女の子が苦しんでいるのを肩代わりしてしまう少年の話 作:二本角
我が魂のバイブル、黒の魔王のえげつない骨肉の争いにはまだまだ遠いですね。
綾地寧々にとって、仮屋和奏という少女はただのクラスメイトであった。
教室で時折言葉を交わす、好感度が並みかそれより少し上程度。
同じクラスであるが故の仲間意識はあるが、そこまでの関わりはなかった。
これは、原作と呼べる世界線でも同じだと思われる。
お悩み相談室を和奏が利用したことはあったが、寧々のルートでも和奏を選んだ道筋でも、お互いが関わる描写はさして多くない。
だが、この世界線においては2人の関係は少々異なる。
始まりは、
そして、その異物と柊史が出会ったことにある。
柊史は呪術師となり、幼い頃の和奏は柊史に対して後悔と執着を抱いた。
柊史のチカラはより強力な術式へと変貌し、結果的に寧々を救い、意図せず恩を売りつけて罪悪感を植え付けた。
一つの歪みが連鎖的に本来の運命を捻じ曲げ、2人の少女が柊史に抱く感情は、より歪なモノへと変わっている。
そんな歪んだ2人が関わって、元の関係に収まるだろうか?
否、そんなことがあるワケがない。
歪んだ者どうしが関われば、その歪みはさらに大きくなるだけだ。
曲がった柱や梁が組み込まれた結果、家全体が軋んでいくように。
悪い方に、悪い方へ。
--放課後にちょっと話したいことがあるから、オカ研を借りてもいい?
午後の5限と6限の間にある小休止に、寧々のスマホにそのメッセージは飛んできた。
(話って、なんでしょう?というより、同じ教室にいるのにどうしてわざわざアプリで?呪術に関することならお昼休みでもよかったと思いますが・・・?)
今日の昼休みは、昨日と同じように柊史、寧々、和奏の3人でオカ研に集まっての呪術に関する交流会だった。
昨日の惨事を反省して、今回は呪霊を呼ばずに柊史による説明のみだったが、とても有意義な時間だったと思う。
昨日の今日であの恐ろしい呪霊への恐怖が薄れたワケではないけれど、それでも柊史のこと、ひいては呪術のことを知る上で外せないし、教室にいるときに比べると柊史が明らかに自然体であり、普段よりずっと仲を深められたと思えたからだ。
まあ、深められたのは柊史との仲であり、和奏と仲良くなれたとは思えなかったが。
ともかく、あの場でなら呪術に関係のあることでも問題なく言えたハズなのだから、そこで言えばいいだろう。
それか、昼休みより後に思いついた話なのだろうか。
(・・・とくに断る理由はありませんね)
少し考えてみたが、今日はオカ研でのお悩み相談の予約もないし、柊史もいつも通り放課後はどこかに行ってしまっていて不在だ。
その話とやらが何なのかわからないが、わざわざこのような形で伝えてくる以上大事なことなのだろう。
おそらくは柊史に関係する話題なのだろうし、ここは受けるべきだ。
そう思い、寧々はすぐに了承の返事を打った。
するとすぐに礼を述べる返信が返ってくる。
(こういうところ、仮屋さんは律儀ですよね)
文面を見ながら、寧々は感心した。
寧々にとって、仮屋和奏はこれまでそう大した交流のある相手ではなかった。
クラスメイトとして知り合いではあるが、友人と言うには遠いだろう。
それでも、和奏が善良で面倒見のいい性格であることは把握している。
柊史と話す機会が多いからか、女子の中でも男子とは物おじせず接するやや気が強いところがあるが、それでいて義理堅く、貸し借りはきっちり清算する。
寧々がそこまで知っているのは、クラス内で耳にする評判もそうだが、一時柊史について調べていた際に一緒にいるところを見ていたからだ。
柊史はその術式の都合上、人助けを行うことが多いが、それによって自分の時間を使いすぎることが稀にある。
そういったときのフォローに、和奏はよく奔走していた。
そこを見るだけでも、とても友達想いのいい人と言っていい。
しかし。
(でも、少しやりすぎじゃないですか・・・?)
和奏は柊史が傍にいることを不快に思っていないことが明示するように、善良な人間なのは間違いない。
寧々とて、和奏の快活な人柄は誇れる美点だと思う。
だがどうにも、分け隔てなく他人と接する寧々には珍しく、手放しで褒めたたえる気にはなれなかった。
それというのも、寧々の知る限り、和奏はかなりの時間を、それこそ同性の友人である海道よりも長く柊史の近くにいたからだ。
少々浮世離れしたところのある寧々だが、恋人でもない男女があそこまでべったりとしているのには違和感を覚えていた。
なのに、柊史を観察していると、かなりの頻度で和奏もそこにいる。
はっきりと言葉にできないが、強いて言うのなら気味が悪かったのである。
(七緒から、仮屋さんも昔に何かがあったとは聞きました。でも、それは大怪我をしたのを肩代わりさせてしまったとか、そういうのではない。仮屋さんが気にし過ぎているって)
つい一昨日に和奏がそうしていた理由を知ったが、それでもその印象は変わらない。
いや、むしろ悪化したとすら言える。
とくに、自身が魔女であることにすら気づきかけていたと伝えられたときには軽い恐怖すら覚えたほどだ。
・・・寧々自身が柊史のことを気にするのは、自分でもいうのもなんだが道理ではあるだろう。
柊史には恩と負い目があり、寧々にはそれに報いる義務がある。
だが、和奏は違う。
七緒から和奏の過去のすべてを聞いたワケではないが、それでも和奏が魔女でも呪術師でもないただの人間であり、寧々のように柊史に大きな代償を払わせてしまったのではないことは知っている。
七緒も、『仮屋さんが保科君のことをあそこまで気にしているのは、自責の念というヤツだろう。そんなに気に病む必要はないと思うのだけどね』と言っていた。
それは、七緒が和奏を慮っての言葉に違いない。
しかし、寧々には少し違って聞こえていた。
--私のような理由がないのに、どうしてそこまで執拗に保科君に付きまとえるんですか?
柊史に対する和奏の異様に近い距離感や、寧々が魔女であることを見破った偏執的とも評せるほどの観察眼は、まさしくストーカーのソレである。
なのに、和奏にはそこまで柊史に執着するに足るほどの理由はない。
その歪さが恐ろしく、そして不気味だった。
やはりそれをいまだに自覚はできていないが、それでも少しずつ細かな欠片が積み重なって、寧々の中で形になろうとしていた。
その根幹には、一つの事実がある。
--保科君の心の穴を埋められなかったくせに
仮屋和奏は柊史の友人として一年ほど傍にいたが、心の穴を塞ぐことができなかった。
すなわち、和奏は近くにいるだけで役に立っていないということ。
否、それどころかストーカーとして毒にすらなりうるのではないか・・・そのことが、寧々にとっては無自覚に、しかし絶対的に固定された評価基準となっていた。
(むしろあんまり気に病んでると、それが伝わって保科君も気疲れしちゃうんじゃないでしょうか・・・)
七緒が聞けば、『寧々。それはブーメランというヤツだよ』と呆れながら口にしたことだろう。
だが、不幸なことに寧々には自分を客観的に見ることができていなかった。
・・・椎葉紬に頑固な一面があるように、因幡めぐるの対人スキルに難があるように、原作と呼べる世界線において寧々にも欠点と呼べるポイントがあるが、それは時折自爆めいた暴走をするところであるだろう。
普段は冷静沈着で物腰穏やかな寧々だが、非常時には慌てふためき、視野が狭くなった結果常人には想像もできないような事態を引き起こすことがあった。
今の寧々も柊史への罪悪感に突き動かされるあまり、自分ではいつも通りだと思っていても落ち着いた思考ができていない。
それゆえに、これといった偏見のない寧々には珍しく、仮屋和奏という明らかな善人に悪印象を抱いていたのである。
あくまで『なんとなく』の悪印象であって、そこに至った理由までを、さらにはそこに向かわせた己の感情の正体をわかってはいないけれども。
(・・・仮屋さんが何を話そうとしているのかはわかりませんが、そのことは言っておいた方がいいかもしれません。こんなこと、保科君の近くでは話せませんし・・・)
そうして、寧々はまるで戦場に赴く兵士のように、覚悟を決めて放課後に備えるのであった。
奇しくも、まったく同じようなことを和奏が考えていることなど想像もせずに。
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「ただ、保科への接し方を考えてほしいってだけ。綾地さん、教室で保科に話しかけるの、控えた方が保科のためだよ」
「・・・は?」
そして、時は放課後のオカ研に進む。
和奏が自分に向けて放った言葉は日本語だ。
しかし、寧々にはその意味が分からなかった。
「あの、仮屋さん?それって、どういう意味です?」
だから、聞き返した。
そしてその反応は和奏の想定通りの返しである。
「やっぱり自覚ないよね・・・あのね、綾地さん。綾地さんは自分がどれくらい学院の男子に人気があるか知ってる?」
「人気?私にですか?ないと思いますけど・・・あの、それと保科君に何の関係があるんですか?」
「・・・・・」
(ここまで自覚がないとさすがに少しイラッっとくるな・・・)
寧々は成績優秀、眉目秀麗な上にそれを鼻にかけない謙虚な性格とまさしく非の打ちどころのない少女である。
それは間違いなく美点であり、その長所に胡坐をかいて傲慢に振舞うよりも何倍も難しく素晴らしいことであるとこの話を持ち掛けた和奏ですら思わざるを得ない。
だが、こと柊史に関わることではその限りではないのだ。
それを教えるのがこの場の目的であるが、和奏は早くもその難易度を悟っていた。
「いい?綾地さんはエグイくらい男子に人気があるの。ほら、オカ研って最初は男子が部員になろうと大勢押しかけてきたことあったんでしょ?それ、全部綾地さん狙いだよ。綾地さん美人だし」
「・・・はぁ」
オカ研の存在は基本的に男子に秘匿されている。
それは、下手に触れ回ると男子が殺到して本当に相談をしたい女子たちが入れなくなってしまう、もしくは寧々がその男子たちを厭ってオカ研を辞めてしまうことを危惧してのことだ。
だが、人の口に戸は立てられぬということわざがあるように、一時は一部の男子にその存在がバレ、我こそは寧々と同じ部員になろうと殺到したことがある。
幸いと言うべきか、余計なライバルを増やすまいとしたのか男子間でオカ研の情報が広まることはなく一時のことで済んだが、寧々としては少し困った時期であった。
・・・寧々にとってはその程度の認識であり、別に自分がモテていたなどと思い上がってはいない。
思い上がりなどではなく事実なのだが、寧々の容姿に対して異様に低い自己評価がそう思わせないのだ。
だから、和奏にそのことを指摘されてもピンと来ていなかった。
寧々としても、反証があるのである。
「ですが、仮屋さん。それはないですよ。だって私、その、こ、告白とか男の子に遊びに誘われたこととかないですし・・・」
和奏の言うことが本当なら、自分に告白する男子の一人や二人いてもいいだろう。
だが実際には寧々にその経験はない。
「あ~、それは仕方ないっていうか・・・あんまり高嶺の花だと真正面からアタックする気が削がれるというか」
「?」
和奏は納得と呆れの滲んだ表情でこぼした。
人は、あまりに高い山を見上げたとき、そこに登ることを諦めてしまう者が大多数。
諦めずとも、わざわざ真正面から玉砕しようとする者はさらに少ない。
そう男子に思わせるほどのオーラが寧々にはあるのである。
だが、これは言っても信じてもらえないだろうと思い言葉を濁すにとどめた。
男子に告白される理由として『美人だから』というのは道理だが、告白されない理由に『美人すぎるから』などと言っても冗談としか思われないだろう。
なお、この理屈は姫松学院の現生徒会長にも通じる。
「そ、それに・・・」
和奏の攻勢が緩んだのを好機と見たというワケではないが、寧々にはまだ言い分があった。
それも、とびきりのモノが。
「ほ、保科君が私と恋・・・そ、そういう関係になりたいと言い出してきたこともないですし!!」
自分が男子に人気だと言うのなら、柊史はどうなのだという話だ。
代償の肩代わりをさせてしまったことが大きいのだろうが、少し前までは寧々を避ける素振りすら見せていた。
それなのに自分は男子に好かれていると言われても説得力がないのである。
(もし、もしも保科君が私のことがす、好きだって言うのなら、私は・・・)
ふと、寧々はそんなことを思い浮かべた。
もしも自分が和奏の言う通り容姿が優れていて男子に、否、柊史に好かれるというのなら。
そのとき、自分はどうするのだろうと。
(そうなったら、私は必ず・・・)
答えは決まっている。
寧々は柊史に返しきれないほどの恩と責任があるのだ。
柊史の気持ちに応えることで少しでも報いることができるのなら、そこに否やなどあるハズもない。
・・・それは、寧々の頭の中で組み立てられた筋道の通った理屈によるモノである。
いかに恩があるとはいえ、異性と初めての恋人になるという年頃の少女にとって極めて大きな契約を結んでもよい、いや、むしろ捧げるべきでさえある・・・そう思わせる心の内は完全に意識の外であった。
もしも今の寧々を柊史が見たのなら、そこに一切の嫌悪がないことがすぐにわかったことだろう。
だが、ここにいるのは柊史ではない。
「・・・・・っ!!」
寧々の言葉が耳に入った瞬間、和奏は自分の意識が切り替わったことに気付いた。
(人の気も知らないで色ボケやがって・・・っ!!)
和奏の中で、今日一日中今朝の柊史との会話が尾を引いていた。
傷つき続ける柊史と、それをどうすることもできなかった無力な自分への怨嗟。
柊史の心の穴を塞ぐことができるのにそれをしない存在がいることへの怒り。
そして、和奏も自覚できていない、一瞬で怒りに燃やされていたハズのある感情。
それらは今も和奏の心に残り、ささくれを増やし続け、その攻撃性を引き出していたのだ。
そこに油を注ぐかのような寧々の危機感のない色ボケた発言と、にわかに赤くなった頬。
寧々が何を考えているかなど柊史でなくとも丸わかりであり・・・和奏の中で燻り続けていた感情が再び激しく燃え上がった。
(穏便に言い聞かせるつもりだったけど、ダメだ。綾地さんにはかなりキツく言わないと伝わらない)
和奏とて、さきほどまでは穏便に済ませるつもりだった。
なぜなら、いかに寧々と和奏が柊史にプラスの感情を送ることができるとはいえ、2人で陰険に罵り合っていればそれは柊史にとっての害となるからだ。
理論上、柊史に好意的な人間が多いほどその心の穴が塞がるのは早まるだろう。
だが、和奏はここで悟った。
--
--冗談じゃない!!
『コイツと一緒にいて心穏やかでいるのは不可能である』、『そうするくらいならコイツをどこかに追いやってアタシ1人でいた方がトータルで遥かにマシ』・・・和奏はそう結論付けたのだ。
その想いに対する自覚の有無は異なるが、それは紬の出した答えと同一であった。
「あのさ、綾地さん。綾地さんに自覚がないのはよくわかったけど、最初に言ったみたいに綾地さんが保科に関わり過ぎると迷惑かかるの。教室で話しかけるのはやめてあげて。どうしても話したいことがあったらアプリとか使えばいいでしょ?」
これでも和奏としてはまだ穏当な物言いだ。
別に柊史との接触すべてをやめろなどと言っているワケではない。
今まで通り昼休みにオカ研で過ごすことは好きにすればいいし、放課後にシュヴァルツ・カッツェで会うのも道中にさえ気を付ければ何も言う気はない。
妥協案としてアプリでのやり取りまで勧めている。
内心の怒りの大きさを考えればいっそ奇跡的とも言える配慮であった。
だが。
「・・・どうして、仮屋さんにそんなことを指図されないといけないんですか?」
当然、寧々に受け入れられるハズもない。
せっかく心地よい気分で決心を固めていたというのに、どうしてそんな横暴なことを言われなければならないのか。
--気持ち悪いストーカーのくせに
気が立っているのは寧々も同じだ。
普段は人をあしざまに罵ることなど考えもしない寧々であるが、和奏に対しては理性のタガが緩んでいた。
オカ研に来る前の授業中に輪郭を確かにした和奏への嫌悪がここにきて表出し始める。
だいたい、和奏の言は穴だらけだ。
「なんで、私はダメで仮屋さんはいいんですか?仮屋さんは、教室でも好きなときに保科君と話してるじゃないですか。ズルいですよ、それ」
「アタシと綾地さんが違うのは当たり前でしょ。アタシみたいな十人並みが保科と話してても誰も気にしないけど、綾地さんレベルの美人だと色々面倒くさいことが起きてるの。今流行ってる噂知らないの?」
「知りません。というか、その理屈だと仮屋さんも駄目でしょう」
「はぁ?」
怪訝な顔をする和奏に、寧々は事実を突きつけた。
「だって、仮屋さんも可愛いじゃないですか。私でダメなら仮屋さんもダメですよ」
ただし、寧々にとってのと枕詞が付くが。
「・・・綾地さん、アタシに喧嘩売ってる?」
和奏もまた、容姿が整っているとは言えるだろう。
しかし、寧々と比べてどちらがという話になれば、その差は明白。
10人中8人か9人は寧々が上と言うに違いない。
だが、寧々はそれに気が付かず本気で自分の容姿を褒めている。
・・・真の挑発とは、悪人には不可能だ。
なぜなら悪意を以てなされるソレは『相手の作戦だ』と受け流すことができるから。
すなわち、まごうことなき相手の本心を映した『善意』からなる煽りはまさしく防御無視。
この状況下でなされた最上級の挑発は見事なまでに和奏の女としてのプライドを全力で逆撫でしていた。
「喧嘩を売ってるのは仮屋さんじゃないですか!!た、高く買いますよ!?」
とはいえ、寧々としてもここで止まるワケにはいかなかった。
和奏は喧嘩を売られたと思っているようだが、とんでもない。
最初に火ぶたを切ったのは和奏の方である。
普段ならば言い争いになりそうな気配があれば(そもそもそうなることが稀だが)折衷案を検討するか自分から引き下がる寧々だが、柊史が関わっていることでは一切の妥協をするつもりはなかった。
それに、寧々は喧嘩を売った気は一切ないのだ。
和奏の容姿は優れているし、自分はそんな和奏より下だと思っている。
それなのに自分よりも遥かに自然に柊史と接している和奏が妬ましい。
そもそもだ。
(仮屋さんは、私よりも恵まれているのに・・・!!)
ずっと柊史を、そして柊史の傍にいた和奏を見ていた寧々は知っている。
和奏がいかに柊史と親しい距離にいるのかを。
それにひきかえ、遠くから見ているしかなかった己の惨めさを。
そのうえでどうしてその和奏から柊史と距離を置くように言われなければならないというのか・・・
(距離・・・それですっ!!)
そして、寧々は気が付いた。
どうして和奏が突然喧嘩を売るような真似をしてきたのかを。
「・・・そんなに、取られるのが怖いんですか?」
「っ!?・・・何を?」
「やっぱり」
脈絡もなく切り出された質問に、和奏は一瞬ひるんだ。
それは、ある種の勘が働いたことによる防御反応。
『今からコイツは自分にとってとても嫌なことを言う』という予感によるものである。
その反応を見て、寧々は自分の推測が正しいことを確信する。
「やっぱり、取られるのが怖いんじゃないですか。保科君の隣を」
「っ!?」
--仮屋和奏はストーカーである
--ストーカーとは、すなわち好意を暴走させて好きな人を付け回す者
--仮屋和奏は保科柊史のことが好きなのだ
和奏が柊史を恋愛的に好きであることを論理的に証明できる理論。
そして、そんな和奏にとって怖いことは何か?
それは、今の自分の立ち位置が脅かされることに他ならない。
だから、最近になって柊史との距離が近づいた自分を遠ざけるために動いた。
実に筋道の通った理論。
「なっ、なぁっ!?」
それはあまりに飛躍を含んだ妄言に近い。
寧々の主観からなる情報のみで構築された妄想だ。
しかし、それは和奏本人が自覚していなかった感情を正確に射貫く一撃だった。
(ここですっ!!)
今こここそが攻め時。
和奏の目的が分かった以上、ここで引いてはいけない。
戦って、打ち勝たねばならないと寧々は理解していた。
「仮屋さんは私が保科君に関わると迷惑がかかるって言いましたけど、そういう仮屋さんはどうなんですか!?」
優しい人ほど怒ると怖い。
普段心優しい寧々であるが、初めて他人を傷つけるために全力を出す。
その破壊力は如何ばかりか。
「ストーカーみたいに保科君に付きまとって!!その方がよほど保科君に迷惑なんじゃないですかっ!?」
ときに、兵法を知らない素人の方が戦において残虐な行いをすることがある。
それは、訓練された兵士と違って加減というものを知らないから。
「近くにいても、保科君の心の穴を埋められなかったくせに!!」
「っ!!」
地雷を踏むどころか、掘り返して投げつけるがごとき蛮行。
和奏の急所をこれでもかとえぐる言葉という凶器であった。
「・・・・・」
和奏の顔から表情が抜け落ちた。
そして、能面のような無表情となった和奏は静かに口を開く。
その静けさは、和奏もまた情け容赦を捨てた証であった。
「そっちこそ・・・そっちこそ、あんたのせいで保科がどれくらい傷ついたか知らないくせに!!」
「っ!!」
静から動へ。
一瞬にして怒りで顔をゆがめた和奏は烈火のごとく言葉を吐く。
今度は、寧々の方が急所を刺される番であった。
「春に今のクラスになってから少しして、保科が綾地さんの代償の肩代わりを始めたけど、あれで保科のイメージが最悪になったの知らなかったんでしょ?」
「そ、それは・・・」
つい数日前、寧々がクラスの女子相手に大声で叫んだことはもはや有名だ。
その流れについても同様であり、そこまで調べた和奏は寧々の無神経ぶりに苛立ちを覚えていた。
柊史が周囲から『ヤバいヤツ』というレッテルを貼られていたことに気が付いていなかったことと、なによりそれで感情的になることで何が起こるのか予想もできていなかったことにもだ。
「確かに、代償の肩代わりは綾地さんから言い出したことじゃない。保科が勝手に始めたことだよ。綾地さんにどうにかできることじゃなかったのかもしれない。だから、そこまではいい」
寧々の代償の肩代わりは、様々な理由があって柊史が自発的に始めたことだ。
それで柊史に迷惑がかかったとしても、冷たい言い方にはなるが自業自得と言うことはできるだろう。
しかし、そこから先はダメだ。
「でも、今の綾地さんは保科の事情を知ってるよね?なのに、そのことは知らなかったの?そんなに保科に興味がないってこと?」
「そ、そんなことないですっ!!」
「じゃあなんで?」
「・・・・・っ!!」
寧々は、柊史がそのような扱いを受けていることを知らなかった。
これは、寧々の周囲の人間が寧々と話す際に話題に上げることを避けていたからだ。
悪口陰口をたたくことがある種のストレス解消になることはあるが、そういったことは相手を選ぶ。
そして、寧々はその手の陰湿な行いを嫌うタイプだ。
わざわざクラスの人気者の機嫌を損ねに行くような愚か者は幸か不幸かいなかったということ。
しかし、知ろうと思えば知ることはできたハズなのだ。
数日前の昼休みでクラスメイトから聞き出すことができたように。
そうしなかったのは、わざわざそんなことをする必要が今までの寧々にはなかったから。
クラスカーストのトップにいる人間には、ある程度の情報は好む好まざる関係なしに勝手に耳に入ってくる。
ただ、その情報の中からカーストの最底辺に関わることがフィルタリングされていただけで。
「さっき、流行ってる噂を知らないって言ってたよね?じゃあ教えてあげる。『クラスどころか学年のアイドルの綾地さんが、ヤバい陰キャにアタックかけてる』って話だよ。こんな噂が立てられて、その陰キャ君にどんな眼が向けられるかなんて、簡単に想像できるよね?その陰キャ君が誰の事かなんて聞かないでよ」
「なっ!?そ、そんな噂がっ!?わ、私、そんなつもりなんて・・・」
「・・・これも別に、綾地さんが悪いワケじゃないんだろうね。悪いのは、いちいちそういう噂を流してはやし立てる連中だし」
怒りに満ちていた和奏の顔に、少しだけ同情の色がにじんだ。
そう、別に誰と誰が付き合うことになろうが、それに口出しする権利などたかが学院の同級生というだけの間柄には存在しないのだ。
その当人たちの自由である。
外野に好き放題騒がれる当人たちは被害者であるだろう。
しかし、それは逆もしかり。
直接干渉する、あるいはひどく質の悪い醜聞を流すのならともかく、軽い噂をする程度の自由は誰にでもあるのだ。
ましてやそれが、成熟した大人ではなく、学生の身であれば。
そして、寧々が気を付けていればそこだけは防ぐことができた。
単純に代償の肩代わりをして奇異の視線を向けられてしまうことは仕方がないにしても、柊史にある種のレッテルが貼られていたという事実を知ってさえいれば。
あるいは、自分の影響力というものを自覚していれば。
同じ近づくというアプローチであっても、そこを知らないのと知っているのとでは大きく違う。
もともと、寧々は聡明だ。
自分の行動によって何が起こるかを、材料さえあれば予想できたハズなのだから。
「保科は、そういうことがあっても気にしてないって言ってた。それは本当のことだと思う。あいつは、そういう隠し事は苦手だから。でも、だからってそれがそのままでいいと思う?」
柊史は、和奏に当時のことや今のやっかみや不審の視線を気にしていないと言った。
それは事実ではあるのだろう。
だが、それは和奏の知らない過去との比較であり、常識的に考えてそれでいいワケがない。
これは別に和奏の独りよがりでもない。
寧々と今のような関係になる前の柊史は寧々と関わることを極力避けていたし、和奏には言っていないが、発情の正体が寧々とわかる前には下手人に殺意すら覚えていたのだから。
そして寧々が今のようである限り、この状況は変わらない。
「綾地さんはさ。保科の評判のことに無頓着過ぎなんだよ」
そう、和奏が最も腹が立っていることこそが、そこなのだ。
「代償の肩代わりで迷惑かけちゃうことはしょうがないよ?それで罪悪感でいっぱいになっちゃうのもわかるよ?でもそれで保科にもっと迷惑かけたら意味ないじゃん」
罪悪感に駆られ、少しでも報いようとするのは大いに理解も共感もする。
だが、そこにこだわるあまりに視野狭窄になって逆効果になっては本末転倒だ。
寧々の、人の前評判を気にせずあるがままを見るという、普通ならば美点であるところが裏目に出ている。
『周りが何と言おうが2人が愛し合っていればそれでいい』など、身分差のある恋愛モノでよく目にするフレーズだ。
なるほど、それは美しいセリフである。
しかし、心喰呪法を、廃人になりかねない心の穴を抱える柊史を相手にするのなら、話は別。
自分と柊史だけでなく周りのことにも目を向けなければならないのだ。
寧々には、それができていない。
「アタシが言いたいのはそれだけ。そこさえ守ってくれるなら、もう何も言わないよ・・・綾地さんが言ってたことも、間違いじゃないしね」
「あ、その、私・・・」
一通り言いたいことを言えたからか、あるいは近づいただけで理不尽な噂を立てられる境遇への同情か。
それとも、寧々の指摘が否定できないからなのか。
和奏の中の怒りがある程度収まっていた。
もちろん、ある程度であってゼロになったワケではないが。
一方の寧々も、一時の怒りが静まり、むしろ今にも消えそうな罪悪感に塗れた顔をしていた。
もともと寧々は他人を傷つけられるような性格をしていない。
和奏への暴言は売り言葉に買い言葉。
ただでさえ柊史のことでメンタルが不安定になっていたからこそ可能だった暴走の結果だ。
そのバフがなくなってしまえばこうなってしまうのも無理はない。
とはいえ。
「「・・・・・」」
和奏と寧々の間には、もう埋めることのできない亀裂が入ってしまったが。
2人とも、示し合わせずともそのことだけははっきりと理解していた。
そのまま、永遠に時が過ぎるのかと思うほどの沈黙が満ち・・・
「・・・っ!?あ、うっ!?」
その沈黙を打ち破るように、突然寧々はふらついて、机に両手を付いて転ぶのを免れた。
「・・・?綾地さん?」
「はぁっ、はっ、はっ・・・」
いきなりの不審な行動に寧々の意図を問いかけた和奏だったが、返って来たのは荒い息遣いだけだった。
(代償・・・!!こんな、ときに・・・!!)
まるでタイミングを見計らっているかのような、奇襲であった。
「あの、綾地さん、どうしたの?なんか顔が赤いけど、風邪?」
さきほどまで激しい言い争いをしていた間柄だが、和奏とてお人よしの部類だ。
見るからに体調の悪そうな寧々に心配するような声をかける。
だが、寧々にそれに応える余裕はなかった。
寧々に言えたのは短い言葉だけ。
「代償、です・・・魔女の・・・」
「え、ええっ!?今っ!?」
和奏は寧々の代償の内容を知らない。
七緒に聞いても『寧々の許可がないと教えられないな。まあ、言わないと思うが・・・』と遠い目をするばかりであり、柊史は『絶対に教えられないっ!!』と墓まで持っていくと言わんばかりの気合で断られたのだ。
しかし、そんな和奏でも寧々の代償が体調が悪くなる類のモノだということは察しがついていた。
「ど、どうしようっ!?アタシになんかできることあるっ!?」
思うところのある相手とはいえ、緊急時はさすがに話が別。
このまま倒れられても放っておけないと、少々パニック気味になりながらも行動を起こそうとした。
(仮屋さんは、本当に、いい人、なんですね・・・)
慌てる和奏を見て、寧々の心に墨汁のように罪悪感が沸き上がる。
しかし、それは即座にぼやけて消えた。
代わりに脳髄を満たすのは、『早く気持ちよくなりたい』という浅ましい欲望だけ。
それでも、寧々は和奏に応えるべく口を開いた。
「1人に、してください・・・なんとか、できますから」
「そ、そんなこと言ったって・・・」
前に柊史に押し付けてしまったときほどではないが、今回の代償も中々に大きい。
故に、寧々の外見に現れる異様さも相当だ。
1人にして欲しいと言われても、素直に頷くのはためらわれた。
そんな和奏に、寧々はなけなしの理性を振り絞って、懇願する。
和奏に色々突き付けられた後だからこそ、その想いは発情の代償を押しとどめるほど強かった。
「お願い、します・・・!!これ以上、保科君に迷惑を、かけたくないっ・・・!!」
「っ!!わ、わかった。本当にヤバくなったら呼んで!!廊下にいるから!」
今の寧々の代償は、柊史に押し付ければ即座に解決する。
だが、寧々にそんなことをするつもりは毛頭ない。
今以上に柊史の負担になるようなことをするくらいならば、今すぐ窓から飛び降りるのも厭わない。
その覚悟が伝わったのか、あるいは柊史に被害が加わることを避けるためか、和奏は頷いてオカ研を飛び出した。
「あり、がとう、ございます・・・仮屋さん」
寧々は、閉まったドアを見ながらそう呟いた。
今の寧々にあるのは、自分の想いを汲んでくれた和奏への感謝と、身体の内側から燃えていると錯覚するほどの情欲。
そして、そんな自分の浅ましさに対する嫌悪感だった。
「はぁっ、はっ、はっ・・・」
発情の解消の方法は、柊史に肩代わりしてもらう以外には二つ。
一つは、時間経過。
弱い波ならば、多少我慢すればそのうちに消える。
だが、今回くらいの大きさに耐えることはできそうになかった。
そうなれば、取れる手段は一つ。
「はぁっ、はっ、はっ・・・」
和奏に出て行ってもらったとはいえ、まだ廊下にはいるのだ。
どこまで離れてくれたのかはわからないが、あまり長い時間をかけていると心配した和奏が戻ってくるかもしれない。
手早く済ませなければならない。
「はぁっ・・・声、出さない、ように、しないと・・・あれ?」
素早く、かつ静かに。
熱に浮かされたような頭では実に高難易度のミッションだ。
それでも、やるしかない。
寧々は、己のスカートの中に手を入れようとして、そこで自分がいつの間にか握りしめていたモノに気付いた。
「これ、保科君の・・・」
それは、柊史がくれたお守り。
代償を肩代わりさせるキーアイテムであった。
「これは、今は、使っちゃ、ダメ・・・っ!!」
どうして握りしめていたのかはわからない。
無意識に柊史に頼ろうとしたのか、単に不安だったのか。
それでも、今回はこのお守りに頼るワケにはいかない。
自分は、和奏に言われたように柊史に迷惑をたくさんかけていたのだから、自分だけでなんとかなるならそうしなければいけないのだ。
そう思った寧々は、お守りを手放そうとして・・・ふと、あることに気が付いた。
気が付いてしまった。
「これ・・・ちょうど、いい、でしょうか?」
お守りは、柊史が前偶然手にしたベースの形をしたキーホルダーだ。
材質は硬いゴム製で、
そのことに、寧々は気づいてしまった。
そして、一度そのことに気付いてしまえば、寧々の中の炎は極上の燃料がくべられたかのように燃え盛る。
なにせ、このお守りをくれたのは・・・
「保科、君・・・!!」
人生の中で、一番気になっている男の子だったのだから。
そして、寧々は・・・
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「綾地さん、大丈夫っ!?」
少し離れた廊下で待機していた和奏は、ドアを開けて出て来た寧々の傍に駆け寄りながら問いかけた。
「・・・はい。大丈夫、です」
「あ、綾地さん・・・?」
和奏は、思わず一歩後退した。
なぜなら、寧々の表情が生きた人間のソレではなかったから。
「・・・・・」
まるで、この世のすべてに絶望したかのような顔。
その眼は古井戸のごとく真っ暗で、本能的な恐怖を思い起こさせた。
「あの、仮屋さん。さきほどは本当に申し訳ありませんでした」
「え?さっきのって・・・ああ」
一瞬、寧々が何を言っているのかわからなかったが、オカ研の中での言い争いのことだと察した。
「気持ちは受け取るよ。でも、許せるかどうかはわかんないかも」
確かに、和奏はさきほどまで寧々のことを心配していた。
何か助けになれることはないかと真剣だった。
暴言の言い合いとて、寧々の側にも同情すべき点があることだってわかっている。
だが、それで一度付けられた傷を忘れられるかは別の話だ。
「・・・はい。大丈夫です。謝った私が言うのもなんですが、私も同じですから」
「・・・そう」
『それはそうだろうな』と和奏は思った。
自分が間違ったことを言ったなどと思ってはいない。
あれは言わなければならないことだった。
だが、仮に自分が寧々の立場ならすんなり受け入れられるとは思えない。
だから、寧々の言葉に対する和奏の返答に怒りはなかった。
「じゃあ、今日はこれで」
「あ、待ってください」
お互いに言うべきことは言った。
そう思った和奏は、踵を返す。
もうこれ以上ここにいても意味はないと思ったから。
しかし、寧々の側はそうではないようだった。
「仮屋さん。これを受け取ってくれませんか?」
「?なにこれ?手紙?」
寧々が、丁寧に折りたたまれたルーズリーフを差し出してきたのだ。
思わず、受け取ってしまった。
「あの、これは?」
「遺書です」
「・・・は?」
この手紙はなんなのか。
寧々の意図がわからない和奏であったが、事態は和奏を待ってくれなかった。
「それじゃあ・・・お父さん、七緒、そして保科君。先立つ私を許してくれなくてもいいです。それでも、この命で詫びさせてくださ」
「待った待った待った!!?何しようとしてんの綾地さん!?」
すぐそばの廊下の窓を開けて身を乗り出そうとした寧々を、和奏は全力で組み付くことで妨害した。
完璧超人の寧々であるが、運動神経だけは並みであったのが幸いであった。
「放してください!!私は!!私は死んで詫びなきゃいけないことをしてしまったんです!!」
「いくらなんでも死ねとまでは思ってないよアタシっ!?あ~、もう!!ちょっと部室に入るよ!!」
「放して!!放してぇっ!!」
このままでは埒が明かない。
それどころか、自分の評判が地の底まで落ちて柊史を助けるどころか足を引っ張ってしまう。
というか、今の寧々を放っておいたら自分も柊史も大変なことになる。
そう思った和奏は火事場のバカ力を発揮して寧々をオカ研の部室に押し込み・・・
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「とりあえず綾地さん・・・アタシたち、同盟を組もうか」
「同盟、ですか?」
ややあって、どうにかこうにか落ち着いた寧々と再び話し合いを始めるのだった。
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おまけ
作者の考えるサノバウィッチ タロット対応表
①綾地さん 月。
意味は正位置ならば隠れた危険、不安、迷い。逆位置は正位置の状況が好転、再出発することを指す。
言わずもがな、正位置は一周目の世界、逆位置はリスタートのことを示唆している。
恐らく、逆位置のことまで考えられているのは綾地さんと戸隠先輩だけ。
(他ヒロインのカードまで含め、正位置で悪い意味は綾地さんの月だけ)
②因幡さん 星
意味は願いの実現と希望。星の前のカードはタロットの中で最悪である塔。この破壊の後の無限大の可能性を指す。
木月さんとの過去という悲劇から、親友の意思に応えるため己の願いを叶えるべく奮闘する姿を示してると思われる。なんにでもなれるという可能性は、木月さんが因幡さんに抱くイメージそのものだろう。
③椎葉さん 太陽
タロットの中で、世界に次いで強力なカード。努力が実る、あふれ出る活力、明るい未来を指す。また、そこに描かれる服を着ていない子供は裏表のない純真な心を意味する。椎葉さんの場合はこちらを象徴していると思われる。なお、『祝福される幸せな結婚』という意味もあることを個人的に強く推したい(エンディングの両家族が揃う描写だろうか)。
④戸隠先輩 世界
タロットの中で最も強いカード。正位置は完全無欠。完成された世界。逆位置は未完成、高すぎる理想。調和の崩壊。両手に握るバトンは異質なモノの結合を示す。正位置はその優秀さ、非の打ちどころのなさを。逆位置でその内側に隠れている存在を指していると思われる。調和が崩れることは未完成になることと思われるが、先輩の場合はそれによってやっと完成へと進むことができるということか。
⑤仮屋さん 審判
敗者復活、報われる、再燃、チャンスが戻る。もはや説明不要。唯一過去に保科君と関わりがあり、保科君が他のヒロインを選ばなかった場合にルートに入り、昔から抱いていた気持ちが再燃する。まさしくである。
次回は早めにお出しできればと思います・・・今回のR18を書こうかどうか迷いましたが、あまり文量が稼げなさそうなので見送りました。
評価、感想お待ちしております!
pixiv版もブクマよろしくです。R18話はこちらのみ。
この作品をご存じでしょうか?①ダークギャザリング、②死印、③東方Project
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