巨大有害生物担当チーム   作:h.hokura

13 / 15
第11話「人を食う砂浜」

海岸の砂浜で遊ぶ6人の若者達、一見平和な光景だったが悲劇は突然起こった。

転がって行ったボールを追いかけて来た男が拾い上げようとした時。

「!?」

ボールの周囲1メートルが盛り上がり、男が何事かと思った瞬間。

男を砂の下から現れた巨大な袋状な物に飲み込まれる。

「ぎゃぁぁ!!」

響いた悲鳴に振り向いた者達は男を飲み込んだ袋状な物が砂の中に潜って行くのを見て絶句する。

「な、何が?」

呆然とそう呟く彼の足元が先ほどの様に盛り上がり、彼もまた砂の中から出て来た袋状な物に絶叫を残して消える。

「逃げろ!」

「ぎゃぁぁ!!!」

残った者達が叫んでその場を離れようとするが、三度現れた袋状な物に次々と飲み込まれてゆく。

「助けて・・・よ・・・誰か!」

最後に残された女が荷物の置かれた場所に辿り着き持って来たスマホを操作して助けを呼ぼうとする。

『何があったの?』

相手が出て尋常では無い様子に時掛けて来る。

「砂浜の中から何かが出て来て皆を・・・きゃぁぁ!!」

助けを呼ぼうとした女は悲鳴を上げる、座り込んだシートの下から先ほどの物体が出て来て彼女を飲み込んでしまう。

『ねぇ、何が有ったの?ねぇ・・・』

砂浜に落ちたスマホが呼び掛けるが、それに答える者はその場に誰も居なくなっていた。

「人を食う砂浜ですか?」

目の前に居る人物の言葉を聞き恵理香が戸惑いつつ聞き返す。

「いや本当に食うと言う訳では無いと思いますが・・・そう言われても仕方が無い状況なのです。」

目の前の人物、この街の警察署長の男性はそう言って肩を落とす。

この日、恵理香は援助隊本部のマーべリック司令官に要請され、美しい砂浜が広がるハワイの街に来ていた。

その要請と言うのが、今目の前の署長の言っているとある砂浜で起こっている事件についてだった。

立て続けに砂浜で遊んでいた人々、新婚旅行のカップル、幼い子供を含む家族連れ、若者のグループ・・・

そんな人々が綺麗に消えてしまい、2度と現れないのだ、既に行方不明は30人に及ぶらしい。

「捜索はしたのでしょう?」

「もちろんです、砂浜周辺は念入りに多くの人員を割いて行いました、海上だけでなく海中を隅々までやりましたが、まったく手がかりを得る事は・・・」

苦悩に満ちた表情を浮かべ恵理香の問い掛けに署長は答える。

それで人を食う砂浜か・・・まあ砂が人を食う訳ないとは思うが、ただの事故にしては奇妙過ぎる点も多々ある事は確かだった。

その後捜査状況を聞き、現場写真等を受け取り恵理香ははるなに戻った。

「人が忽然と消えるね・・・まあこれほどの神隠し事件はめったにないね。」

現場写真を見ながらケイが呟く。

「事故や事件の疑いはあるにせよこう続くとちょっとぞっとするな。」

会議室にあるホワイトボードに張られた地図を見ながら三浦班長が発言する。

対策チームの主要メンバーがはるなの会議室で事態の検討をしていた。

「早く解決しないと観光への打撃だけでなく住民の不安も問題ですね。」

街の住民が不安の余り暴力沙汰が多発したり、買い物や子供が学校へ登校出来なくなったりと影響が広がりつつあった。

「とりあえず翌日事件現場へ向かいます・・・それで何か分かれば良いのですが。」

翌日の海岸線にLCAC1号が海上から揚陸して来ると停止し数台の高機動車を降ろす。

高機動車は暫く進むと停止し、恵理香とケイ、三浦班長以下小銃班員達が降りて来る。

「一応この辺の捜索は行われらしいね。」

降り立ったケイが砂浜を見下ろしながら恵理香に尋ねて来る。

「ええ、砂浜の一部を掘り返して捜索までしたそうですが。」

ケイの横に立った恵理香は周りを見渡しながら答える。

「結局遺留品以外発見出来ず、我々の方にお鉢が回って来た訳ですが。」

海上、海中、付近の森等も数百人単位で捜索されたが手がかり一つ発見出来ぬまま現在に至ると恵理香は署長から聞いていた。

「そうなると新たな手掛かりが出るとは思えんが、取り合えず捜索を開始・・・ってあれは?」

その時だった、砂浜に2台の車が入り込んで来るのを三浦班長が気づく。

「この砂浜は立ち入り禁止だった筈だよね。」

険しい表情を浮かべケイがその2台を見ながら言う。

「その筈です、三浦班長直ぐに立ち退かせて下さい。」

「了解・・・たっく余計な手間掛けさせやがって、おいあいつ等を追い出すぞ。」

指示を受けた三浦班長が止まっている車に班員を連れて向かう。

「おおここが例の人食い砂か、早速配信をしようぜ。」

「OK!再生回数どのくらいになるかな?」

車から出て来て早速スマホで撮影し始めたのは若い男女5人組だった。

「撮って、撮って・・・」

「ははは、あんたじゃ駄目だって。」

騒ぎながら砂浜やそこに立つ女性を撮影していた。

「悪いがここは現在立ち入り禁止だ、さっさと出て行ってくれ。」

到着した三浦班長がそう言って声を掛けるが。

「うるせい!俺達が何しようと勝手だろうが。」

「兵隊?お前らこそ何やってんだ?」

だが若者達は三浦班長達に食って掛かってくる、完全に舐めた態度に三浦班長が切れかかる。

「このクソガキどもが!その青いケツをひっぱたいて海に放り込んでやろうか!!」

「・・・班長、口が悪いっすね。」

班員の1人が呆れた声で突っ込む、この人切れるとどこかのチンピラみたいな感じになるんだよなと思って。

だがその時奇妙な盛り上がりが彼らの足元に忍び寄っている事に誰も気づいていなかった。

そして次の瞬間、止められた車の傍にいた男性が下の砂から飛び出して来た袋状のもの飲み込まれる。

男性を飲み込んだ袋状の物体を見てケイが呟く。

「あれは・・・動物と言うより食虫植物?」

ウツボカズラの様な壷状の捕虫葉にそっくりだった、もっとも大きさが違うしまして動き回る訳が無いので似たものかとケイは推測する。

「ぎゃぁぁ・・・」

響きわたった悲鳴が途切れる、その状況の中我に返ったのは三浦班長が一番早かった。

「下がれ、お前達も!」

傍に居た若い女性の腕を引きながら三浦班長が怒鳴るが、その直後に若者達の乗って来た車が下から突き上げられて横転する。

「ひゃぁぁ!!」

車と共に吹き飛ばされ砂の上に叩きつけられ男も捕虫葉らしきものに断末魔の悲鳴を上げながら飲み込まれてしまう。

「武器を・・・三浦班長達の救助を行って下さい!」

突然起きた惨劇に恵理香が傍らに居る班員達に指示をすると、彼らは高機動車から小銃を取り出すと現場に向かって行く。

「班長これを!」

駆け付けた班員が武器を三浦班長達に渡す。

「この餓鬼を艦長の所へ連れてゆけ、残りは射撃準備!」

受け取った小銃を確認した三浦班長が駆け付けたて来た班員に怒鳴る。

「は、はい、お前ら付いてこい。」

腰が抜け座り込んでしまった若者を引っ張り上げると恵理香の居る所まで引っ張って行く。

「油断するな!何処から来るか分らんぞ。」

三浦班長が周りの班員達に声を掛ける、相手は砂の中を移動し獲物の下から襲ってくるから気が抜けなかった。

恵理香は逃げてきた若者達を高機動車に乗せた自分も乗り込むとしたが、次の瞬間目の前に砂を吹き上げながら捕虫葉モドキが現れる。

「艦長!?」

「この!!」

近く居た班員が叫ぶ、恵理香は咄嗟にタイトスカート後ろのホルスターからM60を引き抜きセフティを外し撃ちつつケイに叫ぶ。

「パーク博士も乗ってください、急いで!」

ショックに硬直していたケイは恵理香の叫びを聞いて解けると高機動車の助手席に飛び込むとドアを閉める。

モドキには銃弾が数発命中したがそれほど効果は無かった様だったが、一瞬動きを止めたので恵理香は運転席に乗ると高機動車を発進させる。

一瞬怯んだそいつは砂の中に潜り込むと高機動車の前に現れて襲い掛かろうとしたが恵理香の見事なドライブテクニックで避ける。

「今だ撃て!」

避けられて無防備になったモドキに三浦班長の指示で小銃が一斉に発射される。

銃弾を受けモドキは若者達が乗ってきたもう一台の車に衝突し高機動車の方へ吹き飛ばしてしまう。

「艦長!!」

だが恵理香は高機動車を巧みに操り避けて見せる、なおモドキは衝突した所為で砂の上を数十メートル転がり動きを止める。

暫くそいつが再び動かないか三浦班長は見ていたが完全に沈黙したらしく彼はほっと息を付く。

「周囲の警戒をしろ。」

そう命じた三浦班長の傍に高機動車が近づいて来て止まると恵理香は下りて駆け寄って来る。

「三浦班長、皆さん大丈夫ですか?」

心配そうに聞いてくる恵理香に三浦班長は「大丈夫です。」と答えた後若干呆れた表情を浮かべて呟く。

「うちの艦長、艦の指揮や射撃だけでなくドライブテクニックまで持っているらしいな。」

これで美人でもあるのだから、艦長は相当チートな存在だったのだと三浦班長は今更ながら思った。

「三浦班長何か言いましたか?」

「いやなんでも無いですよ艦長。」

まあいった所でこの艦長は容姿も含め大したことないと思っているからなと三浦班長は苦笑しつつ答える。

「まあ班長の気持ちも理解できるな。」

ケイが意地の悪い笑みを浮かべ三浦班長の肩を叩く、恵理香のこう言った所は彼女も知っているからだ。

「・・・?」

困惑した恵理香をケイと三浦班長は促すともどきの所に向かう。

車に衝突し砂の上を数十メートルも転ばさせられたもどきは完全に動きを止めていた。

「ウツボカズラの捕虫葉に似ているね。」

その壷状の物体を見分しながらケイが見解を述べる。

「こんなデカいウツボカズラなんているのか?そもそも植物だろうあれは。」

それを見ながら三浦班長が言う、確かにこんなに巨大でしかも動き回って人間を食うなんて植物など存在しないだろう。

「まあね、形状がウツボカズラに似た怪獣と言うところだろうね。」

「・・・その様ですね、それにしてもこれは。」

恵理香はもどきを見ながら昔見たアメリカのB級怪獣映画を思い出していた、同じ様に砂の中から人を襲う物語だった筈だ。

もっともその時の怪獣は芋虫みたいなやつでこんな食虫植物モドキでは無かったが。

「まあこれが食虫いや食人植物怪獣だとすればこれで終わりと言う訳にはいかないね。」

「それは・・・あっ!?」

ケイの言葉に恵理香は気づき声を上げる。

「そう植物みたいなものなら根っこいやこの場合本体と呼ぶべきものが有るかも知れないからね。」

「「・・・・」」

肩を竦めケイが結論を述べると恵理香と三浦班長が顔を見合わせる。

4時間後、海岸前の道路にトラックが集結していた、その荷台に積み上げられていたのは多量の肉だった。

「依頼通りに街にあるスーパーや商店から有るだけの肉を集めましたが・・・一体何を始めるのですか?」

警官が戸惑った表情を浮かべながら三浦班長に報告する。

「まあ・・・うちの艦長殿が考えた作戦を行うんだよ。」

集められた肉が砂浜に積み上げらてていくのを恵理香とケイが傍で見守っていた。

「艦長、指示された焼却用爆薬を持ってきましたが。」

そこに高機動車が到着し下りてきた施設班長が恵理香に敬礼し報告する。

「ご苦労様です、すぐ設置をお願いします。」

「了解です艦長。」

施設班長は付いてきた班員を指揮して積み上げられた肉の間に焼却用爆薬を設置する。

「起爆時間はどうしますか艦長?」

「パーク博士、三浦班長、目標の推定位置は確認できましたか?」

地下ソーナー、元々は地雷探査用を使い三浦班長はケイの助言を受けつつ砂中の探査していた。

「推定80メートル・・・8分が適当なところだな艦長。」

三浦班長の報告に恵理香は頷くと起爆用のタイマーの時間を施設班長に指示する。

「起爆時間はスタート後8分に設定願います。」

「8分に設定します。」

起爆装置に時間を設定すると施設班長は肉の中にある爆薬にセットする。

「準備完了です艦長。」

「総員LCAC1号まで退避して下さい。」

「総員退避、急げ。」

準備完了を受け恵理香が退避の指示を出すと三浦班長配下の小銃班と施設班が高機動車に乗り込んでゆく。

「艦長、我々も退避しよう。」

皆が退避するのを見守っていた恵理香に共に残っていたケイが声を掛ける。

「ええパーク博士。」

恵理香も運転席に乗り込むと発進させLCAC1号に向かって行く、後には肉の山と地中探査用ソーナーが残される。

「LCAC1号よりはるなへ、艦長以下作業部隊帰還、これよりはるなに戻る。」

部隊の高機動車を全て収容したLCAC1号が発進するとはるなに進路を取る。

そしてはるなに到着したLCACから降りた恵理香達は艦橋に上がり待機する。

「艦長、ソーナーに反応あり、砂浜上の肉へ急速に接近して来ます。」

艦橋内に持ち込まれたソーナーのディスプレーを監視していた施設班のソーナー担当が報告してきたのははるなに戻って2時間後だった。

報告を受け恵理香は左舷見張り所に出て双眼鏡を砂浜に向ける。

「起爆装置のスタート用意・・・」

積み上げられた肉の傍らの砂浜が盛り上がり始め、次の瞬間モドキが襲い掛かっていく。

「起爆装置のスタート!」

「起爆装置のスタートします。」

起爆装置が作動した直後に肉の山は飲み込まれ砂の中に引きずり込まれていった。

「起爆装置作動を確認!」

起爆装置担当の班員が報告すると見張り所に居た者達は一瞬安どの表情を浮かべるが。

「まだですよ皆さん・・・」

恵理香の声が響くと皆な表情を引き締める。

「カウントダウンを。」

「はい艦長、7分前・・・6分前・・・5分前・・・」

カウントダウンを聞くと恵理香は愛用の懐中時計の蓋を開き見つめる。」

「目標に予定地点に接近中。」

地中探査用ソーナーのディスプレーを監視する班員が報告する。

「今のところ上手く進んでいるみたいだな。」

「このままいってくれるといいんだけどね。」

三浦班長の言葉にケイが縁起でも無いことを返し恵理香が苦笑する。

「3分前・・・2分前・・・1分前・・・」

「目標予定地点に到達!」

起爆装置担当が報告する声にソーナー担当の声が重なる。

その声を聴きながら恵理香は双眼鏡を海岸の砂浜に向ける。

「20秒前・・・10秒前・・・5・4・3・2・1・0!」

砂を吹き上げて火柱が上がる、派手な爆発ではないのは使用した爆薬が焼却用だったからだ。

最初三浦班長は通常の爆薬を使うと思っており、恵理香から焼却用爆薬を指定され戸惑った。

「吹き飛ばすより焼き払う方が賢明だと思いまして。」

恵理香の説明にケイは感嘆した様子で言う。

「なるほど怪獣退治のプロは流石だね。」

ケイの賞賛に恵理香は苦笑する、そう今回の事も彼女の特撮オタクの知識からきたものだったからだ。

あのB級怪獣映画では身体を爆破した結果、バラバラになった肉片が飛び散って多数の怪獣が生まれ人間を襲うという結末だった。

実際にそうなるか分からなかったが、最悪な結末を予想し恵理香はこの作戦を実行したのだった。

「ソーナーの反応は?」

「・・・反応消えました艦長。」

その報告に恵理香が頷くと、その場に居る者達はほっとした表情を浮かべる。

「LCAC1号の発進準備を、パーク博士と三浦班長は付いて来て下さい、副長後をお願します。」

そう指示を出すと恵理香はケイと三浦班長と共に艦橋を出てLCAC1号へ向かう。

はるなから発進したLCAC1号が砂浜に到着すると恵理香達を乗せた高機動車を降ろす。

高機動車は火柱が上がった場所に止まり恵理香がケイと三浦班長と共に降りて近づく。

今は煙が上がるだけになった砂浜を見ながらケイが言う。

「これで終わった・・・1匹だけならだけど。」

また縁起でも無いことを言うケイに三浦班長が苦笑しながら返す。

「博士が言うと現実になりそうで怖いな。」

「まあ暫くはここを閉鎖して監視する必要はありますけどね。」

ケイと三浦班長の言葉に恵理香が肩を竦めながら言う。

こうして『人を食う砂浜』事件は解決し恵理香の名声は更に轟く事になったのは言うまでもない。

まあ恵理香本人は相変わらず喜ぶ気にならなかったのだが。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。