「わはは!いいぞ、いいぞ!」
「燃やせ、もっと・・・」
一面緑の藻が広がる海面があちこちで燃えていた、そしてそれを男達が笑いながら見ていた。
「よし、次はこちらだ。」
別の男がさらに小型火炎放射器を火の付いていない箇所に当てて燃やし始める。
「いやよく燃えるなこれ。」
火を付けた男は愉快そうにと言って更に続け藻は次々と火に飲まれて行く。
一方それを見ていた女性は眉をしかめつつも何も言わず居た。
本来なら止めるべきだが、男達が聞く耳を持たない事は分かっていたので黙ってみているしかなかったのだ。
海岸線にあった藻は1時間もしない中に燃え尽きていった・・・しかし彼らは気づかなかった。
藻の一部が海中に逃れていった事を、それらがまるで男達を憎む様に赤い光を発していた事に・・・
「うんいいホテルだね、待遇も最高で快適だね牧瀬艦長。」
「・・・そうですね。」
椅子に座りトロピカルドリンクを持ちサングラスを掛けたケイが隣で同じように座っている恵理香に話し掛けくる。
ハワイ島にある高級ホテルのプールで恵理香とケイは水着姿で居た。
恵理香とケイこの高級ホテルに来ることになったのはとある事情があった。
まあ事情と言っても近海で怪獣を掃討した結果島の州政府からお礼にとこのホテルに招待されたのだ。
この高級ホテルにタダで宿泊させてくれるらしい、まあ普段なら任務中と言う事で断るところだったが、スケジュールに余裕がある事もあり受ける事になった。
ただホテルの空きの関係で分散しなけらばならず恵理香とケイははるな乗員達とは別のホテルに分かれる事になった。
こうして2人はホテルに到着し早速プールに繰り出したのだが。
根が真面目な恵理香はこんなことしていて良いのかと悩んでいたのだ、まあ彼女らしと言えばらしいが。
ちなみに恵理香が着ている水着はそんな彼女の真面目さを表した様にシンプルな競泳用水着だった。
それに対しケイの方はかなり派手な赤のビキニだった、まあ体形の所為か子供が背伸びした様にしかみえなかったが(笑)。
まあそんな事も有りながらも2人はプールで泳いだ後、軽い軽食を取るため併設された売店に来ていた。
「おっこのアイスクリームが良いね、艦長はどうする?」
「私もそれで良いです。」
そして買ったアイスクリームを食しながら恵理香は少し離れた座席で顔を寄せ合って話し合う4人組の男女に気づく。
プールサイドに居るわりには水着も着ず普段着の4人はかなり深刻そうな表情で座っている。
その雰囲気に恵理香はただならぬ気配を感じ眉を顰めながら4人を見てしまう。
「どうかしたかい艦長?」
ケイに話し掛けられ我に返った恵理香は苦笑しつつ返答する。
「別に何でもありませんよパーク博士・・・」
他人の事であるのに気にしすぎだと思って恵理香は意識を戻す、こちらに影響無いならば気にしてもしょうがないのだから。
だがこの後簪達があの4人組の事情に巻き込まれてしまう事をこの時点で恵理香は知る由もなかった。
「はあはあ・・・」
ホテルの廊下を一人の男が息も絶え絶え走っていた、まるで何かに追われている様に。
男は廊下からドアを開け非常階段の踊り場に出ると膝をついてしまう。
「一体あれは・・・ってうっ!?」
何かが身体に掛かり男は手でぬぐい目の前に持ってくる。
それは緑のねばねばした液体だった、男をそれを嗅ぎ眉をしかめるが次の瞬間暗闇から飛び出して来た影に包まれ悲鳴を上げる。
「なっ!?ぎゃぁぁぁ!!」
男の悲鳴は暫し続きやがて消え静寂が戻るのだった。
「・・・?」
廊下から聞こえて来た物音で恵理香は目を覚まし傍らの時計を見る、時刻は午前2時。
「こんな時間に?」
ベットから起き上がり恵理香はドアに近づき廊下の様子を伺う。
「艦長何かあったのかい?」
起きた気配に気づいたケイがベットから起き上がり簪に尋ねてくる。
「騒ぎが起こっているようですね・・・確認してみましょう。」
恵理香とケイはドアを開け廊下に出て行く。
廊下ではホテルの従業員が走り回り、宿泊客が恵理香達同様不安そうにそれを見ていた。
何か有ったのかのか宿泊客に聞いた所、非常階段で何か有ったらしい、恵理香とケイはその非常階段に行ってみる事にした。
その非常階段付近では従業員がホテルのマネージャーらしき男性と深刻そうに話しこんでいた。
「一体なんでこんな事に・・・」
「警察に連絡は?」
「電話が通じないんだ、非常階段にあった中継器が壊されていて。」
「こんな状態お客様には見せられんぞ。」
どうやら深刻な状況らしく恵理香とケイは顔を見合わせると彼らに話しける。
「何かあったのですか?」
話し掛けられぎょっとした表情でマネージャーと従業員達が話し掛けてきた恵理香とケイを見る。
「な、何なんだお前達?」
マネージャーが恵理香とケイを見るとイラついた声で聞いてくる、従業員達も迷惑そうな表情を浮かべている。
まあ若い女性達と言う事もあって余計な事をするなと思っているのだろうと恵理香。
彼らの気持ちも分かるのでどう説明すべきか恵理香は考えたのだが。
「お前達?私達は巨大有害生物担当チームだよ、何かあるのなら聞かせてもらいたい。」
ケイがマネージャーの言葉にそう返すと彼らは驚愕した表情を浮かべ言う。
「巨大有害・・チーム・・・もしかして貴女はあのモンスターハンターエリカ?」
「その通り彼女こそ幾多の怪獣を倒してきたハンターエリカだ。」
ドヤ顔で恵理香をマネージャー達の前に押し出しながらケイが言う。
「「「おぉぉ!!」」」
その反応に満足そうに頷くケイを見ながら、私は某有名ゲームに出てくるキャラですかと現実逃避気味になってしまう恵理香だった。
「真夜中にこの非常階段の踊り場で悲鳴が上がり、従業員が駆けつけてみたところこのような状況で・・・」
打って変わって対応が180度変わったマネージャーから説明を受ける恵理香とケイ。
ハンターエリカの名は伊達では無かった訳で恵理香は複雑な気分なったが。
遺体は既に別室に運ばれており、現場は飛び散った血痕が残っているだけであった。
「偶々宿泊されていた医師の方見てもらった結果によると・・・全身の骨を全て砕かれており、即死だったそうです。」
「全身の骨を全て?」
ケイがマネージャーの話を聞いて眉をしかめる。
「そんな事可能なのですかパーク博士?」
マネージャーの言葉を聞いて恵理香がケイに問い掛ける。
「人には無理だと思うね・・・他には何かあるかい?」
そうケイに聞かれたマネージャーが戸惑いながら答える。
「そう言えば遺体に緑色した液体が付着していたと、医師にも何だか分からなかったそうですが。」
その言葉に簪がシャルに提案する。
「それを調べてみましょうシャル、何か分かるかもしれません。」
別室にある遺体から医師によって回収された緑色の液体が届けられケイが慎重に調べ始める。
こういった場合に備えてケイは分析キットを持ち歩いていた、一体どういう場合は想定していたのか恵理香は不思議だったが。
「ハッキリとは言えないけど・・・植物の分泌物みたいだね。」
「植物の?」
ケイの言葉に恵理香が首を捻る、何故そんな物がと思って。
「あの連れて来ましたけど。」
その時マネージャーが1人の女性を連れて来た。
シャルの分析と合わせて関係者の聴取を行う事になりマネージャーに連れて来て貰ったのだが。
「この人だけですか?」
事前に被害者はとある企業の人間で、他に3人居ると恵理香は聞いていた。
「あの・・・あとの2人には拒否されてしまいまして。」
と言ってマネージャーはすまなそうに答える。
「2人共も何にも話したくない、自分は無関係だと言って部屋から出てこようとしないのです。」
それを聞いて恵理香は眉を顰めつつ女性を見ると彼女はびっくとして目をそらす。
「貴女は?」
「三枝 美紀と言います・・・」
女性は小声で答える、一体何に彼女は怯えているのだろうかと恵理香は思った。
「巨大有害生物担当チームの牧瀬 恵理香です、出来れば事情をお聞きしたのですが。」
「・・・」
美紀は担当チーム所属と聞くと身体を震えさせ始める、これは何かあると恵理香は直感する。
「これはではとても話を聞ける状態じゃないね。」
溜息を付いてケイが言う、恵理香も頷きどうしたものかと考えていた時だった。
「た、大変です!客室から悲鳴が聞こえて・・・声を掛けたんですか返事が無くて。」
従業員が血相を抱えて部屋に飛び込んで来たのだ。
「それはまさか?」
恵理香が尋ねると従業員が青い顔で頷く、どうやらここに来なかった者だったようだ。
「お客様・・・お客様・・・」
部屋の扉を必死に叩く従業員、そこに恵理香達が駆けつけて来る。
「様子は?」
従業員に恵理香が尋ねる。
「悲鳴の後いくら呼び掛けても反応がありません。」
「鍵は開けられないのかい?」
ケイが従業員に問い掛ける。
「今取りに行って・・・ああ来ました。」
従業員の一人が鍵を持って駆けつけて来る。
「開けて下さい、早く!」
「は、はい。」
従業員が慌てて鍵を開けようとするが焦っているのか上手く鍵穴に入れられなかった。
「貸して下さい。」
恵理香が従業員から鍵を借りると鍵穴に入れ鍵を開けるとドアを開け部屋の中に飛び込む。
「これは・・・」
緑の粘液らしきものに覆われ、目を見開き絶命している男が居た。
「・・・遅かった様だね。」
続いて入って来たケイがその光景を見て呟く。
30分後・・・ホテル最上階会議室。
「さてここまできたら話して頂けますね?」
ホテルの客と従業員達が退避している広間の隣にある会議室に恵理香とケイをはじめとした者達が集まって居た。
「・・・・・」
俯き肩を振るあわせて2人は会議室の座席に座っている、その前に恵理香とケイが座り、背後にホテルのマネージャーが立って居る。
こんな状況になっても話そうとしない2人に恵理香は厳しい目を向けて言う。
「既に犠牲屋が2人も出てます・・・このままでは貴方方以外の従業員や客達が危険に晒されます、もうお二人だけの問題ではないんです。」
身体をこわばらせながら女性が顔を上げる。
「・・・私達は3か月前にある島で過ちを犯してしまったのです。」
「おい!やめろ。」
話し出した女性を隣に座っていた男性が制止しようとするが。
「もうたくさんよ・・・貴方も見たでしょう、2人が緑まみれになっていたのを。」
髪を振り乱し女性はそう言って男性を睨みつけて言う。
「あの時の生き物が原因に間違いないわ。」
女性はそう言うと恵理香達に自分達が犯した罪を告白し始めるのだった。
それは3か月前のとある無人島で彼女達が海岸に広がる緑状の物体に遭遇した事に始まる。
彼女達は最初それを生き物だとは思わなかった、海水が緑に染まっているだけだと。
だが観察して行くうちにそれが生き物である事にメンバーの一人が気づく。
そのまま観察し報告すればよかったのだが。
「火でもつけてみるか?」
1人が言い出した事が後に悲劇を呼ぶ事を皆予想する事は出来なかった。
彼らは面白半分に火を付けまくった、これらが燃えやすかったからか瞬く間に炎は広まり緑の生物群は全滅した筈だった。
「・・・何と事をしたんだ君達は。」
ケイが2人を睨みつけながら言う、彼女達の行いは生物学者としてとてもは許せるものでは無かったからだ。
「つまり全滅したと思ったその生物が彼女達に復讐していると?」
恵理香も同様に怒りを抱きつつケイに問い掛ける。
「可能性は高いね・・・これまでの状況をみればね。」
深い溜息を付く恵理香、事態は最悪だと考えて。
「電話は使えないから救援を呼べない、武器は無いうえに戦える者も居ない、よくまあこれだけの悪条件が揃ったものです。」
だがこのまましてはおけなかった、原因とは言え彼女達を犠牲には出来ないし他の宿泊客や従業員達を守れるのは恵理香達か居ないのだから。
とは言え恵理香は艦艇の指揮官、ケイは学者と戦闘には向いていない人間だ。
「ここは対策チームの隊長である牧瀬艦長の閃きに期待大だね。」
「お願いしますモンスターハンターエリカ様!」
「あのですね皆さん・・・」
マネージャーの期待の目と面白がっているケイに恵理香は深い溜息を付くのだった。
「あいつらがこの2人を狙っているのならそれを利用するのも一手ですね。」
恵理香はその言葉に怯えて涙目になって見つめてくる2人に苦笑する。
「まあそえが手っ取り早いだろうね。」
そう言うケイは意地悪そうな表情で2人を追撃する、どうやら怒りは収まっていない様だった。
「餌にする積りはありませんが、お二人には協力をお願いしますね。」
恵理香の言葉に2人は戸惑った顔を見合わせるのだった。
「皆さんはこの広間に鍵を掛け、バリケードを設置して大人しくしていて下さい。」
広間に集まった宿泊客と従業員は恵理香の指示に不安そうな顔をして聞き返す。
「大丈夫でしょうか?」
「あれは特定の人間だけを狙っていますから皆さんは大丈夫だと思います、ただ念の為この広間でじっとして居て下さい。」
そう指示した恵理香はケイと狙われている2人と共に広間を離れる。
「上手くいくといいんですが。」
「完璧だよ牧瀬艦長、自信を持ちたまえ。」
なんでケイはそんなに確信を持てるのか恵理香には理解出来ない、プレッシャーが掛かるのでやめて欲しいと言うのが本音だ。
恵理香とケイは当事者である2人を連れ広間のある最上階の2階下にある食堂に来ていた、衣装室にある鏡を持ち出して。
それは大きな姿見だった、恵理香はケイと共にそれを窓際に設置し、2人の持っていたハンカチやタオルを下に置く。
「お二人はそちらに・・・」
連れて来た2人を調理室の出入口に立たせ、姿見に写る様調整する。
「牧瀬です、そちらの準備はいいですか?」
調整を終え恵理香は携帯電話で連絡を取る。
『はい準備完了です、その大丈夫ですよね?』
「心配しないでください・・・ただ危険を感じたら直ぐに避難をして下さい。」
『は、はい。』
連絡を終え恵理香はケイに振り返って言う。
「それでは始めましょうか。」
「そうだね。」
囮の2人と同じ部屋に恵理香とケイは隠れあいつが現れるのは待つ事1時間。
食堂の出入口から這うような音が聞こえて来る、恵理香はそっと覗き見ると緑色の怪獣が侵入して来るのを確認する。
侵入した怪獣は2人の写った姿見にどんどん近づき、飛び掛かかるが姿見ごと窓から下へ落ちて行く。
それを見て調理室から飛び出した恵理香とケイは窓に近寄ると眼下を見る。
落下した怪獣は地上にあるプールに落ち這い上がろうとプールサイドに向って行くのが見える。
「今です電源を入れて下さい。」
プール近くにある変電施設から伸びたケーブルが水中に入れられており、恵理香から指示を受けた作業員が電源スイッチを入れる。
凄まじい絶叫(?)が上げながら、怪獣はプールの中でのたうち回り、焦げた匂いを辺りに漂わせる。
永遠に続きそうな高電圧と怪獣の対決は変電器が負荷に耐えられず焼き切れるまで続いた。
絶叫が消え静かになったプールを恵理香とケイは窓から見下ろす。
「終わった様だね・・・」
「そう願いたいです、これが駄目だったとしても次の作戦なんか直ぐに思いつけないですからね。」
安堵の溜息を付きつつケイが隣で疲れ切った表情で座り込む恵理香に話し掛ける。
そんな恵理香とケイを山間から登って来た朝日が照らす。
「夜が明けたみたいですね、本当に長い夜でした。」
出来ればこのままベットに潜り込み眠りたいところだが、残念ながら恵理香とケイにそんな暇はなさそうだった、
ホテルの前に警察と消防の車両が集まり、多くの人々が忙しく歩き回っていた。
そして対策チームの三浦班長以下小銃班の連中も、連絡を受けホテルに高機動車で駆けつけていた。
「しかしうちの艦長はこう言う事案では休暇も関係ない様だな。」
苦笑しつつ三浦班長は呟く、まあ恵理香が聞いたら勘弁してくれと零すだろうが。
その恵理香はケイと共に関係者に事情を説明中だった、周辺にはマスコミ関係者も来ており騒然としていた。
益々話題になるなと三浦班長は考えつつ、プールに小銃班員と共に向かう。
怪獣の死体は未だプールの中央に浮いており、周りでは調査と引き上げの準備が進められていた。
「しかしまあ派手にやったもんだな、まあきっちり怪獣を倒しているけどな。」
怪獣をプールに落とし高電圧で感電させ倒す、こんな作戦を考えつく艦長は流石だなと三浦班長は思う。
ちなみに恵理香がこの作戦を思いつたのは、昔見たアメリカ映画で宇宙から来た生物を同じ様に高電圧で倒した話しからだ。
そう恵理香はまたも怪獣を倒した、特撮オタクの知識をつかってだ。
こうして恵理香の名声は更に高まる事になる、本人的には望んでいないのに・・・