるような気がする。

 

で、でも、来てくれるみたいだし、大丈夫だよね?

 

 

 

 

「牛乳だー。ありがとう。いただきます♪」

 

うちに来たそよへ燈は牛乳を出す。

 

良かった。

 

そよの反応や様子を見る限り怒っているわけではないようだ。

 

「ところで……計算得意って何?」

 

やっぱり怒ってる……。

 

「その、あのちゃんが……そよちゃんなら計算得意だからきっと数学教えてくれるって……。それで、私は何も……」

 

燈は狼狽し、結果愛音を売るような発言をしてしまう。

 

「そう。愛音ちゃんが……。ふーん」

 

そよが手をいじり始める。

 

そのしぐさを見て燈は思わず生唾を飲んでしまう。

 

燈は一度、そよを怒らせたことがあった。

 

あんな思いは二度としたくない。

 

「……ま、燈ちゃんは悪くないもんね。うん。テスト範囲が被っているところだけだけど、一緒に勉強しようね」

 

「うん。ありがとう」

 

少しだけ不穏な空気になったが、数学の勉強会が無事に開かれた。

 

そよは燈に丁寧に教える。

 

「そよちゃん、分かりやすい。ありがとう」

 

「誰かに教えるの慣れてるから。私も基本の復習になるから助かるよ。愛音ちゃんとは勉強会したの?」

 

「うん。英語教えてくれた。関係代名詞とか。それで、この曲を教えてくれた」

 

『無情な世界』

 

なんとも暗そうな邦題をつけられた曲を燈は嬉々としてスマートフォンで再生する。

 

「この曲、なんか私達みたいだなって」

 

燈ちゃんの歌詞みたい。

 

そよは曲の歌詞を聞いてそう思った。

 

自分の弱いところを突かれている気がする。

 

そよはかつてのバンド、CRYCHICKをとり戻そうと頑張ってきた。

 

自分の居場所で、自分を必要としてくれる仲間がいて。

 

でも、失われてしまった。

 

CRYCHICKの復活を強く欲した。

 

でも、手に入らなかった。

 

それでも何度も策を講じ、行動した。

 

結果、新しい居場所、仲間を、MyGO!!!!!を手に入れた。

 

……ああ、もう。

 

「燈ちゃん、勉強するんじゃなかったの?スマホしまって」

 

「あ、うん。ごめん」

 

そよは誤魔化すように燈を咎め、勉強会に軌道修正した。

 

 

 

 

「どう?なんとかなりそう?」

 

「うん。分かってきた。ありがとう」

 

応用問題にはどうしても時間がかかってしまうが、基本的な問題であれば解けるようになってきた。

 

「どういたしまして。力になれたなら良かった。……バンドのために歌詞書いてくれてありがとう」

 

「う、うん。そよちゃんも、みんなのこと、バンドのこと、ありがとう」

 

「なにそれ」

 

「そよちゃんがいてくれて、心強い。そよちゃんが頑張ってくれるから」

 

「やめて。それより勉強。留年したら私達解散だから。それじゃ」

 

「え……解散……」

 

自分の行動を良いように捉える燈にくすぐったさを感じ、照れ隠しのように解散という単語を使い、燈を困らせる事に成功したそよは帰っていった。

 

 

 

 

次の日の朝燈の携帯でメッセージアプリの通知が鳴る。

 

『ヤバい。テストで赤点ばっかな夢見た。最悪〜』

 

愛音がバンドのグループトークに夢を見た話を送ったようだった。

 

『ゴメン。私に構ってたから』

 

『ともりんのせいじゃないし赤点なんてとらないよ!』

 

『留年したら解散だから。って言ったよね?燈ちゃんこそ頑張らなきゃ』

 

『うん』

 

『留年したら解散!?やば!マジ!?りっきーピンチじゃん!』

 

『は?私がいつ留年するの。っていうかお前らなに?』

 

りっきーこと椎名立希がすぐに反論する。

 

『何って?』

 

『テスト前だからバンド練無しって決めたのにお前ら燈と会ってるの?』

 

ヤバい。と愛音とそよは思った。

 

別に椎名立希を意図的に仲間外れにしていたわけではない。

 

しかし、結果としてそうなってしまったのだ。言い訳はできない。

 

立希は燈を誰が見ても分かるくらいに気にかけている。

 

『りっきーを仲間外れにしようとしたわけじゃないよ』

 

すぐに愛音が弁明する。

 

『別に。気にしてない』

 

『立希ちゃんも燈ちゃんと勉強会すれば?』

 

『うん。立希ちゃん、やろう。よければだけど』

 

『燈がいいなら』

 

『じゃ、決まりだね』

 

『燈、ちょっとお昼間にバイト先に寄らないとだからそのあとでいい?』

 

『うん。ならRiNGに行くね』

 

『ありがとう。RiNGに13時集合で』

 

次の勉強会が決まった。

 

明日は暗記科目をやろうかな。

 

「ふふっ」

 

燈は思わず笑みを浮かべる。

 

「燈、どうした?随分嬉しそうじゃないか」

 

燈の父親が声をかける。

 

「うん……そう、かな」

 

「ああ。燈が幸せそうでこっちまで嬉しくなるよ」

 

実際に燈は嬉しかった。

 

私達は仲良しとは言い切れない。

 

でも、みんなが私を気にかけてくれて、楽しくできている。

 

それが何より嬉しかった。

 

今日は、よく眠れそうだ。

 

 

 

 

「バンドは?」

 

燈が待ち合わせ場所であり、立希のバイト先でもあるライブハウスRiNGへ到着すると、思わぬ人と会う。

 

通称RiNGの野良猫、要楽奈だ。

 

「楽奈ちゃん。今日は練習無いよ」

 

「ウソ。りっきーと約束してた」

 

楽奈はどうやら昨日の待ち合わせのやりとりを見てバンド練習だと勘違いしているようだ。

 

楽奈はメッセージアプリの通知は見るがやりとりが行われている画面は滅多に見ない。

 

きっとRiNG前で待ち合わせという文面だけを見て勘違いしてしまったのだろう。

 

「噓じゃないよ。今日は立希ちゃんと……」

 

「燈!待たせてゴメン!……野良猫?なんでここに」

 

「バンドしに来た」

 

「バンド練習はテスト期間は無し。そう決めたでしょ。……ちなみにお前、テスト勉強してる?」

 

「してない。つまんない」

 

立希が信じられないという表情で野良猫、楽奈をみるが、楽奈はあっけらかんとしている。

 

「よし、野良猫。バンドしようか」

 

立希が笑顔だ。

 

なんとなく怖い。燈はそう感じた。

 

「うん。バンド、する」

 

「楽奈ちゃん、あっ」

 

燈がこれからバンド練ではなく勉強をするのだと楽奈に教えてあげようとするが立希に制止される。

 

そして三人は立希の家へと向かった。

 

 

 

 

「なんでふたりともノート広げてるの?燈、いつものノートじゃない」

 

「よし、あった。野良猫、これ使って」

 

立希が中学3年生の教科書と新品のノートを楽奈に渡す。

 

「……コレ、学校の教科書。バンドと関係ない。騙された」

 

楽奈は立ち上がり、部屋を出ていこうとする。

 

「騙してない。誰も練習するなんて言ってないから。それにバンドにも関係がある。そよが、留年したら解散だって」

 

「うーん……」

 

楽奈は立ち止まり考える。

 

勉強はつまらない。

 

だったら一人でギターを弾いていたほうがいい。

 

でも、テストがダメで、留年したら解散。

 

このバンドが解散するのは嫌だ。

 

やっと見つけた居場所。

 

それが失くなってしまうのは嫌だ。

 

「分かった。勉強する」

 

楽奈はおとなしく勉強をするという選択をした。

 

「燈。ここ教えて。解き方、分かんない」

 

早速楽奈は燈に分からない箇所について質問する。

 

中学3年生の範囲であれば燈にも教えられる。

 

「ここは……えっと……この公式を使えば解けるよ。ほら」

 

「ホントだ。ありがとう」

 

「野良猫、燈の邪魔しないで」

 

「邪魔?してない」

 

「うん。邪魔じゃないよ。復習にもなるし」

 

「そう。なら、いいんだけど」

 

燈と立希は日本史などの暗記科目に手をつけていた。

 

ただ、黙々と進める他ない。

 

「飲み物、とってくる」

 

「ありがとう」

 

立希は少し落ち着かない様子だった。

 

燈が気になってしまう。

 

楽奈が邪魔をしていないだろうか。

 

無理していないだろうか。

 

そういえば、愛音やそよは燈と何を話していたのだろう。

 

「燈、おまたせ。ほら、野良猫も」

 

「ありがとう」

 

楽奈は立希が持ってきた飲み物に見向きもせず集中している様子だ。

 

まあ欲しくなったら勝手に飲むだろう。

 

「ねえ燈、そよや愛音とどんなこと話してたの?」

 

「ほとんど勉強の話……あ、あと関係代名詞の話」

 

関係代名詞の話……。それも勉強の話ではないのだろうか。

 

「関係代名詞?」

 

「そう、あのちゃんが教えてくれたこの曲、私達みたいだって」

 

燈がスマートフォンで再生する。

 

立希は勉強の手を一時止める。

 

有名なイギリスのロックバンドの曲だ。

 

クリーンなサウンドのギターが心地よい。

 

You can't always get what you want

 

But if you try sometimes

 

You might find

 

You get what you need

 

あぁ……。本当だ。

 

これは私達だ。

 

立希が感傷に浸っていると、ギターの音が聴こえた。

 

「ちょっと休憩」

 

楽奈だった。

 

楽奈は曲をコピーして弾き始める。

 

立希は曲を改めて聴く。

 

「ふっ、あははは」

 

そうだ。そうだった。このバンド。

 

私達みたいなこの曲を弾いているバンドがどういうバンドだったかを思い出した。

 

愉快な気分になり思わず立希は笑い出してしまった。

 

燈が急に笑い出した立希を不思議に思うまなざしで見つめる。

 

「ねえ、燈。知ってる?この曲を弾いているバンドはさ、60年やってる」

 

「60年……。一生だ」

 

「そう、本当に一生。この先もきっとうまくいかないことがあると思うけど、続けていって……。私達もきっとそうなるよね」

 

「うん……!やろう、一生」

 

ほんの少しの休憩を経て、燈、立希、楽奈の勉強会は集中して取り組むことができた。

 

 

 

 

「立希ちゃん、ありがとう。気がついたらこんな時間まで」

 

「燈、いいんだよ。私も集中して取り組めたし」

 

「りっきー、抹茶パフェ」

 

楽奈は勉強会中、何度か休憩を申し出た。

 

初めのうちは多少は立希も許していたが、段々と頻度が上がり……。

 

「休憩」

 

「野良猫、5分前に弾いてた。燈が勉強に集中できない」

 

「立希ちゃん、私は大丈夫だよ」

 

「でも……ダメ。とにかくストップ」

 

「抹茶パフェ」

 

楽奈は休憩をせずに勉強を続けるということを依頼として理解してしまったようだった。

 

「勉強した。抹茶パフェ」

 

「勉強は自分のためでしょうが」

 

「うん。でも休憩しないでやった」

 

「あぁ。そうか……。じゃあ行くしかない……か」

 

立希もとうとう観念してしまう。

 

「燈は?一緒にどう?」

 

「私は晩御飯準備してくれているみたいだから」

 

「あ、うん、じゃあね」

 

「うん。また」

 

燈は別れを告げて、立希、楽奈と別れる。

 

一生やれるバンド。

 

それがMyGO!!!!!なんだ!

 

立希の話してくれたエピソードが燈はとても嬉しく思えた。

 

60年続いているバンドがある!

 

燈は鼻歌交じりに帰路へ着いた。

 

 

 

 

「ともりんどうだった?テスト」

 

全教科の期末試験が終わり、愛音が結果を燈に聞く。

 

「うん。大丈夫だったと思う。ありがとう」

 

「どういたしまして。これで解散の危機は去ったね」

 

「うん。お父さんお母さんにも心配かけなくてよさそう」

 

「よかった」

 

燈の点数はそれなりだ。

 

英語の先生にテストを返されたとき、頑張ったねと言ってもらえたので三者面談の心配もなさそうだ。

 

「そういえばみんなはどうだろうね」

 

「大丈夫かな」

 

燈はそよの言った留年したら解散という言葉を気にしている。

 

「みんな大丈夫でしょ。そよりんは勉強できるし、りっきーはよく知らないけど何もなければ赤点なんてとらないでしょ。楽奈ちゃんは……補習とかあるかもだけど、中学校って留年ないし大丈夫」

 

「楽奈ちゃんもちゃんと勉強してたしきっと大丈夫……!」

 

「そうなの!?へぇ……想像できない」

 

愛音が携帯を取り出し、バンドメンバーへメッセージを送る。

 

『テストどうだった?私とともりんは問題なし!』

 

『別に。普通』

 

立希から返事が来る。

 

『そよりんは?』

 

『特に問題なし』

 

そよからもすぐに返事が来る。

 

『さっすが~』

 

『やめて』

 

『楽奈ちゃんは……どうせバンド練習の時に会うだろうし聞いてみればいいか』

 

『テストは終わったし、早速練習また始めるよ。ライブも』

 

「だってさー。りっきースパルタなんだから」

 

愛音はあきれた表情を浮かべながらもどこか楽しげな雰囲気だ。

 

テストが終わり、バンド活動が再始動する。

 

学校を出ると、燈と愛音を夏の熱気が出迎える。

 

セミの鳴き声が耳に入り、高校生になって初めての夏を二人は実感する。

 

きっと、これから60回以上体験する私達の夏。

 

二人はこれから起こるであろう苦難と、それを乗り越える自分たちに思いを馳せ、歩みを進める。




読んでいただき、ありがとうございました。
BanG Dream! It's MyGO!!!!!めちゃくちゃ面白かったですね!
一生やるバンド。
最初に思いついたのがこの曲のバンドです。
仲良し!ってわけではないイメージですが、まだまだ活動していて……。
きっとMyGO!!!!!ちゃんも一生やるバンドになるのでしょう。

Ave Mujicaは1年後ですね。
Ave MujicaやるまでにまたMyGO!!!!!ちゃんの二次創作小説を書きたいと思ってます。
筆が遅いわりに表現も稚拙でアレなのですが……。
もし投稿できましたら、また読んでいただけると幸いです。
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