NIKKEの世界に指揮官の友人をぶち込む話 作:アンダーソンの香水の匂い好き♡
その閃光を見た瞬間、最悪の考えが頭をよぎる。
足は震え、呼吸は浅くなるがそれを抑えるかのように、歩みを進めながら呟いた。
「始まった、向かわなければ、せめて」
そう、せめて見届けなければ
これは、自分で選んだことだから。
こうなる事を知っていて進む事を決めたのだから。
そんな覚悟を嗤うかのように、もうすっかり現実と認識した世界から声が届く。
「指揮官、お気持ちはわかりますがあの爆発では生存は…」
それを否定したくて、認めたくなくて、ただわがままを押し通そうとする子供のようにその言葉を遮った。
「そんな事はない!あいつがこんな所で死ぬはずがない!そうだ、これはわかっていた事なんだ…だから大丈夫なんだ…」
最後まで拒絶できただろうか、自分でもわからない。それでも、選んでしまったから。
自分で自分の背中を押したのだから地獄の先を見なければ。
もう確証のない遠い過去の記憶から救いの言葉を胸に声を張り上げる
「何としてもあいつと合流する!
そのため、多少の損傷を覚悟し、落下地点へ急行。その後、捜索部隊の指揮官の状態で作戦続行の判断を行う!」
声は震えていないだろうか、涙声ではないだろうか。
こいつらの前でそんな姿をみせてはいけない。
そんな強迫観念にも似た強い気持ちに身を任せながら脳みその回転速度を上げてゆく。
「これより部隊を再編成!F.A.を先頭とし、08は部隊の後方にて援護射撃!12は08の護衛!オーシャン!E.G.とバディを組め!お前らは遊撃!援護が必要な方へ行け!最短距離を一点突破だ!覚悟はいいか?」
そう、最短距離を最速で。
ただ無事な事を確認できればそれでいい、あとは運命が彼らを導くだろう。
…運命だなんて、そんな事を考えた自分にふと笑みが漏れそうになる。少しは落ち着いてきたみたいだ。
「あの、指揮官はどちらに…?」
その言葉を聞いて、意識を切り替える。
笑っている場合じゃない。
「俺か?俺は最前列で指揮を取る!
ラプチャーは手当たり次第に人間を殺すわけじゃない、俺が囮になる!遭遇時は俺の許可なしに発砲する事は許さんが、俺が指揮できなくなるか、乱戦時は…E.G.!お前が指揮を取れ!俺になにかあったら生存者を回収後、アークへの帰還を許可する!この会話は録音してある!中央政府に何か言われればこのレコーダーを提出しろ!」
そうだ、勇敢で愚かな指揮官を演じなければ。
あいつがもっと評価されるように。
俺が死んだ時、無駄にならないように。
「意見があるなら言ってみろ!…無いようだな、行くぞ!遅れるなよ!」
正確には言えないようにされているのだろうが…
呆れた顔の彼女たちを横目に走り出す。
はやる気持ちに突き動かされるように
やはり爆発音に惹かれたのか、そちらへ向かうラプチャーが見える。まだこちらには気づいていないようだ。
数は7、そこまで多くはない。うちの部隊でも対処は可能だろう。
ラプチャーにバレないように指示をだす。
「お前らはここで隠れて待機、俺が囮となってあいつらを誘き寄せる。バディは組んだまま08は少し高い所…そうだな、あのビルからあいつら以外のラプチャーが来ないか索敵しつつ他の奴らの援護を頼む。」
「2機だ。2機、俺が注意を惹きつける。F.A.、オーシャン、E.G.はここで隠れてラプチャー2機を素通りさせろ。その後の5機をお前ら5人で殲滅しろ。頭数は同じ、いけるだろ?そしたら全員で俺の2機を壊して終わりだ。簡単だな。」
そう、俺が死ぬ気で逃げ回ればうまく行く。
「指揮官!もし私たちの殲滅が遅れた場合に危険が生じます!そもそも、人の足でラプチャーから逃げ回れるとは思えません!」
やはり、承認は難しいらしい。
そりゃそうだ。
だが、勝率を上げるためには敵の数が少なければ少ないほどいい。
俺という異物がいる以上、俺の知っている物語どうりにはいかないだろう。その為には使える戦力は出来るだけ主人公側にいた方がいい。
その過程で俺が死ねば、あいつは本編よりも多くの味方を得た状態で進められる。
死ぬ気はさらさらないが備えはあった方がいいだろう。
多少強引でもこの案で通すしかない。
「お前たちの意見は聞いていない。これは確定事項だ。すぐに戦闘を開始する。」
彼女らの提案を拒否しつつ、おもむろにホルスターから銃を取り出す。
「指揮官!?いったい何を!?」
動揺する彼女らを横目にラプチャーに銃口を向けた。
「喋っている暇はない、全員位置につけ。」
「人間用の、ましては拳銃ではこの距離で当たるはずはありません!」
「そんな事はわかっている」
そう、当てる必要はない。ただ注意を引ければそれでいい。俺という存在をその視界に入れてやるだけだ。
引き金を引いた瞬間、乾いた音が響く。
その音の発信源を探す為にあいつらは振り向いた。
「来るぞ!戦闘準備!言った通り2機は素通りさせろ!エンカウンター!」
言い切るのと同時に走り出す。
すぐに追いついてくるだろうから出来るだけ距離を稼いでおく。
近づく足音、それに比例するように心臓の鼓動も増していく。
それでも戦闘の銃声音だけは聞き逃すまいと耳を澄ます。
そして、その音はすぐに響き渡った。
一度振り返り、様子を見るとラプチャー全機が彼女たちの方を向いていた。
「クソッ、人間よりニケの方が優先か!」
すぐさま銃を抜き、一番近いラプチャーに対して発砲する。
釣れたのは3機、こちらに向かってくる。
「ヤバイ、いくら俺がかっこよくても3人の相手はきついぞ!」
恐怖を軽口で誤魔化しながら走り出す。
インカムから声が聞こえる。
「指揮官!3機そちらに向かいました!大丈夫ですか!?」
大丈夫な訳あるか。しかし、そんな弱気を吐くわけにもいかない。
「なんとかするから出来るだけ早く終わらせろ!」
「なんとかって…指揮官!?指揮官!」
うるさいインカムを切り、走ることに集中する。
道には瓦礫があり今にも躓きそうだがなんとか避けて進む。
どれくらい走っただろうか。戦闘音も遠くなってきた。
ラプチャーはまだこちらについてきているが捕まるのも時間の問題だろう。
ふと、自分の右側を何かが掠める。
それを目で追おうとした瞬間、目の前が爆発した。
吹き飛ばされる体、地面がゆっくりと近づいてくる。
撃たれた。
そう確信した瞬間、地面にぶつかり転げ回る。
視点が定まらない。土埃で何も見えない。
それでも近づいてくる足音。
とにかく動かなければ。
そう思い立ち上がった瞬間、何かが自分に覆い被さってきた。
何か、なんて。そんなもの一つしかないのに。
キィィィィィィィィ
鳴き声が聞こえる。それは金属同士を擦り合わせたような、ただの音であるはずなのに。
こちらを明確に獲物と定め、その命を好きに出来ると嘲笑っているかのような。
死の鳴き声が。
ああ、ダメだ。
走り続けて暑いはずなのに、寒気を感じて体が震える。
興奮による早い心臓の鼓動が恐怖によってさらに早くなる。
世界が滲んで行く中、どうにかしないと。そう考える本能をよそに理性の深い部分が囁く。
無駄だ、と。
一度、その声を聞いた瞬間。本能すらも飲み込まれた。
よかったじゃないか。
何が
これで君は主人公ではない事が証明された。
何を
これで君は仲間を撃つ必要も仲間に撃たれる必要もない。
言って
辛い思いをしなくて済む
ああ、そうか。それは、いいな。
優しく恐怖が包み込む。
全身に泥のようなものが纏わりついてくる。
それは、とても暖かくて全てを投げ出して身を任せたくなる。
諦めを胸に瞳を閉じる。
この世界は残酷だが
せめて痛みは一瞬がいいな
そんな思いを、願いを、
目の前の機械からカン、と音が聞こえた。
そしていつまでたってもこない
「爆発させずにコアだけ撃ち抜くなんて芸当ができる私は凄腕のスナイパーを名乗ってもいいですよね…?」
08の自信なさげなその声を聞いた時、胸の中に広がった感情を私はいまだに言語化できずにいる。
死を望むくせに生きている事に安堵している、なんとも醜悪なこの感情を…
「指揮官!大丈夫ですか?!指揮官!」
体をゆすりながら確認してくるニケに震える声で返事をした。
「ああ、問題ない。それより他の奴らは…」
「現在視認できるラプチャーは全て機能停止しました。とりあえず移動しましょう。戦闘音でまたラプチャーが集まるかもしれません。」
滲む視界のまま他のニケの方に目を向けると、すでに戦闘は終了していたようだ。
格好をつけて先陣を切ったくせにこのザマとは…
いや、今はそんなことを考えている暇はない。
やぶれかぶれだがうまくいった。それでいいじゃないか。
「そうだな…」
精一杯の心で返事をしながら震える足に力を込めて歩き出す。
墜落したヘリが見えた瞬間、すでに走り出していた。
視界に映る情報を否定するように彼が無事な証拠を探す。
そこには少しの血痕とラプチャーとの戦闘跡しか残っていなかった。
それから導き出される答えを確信し、膝から崩れ落ちる。
「よかった…やっぱり生き残ったか…
いや、今は安心している場合じゃない、ここにいないという事はランデブーポイントか?
間に合うだろうか…」
思考を回す。それしかできないのだから。
物語はまだ終わってない。これは最初の1ページ目だ。涙はエンドロールのその後でいい。
意を決して立ち上がり叫ぶ
「捜索部隊の指揮官は生存、ランデブーポイントに向かったと判断し、これより我が隊もポイントへ向かう!」
「待ってください指揮官!生存した可能性はありますが、ランデブーポイントに向かったかどうかはわかりません!一度作戦本部へ連絡を試みてはいかがですか!?」
当然、ニケから反対の声が上がる。
しかし、今はそんなことをしている場合ではない。少しでも彼の物語が楽になるよう先へ進まなければ、間に合わなくなる。
この後に起こる悲劇に
「いや、あいつならランデブーポイントへ向かうはずだ!総員、兵装チェック!準備が出来次第、出発する!時間がないんだ!」
命令を聞き、反抗的な目をしながらも確認作業をするニケを見ながら彼の無事を祈る。そしてふと思う
祈るだなんて、一体何にだ。信じるべき神などいないと、こんな世界に生まれ落ちた時に結論づけたくせに…
自罰的に思考しながらニケからの報告を聞く
「よし!これよりランデブーポイントへ向かう!フォーメーションはさっきと同じだ!行くぞ!」
言うが早いか、走り出す。くだらない思考を塗り潰すように。
ランデブーポイントに近づいたとき、聞こえてきた銃声に意識が切り替わる。
まだ生きていた、運命はまだ終わりを示してはいない。
ならやることは決まっている。
見慣れた2機と霞むほど遠い過去に見覚えのある1機のニケの指揮を取る彼が見えた。
「戦闘中のラプチャー、その側面より強襲!戦闘中の味方部隊との十字砲火にて殲滅せよ!行くぞ!フォーメーションFF!殺してこい!」
声を張りながら走る速度を上げる。
そうだ運命すらも殺してやる。
このイカれた世界を否定するために。
「ウソ?援軍?」
「アニス!気を取られないで!まだ敵は残っているわ!」
ああ、
「手負のラプチャーから処理していけ!12!08!捜索隊の指揮官の元へ行き状況確認!その後、彼の護衛に回れ!エンカウンター!」
だが、それ以上の幸福が訪れる事を、心より願う。
なんて、結末を知っているのに薄情な思いを抱きながら。
戦闘終了後、それぞれの現状報告が始まった。
「ところで、どうして急に指揮官を地上へ?
まさか・・・」
「そう、前の指揮官様は死んだわ。対人火器をラプチャーにぶっ放しちゃったの。『ラプチャー!人類の敵!』とか何とか言ってね。
小口径の火器がラプチャーに通じるわけないのに、どうしてあんなことを・・・」
その言葉を聞き、改めて先の戦闘を思い出す。
おそらく、部隊のニケからは自殺志願者か何かだと思われているのだろう。だが、そちらの方が都合がいい。
前指揮官と同じく愚かな人間だと認識してくれれば彼の存在価値は上がっていく。
「失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。・・・・・・アニス。」
「うん。検索してみるね。どれどれ・・・うん?・・・この指揮官様、完全な新人みたいよ。」
「・・・は?」
「昨日、士官学校を卒業したんだって。」
この流れは見覚えがある、次は俺のことを聞いてくるだろうがその後の展開は目に見えている。聞かれるのを待つよりこちらから打ち明けた方が多少マシだ。愚かな指揮官らしく答えるとしよう。
「戦友の経歴に驚いているところ悪いが、こちらも初任務だ。まあ、ニケの捜索程度なら俺たちでも余裕だろう。」
「・・・舐め腐ってるわね。中央政府の教育の賜物かしら。」
「・・・とりあえず近くの市街地まで移動しましょう。ここは危険です。」
もう一年経ったってマジ?俺に刻は見えないらしい。
書きたいところだけのつもりがストーリーほぼ全部書いちゃったテヘペロ(・ω<)