星屑の夢 作:ハレルヤ
ヒビキが光の剣:スーパーノヴァの取っ手の補強を終えるのを待って、ゲーム開発部と先生は部室に戻ることとなる。
モモイ、ミドリ、アリス、先生の四人に、リョウヤもまた同行していた。そんな彼の手には光の剣:スーパーノヴァに肩紐を装着する為にと、エンジニア部から預けられた工具と道具が握られている。
正確には同行と言うより、モモイが手首を掴んで引っ張っていると言うべきだろう。先生は微笑ましげに、ミドリは本日何度目か分からない呆れ顔を浮かべている。アリスは希望の武器を抱えてホクホク顔だ。
移動の間にゲーム開発部の事情は、あらかたリョウヤへ説明されていた。
当初は部員が四人になれば、正式な部活として認められると考えていた一同。こちらはアリスの入部により達成することが出来た。しかし実際には、加えて成果を証明しなくてはならなくなっていたのだ。
認定は今学期までなので、依然としてゲーム開発部は廃部の危機に陥っている。
リョウヤは何でも屋であり、ミレニアムにおいてもヴェリタスとエンジニア部に外部協力者として参加している。
ならば、自分達ゲーム開発部にも協力してもらえる! モモイがそう考えるのは自然の流れだったのかもしれない。
「――駄目よ」
そんな発想は無慈悲に砕かれる。
部室に辿り着くと同時に自信満々に行われたモモイの宣言に、真っ先に反応したのは室内にはいなかった筈の人物だった。
「と言うか……手を引いて歩いているから、もしやと思ったけど」
ちょうど今来たのだろう。出入り口となる扉の前で、深い溜め息と呆れを吐き出したのは、腰まで伸ばした菫色の髪をツーサイドアップにしているミレニアムの生徒。
その髪と同じ色の瞳はリョウヤを捉えると、次いでリョウヤへ依頼することを胸を張って宣言したモモイへと向けられた。
「ユウカ!? なんでまたここに!?」
「連れて歩いていたからって言ったでしょう? アビドスの魔術士のこと――って凄く嫌そうな顔!?」
モモイに対して当然とばかりに言い放った早瀬ユウカだったが、すぐに驚きの声を上げた。
うげー! とでも言うように表情を歪めたリョウヤは、宛らフレーメン反応を起こした猫の如く口を半開きにして固まっていたのだ。
「名乗った覚えもない呼び名が、結構な勢いで広まってるんだよ……」
モモイの“お兄ちゃん”呼び同様に悪意がなくとも、系統が違うのでどうにも小っ恥ずかしい。
何かを作ることは見ようによっては魔術のようなものだし、何よりも手元へと瞬間で物を取り出す様が正しく魔術めいており、魔術士という名はあまりに馴染んでしまっていた。広まるのも当然なのだ。しかし、本人が名乗ったことは一度たりともない。
ちなみに率先して広めているのは先生だったりする。理由は格好良いから。その事実を知っている一人が、一部を編んだ赤い髪の生徒にしてゲーム開発部部長のユズである。
ゲーム開発部の部室で先生と仲間達を待っていた彼女は、つい数日前に先生から「二つ名みたいで格好良いよね、アビドスの魔術士って」と雑談の中で溢された。加えて、広めているということも。
ユズがこっそり先生を覗き見ると、余裕ありげに「ははは」と笑んでいた。
ちなみにだがリョウヤ本人に対して、“アビドスの魔術士”と最初に呼んだのは黒服である。これもまた、呼ばれた当人が複雑な反応を示す理由の一つだ。
当の黒服が“アビドスの魔術士”なる呼称を発した相手は限られている。だからこそ自分の名付けた呼称が広がっていることと、そのタイミングで犯人が先生であると察して、件の名付け親は笑みを深くしたとかしなかったとか。
閑話休題。
小さな咳払いの後、ユウカは改めて本題を切り出す。視線が捉えているのは部外者のリョウヤである。
「お互いに顔は知っていたと思いますが……はじめまして、早瀬ユウカです」
「ご丁寧にどうも、葛葉リョウヤだ」
互いに会釈する程度の挨拶を済ますと、リョウヤはじっとユウカを眺めた。
「早瀬ユウカって言うと……あの?」
「あの……?」
視線に気が付いていたユウカが身を捩るより早く、リョウヤは興味深いとでも言うような光を瞳に宿して口を開く。
ユウカは要領を得ず、失礼だと思いながらも疑問に疑問を返してしまっていた。
「体重が百キロあるっていう……」
遠慮がちでありながら遠慮のないリョウヤに、ユウカの人当たりの良い笑顔が凍り付く。
ぶふっ、とモモイが吹き出す。ミドリは咄嗟に顔を逸らし、ユズは体をビクつかせた。アリスはきょとんとしている。
「――あるわけないでしょうッ!」
たっぷり十秒ほどの間の後、室内にユウカの怒声が響き、ビリビリと空気を震わせた。
「ああ、うん。だよな」
「リョウヤくん、流石に失礼だよ?」
圧を放つユウカを特に気にする様子もなくケロッとしているリョウヤに、ギョッとしていた先生が溜め息混じりに注意をする。
「いやだって、見た目から得られる情報だけでも百キロもあるわけないって分かるから……もし仮にあるのだったら解析したかったというか……異常がないとも限らないわけだし」
なんなら俺はもっと体重と身長が欲しい、なんて本音をリョウヤは抱えている。リーチや打撃の重さに関わってくるからだ。流石に口にはしないものの、可能性があるのならば確認はしたかった。
「お医者様としては気になっちゃったかー……」
医者であり、研究者でもあるのがリョウヤだ。先生としては既に存じていたことなので納得もあったが、それはそれとして苦笑いが勝ってしまう。
「けど俺に噂話を持ってきたのが、マキだった時点で察するべきではあったか」
ごめん、と素直に頭が下げられる。ユウカは嘆息しつつも謝罪を受け入れてくれるようだった。
「そういう噂自体はあったんだ?」
妙な噂だ、と先生が首を傾げる。
「……健康診断のデータが弄られていたんです。しかも、それが全体にオープン状態になってしまっていて」
頭が痛いとばかりに、額へと片手を当てたユウカ。百キロもあるわけがないという断言と、揶揄いや悪意からの言葉ではなかったことを理解したことで怒りは収まりつつあるようで、半ば強引に話題の矛先はゲーム開発部へと修正されていく。
「とにかく、部としての成果を出すために部外者の過干渉は認められないってこと!」
「わ、私の名案が……」
モモイは四つん這いになって項垂れ、ミドリが「はしたないよ」とツッコむ。対して、ユウカは「あのねぇ……」と呆れを隠さない。
「仮に力を貸してもらったとして。その結果、良い評価を得られました。それで本当に誇れる? 自信を持って、私達が作りましたって言える? もし言えたとして、言われた側はどう思うかしら?」
キビキビと問い掛けられるも、モモイは「それは……」と言葉を途切れさせる。
皆が同じ答えに行き当たっていた。
「ああ、TS社の力か――そう判断されると思わない?」
中々にキツイ物言いだが、誰にも否定の言葉は紡げない。黙り込んでしまったゲーム開発部に代わり、先生が真剣な声色で答える。
「それを許しちゃうと、全部を外注で済ませるって手段も使えちゃうもんね」
「先生……はい、その通りです。特に現状では実績のないゲーム開発部に、TS社創始者でありエンジニア部、ヴェリタス、両部活動と同レベルの技術を持つ人物の……それも他校の生徒が過干渉するのは認めることは出来ません」
「それはそれで優秀な気もするが……まぁ別の話か」
ボソリとリョウヤが溢す。なまじ他人を頼るのが下手くそなこともあり、寧ろモモイには感心してしまったのが本音だった。
発想や切り替えの仕方は思い切っていて、見事と言う他ないだろう。
ユウカも全てを否定するつもりはないので、肯定するように一度頷く。だが、今回の件では評価点にはなり得ないのだ。
「うぅ……名案だと思ったのに……」
落ち込む姉を見て「そもそも報酬支払えるの? リョウヤさんだって仕事でやってるんだよ?」という疑問をミドリは既の所で飲み込んだ。
「別に関わるなと言っているわけじゃないわよ。技術的にも実績的にも遥かに上の人と仲良くしているのだから、色々と話を聞くだけでも得られるものがあるんじゃないかしら?」
ユウカはゲーム開発部の四人を軽く見回し気軽に「じゃあね」と言うと、リョウヤと先生に一礼してから部室を出て行った。
一泊置いて、リョウヤが先生を見る。視線に気がつくと、ニッコリと笑みが返された。
「なぁ、今のって」
「うん、優しいでしょ? ユウカちゃん」
「何処が!? 何が!?」
モモイが信じられないと目を見開いて、勢いのままに言葉を叩き付ける。
ユウカに対してかなり酷いものの、ゲーム開発部という立場からしたら仕方がないかもしれない。
対して、外野である二人は違う。
「ゲーム作りや実績作りを直接手伝わないなら、何をしても良いってことだろう? 今のは」
「言っていたみたいに話を聞くも良し。リョウヤくんの得意分野なら、デバッグはバイトもよく聞くしセーフかな? 確認はしておいた方が良いだろうけどね」
リョウヤは含みのある言葉を拾っただけであったが、先生としては確信がある。何せユウカは、キヴォトスに訪れた日に出会った数少ない生徒の一人だったからだ。付き合いは相応に長いのだ。
事実としてユウカは自身の仕事をしているだけで、ゲーム開発部に対して悪意があるわけではない。
先生の言う通り優しい性格なので、心の中ではモモイ達を応援しているのだ。故に出力されたヒントのような台詞だった。
そこまで考えてるのかなぁ? とモモイ。
本当にそうなら優しいよね、とミドリ。
でも言われてみるとその通りなのかも、とユズ。
妖怪ではなかったんですね、とアリス。
妖怪扱いに先生は苦笑する。
妖怪呼びにリョウヤは不思議そうな表情だったが、不意に思い出したように告げた。
「そう言えば今更だけど、作ったゲーム。あれ面白かったけど実績にはならなかったんだな」
「え?」
「え?」
「え?」
「ええええええええええええええええええ!? やったの!? お兄ちゃん!!」
あまりに自然に発せられた言葉を聞いてユズが、ミドリが、先生ですら聞き間違えたように発言主に視線向け、モモイは驚愕を爆発させた。
ただ一人アリスがリョウヤへ向ける視線は、他の四人とは毛色が違う。だが、そのことに気が付きつつも触れる余裕のある者がいなかった。
「お姉ちゃん、リョウヤさんには伝えないって言ってなかった?」
え、なんで? とリョウヤ。
「教えてない! 教えてないよ!」
だから何で? とリョウヤ。
「だったら、どうして知られてるの?」
ミドリは疑いの眼差しを濃くして実姉へと向け続ける。あまりの信用のなさに姉は戦慄した。
複雑そうながらも、解答を示したのは爆弾発言の当事者となったリョウヤである。
「……教えてくれたのはマキだよ」
「マキちゃんって何でもリョウヤさんに教えちゃうんですか?」
ユウカの体重の一件もある。ミドリは「えぇ……?」となんとも言えないようだった。なんなら少し引いている風にも見える。
これには、マキの方にもきちんとした理由があった。
リョウヤに何かを教えると喜んでもらえる。感謝される。褒められる。比較的直球で向けられる感情に、マキは喜びを覚えていたりするのである。
いくら技術があっても。いくら技量が高くても。悪戯好きな面があったこともあり、叱られる機会が多かったことも原因だろうか。まだ一年生故に、敬われ感謝される講師経験が少なかったのだ。
モモイ達が教えてくれていれば、マキを挟むことなくプレイしていたことだろう。散々、貸したゲームのプレイをねだったモモイだ。ゲームが完成したのならば薦めてくると、リョウヤは勝手に思っていただけに意外に感じていた。
しかし現実、モモイ達からアクションは無く。寧ろ隠していた風である。だからと言って怒りはないし、傷付きもしないものの、不思議ではあった。
「ふと思ったんだけど……私にも子供の頃に夢中になったゲームがあってね。時間を忘れてプレイする程で、記憶にも色濃く残っていたんだ。大人になって思い出して、そのゲームについて検索してみたら……物凄く低評価だったことがあるよ」
「あ……も、もしかしてアリスちゃんと同じだから……」
「? 私ですか?」
疑問符を浮かべるリョウヤを無視して先生が経験を口にすると、ユズが何かに思い至り、名前の上がったアリスが首を傾げた。
あ、初ゲーム! とヒントを得たミドリも連鎖的に閃く。
「ちなみにこれが評価になります」
「……うわ、酷いなコレ。俺も商品のレビューは見る機会は多いから分かるけど、批判ならともかく誹謗中傷はやめて欲しいよな」
実感のこもった感想である。
ゲーム開発部が誰一人としてリョウヤに報告しなかったこともよく分かる内容が、先生から手渡されたゲーム雑誌一冊で理解できてしまった。
「TS社の商品にも、その手のコメントあるもんねぇ……」
ちなみにTS社の商品は会員に登録した上で、会社ホームページからのみ購入が可能である。
商品には型式番号と、個別のシリアルナンバーが決められていて、前者の最初の二文字がモデルを表している。具体的にはMEやMG等があり、公表はされていないが意味はミレニアムサイエンススクール・エンジニア部と魔具だ。
MEモデルは高性能だがトンチキ。MGモデルは高性能だが常に品薄と、それぞれ特徴があるのも今では有名な話である。
両モデル共にファンは多いが、同時にアンチも多いので叩かれがちだ。何せMEモデルは無意味な機能が多々あり尖り過ぎているし、MGモデルは単純に手に入れ難過ぎるからである。
「うちの新商品って分かる?」
「ドローン型の浴室洗浄機だよね。お風呂上がりにシャワーヘッドと接続するやつ。私も買いました」
ふふん! と自信に満ちた先生はVサインをした。
ドローンとシャワーを接続して洗剤をセットしておくと、携帯端末一つでお風呂場を清掃してくれるというもの。寝台列車のシャワールームで見ることのある洗剤とお湯を撒くことによる掃除に近いが、その性能は比較にならないほど優秀だ。
先生の場合は結局、自宅ではなくシャーレでしか使用できていなかったりする。
「え、それはご購入ありがとうございます」
「いえいえ、とても助かっています」
提供者と顧客が互いに頭下げ合うと、話の軌道が修正が計られる。
「……あれにも、脱衣所がビショビショになったみたいなレビューがあってな」
リョウヤが溜め息混じりに吐き出す言葉には、疲労にも近しい感情が宿っていた。
「……扉は閉めて使ってくださいって注意書きあったよね」
え? と抜けた表情の先生に、首が力なく縦に振られる。
「私は説明書読むの好きなタイプだけど、違う人も……あれ? 説明書関係ある?」
「閉めなきゃそりゃ脱衣所も濡れるに決まってるだろ、とは本当に思った。他にも蓋を開けてなかったら浴槽の中が洗われてなかった、とか」
「それも手順で説明してあったよね……そもそも当然だし……というか、一緒に洗えるように蓋を立てる専用のスタンドも付属していたし……」
最早クレーマーなのだ。どれだけ注意書きや使い方を丁寧に用意しても、その手の人間は読んでくれさえしない。或いは読んでも忘れているのかもしれないが、正直に言って対応しきれないのが現実だった。
「その点、先生はちゃんと読み込んでくれてるんだな」
「ゲームとかもだけど、取り扱い説明書を読むの好きなんだ……最近は紙の説明書が減ってきていて、ちょっと寂しいかな」
リョウヤが「用意している甲斐がある」と嬉しさを滲ませると、先生は頷いて笑んだ。
人格の否定まであるゲームレビューに表情を歪ませたリョウヤが先生と談笑を始めたのを脇目に、モモイは確認するべく切り出していた。
「初めてのゲームだったから楽しめたってこと……?」
「うん、多分そうだよ」
「比較対象のない状態だったから……」
ミドリが肯首してユズも肯定しながら補足すると、リョウヤとの雑談を切り上げた先生が口を挟む。
「加えて、リョウヤくんってトライアンドエラーは慣れたものでしょう?」
先生はゲーム開発部の作り上げたものが、どのようなゲームであるのかを知っている。つい先日、アリスがプレイする際に隣で見ていたからだ。
リョウヤが小さく首を縦に振って答えると「やっぱり」と納得した。
ゲーム開発部の三人で初制作のゲームであるテイルズ・サガ・クロニクルは、ノーヒントワンミスでプレイヤーが即死する初見殺しの要素が非常に多い。その初見殺し要素を一つ一つ潰していく作業を、リョウヤは然程苦に感じなかったのだ。
思わず「プチプチ潰すのとか好きそう……」と口にしてしまったユズは、失礼なことを言ってしまったかもしれない、と表情を固くした。その色が青くなるより先に、リョウヤが軽く吹き出し「嫌いじゃないけど、流石に意味がなさ過ぎるから特別やることはないよ」と返す。
安心したユズが釣られて微笑を浮かべる中、リョウヤは更に続ける。
「ゲームの方は、クリアするまでに六時間くらいだったかな。ぶっ続けでやった。実績? とか言うのを埋めるのに、追加で四時間と少し掛かったか」
「え……じ、実績も埋めてくれたんですか…… !?」
「実績コンプリートした実績の解放率一パーセント切ってるんだよ!? あれリョウヤさん!?」
実績。所謂、条件を満たすと貰える称号のようなおまけ要素はプレイヤー全体の取得率を確認できるのだが……ユズとミドリが大袈裟に驚くのも無理はない。
最近のレビューでも「実績全部埋めてる人いるけどイカれてる」「相当な暇人」「修験者」と随分な言い様であり、言葉通り小数点以下の取得率だったのだ。
モモイと先生もポカンとしてしまっている。
「中途半端なのが気になったんだ」
几帳面且つ凝り性なのが窺える発言が飛び出して来ると、意を決したモモイがおずおずと口を開く。
「ち、ちなみに何処が良かったかなー? なんて……」
「……既に分かってると思うけど、俺はテレビゲームってやつに触れて来なかったからな。あまり参考にはならないと思う」
今までのやりとりを聞いて、自分が年齢と比較して珍しいのであろうことを理解したリョウヤは「だから、あくまで所感だが」と前置く。
「ストーリーは斬新でありながら、最後はハッピーエンドで好みだった。グラフィックや音楽にも力が入っていたし、致命的なバグもなかったと思う。解決策を一つ一つ探していくのも謎解きみたいで楽しめたな」
ゲーム開発部ではユズがプログラミングを。モモイがシナリオを。ミドリがグラフィックを主に担当している。ちなみにアリスはテストプレイ担当となった。
作り手だからこそ参考になるであろう良かった点を述べただけで、特別に意識したわけではない。しかし、そもそも作成者がゲーム開発部の三人だ。リョウヤは実質、三人を褒めちぎっていた。
「謎解きゲーム貸してあげる」
「パズルゲームも好きそう」
「ハッピーエンドな物語が好きならRPGも……」
「分かります!」
モモイ、ミドリ、ユズが嬉々としてゲームソフトを漁り始める。
先程からウズウズとしていたアリスは自分が心の底から楽しんだだけあり、リョウヤへと強い共感を覚えていた。
「おっと、好感度の上がる音が聞こえたねぇ」
思わず先生が揶揄い混じりに笑う中、アリスがキリッとした顔で口を開く。
「鋼鉄の魔術士よ」
「……ああ、俺か。はい、どうした? アリス」
魔術士呼びは多少むず痒いものの、先程にされたばかりで耐性が残っている。苦笑いにはなっても、今度は特にフレーメン反応は起こらない。ウタハ達への“ 偉大なる鋼鉄の職人”という呼称を考えると、鋼鉄繋がりは嬉しさすらある。
アビドスの魔術士とユウカが呼んだ時にも、アリスは顔を輝かせていたことに先生は気が付いていた。ずっと呼びたかったんだろうな、と思うと微笑ましい。リョウヤもまた子供へ接するように優しげで、そんな二人の様子に心が温かくなる。
「私も始まりは同じ物語だったのだ」
「ああ、うん……うん? あー……初めてやったのが同じ作品だったって話か」
返事をしつつもリョウヤは数秒硬直した。けれど、すぐに思考は相手の言いたいことを導く。
テイルズもサガもクロニクルも、総じて物語という意味があるのだ。
コクリと首を振るアリスは、何かを期待しているようにリョウヤを上目に見つめている。
「感想会がしたいんじゃない?」
察しの良い先生の言葉に、アリスはコクコクと首を振った。コクコクというよりも、ブンブンが近いかもしれない。
先と比べて何度も首を振るところに、かなりの熱を感じさせる。
実際、モモイ達ゲーム開発部は作った側であり、先生は見てはいたもののプレイはしていない。
同じゲームをプレイしていて、しかも揃って初ゲーム。思ったこと、感じたことをアリスは語り合いたかったのだ。
なるほど、とリョウヤはくすりと笑う。
「光の剣:スーパーノヴァに肩紐をつけるつもりだったけど……休憩がてら少し話そうか」
「……! はい!」
そうして始まった二人の語り。耳を傾けていたモモイは破顔し、ミドリは頬を薄く染め、ユズは最終的に感涙することとなる。先生は終始、見るだけで気の抜ける笑みだった。
前話でのウタハの台詞「はい、は一回」にここすきで11票が入っている(この話を投稿した時点)のですが、私が最初に気が付いた時は一人の方が10票入れてくれていたと認識しています。怒涛の勢いを感じて少し面白かったです。
他にも投票されている文章があり、書いた側としても嬉しいです。
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