やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件   作:へーれ

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新宿での隆景の戦績は、羂索戦⇒閉じた領域内で戦ったことと隆景が後々トンずらこきたかったので、戦後の地位向上も見越して真希の戦果としています。宿儺戦⇒主に戦ったのは乙骨や虎杖、真希らで、隆景は簡易領域を貸し与える補助術式を使った点しか注目されていません。あとはトンずらをこきたかったので(以下略


最終話 やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件

 

大地を揺らす地響きとごつごつとした感触を背中に感じて新枝川(にえかわ)は意識を取り戻す。

 

「生きて…るのか?」

 

信じられないことに戦場のド真ん中で気絶していたようだ。直前の記憶は確か…、と記憶を辿る新枝川(にえかわ)

 

渋谷駅跡で術師の急襲があったかと思えば、そいつはふざけた術式で配下の呪霊を次々と屠っていった。勝ち目がないことを悟ってからはいくつかの奇策で時間を稼ぎ逃走を図ったが、策を逆手に取られて居場所を掴まれた。そこからは神業の如き速度で刀を振りながら突進してくるその術師から逃れようとするも叶わずに接近を許しそのまま一閃を振るわれ…。

 

(そうだ!斬られたんだ!傷は!?)

 

慌てて腹部に手を当てて傷の度合いを探ろうとするが、奇妙なことにそこに傷はない。衣服は横一線に断ち切られた跡が有るにも関わらず、だ。

 

(それどころか…。)

 

他の傷まで治療されている。

呪霊()術は術者自身の肉体を呪霊に喰わせることで、他の生贄よりも格段の効果を得る強化術がある。その術を多用していた新枝川(にえかわ)の体には傷が絶えず、常日頃からやつれた風貌をしていた。

 

その生贄のために自ら傷付けた部位までも綺麗に治療が施されている。

絶たれていた筈の命とこの治療の痕跡。その事実は信じ難い可能性を新枝川(にえかわ)の脳裏に示す。

 

「助けられた…?」

 

「お!意識が戻ったか。」

 

「よかった。よかった。」と言いながら自分を切った当の本人、何かをしていた賀﨑隆景がその作業を中断せずにこちらに歩み寄ってくる。先の戦闘では無人機の様に攻撃していた端末で瓦礫を掘り起こしていたようだ。身元確認のために遺体を掘り起こしていたのだろうか。

 

「傷の多さ、深さもだが治してみて驚いたよ。やつれて随分老け込んでいたんだな、あんた。20半ばくらいだと思ってたけど、もしかして未成年?」

 

あまりに険のない口調に呆気にとられかけたが堪えて新枝川(にえかわ)は答える。

 

「……17。」

 

「マジ!?年下!?」

 

驚愕しているらしき隆景を無視して新枝川(にえかわ)は状況を読み解こうとしていた。

目の前の男が自分を殺さなかったのは恐らく自分の術式を利用するためだ。だが大きな傷はともかく他の体の不調箇所まで治したのは何故か。心象をよくして交渉を有利に進めるため?それならば治療は小出しにした方が効果的なはずだし、拘束もされていないのは不自然だ。では罠か?もう一度反抗したところを御すことで向こうに有利な縛りでも結ぼうと画策しているのか。

 

「なんで俺は死んでないんだ?最後の横薙ぎ。あれで俺の身体は真っ二つになってたはずだ。」

 

「なんでっていっても、あの剣は反転術式の正のエネルギーを振り回してるのと変わらないからな〜。………。口より見せたほうが早いか。」

 

そう言うと、隆景は周囲の瓦礫からスイカ大のものを二つ選んで足元に並べる。

 

「まず、呪力強化した手刀だと…。」

 

ザンッ!

 

破壊音とともに岩が2つに割れる。断面は粗く、槌で叩いて割ったように不揃いな部分が目立つ。

 

「そして、こっちは術式で作った剣な。」

 

言うや、隆景の右手に緑の十字型の光剣が現れる。ついさっき、それに両断された新枝川の身体はつい強張ってしまう。

 

スッ

 

振り抜くと、瞬きほどの間をおいて二つ目の岩が分かれる。その断面は先程とは対照的に研磨したかのごとく滑らかであった。

 

「単純に出力した正のエネルギーは無機物と生物には無害。だから、この剣はリビドー(強化された正のエネルギー)…まぁ俺固有の呪力みたいなもんに術式で粘性を加えてから高速で循環して切断力に変えてる。体に無害でもちょっとの抵抗と速度があれば立派な武器になるって訳。水で樹木の皮を削って丸太にする高圧洗浄機のイメージかな。」

 

言いながら更に剣を振るうと、岩は何の抵抗もなく細切れになっていく。

 

「だったら何で生物を死傷出来るのかって話だよな。」

 

変質していても反転術式の一種。それを生物に当てれば何らかの治療効果は出るはずだという疑問に先回りするかのように続ける。

 

「そもそも反転術式で他者に治療を施せる術師は殆どいないと言っていい。何故かというと、千差万別の人体構造に合わせるのがクソむずいから。自分のでさえ身体の構造を把握するのは難しい。他人の身体となれば尚更だ。このせいで反転術式をアウトプット出来る術師でも、他人を治療するときの効率は自身を治すときと比べて格段に落ちる。これを補うとしたら、医学の見地を深めて正のエネルギーの調整を効率化するか、低効率を無視できるくらいのバカみたいな出力でゴリ押すか、の二つだ。」

 

そこで隆景は言葉を区切り、自らの眼、紫に渦巻く“輪廻眼”を指差す。

 

「だけど俺の解決法はそのどちらでもない。この“眼”だ。用途が違うから、六眼みたいに呪力を捉えるのには適していない。それでも観察精度は折り紙付きで、下手な検査機器よりも精密に人体の構造を把握出来る。この眼で俺は正のエネルギーを受け取り先の身体が拒絶反応を起こさないレベルまで“調整”しているから他者の治療をポンポン出来るってわけ。」

 

この“調整”には受け手の解析だけでなく、隆景固有の特異体質である“呪力の変質”も関係するのだがその説明は省いていた。流石に初対面の相手に自分の家系にまつわる呪いやそれを解決した経緯まで打ち明けるのは早急で、場面も相応しくないと考えてのことである。

 

当然新枝川(にえかわ)はそんな事情までには思い至るわけもなく、自身の頭に新たに浮かんだ疑問について尋ねていた。

 

「待ってくれ。治療の仕組みは分かった。理解してはいないけど、取り敢えずそういうもんだと言うことは一旦飲み込む。だけど俺はアンタに斬られた瞬間に“死んだ”と思った。実際気絶していたしな。反転の一種ならああはならない筈だろ。」

 

「言ったろ?“調整”したって。斬るときにわざと身体に馴染まないようなバランスで反転術式を流し込むんだよ、拒絶反応を起こすように狙ってね。」

 

それは隆景独自の反転術式使いへの対策。呪力防御が硬く、何とか突破してもあっという間に反転で治癒してくる敵への有効だとするべく考案した戦術。極の番『銀河美少年(スタードライバー)』で生み出したリビドー(強化された正のエネルギー)を相手の身体に適合しない異物として流し込む。謂わば毒物の打ち込み。組成を次々と変えることで適応する隙を与えず、かつ、正のエネルギーであるが故に呪力防御を中和して命中させられる。

 

なかなかにエグイ攻撃方法に怯えを増した新枝川(にえかわ)は問う。

 

「…俺が死んでない理由は分かった。だけど、殺さなかった理由は何だ。俺に何をさせるつもりだ。」

 

隆景が明かした、殺さずに無力化する方法に偽りはない。だが、新枝川(にえかわ)の言う通り、それは彼が生きている理由のすべてを説明するものではない。気絶させられるのならその間に命は奪えたはず。そもそも隆景と面識がなく人となりも知らない呪詛師にとって、トドメを刺さずにいるこの状況は未だに生殺与奪を握られた状況でしかない。

それゆえに想定するのは、呪術界への隷属か、呪術規定に則った処刑。そうした暗澹たるものだった。

 

そうした思考を必死に回している新枝川(にえかわ)に対して、唐突に隆景は切り出す。

 

「今まで何人殺した?」

 

発せられたのは裁定を告げるものではなかった。

殺し殺されが当たり前の呪術の世界ではなんてことはない問いであったはず。

 

だが。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

逃げろ、智也っ!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

脳裏をよぎる過去の罪。呪霊に身を齧られながら自分を逃がそうとした父の最期の姿。

 

「2人。見殺し、いや助けなかったのを入れたら7人。」

 

罪状。駆け引き。嘘偽り。直前まで打算を続けていたが、その問いに対しては、何故か逡巡なく真実を答えていた。

 

「そうか…。憶えているんだな…。」

 

その答えに対して隆景は顔を曇らせる。

 

しくじった、と思うも放った言葉は取り返せない。今の回答は体制側の人間に対してするべきものではなかった。罪を告白するにしても情状酌量の余地を狙って少なく申告する方が賢い選択だ。にもかかわらず新枝川(にえかわ)は真実を告げた。それは反射に近いものであった。

 

だが、続く言葉は断罪ではなく。

 

「俺は覚えていないよ。10人目くらいかな。そのあたりから数えないようにした。始めはそれでも意識はしていたが、しばらくすると思い悩むこともなくなったよ。」

 

「?」

 

失くしたものを惜しむような表情から発せられた後悔だった。

予想外の内容に新枝川(にえかわ)の緊張が思わず解ける。故にその直後に放たれた言葉はその心に深く刺さることになる。

 

「お前、高専に来ないか?」

 

 

 

「は?」

 

勧誘。予想外の展開に素っ頓狂な声が出た。

 

「近いうちに呪術規定の改定案がまとまりそうなんだ。その案では、死滅回游中に術師になった覚醒タイプのケースについては情状酌量を見込みでね。元々、この作戦もできるだけ死者は出さずにって方針でやってんのよ。」

 

「殺さずに…。まさかさっきからやかましく地下から呪詛師を掘り起こしているのは、遺体の身柄確認のためじゃなく…。」

 

「そう、死んでもらったら困るからね。掘り起こして逃げ出さない程度に治療しているよ。呪詛師なら咄嗟でも最低限の身体保護は出来ると踏んで、最初の地形破壊をしたけど即死した奴はいないみたいで良かったよ。」

 

気負いなく大規模な救助活動を熟していることを明かす隆景に困惑しつつも新枝川(にえかわ)からの問答は続く。

 

「それは目出度い話だが、生憎俺は回游の前から殺しに手を染めてるぞ。新しい規定とやらの話はいいが、俺には適用されない話だろう。」

 

「そこは安心してくれ。こう見えて俺、結構コネがあるんだよ。ひとりくらいなら何とか引っ張り上げれるさ。」

 

自信満々にそう宣言する隆景は続ける。

 

「何より、おまえ自身が罪の意識を捨てていない。俺と違ってな。元から血なまぐさい商売なんだ。まだまだやり直せるさ。」

 

言いながら歩きだす隆景。向かう先は気絶した呪詛師らを集める予定の仮拠点だ。

その後ろ姿に新枝川《にえかわ》は早くも親しみを感じてしまっていた。

 

(あんだけの強さなのに話すと何か頼りないんだよなぁ。)

 

それは彼の警戒心が解けたことを意味している。

 

「分かった。あんたの所で世話にならせてくれ。」

 

「お! 早速の返事でうれしいが…本当にいいのか?」

 

「ああ。」

 

「理由を聞いても?」

 

「一回斬られたからかなやり直してみる気になった。」

 

「そりゃぁ、なにより。斬ってよかった。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「というわけで、一人直に引き抜きたいんですが、いけそうですかね。伊地知さん。」

 

『そうですね…。本人の証言と”呪霊躁術”の術者…夏油傑の行方を追った記録と照会してみたところ、発言に嘘はなさそうです。あくまで仮の検証ですが、難しくはないと思います。』

 

長らくメンテナンスがされていないため新宿周辺は携帯電話の電波の通りが悪い。そのため、隆景らは衛星通信機を設置した前線の仮拠点に移動して伊地知事務次官に戦闘の報告と新枝川(にえかわ)のスカウトについて相談していた。

 

彼の証言の裏取は順調だった。新枝川(にえかわ)が最初の事件を起こした時期は、呪術界が血眼になって夏油傑の消息を追っていた時期であり、多数の呪霊が観測されるような事件は呪霊操術が関係する可能性が高い重要案件として調査されていたのだ。

その中で調査されていた事件の中で、戸籍や居住地、事件の内容と新枝川(にえかわ)の証言に一致することが多い案件が見つかり、あくまで仮捜査ではあるが彼の証言はある程度の信憑性を得ることが出来た。

 

また、この事件は他の例と異なり事件発生の数年前から該当地域での呪霊被害がその目撃数と比べて圧倒的に少ないという特徴から、調査された事件の中でも実行犯が夏油ではないのでは、という推測が立てられていた事件でもあった。このおかげで伊地知ら事務方は該当案件の資料へとスムーズに辿り着き、証言の裏取を行えたというわけだ。

 

ところで、伊地知潔高は現在、跋務(ばつむ)庁の事務次官を務めている。新宿での決戦後、呪術界上層部の深刻な汚染の発覚、外務省の外郭団体としての再編に当たって、補助監督や『窓』らの中から大量に跋務(ばつむ)庁へと人材が引き抜かれた。その中でも、呪力が扱える上に術師としての実務経験も(短いながら)あり、補助監督として長年の経験を持ち、加えて事務能力も優秀であった伊地知が高官に推されるのは(本人は断固拒否していたが)自然のことであった。

今回の体制再編の中心人物である五条悟と知己であることがそれを後押ししたことは彼にとって不幸であった。五条に人生を振り回されることは彼の人生において絶対に逃れられない絶対的な法則なのかもしれない。

 

そんなこんなで現在のポストに収まった彼は、長官である夜蛾が政治面での矢面に立つ中で、裏方仕事の総まとめ役として渋谷事変以降気の休まる隙もなく日々奔走しているのだが、今回の作戦にはさすがに参加せず、本庁で通常業務を行いながら作戦の進行状況について逐次報告を受けていた。

 

そんな中で高位の役職者でなければ判断の難しい仕事を隆景が思い付きで持ってきたために直接対応しているという経緯である。

 

『とはいっても、その場での戦闘行為は認められません。あくまで運搬などの補助行為にだけ従事させてください。』

 

「わかりました。面倒ごとを持ってきてすみません、伊地知さんにわざわざ出てきてもらわなければならないような事態にしてしまって。」

 

『五条さんで慣れてますから気にしないでください。それよりも作戦は無事に進んでいるようで何より…『“伊地知次官!ご報告が!”』…成沢君、入室前には必ず確認してください。呪いの世界は耳にしただけで死に至る事例もあるんですから、慎重にと言っているでしょう。…なんですって?わかりました。映像をすぐに前線拠点に送ってください。』

 

通信の途中に部下が割り込んできたようだ。会話の詳細は聞き取れなかったが、どうやら緊急の事態らしい。

 

『賀﨑君、残念なお知らせです。』

 

 

『あなたの名前で、国家樹立が宣言されました。所謂騙りですね。』

 

「わ~お。」

 

想定外の声が出た。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

映像には二人の男が映っていた。

 

年代を感じさせる和室だ。かなり古い建築であることが察せられる。

男の一人は小柄でスーツ姿にハンドマイクを握っている。

もう一人は部屋の少し奥でニスを塗った木を編み込んで作られた椅子に腰掛けている。部屋の明かりは薄暗く調整されており、その貌は窺えない。

 

「我々は日本の未来を憂う有志の集いである。」

 

小柄の男が仰々しく演説を始める。

 

「皆さんの知っての通り、我が国は未曾有のテロ“死滅回游”によって首都の喪失、それに伴う大混乱に陥りました。その中で皆さんが知ることになったのが“呪術”という概念です。」

 

映像が切り替わり、いくつかの写真が映し出される。いずれも新宿決戦の様子を映したものだ。

 

「我々は“呪術師”として長年、国家の安寧のために陰で命を賭してきました。ですが今日の話の主題はそこではありません。現在の呪術界、いや日本はある男によって歪められてしまった。そのことを訴えるためにこのような場を設けさせてもらいました。」

 

「新宿で両面宿儺なる化生と大規模破壊を繰り広げた“五条悟”。この男の一派によって、呪術師どころか、国家の在り方そのものが歪められているのです。」

 

再び挿し込まれる映像。五条が規格外の戦闘能力によって新宿の街を破壊する映像だ。宿儺による場面は排除され、“無制限の茈”が炸裂するところで映像は締めくくられていた。

 

「この男の圧倒的な“暴力”。それに対して国家は沈黙させられ、我ら本来の呪術師も体制から排除されました。今やこの国は独裁体制の元にあるのです。国民にそのことを知らせないままで!!」

 

男の弁舌に熱が増す。

 

「我々はその最大の被害者の元、かつての断絶を乗り越えてひとつに集ったのです。全ては五条悟の暴虐を終わらせるために!!!」

 

その言葉を受けて、部屋の奥で椅子に腰掛けていたもう一人の男が立ち上がり映像の前方に姿を現す。その体躯はやせ細っており、目元には包帯がまかれていた。

 

マイクを受け取った男は口を開く。

 

「この映像を見ている国民の方々には、突然の無礼を許していただきたい。」

 

男が包帯を外すと生々しい傷とともに“抉られ窪んだ眼球のない顔”が映像いっぱいに映し出された。

 

「先の話の通り私は五条悟による横暴を正すために立ち上がった者の一人です。話の前に、もう一つ知っておいてもらいたい事があります。」

 

男は力強く宣言した。

 

 

 

 

「私はかつて賀﨑隆景という名で呼ばれた事もある男だ!」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

マイクを再び受け取った小柄の男が演説を再開する。

 

「新宿の映像でご存じの方もおいででしょう。彼こそは新宿で羂索なる悪逆の徒を討ち、両面宿儺を討ち滅ぼすことに貢献した英雄です。ではなぜ彼が我らとともに在るのか。それは彼が五条悟らに裏切られ、功績を奪われ、殺害されそうになったからです!!」

 

またまた、映像が挿し込まれる。それは健康体となって海外から帰国した隆景の顔写真。特徴的な紫の眼、輪廻眼と共に撮影されたそれは外務省経由で流出したものだ。

 

「現在、賀﨑隆景を名乗って活動するこの男の写真を見てください!新宿での戦闘での記録映像と見比べてみてください!人相などまるで異なります!ですが、この“眼”。紫に渦巻く隆景様本来の眼を奪い取り、別人に移植することで成りすまさせているのです。全ては五条悟に従わない隆景様を体制から排除し、その功績を奪い取るために!」

 

「辛うじて逃げ延びた隆景様は痛む体に鞭打ち我らに結集の号令を掛けられました。その尊き意思の元にかつては反目していたわれわれが集ったのです。」

 

演説はクライマックスを迎える。

 

「我らの名は“真・呪術連合 時の器の会 世界に警鐘を鳴らす緊急会議 Q救求(スリーキュー)”!!! 国民よ、まやかしの世界にNOを突き付ける時が来たのです!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

隆景は顔を覆っていた。

 

(あの眼抉り男、俺が追い出した前の賀﨑当主だよなぁ。恨みで担がれちゃったかぁ。目もマジで抉っとるし。覚悟ガンギマリやん…。)

 

最後に宣言した組織名から推測するに、旧御三家の中でも落ちぶれた家系、西日本で燻っていた古い術師の家、盤星教の残党、呪詛師集団“Q”の生き残りその他多数が集合しているのだろう。

 

寄り集まりの組織故に結束は脆いだろうが、間違いなく国家は乱れる。東西で別々の国家となれば外国も参加してかつての東西ベルリンの様に長期の混乱に至るかもしれない。

 

そして何より。

 

(俺自身が二度も失踪してるせいで社会的な信用がない!!二度目に至ってはマジの失踪だし!)

 

官僚と世間は恐らくあちらの“賀﨑隆景”を本物と信じるであろう。顔も整形したうえで新宿決戦当時のやつれた体系に似せているおそらく肉を削ぐなど悍ましい手段も駆使して似せている徹底ぶりだ。

 

「ごめん、新枝川(にえかわ)君!俺今すぐ京都に飛んで(物理)いかなきゃ行けないから!ここの拠点の人には説明しているから一旦、保護してもらって。事務のトップの人にも説明済みだから!ごめんね!」

 

今すぐに乱を鎮めなければ俺のせいで国が割れる。

国の再建のために戦っていたというのに事態が悪化するなどひどい冗談だ。

少なくとも首魁のうちの一人。偽隆景は捕まえてDNA鑑定でどちらが本物なのかを公的に証明しなければならない。

 

銀河美少年(スタードライバー)』を起動した隆景は飛び上がり一気に音速を突破する。

 

「俺の人生、こんなのばっかだなぁ!ちくしょー!!!!」

 

叫びはドップラー効果で低音になりながら東京の上空に木霊する。

 

 

やっと目覚めた術式のせいで呪詛師認定されそうな件 完

 




無下限の障壁があくせつだんで切れるんか!?と反転アンチになりかけたことが切っ掛けで書き始めた本作ですが、書くことでより呪術廻戦を好きになりました。初めて物語を書きましたがたくさんの方に読んでもらい、感想もたくさん頂戴しました。本当にありがとうございます。
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