那須隊のトリオンモンスター・ガンナー   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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18 B級ランク戦・ラウンド5 ③

「メイ!」

「ガッテン!」

 

 千佳の砲撃に対抗して、メイのメテオラ流星群によるカウンター爆撃。

 しかし、千佳はバッグワームを解除して全周シールドを展開。

 固定シールドでもないのに大爆発に数発は耐え、千佳はヒビ割れていくシールドに怯まず、アイビスの銃口を通せるだけの小さな穴を空けて、再び砲撃。

 

「くっ……!」

「くまちゃん!?」

「くま!?」

「熊谷先輩!?」

 

 それが遊真と村上相手の時間稼ぎの代償として両足を失った熊谷に命中。

 当然シールドなど意味を成さず、木っ端微塵にされた。

 

『く、熊谷隊員ベイルアウト! 玉狛第二が1得点!』

『なんだこの怪獣大戦争は……』

『終わる頃には全面海になってそうだね……』

 

 地形を変える砲撃と流星が飛び交う地獄絵図に、観客席は呆然。

 こんなのもうランク戦じゃない。

 ただの戦争(ミサイルの撃ち合い)だ。

 

「ふぅぅ……!」

 

 千佳は深呼吸し、一旦アイビスを解除してメイントリガーのシールドを起動。

 それがメテオラを耐えている間にヒビ割れたサブトリガーのシールドを張り直し、再びアイビスを出して砲撃。

 地獄が続く。

 

〈ダメです! やっぱりメイのメテオラだけじゃ決定打になりません!〉

〈人のことは全く言えないけれど滅茶苦茶ね……〉

 

 砲撃と併用しているということは固定シールドではないはず。

 それでメイのメテオラを防ぎ続けるとか化け物か。

 いや、お互いに化け物なんだけれども。

 

〈マズいわね……!〉

 

 このままではやられるのは那須隊だ。

 メイはレッドバレットのせいで動けない。

 今のところはエスクードと爆煙が視界を塞いでいるおかげで、お互いにレーダー頼みの適当撃ちしかできず、メイに砲撃は当たっていないが、続けば熊谷の時みたいなマグレ当たりを引かれるだろう。

 その前に何とかしなければ。

 

〈姉ちゃん、茜! ここは私に任せて先に行けぇ!〉

〈メイ……!〉

 

 守らなければならない妹が、好戦的な顔をして保護者達の背中を押す。

 その顔にはデカデカと『勝ちたい!』と書いてあった。

 あと、冗談を言う余裕もあるらしい。

 

〈……茜ちゃん! 私達で雨取ちゃんを取りに行くわよ!〉

〈了解!〉

 

 トリオンモンスター同士の戦いはメイの劣勢。

 ならば、ひっくり返すのは仲間の仕事だ。

 玲と茜が動き出した。

 

『那須隊長と日浦隊員がバッグワームで隠れながら雨取隊員のもとへ!』

『まあ、そうなるわな』

『となると、三雲先輩がどう動くかが鍵だね』

 

 徹底的にマップに封殺されてきた修が、ここに来て勝敗の鍵を握る存在となった。

 しかし、そう簡単に何かができはしない。

 

〈メイ! この場所のエスクードを消して!〉

〈わかった!〉

『おぉっと! ここでエスクード城が消滅していく!』

『エスクードは使用者が任意のタイミングで消せるからな』

『もう防壁としては機能してないし、最低限の目眩まし以外は、むしろ邪魔だもんね』

 

 小夜子のオペレートでマークの付けられたエスクードが大量に消滅。

 これによって修が二人の移動ルートを確認する術は失われ、逆に茜の射線が通った。

 

〈やっぱり……! 那須先輩! 雨取ちゃんは海の中です!〉

〈そう……〉

 

 射線が通り、スコープで大砲の発射地点を見た茜からの報告。

 大砲は海の中から地面を突き破って発射されていた。

 壁抜き狙撃ならぬ地面抜き砲撃だ。

 途中から大砲にやたら角度がついた時点で気づいてはいたが、実際に見ると本当にデタラメな光景。

 

〈狙える?〉

〈角度がエグ過ぎます! 地面が盾になって狙えません!〉

〈なら、近づいて撃つしかないわね〉

〈はい!〉

 

 茜は長距離スナイプを諦め、玲と同じく千佳のすぐ近くまで接近する覚悟を決めた。

 しかし、二人が千佳を射程内に捉える前に、恐れていた事態が起きる。

 

「ッ!?」

 

 メイのサイドエフェクトが反応。

 この砲撃は当たる!

 咄嗟にメテオラをオフにしてダブル集中シールド。

 しかし、千佳の砲撃はクソ硬いメイのシールド二枚重ねすらぶち抜いてきた。

 

「ぐぇ!?」

〈メイ!?〉

『那須隊員被弾!』

『やったか!?』

『なんで嬉しそうなんだよ、緑川』

 

 最近のメイはお勉強優先で個人ランク戦に出てこないため、勝ち逃げされている状態の緑川が大人気なく歓声を上げる。

 まあ、大人気なくと言っても、彼はまだ中学生だが。

 

「お、おぉ? 生きてる……?」

『えええ!?』

『な、なんと!? 那須隊員生存!?』

『奇跡、いや災い転じてってやつか』

 

 メイを守ったもの。

 それは最初に千佳に付けられたレッドバレットの重りだった。

 胸を貫通する形で生成されていたそれが、ダブル集中シールドで威力の落ちた大砲を防いだのだ。

 

『雨取隊員のレッドバレットが雨取隊員の砲撃を防ぐという皮肉な結果! しかも今のでレッドバレットも半分が破損!』

『ま、トータルで見りゃ役に立ってたがな。その有利を活かし切れなかった……いや、その不利を背負っても那須隊が崩れなかっただけで』

 

 レッドバレットが悪かったというより、レッドバレットをくっつけたメイを守り切った熊谷と茜が凄いということだ。

 

『だが、爆撃が止んで当たりかけたって気づかれたな。ここからは更にキツいぞ』

「ぎゃあああああ!?」

 

 今ので正確な角度に見当がついた千佳の砲撃の精度が上がる。

 重りが半分無くなって多少は動けるようになったメイは必死に避けるも、撃ち返す余裕は無い。

 

〈那須先輩! いよいよヤバいです!〉

〈あと少しだけ耐えて! もうすぐ着くわ!〉

 

 それから間もなくして、玲が千佳を射程内に捉えた。

 海に飛び込み、砲撃の発射地点に狙いを定める。

 砲撃が地面を抉っているせいで砂埃が酷く、千佳の姿は視認できなかったが、小夜子がメイに向けて撃たれ続ける砲撃の弾道を解析してくれたので、かなり正確な居場所の予測ができる。

 狙うは無数の砲撃の弾道が一箇所に重なる地点──

 

(バイパー!)

『那須隊長のフルアタック!』

『だが、これだけじゃ雨取のシールドは破れねぇ』

 

 メイのメテオラが止んだ以上、玲の攻撃力では千佳を守る全周シールドすら割れない。

 だが、それで良い。

 玲が放ったのは鳥籠だ。

 砲撃を撃ちながら防ぐには全周シールドしか無い。

 そして、いくらトリオンモンスターとはいえ、そこまでシールドを薄く広げたのなら──

 

〈茜ちゃん!〉

〈食らえぇえええ!〉

 

 地味に磨いてきた機動力により、玲より少し遅れる程度で目標地点に辿り着いた茜の狙撃。

 使う狙撃銃は当然アイビス。

 千佳に比べれば豆鉄砲のような威力だが、それでも点の攻撃力ならメイのメテオラより上だ。

 メイ以上のトリオンモンスターとはいえ、全周シールドでこれは防げない!

 

『トリオン漏出過多。ベイルアウト』

 

 そして、天に向かってベイルアウトの光が伸びた。

 

『雨取隊員、ついにベイルアウ……いや、違います! ベイルアウトしたのは三雲隊長! 三雲隊長だ!』

「ハウンド!」

「「!?」」

 

 生き残った千佳が全周シールドから手だけ出して、シュータースタイルのハウンドを生成。

 それを玲目掛けて発射した。

 相変わらず砂埃が視界を塞いでいるので、玲は直前までそれに気づかず──

 

〈〈那須先輩!?〉〉

〈玲!?〉

〈姉ちゃん!?〉

 

 ガード不能の威力を誇るハウンドに撃ち抜かれてベイルアウト。

 

『あ、雨取隊員のハウンドが炸裂! 那須隊長ベイルアウト!』

 

 玉狛第二が2点目。

 

「このぉぉおおおお!!」

 

 ハウンドを使ったことで砲撃が止み、どうにか余裕のできたメイがメテオラ流星群を再開。

 メテオラを防ぐためにシールドを広げさせて、茜がアイビスで狙撃すればまだ──

 

「メテオラ!」

 

 しかし、千佳の方が一手早かった。

 メテオラ流星群が着弾する前、茜のアイビスのリロードが終わる前に、シュータースタイルのメテオラを展開。

 それを茜が撃ってきたと思われる場所に撃ち込み、疑わしい場所全てを消し飛ばした。

 

〈茜!?〉

『日浦隊員ベイルアウト! フレンドリーファイアのラウンド1以外の全てで生き残ってきた名スナイパーが落ちました!』

『え? 日浦ってそんな頑張ってたのか』

 

 荒船が素で驚いた。

 どのラウンドも他に注目してしまう場面が多かったせいで、イマイチ功績が目立たない可哀想な茜であった。

 

「ぬぉおおおおおお!?」

〈メイ! ベイルアウト!〉

「うぐぐぐぐぐぐ! ちっくしょーーー!」

『最後に残った那須隊員が自発ベイルアウト! なんとなんと! 雨取隊員が那須隊フルメンバーを退けて3得点! 生存点2点を加え、5対5対0で玉狛第二と那須隊の引き分けです!』

『フィールドが凄いことになってんな……』

『むしろ、陸地が残ってるだけ奇跡じゃないかな』

 

 緑川の冗談を冗談と笑えないくらい凄まじい戦いだった。

 終盤のメテオラ流星群は海に撃ち込まれていたというのに、それでも陸地の半分が消滅。

 (ブラック)トリガー同士の戦いでも、そうそうこうはならない。

 

『それでは、本日のまとめをお願いします!』

『序盤のターニングポイントは、言うまでもなくエスクードの発動とアタッカー対決だな。

 癪だが海は有効なマップだった。

 玉狛のワイヤー陣を封じ、那須姉の地形戦バイパーを封じ、鋼が海路を使って一気に那須妹の懐に接近できたんだからな』

『メイがエスクードを入れてきてなければ、これだけで鈴鳴の大幅有利だったと思うよ』

 

 エスクードさえ無ければ、太一の射線が通って村上の援護ができ、玲にあんな簡単に捕捉されて来馬と太一が落ちることも無く、試合は全くの別物となっていただろう。

 

『で、アタッカー対決だ。アタッカー対決。これはあそこで那須隊を仕留められなかった鋼と空閑が悪い』

『いやいや、荒船さん。最近の熊ちゃん先輩はマジでやばいよ? スナイパーの訓練ばっかりで個人ランク戦に来ないから知らないんだろうけど、太刀川さんですら十本勝負をやりたがらないんだから』

 

 単位を犠牲にするほどのバトルジャンキーとして知られる太刀川。

 その太刀川をして、時間がかかり過ぎるのと、攻めっ気が無さ過ぎるのとで、熊谷との戦いは三本か、せいぜい五本勝負で済ませたがる。

 

『点を取ろうとして攻めてる時ならともかく、完全に守りに入った熊ちゃん先輩は村上先輩より硬いんだよ』

 

 メイにレッドバレットさえ付いていなければ、茜のサポート無しでも足手まといを守り切った可能性すらあると緑川は言う。

 

『だとしてもだ。ちゃんとレッドバレットが付いてた以上、押し切れる可能性は七割越えてただろ。

 確かに粘った那須隊も凄かったが──それを踏み潰してこそのエースだ』

 

 荒船の厳しいお言葉。

 しかし、これは決して村上や遊真を嫌っているから言っているのではない。

 村上の剣の師匠として、中位で遊真と戦った身として、彼らの強さをよく知っているからこそ、自分より上の強者だと認めているからこそ、勝てる勝負を落としたことを怒っているのだ。

 

『で、あの三人に耐えられてる間に、来馬さんと太一を倒した那須姉が合流。四人がかりの連携でエース二人が落とされたと』

『あれは正攻法じゃ無理だと思う。千佳ちゃんの砲撃とか、改造トリガーで正攻法の外側から攻められるA級じゃないとキツいよ』

 

 全員揃えばA級部隊に匹敵するとはそういう意味だ。

 二宮隊、影浦隊と並んで、とっととA級に行け枠かもしれない。

 行ったら行ったで、今でさえぶっ壊れ性能なのが改造トリガーの恩恵を受けて更にぶっ壊れ性能になるので、怖いような頼りになるような……。

 

『そして、その那須隊が四人揃った状態で終盤戦を迎えましたね!』

『雨取が覚悟決めてなかったら打つ手無しだったろうな』

『覚悟決めちゃったから、とんでもないことになったけど……』

 

 そうして始まった怪獣大決戦。

 メテオラ流星群と大砲アイビスの撃ち合い。

 

『地形が変わるどころか陸地が水没していく次元違いの戦い! 最終的には雨取隊員に軍配が上がりました! ポイントはどこだったのでしょう?』

『那須妹にレッドバレットが付いてたことと、あとは三雲の動きだろうな』

『三雲先輩は良かったよ! 海に入った後は砂埃が酷くて見えなかったけど、多分千佳ちゃんとくっついてレイガストで守ってたんだ!』

 

 緑川、正解。

 二人は互いにうつ伏せになって、千佳の上に修が覆い被さり、全周シールドの下ですっぽりとレイガストを被っていたのだ。

 砂埃のせいでどこから攻撃が来るか見えなかったが、これなら全方位をカバーできる。

 難点は絵面がちょっとアレだったことくらい。

 

『三雲が雨取と合流したのは、砲撃が那須妹に当たってメテオラが止んだ時か』

 

 それまでは千佳以外の全てを破壊する流星のせいで近づけなかったが、レッドバレットで辛うじて防げたアレのおかげで流星群が止み、正確な角度に見当をつけられて砲撃の精度が上がり、回避に必死でそれ以降もメテオラを撃つ余裕が無かった。

 残ったレッドバレットだけでも充分重くて、遠くに逃げることもできない。

 その隙にバッグワームを着た修がトリオン消費を度外視して、村上と同じスラスタージョーズで千佳のもとへ駆けつけたのだ。

 トータルで見れば本当に役に立っている鉛弾だった。

 

『そうとは知らないまま、那須姉と日浦が攻撃を仕掛けたな』

『鳥籠で全周シールドを強制させて、アイビスでぶち抜く。千佳ちゃんだけだったら死んでたよ。砲撃をやめたらメイがフリーになって攻撃が三つになるからフルガードもできないし』

『だが、三雲が盾になって身代わりにベイルアウトした。それを見て一瞬油断しただろ、あいつら』

 

 千佳のいた場所からベイルアウトの光が上がったら、そりゃ千佳を倒したと思うだろう。

 

『それで一瞬判断が遅れて、誘導探知のハウンドが那須姉に炸裂。続いてメテオラが日浦に炸裂。メテオラで仕留められない以上、一人になった那須妹に勝ち目は無くて自発ベイルアウトで決着か』

『いやー、どれを取っても派手だった。恐るべし、トリオンモンスター同士の戦い』

『だが、忘れちゃならないのは、三雲がいなければ雨取は那須姉と日浦に落とされてたってことだ。那須妹もチームメイト三人がいなければ鋼と空閑に落とされてた。絶対無敵の化け物じゃねぇ』

 

 S級認定されるブラックトリガーの使い手ですら、状況次第で遥か格下にやられるのだ。

 トリガーというシステムの根本的な性質によって、最強はいても無敵はいない。

 あるいはどこかに例外もいるのかもしれないが、少なくともB級ランク戦にそういうのは出てこない。

 

『勝てないと思考停止するのではなく、勝ち筋を探せということですね!』

『まあ、そういうことだ。俺も上に挑むのを諦めるつもりは無い』

『ありがとうございました!』

 

 なんか深イイ話みたいになったところで、桜子が纏めに入った。

 

『さて! 5点を上げた那須隊は暫定1位! 同じく5点を上げた玉狛第二も上位をゴボウ抜きにして暫定2位に躍り出ました! 無得点に終わってしまった鈴鳴第一は残念ながら中位落ちです!』

 

 とはいえ、これはラウンド5の昼の部だ。

 夜の部の結果次第で抜き返されるのはいつも通り。

 しかも、玉狛第二と二宮隊の点差は僅か1点。

 二宮隊が1点も取れないなんてことはまず無いので、抜き返されることはほぼ確定である。

 

 そんな大方の予想通り、夜の部で二宮隊は3点を獲得。

 玉狛第二を抜き返したものの、那須隊に届かず暫定2位に終わった。

 B級の絶対王者が暫定とはいえ、一日を終えて1位の座を明け渡したことで各所が震撼することとなる。

 だが、

 

「──敵が来る」

 

 次の戦いはラウンド6ではなく、夜の部の時間帯に被る形で巻き起こった騒動。

 上層部が極秘作戦として実行した、新たな近界(ネイバーフッド)国家『ガロプラ』との戦いであった。




二宮隊「雨取を警戒」
影浦隊「チビやべぇな」
生駒隊「雨取ちゃんヤバいやん」
王子隊「アマトリチャーナをどうやって攻略しようか」
東隊「カウンタースナイプの準備はできてる」

メガネ「千佳は対策されるからヒュースを入れよう」
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