NIKKEの世界に指揮官の友人をぶち込む話   作:アンダーソンの香水の匂い好き♡

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メスガキに裏切り者と言われたので初投稿です


Chapter01

 

 

 

 「本当に昨日、任官されましたか?」

 

 「・・・何か問題でもあるのか?」

 

 「・・・作戦中に死亡した指揮官の代わりに来たという、新人の指揮官・・・」

 

 「さらにそのバックアップ部隊の指揮官様も同期のひよっこなんて・・・」

 

 「何を考えているのやら。」

 

 

 

2人の反応に内心で同意する。通常、捜索隊とはベテランが受け持つものだ。それのバックアップとなれば尚更に。

 

どこか仕組まれたものを感じるが、なってしまったものはどうしようもないし俺からしてみれば好都合だ。

完璧に物語を覚えているわけではないが、デジャヴを感じない時は俺という異物が起こしたものであると気付けるはずだ。それの対処については適宜判断していくしかない。

 

さて、運命が彼らを導くだろうとは誰の言葉だったか

 

 

 

 「作戦について簡単に説明します。46時間前、この区域の捜索していたニケ1分隊との通信が切断されました。通信履歴が何も残っておらず、捜索が必要との判断から私たちが投入されましたが、指揮官が死亡するという事故がありました。」

 

 「そこまではブリーフィング通りだな。捜索隊を探すための捜索隊の指揮官が死ぬだなんて間抜けな事があったおかげで、交代指揮官の戦友の他にバックアップに俺たちが編成される事になった。」

 

 

 

そう、これこそが俺という異物が起こした問題その一だ。

この作戦が終わった後に俺は彼ら(カウンターズ)と同じく特殊別動隊として編成されるのか、それともただの一般指揮官として主人公の活躍を裏から見守るモブになるのか…

 

出来ればこのまま彼の近くで手伝う事ができればいいが…どちらにせよ、まずはこの作戦を無事に終わらせることが優先か。

 

 

 

 「問題は、その指揮官だけが作戦区域の座標を知ってたってこと。指揮官様、座標について何か聞いてない?」

 

 「・・・聞いていない」

 

 

 

彼の言葉を聞き、考える。

やはり俺がいるからといって何かが変わるわけでもないらしい。

いや、俺がいるからこそ、悪い方向に変わる可能性もある。

 

 

 

 「そうだよね?だと思った、うん。一応聞いておくけど、バックアップの指揮官様は?」

 

 「マジ?初耳なんだけど。戦友が知ってるからケツ追っかけてればいいと思ってたわ」

 

 

 

ブリーフィングでの地図と覚えている限りのゲームマップを照らし合わせ、大体の位置を把握しているがなるべく物語通りに進めた方がいいだろう。

 

白々しく答える俺をよそに彼女が喋る

 

 

 

 「私が知っています。」

 

 「うんうん。そうだよね、うん。・・・うん?」

 

 「作戦前に入力されました。私が先頭に立ちますから、ついてきてください。」

 

 「あっ・・・OK。」

 

 

 

この入力されたというのはどういう意味なんだろうな。侵食コードにその座標が埋め込まれていたのか。指揮官がいないと出撃できないというルールをクリアするために、ニケ主導で任務遂行するためのお飾りで彼が抜擢されたのか…

 

しかしエニックがユニーク個体を生贄に選ぶか?

ゲーム上だとスペック差があったが実際にはユニークだろうが量産だろうが性能差はあまりないみたいだしな。

 

まあ、ここに立っている以上、すでに手遅れだ。

悲劇は起こる。しかしそれが覚悟となる事を俺は知っている。だからこそ止められない。

 

 

 

「自分の指揮官も守れなかったくせに、新米だの何だの、難癖つけないでください。この方々も私たちと同じく、命をかけて人類のために戦われるのです。」

 

 

彼女の言葉が胸に引っ掛かる。

命をかけて人類のために…か、はたしてそうなんだろうか。

はじめは俺が主人公だと思っていたが、違うと知った。

今はこの世界に生まれた以上、平穏に生きる事は叶わないと思って彼が少しでも楽に立ち回れるよう過ごしている。

そんな打算だらけの俺に今の言葉は少し、眩しく思えた。

 

 

 

 「ですので、また今度このようなことを口に出したら時は私も黙ってはいません。」

 

 「おお、なにこれ、もうギクシャクしてる?」

 

 「・・・そうね、私の失言だった。謝る。」

 

 「まあまあ、俺たちがペーペーなのはどうしようもないからな。そして、使えるかどうかはこの作戦の指揮を見て判断してくれればいいだろ。な?戦友?」

 

 

 

この問答に意味はない。さっさと切り上げるべきだ。そんな意図を隠しながら彼に話を振る。

 

 

 

 「そうだな、私のことは気にするな。大丈夫だ」

 

 

 

やはり、あまり気にしていないようだ。それでこそ主人公だといえる

 

 

 

 「ええ、怒らないの?はは、今回の指揮官様はちょっと変わってるね。」

 

 

 

変人か、その自覚はある。だからこそ成し遂げられることもあるはずだ。

 

 

 

 「・・・」

 

 「どうしたの?具合悪そうよ。」

 

 「・・・何だか体調が・・・」

 

 

 

急にふらついたマリアンを見るとそんなことを言い出した。

 

 やはり侵食の影響か。ふと、ゴッデス部隊の彼女(レッドフード)の事を思い出した。

 彼女は自我が強いおかげで侵食とNIMPHが拮抗して何とかなっていたのだったか。

もしそうだとしたら、彼女と同じ状態とでも言えるマリアンは自我が強い方だと言えるのか。

 

 いや、未来の話だがラプラスも侵食されてなお理性を保っていた。そう考えるならユニーク個体は量産型よりも自我が強い分、侵食に耐性があると言えるのか…?

たしか、量産型であろうとも自我が強くなればユニーク個体になれるのだったか。

 

ああ、一度死んだぐらいでは人は変われないらしい。俺はどうしようもなくこの物語のファンでこんなくだらない考察をしてしまう。

 

 

 

 「メンテナンスを手伝うわ。上着を脱いでもらえる?」

 

 「え?こ、ここでですか?」

 

 

 

ふと聞こえた言葉に反応してしまう。

彼女の瞳を見てまだ侵食に負けていない事を確認し、気持ちを落ち着かせる。

 

 

 

 「??何?問題があるの?」

 

 「だって、指揮官もいるし・・・」

 

 「はは、な〜んだ。指揮官様がニケを女として見るとでも?心配ご無用。私たちは血も涙もない、ただの戦闘兵器だから。・・・女として見るわけないよね!そうだよね。指揮官様?」

 

 「・・・・・・」

 

 

 

アニスが言葉と共に俺たちを見る。

俺は動揺を隠すために顔を背けたが、うまいこと誤解してくれたようだ。

このまま便乗させてもらうか。

 

 

 

 「そう見てるんだ。」

 

 「あっ、もう大丈夫です。不慣れな環境で、ちょっと誤作動を起こしたようです。」

 

 「脱いで。」

 

 「!!」

 

 「もう、いちいち反応しないでよ。」

 

 

 

事実、彼女らの見た目は麗しいからな。反応してしまうのは男の性ってやつだ

 

 

 

 「だ、大丈夫ですって。」

 

 「誤作動が起きた際、メンテナンスは選択事項ではない。必須よ。」

 

 「・・・分かりました。」

 

 「さ、指揮官様たちはあっち向いてて。」

 

 「だそうだ、戦友。レディのお色直しが気になるのはわかるが俺たちは周囲の警戒でもしていよう。E.G.!俺たちの護衛を頼む。オーシャンはラピについてマリアンのメンテナンスを手伝ってやれ。」

 

 

 

このくだらない事を考えてしまう脳を冷やす時間も欲しいからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常は見つからなかった。それはそうだ。侵食という脳に直接投与されたものである以上、触診だけではわからないだろう。

しかし、どうするか。

 

彼女たちの微笑ましいやり取りを横目に思考しているとノイズ混じりの声が聞こえた。

 

 

 

 「アークから地上へ!聞こえますか?ラピ、アニス!」

 

 「通信が・・・こちらラピ。シフティー、聞こえる?」

 

 「あっ、やっと繋がりましたね!状況はどうですか?」

 

 「新しい指揮官とバックアップ部隊とも合流できた。座標も確認して今作戦遂行中。」

 

 「はあ〜よかった!輸送機との通信が急に途絶えてしまい、びっくりしました!」

 

 

 

そうか、ここで彼女と顔合わせになるんだったか。今までアークと連絡を取るという手段がある事をすっかり忘れてしまっていた。

しかし、今まで連絡出来なかった事を見るにエブラ粒子が邪魔していたのだろう。

 

 

 

 「ちょっと、しっかりしてくれる?敵陣のど真ん中に輸送機を送ってどうするの。」

 

 「はい?」

 

 「もう鉄くずになったよ。おかげで完全にしくじるところ・・・」

 

 「・・・該当地域のラプチャーは対空火器を保有していません!それで輸送機を送ったんですが・・・」

 

 「・・・は?・・・そうだ!バックアップの指揮官様は?撃墜される所を見てなかった?」

 

 

 

半ば聞き流していた話に動揺する。しまった。言い訳を考えていなかった。しらばっくれるしかないか?

 

 

 

 「ごめん、覚えていない」

 

 「はあ〜?ついさっきの出来事でしょ?!その目は何のためについてるの?!私たちを変な目で見るため?!」

 

 

 

おお、アニスに突っ込まれる日が来るとは。

しかし、うちの隊のニケに話を振られてマリアンを疑われるのはマズイか?

俺が怪しまれる分には問題ないし、このまま話を延ばしながら横目でラピがシフティーと話終わるのを待つか。

 

 

 

 「シフティー、輸送機のブラックボックスデータを送ってほしい。」

 

 「え・・・ただいま分析中です!終わり次第すぐに送ります!あともう少しです!」

 

 「ええ、お願い。」

 

 「はい、少しだけお待ちください!さて、それでは・・・捜索隊、バックアップ部隊の指揮官、初めまして。私はアーク情報部に所属するオペレーター、シフティーと申します。これから作戦をサポートします!よろしくお願いします!」

 

 「これからよろしく頼む」

 

 「俺からもよろしく頼むよ、ところで今夜暇かな?作戦だけじゃなく、これから歩む人生もサポートしてくれると嬉しいんだが?」

 

 

 

頃合いになり、アニスの追求を逃れるためにシフティーと会話をするとため息をついたあと呆れた顔で睨まれてしまった。

 

これがアニスのチベスナ顔……かわいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「前方にハイクラスのエネルギー反応を探知!ロード級と推定されます!」

 

 

 

来たか、このロード級との戦闘によってマリアンは大きなダメージを負うはずだ。そのダメージを小さくできれば、この後の侵食状態も変わってくるかもしれない。

 

 

 

 「ええ?なんでここにあんなのが出てくるの?」

 

 「一時退却を提案します。」

 

 

 

そう、できれば戦闘せずに通過できればそれに越した事はない。

だがそれは彼主人公が許さないだろう。

 

 

 

 「でも、行方不明になったニケは?」

 

 「見捨てるしかないよね!地上で行方不明になったニケの回収率は0.2%よ。捜索作戦なんてただの見せかけ、あなたも知ってると思うけど。」

 

 

 

ああ、こんな作戦は見せかけだ。1秒でも長く人類が生存できるように。分隊が全滅するほどのラプチャーの縄張りを見つけたら、その範囲圏内に入らないよう注意する。弱者なりの生き方。

 

 

ーーーふと、怒りが湧いてきた。

 

 

 

 「でも、見捨てるわけには・・・」

 

 「ロード級はそんなに危険なのか?」

 

 

 

くだらない。何が人類のためだ。同胞を使い、強者の尾を踏まないよう怯えて生きる。

 

 

ーーーこの怒りは先ほどの恐怖が転化したのか

 

 

 

 「危険です!中隊クラスを指揮するだけあって、戦闘力が高めです!シミュレーション上での勝率は高めですが、こちらも被害がかなり・・・24.35%の確率で全滅するかもしれません!」

 

 「・・・指揮官、諦めますか?」

 

 

 

なんてくだらないんだ。人間はついに獣にまで堕ちたのか。

 

 

ーーーそれともこの先に起こる事が今更ながら現実味を帯びて来たからか

 

 

 

 「捜索作戦を諦めるつもりはない」

 

 「でしたら、ご命令ください。それで十分です。私たちは指揮官の命令に従います。」

 

  「だったら前進あるのみだ」

 

 

 

ああ、そうだ。それでこそだよ。主人公。人の武器は知恵だ。

 

 

ーーーそんなことは今更考えても遅いだろう。思考は感情に乗っ取られる。

 

 

 

 「ラジャー。」

 

 「・・・指揮官様、死んじゃうかもよ?私たちは頭さえ温存すればいいけど、人間の指揮官様は違うわ。それでも大丈夫?」

 

 「問題ない」

 

 

 

そうだ、生死は問題ではない。恐怖はある。だがそれを知恵と勇気で乗り越えることにこそ意味があると思う。

 

 

なんて、ラプチャーに組み伏せられたときの自分を棚に上げて。

 

 

 

 「OK。分かったわ。」

 

 「指揮官、私の後ろにいてください。私が必ずお守りします。」

 

 

 

エンディングは決まっているとしても、その過程をより素晴らしいものにするために。

 

完全無欠のハッピーエンドを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「状況終了!被害報告をお願いします!」

 

 

彼女(シフティー)の言葉にうちの隊のニケに確認を取る

 

 

 「損傷は軽微。残弾数は良好。」

 

 「以下同文。」

 

 「うちも似たようなもんだな、まずまずってところか。」

 

 「左側の鎖骨フレーム、破損。右下のプロテクター、中破。右眼レンズ、榴弾により損傷。ターゲット認識には異常なし。破損率13.35%作戦は続行可能です。」

 

 「あっ・・・はい!分かりました!」

 

 「・・・ケガがひど過ぎるわ。」

 

 「大丈夫です。もうすぐ座標位置に到着します。急ぎましょう。」

 

 

マリアンに包帯を巻いている彼を見ながら思う。

侵食個体だからといってラプチャーに狙われないなんてことは無いのか。

それともまだ侵食が発現していないから狙われたのか。

そういえばフォービーストの彼女らも覚醒するまでラプチャーを操ることはできないと言っていたな。

 

現実を見ないようにするためか、戦闘での緊張をほぐすためか、どうにも無駄なことを考えてしまう。

 

 

 「指揮官・・・」

 

 「はは、指揮官様、何してるの?ニケにはそんなの意味ないん・・・」

 

 「いいえ、あります。心が・・・満たされる感じがしますから。」

 

 「・・・・・・」

 

 「指揮官、ここにも包帯を巻いてください。ふふ、ありがとうございます。もう全然痛くありません。」

 

 

くだらない考察をよそに胸が痛む。はたして、このままでいいのだろうか?

物語を壊してでも彼女を救うべきではないのか?

物語通りにいかないという恐怖を、俺が知りうる知恵と、俺自身の勇気で乗り切るべきではないのか?

しかしそれは茨の道だ。どうしても足が竦む。

 

ーーーああ、どうかこんなにも弱い俺を許してくれ。

 

 

誰に向けるでもない祈り(謝罪)はどこにも届かずに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、心臓が止まるような感覚を覚えた。

 

 

 「ここです。」

 

 

心臓が停止したと錯覚したせいか。

血液をまわすために急激に上昇した心音が響く中、彼女の声がやたら耳に残る

 

 

 「探してみましょう。」

 

 

ラピとシフティーが何かを話しているのは聞こえるが、それが言葉として認識できずにいる。

いやに喉が渇く。高鳴る心臓と比例するように体が震えてきた。

 

視界の端から白くぼやけて来たところで、ラピが彼女に銃口を向けた音が、まるでスイッチのように俺の意識を切り替えた。

 

 

 「マリアン、止まって。」

 

 「はい。」

 

 

ーーー心音は鳴り止まない

 

 

 「あなたが輸送機を撃墜したの?」

 

 「・・・は?」

 

 

アニスの驚愕した声が反響する

 

ーーーまだ体は震えている

 

 

 「いいえ。」

 

 「二度も輸送機の内部で爆発が起きた。今回の作戦で使う予定だった爆弾よ。外部からの起爆信号なしには絶対に爆発しない。・・・そして、その起爆信号の識別コードは、マリアン、あなたよ。」

 

 「いいえ。」

 

 

彼女は爆発の訳を話さない。いや、もう会話するほどの言語能力を失っているのか。

しかしそれを俺は、言い渡される判決に異論はないと覚悟を決めた返事に聞こえた。

 

そんな感傷を無視するかのようにラピが彼女を、いや、彼女だったナニカを問い詰める。

 

 

 「目的は何。」

 

 「ここです。」

 

 「答えて。答えなければここで処分する。」

 

 

深く深呼吸をして、心を正常に保つ

しかし、それを嗤うかのようにナニカは俺たちの方を振り向いた。

 

 

 「ここです。」

 「ここです。」

 「ここです。」

 

 

ナニカの瞳が赤く光る

それは、最悪な始まり(プロローグ)の終わりを告げる光。最高の結末(エンディング)を照らす星。

 

 

 「ここです。ここです。ここです。ここです。ここです。」

 

 「!!侵食反応を確認!い、いつから!!」

 

 

フラッシュバックする前世で(この後)の記憶。その中でぼろぼろのマリアンに見つめられていた。

その目は俺を案じるようにも、咎めるようにも見えた。

 

 

 「マリアンに何が起きたんだ?」

 

 「ラプチャーに中枢神経を奪われました!」

 

 「ここここここここでででででででですすすす。」

 

 

ノイズ混じりのナニカの声で現実に引き戻される。

 

 

 「コーリングシグナルを感知!阻止してください!」

 

 「撃ちます!命令を!」

 

 

ラピの言葉で無意識にホルスターへ手が伸びる。しかしそれを地震と見紛うほどの強力な振動によって邪魔された。

 

 

 「ぜ、前方からハイクラスのエネルギー反応!

この振動パターンは・・・ブラックスミスが来ます!」

 

 「ここここここここでででででででですすすす。」

 

 「・・・何か来る」

 

 「コードネーム・ブラックスミス!タイラントモデルの1つです!地上に上がったニケを捕まえて、ラプチャーの部品にする特殊モデルです!」

 

 「ここここでででですす・・・」

 

 

地震の発生源へと目を向けた瞬間、マリアンはどこからか現れた触手につかまり、あっという間に建物の向こうに姿を消した。

 

 

 「ああっ!吸収された!」

 

 「行方不明になった先発隊は多分、あれにやられたのでしょう。まだ間に合うかもしれません。マリアンも、先発隊も。」

 

 

目まぐるしく変化する現実を熱に浮かされたような意識の中で認識していく。

 

 

 「ラピ!何を・・・!」

 

 「ブラックスミスは捕獲したニケをしばらくの間保管します。時間的には、生存している可能性が高いと思われます。どうされますか?」

 

 「どうって何よ!頑張って逃げなきゃ!」

 

 

彼女達の言葉をただの音として聞き流している中でその言葉だけははっきりと咀嚼できた。

 

 

 「ご命令ください。」

 

 「マリアンを助けよう」

 

 

瞬間、ドクンと心臓が脈打つ

 

ーーーさあ、これでもう道は定まった。

 

 

 「ラジャー。」

 

 「正気なの?死んじゃうよ!」

 

 「アニス。やってみよう。やってみたいの。」

 

 「・・・見つけた?」

 

 「まだ分からない。」

 

 「いいよ、じゃあやってみよう。」

 

 

ああ、そういえば彼女は探していたのだったか。強い仲間を。死ぬことも折れることも想像できないほどの人物を。

 

半ば夢心地な意識の中で思考は冷静だった。

 

 

 「シフティー、サポートをお願い。」

 

 「え・・・はい!まず、シミュレーションの結果は・・・」

 

 「言わなくてもいい」

 

 「・・・分かりました!ただ今より、タイラントモデル003ブラックスミスとの交戦に入ります!エンカウンター!」

 

 

いや、道などこれしかないと決めて、進んだのは自分の意思だ。

熱に浮かされた意識のまま声を上げた。

 

 

 「08!距離をとって装甲の脆いところを探せ!12!マリアンが抜けた所に入り弾幕を張れ!E.G.とF.A.は捜索隊のカバー!オーシャンは俺と戦友の護衛だ!エンカウンター!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘の興奮の中で崩れゆくブラックスミスを見ていたらオペレーター(シフティー)からの声が聞こえた

 

 

 「シミュレーション上の勝率は24.3%でした。お見事です、指揮官。」

 

 「生存者を確認します。先発隊は全滅。部品がすべて剥がれてしまいました。」

 

 「マリアンは?」

 

 「生きては、いる。」

 

 「ここ・・・です。こ・・・こ・・・」

 

 「手遅れね。侵食が脳にまで転移してる。」

 

 

これは俺が背負うべき咎だ。救える道を探さず。ただ流されるままにした俺の罪

 

 

 「脳が破損したニケは処分するのが規則です。軍法により、ニケの処分は指揮官が行わなければなりません。」

 

 

何が覚悟だ。何が少しでも彼が楽にだ。

彼が苦しい思いをしなくてもいいように立ち回るべきではないのか。

 

 

 「自決用の拳銃です。人間も使用できます。至近距離から撃ってください。」

 

 「私がやろうか?」

 

 「ダメよ。ニケがニケを処分することはできないもの。」

 

 「指揮官。ぐずぐずしている暇はありません。このまま放置すれば、イレギュラーになる可能性が高くなります。指揮官!」

 

 

彼の震える手を見て、気がついたら時には口に出していた

 

 

 「すまない」

 

 

彼へ伸ばす俺の手を遮るように、彼女(マリアン)が彼の手を握る

 

 

 「指揮・・・官・・・ここ・・・です。指揮・・・官。包帯・・・嬉しかった・・・です・・・」

 

 

乾いた音が木霊する。

 

ああ、世界とは悲劇なのか。

 

 

 「マリアン、処分確認。」

 

 「沈黙確認。現時刻をもって、捜索作戦を終了します。アークにお戻り下さい。」

 

 「・・・・・・くそっ」

 

 

アニスの悔しそうな声がせめてもの慰めだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アークへ戻るエレベーターの中で疑心暗鬼になる会話をよそに俺はただ、窓に映るアークを眺めていた。

胸に残るこの感情を言葉にできぬまま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副司令官室の扉の前で小さな声で話しているうちの隊のニケたちを横目に待っていると、聞こえて来た足音に声を掛ける

 

 

 「やっと来たか。待ちくたびれたよ。戦友」

 

 「ゲッ・・・やっぱりいた。」

 

 

うんざりした顔のアニスの言葉に軽いノリで返す

 

 

 「おいおい、酷い言い草じゃないか。赤点で呼び出しを食らった者同士、仲良くしようとは思わないのかい?」

 

 「そんな事言って、一緒にお説教を受ける仲間が欲しいだけじゃないのぉ〜?」

 

 「ははは、手厳しいな。まあ、事実だが。ともかく、呼び出された理由が反省文か補習かは直接聞くとしようか」

 

 

扉をノックして開くと渋めのイケおじがこちらに目を向ける

 

 

  「ほお・・・君たちか。ようこそ。中央政府司令部の副司令官・・・アンダーソンだ。君たちをここに呼んだ理由なんだが・・・1つテストをしたくてね。

まあ、難しくないから気楽に臨んでくれ。」

 

 

声もいいときた。やはりCV.杉田は強いな

 

 

 「今の状態のまま、シミュレーションルームに行ってもらう。そこで詳細を聞くように。以上だ。」

 

 

わかっていた事だが、手短に済ませたいらしい。さて、この後の選択肢で主人公はどちらを選ぶか。それで彼の覚悟の具合いを図るとしよう

 

 

 「え・・・その話をしたくてここに呼んだの?」

 

 「アニス。」

 

 「何よ?気になることは聞かなきゃ。」

 

 

そうだな。答えてくれるとは限らないが、その精神は大事だ、とひとりごちる

 

 

 「君たちに、直接会ってみたかったのだ。それだけだが?」

 

 

初見時はここでマリアンの件もあり怪しんでいたな

少しだけ懐かしさを感じる

 

 

 「・・・・・・」

 

 「では、また会おう。」

 

 「質問があります」

 

 「ちょっと待ってくれ。1つくらいなら答えられそうだ。質問したまえ。」

 

 

アンダーソンは腕時計を確認すると許可を出した。

さて、主人公。君は優しさを見せるのか、それとも敵意を見せるのか。お手なみ拝見だな

 

 

 「マリアンの侵食はアークで始まったようですが、何か知っていますか?」

 

 「!!え〜指揮官様、その話をここで・・・!」

 

 「マリアン?マリアンとは誰だ?

・・・ふむ。一緒に作戦に出たニケか、破壊されたという。残念ながらその質問には答えられないな。我々も事情を調べているところだが、ひとつだけ確実に言えるのは・・・・・・

アークの防護壁は最高だ。絶対に破ることはできない。

さて、私は次の会議があるので退室してくれるかな?

ああ、君。もし、誰かが何らかの意思を持ってニケね侵食を埋め込んだとして、それが君が手も足も出せないほど、巨大なものだったとしたら、君はどうするかね。」

 

 「対価を払ってもらいます」

 

 

そう来たか。

 

 

 「対価?今対価と言ったか?ははは、君はただの指揮官ではないか、何をどうしようと?聞くだけ聞いてみよう。どうやって対価を払わせ

・・・・・・ふむ、時間か。君からは何かないかね?」

 

 

心底面白いものを見たかのように笑った後、こちらに話を振ってきた。俺の意思も確認するつもりか?

 

 

 「では、次の機会でよろしいのでサインをいただけないでしょうか?『伝説の指揮官』様」

 

 

これくらいは少し調べれば出てくる情報だ。さて、どんな反応を見せてくれるかな?

 

 

 「・・・ほう。まさかまだ、そのような呼び方をされるとは思わなかったな。よろしい、次は色紙を持ってくるといい。」

 

 「ありがとうございます」

 

 

意外にもあっさり流されて肩透かしを喰らってしまったが、顔に出ないよう努める

 

 

 「では、皆行ってよろしい。追試の結果を楽しみにしている。また会おう。」

 

 

扉を閉めた瞬間、アニスがラピを見て口を開いた

 

 

「さっきの話、聞かれてた?」

 

「扉の前で話していたら聞こえるでしょうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「本日諸君の戦闘力テストを行うイングリッドだ。戦闘力テストはシミュレーションルームで行う。」

 

 

ラピとアニスが小声で話すのを聞きながらイングリッドを眺める。

実際に見ると美人だな。しかし年齢が顕著に出るという首回りを見ると…

 

 

 「ブリーフィング中は静粛に!」

 

 

そう一喝した後にあからさまに睨まれてしまった。まさか顔に出てたか?

 

 

 「諸君には今からシミュレーションルームで模擬戦闘をやってもらう。簡単そうに聞こえるかもしれないが、そう甘くはない。アーク技術の結晶と呼ばれるシミュレーションルームは全てが現実の戦闘と同じく再現されている。戦闘中に発生しうる各種の突破的な状況はもちろん、ラプチャーとの戦闘も完璧に再現されている。諸君はこのシミュレーションルームで各種突発事項や戦闘状況をタクティカルに突破し、タクティカルにテストを完了する。以上。」

 

 「質問があります。」

 

 「質問は受け付けない。訓練に先立って、諸君の分隊名を聞こう。分隊名を言え。」

 

 『カウンターズ』

 

 

その言葉を聞き、笑みが漏れる。

そうだ。君には、君達にはその名が相応しい。

であるなら俺が名乗る名も決まっている。

 

 

 「確認した。ではバックアップ部隊の方はどうする?」

 

 『ラストクラウン』

 

 「ふむ、反逆者達(Counters)最後の王冠(Last Crown)とは、今年の新人は威勢がいいようで何よりだ。」

 

 

イングリッドの言葉を一瞬理解できず考えると納得した。普通はそうなるか

 

 

 「…ああ、そっちじゃなくて錆びた道化師(Rust Clown)の方なんだ」

 

 「なにそれ?どういうこと?」

 

 

アニスの疑問をイングリッドは流して話を進める

 

 

 「うん?まぁ、人のセンスにとやかく言うつもりはない。では、カウンターズ、ラストクラウン諸君。諸君らのタクティカルな動きを期待している。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああ〜疲れた。」

 

 「作戦終了の報告は完了しました。しばらく待機しろとのことです。」

 

 「・・・ラピ。これ何だと思う?」

 

 「テストでしょ。言葉通りに。彼らから見れば、私たちが『あやしい』結果を出したのは間違いないから。」

 

 

戦闘結果とシミュレーション結果では大きな差があったからな。

中央政府上層部が次の作戦で俺たちが使えるかどうかを判断するだろう

 

 

 「うまくやっても、やらなくても何か言われるわ。指揮官様、何か知らない?」

 

 「さあ・・・私もよく分からない」

 

 「悪いことではないと思います。功を奏したのは確かですから。」

 

 「ふぅん・・・とりあえず待機するしかないのかしら。」

 

 「では、帰るとするか。また次の作戦も一緒だといいな、戦友」

 

 

彼女らに背を向け歩き出すと聞こえてきた声に耳をすます。

 

 

 「指揮官様、随分熱心にアプローチされてだけどあの人とそういう関係なの?」

 

 「いや、私も何故好かれているのかわからないんだ」

 

 「そっちの気がある人なのかしら」

 

 

その話をうちの隊のニケも聞こえたのか何やらコソコソと耳打ちしている。

そうか、周りからはそう見えるのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦のために地上への入り口につながるエレベーターを出ると話し声が聞こえた。

よかった、間に合ったようだ。

 

 

 「え・・・たった今、人事異動が発令されました!」

 

 「指揮官、何か聞いていませんか?」

 

 「聞いていない」

 

 「これは怪しいね、急に増員だなんて。正体は何なの?」

 

 「え・・・私は、あ、スパイだと思います。」

 

 「・・・え?」

 

 「イングリッドさん・・・社長の命令はこうでした。全力で手伝って、全てを報告するようにと。これってスパイですよね?」

 

 「えっと・・・そうだとは思うけど。」

 

 「わあ、私ずっとスパイとかやってみたかったんですよ。よろしくお願いします。スパイ任務、頑張ります!」

 

 「よろしく頼む、スパイさん」

 

 「はい!」

 

 「・・・これ大丈夫なのかな。」

 

 「さあ・・・」

 

 

向こう(カウンターズ)の話が終わったところに芝居がかった仕草で声をかける

 

 

 「そちらのメンバー確認は終わったかな?では改めて自己紹介といこう。

今回、君たちの作戦補助に任命された部隊、ラストクラウンの指揮官だ。気軽にピエロと呼んでくれ。よろしく頼むよ、戦友」

 

 

 

 

 

 





ーーーかくして舞台は整いました。哀れにも観客席から舞台の上に引き上げられたピエロは踊り続けるでしょう。彼が物語を台無しにする道化師か物語の運命を変える切り札かはいずれわかります。その先の結末が一流の悲劇か、三流の喜劇かは幕が降りた後の皆様で評価していただければ幸いです。
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