【完結】 種(CE)世界に00(西暦)要素をぶち込んで、死亡フラグを圧し折りながらイージーモードにしてみた   作:種再燃祭

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ちょっと諸事情により今週はストックが不安(現在44話のフレームを作り終えたところ)ですが、週末恒例の一日二度投稿です。

前話「第41話 アイドルという生き方、生き様(https://syosetu.org/novel/335614/41.html)」の対になるエピソードかなと。

高評価をしてくださった方々への感謝を込めて。
二度目の投稿を期待してくださってた方がいたら嬉しいです。





第42話 プラントの混乱、評議長の激昂、そして……

 

 

 

「違う……違う! あれはきっとオーブが作ったAIかなんかだっ! ラクス様が嫌いとか、大嫌いとか言う訳がないじゃないかっ!!」

 

「じゃあ、あの歌声が偽物だって言うのかよっ!?」

 

「そんなもの、合成でいくらでも作れるっ!!」

 

「お前……それ、今までのラクス様の歌、全部否定してないか?」

 

「ラクス様、すっごく楽しそうだった。あんな笑顔なんて、見たことなかった」

 

「もしかして、今までの笑顔って……」

 

「ねぇ……私たち、忘れてたんじゃない? ラクス様も”同じ人間”だって……」

 

「ラクス様が、人間……?」

 

 

 

 とある小説に”人間宣言”という屈指の名シーンがある。

 ラクスは、それと同じ趣旨のことを歌で、たった1曲やってのけた。

 これは、例えばそういう話だ。

 

 そう、プラントの住民は全員ではなくとも気づいてしまったのだ。

 ラクス・クラインもまた、当たり前のように感情があり、怒りもすれば泣きもする、好き嫌いのある何の変哲もない()()()()()と。

 

 じゃあ、今までのラクス・クラインとは、彼ら、彼女らにとり何だったのだろうか?

 必然的にプラントという閉鎖環境で生きるしかなかった住民にとり、ラクス・クラインとは正しく”偶像(アイドル)”であった。

 

 そう、”偶像崇拝”の中核となる()()()()()である。

 偶像とは、「ただの人間」であってはならない。何故なら、どこにでもいる人間を崇拝の対象とするわけにはいかないからだ。

 即ちプラントのラクス・クラインのファンとは信者であり、彼ら彼女の想いは信仰なのだ。

 

 それは”ラクス教”とも呼べる表立った宗教の無いプラントに沸いた「それに代わる何か」だった。

 彼女、ラクス・クラインの出自の秘密を知る者には、当然の話かもしれない。

 

 ラクスは、生まれながらにして”超越者(アコード)”となるよう遺伝子調整(コーディネート)され”製造”されたのだから。

 

 だが、”誇り高きアイドル”を歌うラクスは、紛れもなく「一人の少女、人間のアイドル」だった……

 

 偶像で人間を超越した存在だった筈のラクスが、よりによって本人自身が偶像である事を、自身が歌うことで否定したのだ。

 プラントの狭い世界で生きる、袋小路の遺伝子保持者たちが受けた衝撃を、例えば地球在住の人間が想像するのは難しいだろう。

 

 この歌を、”良い曲だ”とだけ受け止める事ができる、あっという間に300万人に達したチャンネル登録者であるナチュラルやコーディネーターにとっては、ラクスの歌は「彼女が望む通り」に”それだけの意味”しかないのだから。

 

 

 

 誤解の無いように言っておくが、ラクス自身に政治学的破壊衝動などはない。

 ただ、彼女は「内側に秘めたありったけ」を歌声にできる「今、歌いたい歌」を歌っただけだ。

 それが彼女の望みであり、願いだった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 そして、彼女の歌った”誇り高きアイドル”をより深刻な意味で受け止めた者がいた。

 

「何が”誇り高きアイドル”だっ! ふざけおってっ!!」

 

 そう、激昂するパトリック・ザラ国防委員長兼最高評議長だ。

 

人形(アイドル)風情が、なぜ人間のような真似をするっ!!」

 

 パトリック・ザラにとって、プラントの民意をまとめる上で、”偶像”であるラクス・クラインではないと都合が悪い。

 何しろ、”神託”ならば言葉であれ歌であれ、大衆は「理屈抜き」に従うからだ。

 プラントとは、本質的にはそういう歪な社会構造を根底に持っていた。

 

 では、「自分の道具」として有益に使えなくなった”偶像”はどうするか?

 

(破棄するしかないか?……惜しいが)

 

 だが、まだパトリック・ザラにも迷いがあった。

 良くも悪くも、ラクス・クラインの影響力は強すぎるのだ。

 上手く利用すれば、今は強硬派主体のパトリック・ザラの支持層が盤石と呼べるほどの強化が可能だ。

 そして、殺害するとしても、

 

(ザフトの諜報能力で、オーブが主犯だとプラント市民に信じ込ませることができるか……?)

 

 それが出来なかった場合、現出するであろう”負の影響”もまた計算不能であった。

 最悪、現体制が崩壊し、「ナチュラルとの全面戦争」どころではなくなるかもしれない。

 

 それはパトリック・ザラに残る”甘さ”とも呼べる感情。

 故にプラントには徐々に、だが確実に”猛毒”が広がりつつあった。

 

 

 

 あえて言おう。

 結局、パトリック・ザラという男は、その最後までラクス・クラインという「一人の少女」を理解できなかったのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、これは大変な事に……」

 

 転げ落ちた椅子に座りなおしたニコルは、脳味噌をフル回転させながら現状を可能な限り把握する。

 その結論は、

 

(ラクス様はこの先、プラントにもだけどザフトにとっては特に”最も危険な存在”になるかもしれない……)

 

 この先、どんな歌が歌われるかはわからない。

 だけど、

 

(好きな歌を好きなだけ歌う……)

 

「それが、例え”自分の()()()()を否定する”ような物であっても……?」

 

 ならば、「歌いたい」という理由だけで、プラントやザフトを根底から揺るがすような歌であっても、躊躇うことは無いだろう。

 同じ音楽家だからだろうか? 少なくとも、ニコルにはラクスの歌声から”その覚悟”を強く感じ取っていた。

 

「これは急がないと……」

 

(本気でラスク様への刺客なんかに仕立てられるなんて冗談じゃないですよっ!!)

 

 元からあったかどうかも怪しいが……「正気」が薄れつつあるような気がする今の所属元(ザフト)には、それを本気で言いだしそうな気配があった。

 

(だからこそ、まだ”失敗が前提”の内にオーブ潜入作戦を実行する……)

 

 ニコルには、それが一番自分の生存率が高い方策のように思えてならなかった。

 

(今なら単独ミッション、僕一人の判断でどうとでも出来ます)

 

 だけど、これで追加人員が編成された、暗殺チームの一員などにされたら目も当てられない。

 それが、どれほど末期的な判断なのかを自覚しながら。

 

(今のプラントは、危険過ぎる……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ものの見事に世論が割れてしまったプラント市民という名前の「ラクス教」信者(ファン)たち。
この先、大別して「肯定派」と「否定派」に分かれ、さらに諸派分裂してゆきそうです。
問題なのはザフトにも確実に影響が出るというところ。

そして、頭ザフトの筆頭にしてザフトの親玉は、「完全な否定派」。
「使えない道具はいらん」と割り切れるようでいて、「影響力を考えるとちょっと惜しい」と頭の片隅で考えてしまうあたり、ほのかに漂う小物臭が……

そして、そんなパトリック・ザラの「危うさ」をザフト全体に漂う空気から察して、いよいよ決断の時が迫ってきたニコル君。
果たして彼は死亡フラグを圧し折れるか?
圧し折ったら折ったで残念な展開になりそうですがw




真面目に応援してくださる皆様のおかげで、執筆モチベーションが少しづつ回復してます。
前書きにも書きましたが、感想やお気に入り登録してくださる皆様もそうですが、土曜日の夜の時点でまだこのエピソードを書き終えていなかった事を考えると、本日二度目の投稿が可能となったのは、高評価で応援してくださった皆様のお陰です。
本当にありがとうございました。



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