洞爺丸召喚 〜青函連絡船、新世界に就航する〜 作:ペジテ市民A
中央暦1639年1月末。ムー南東の都市マイカルに所在する、ニホンコクユウ鉄道、通称コク鉄の本社ビルは、秘匿回線による一本の報告により、上から下まで大騒ぎの事態に陥っていた。
『本船はクワ・トイネ海軍より、未知の巨大船舶への臨検に際し、協力を要請された。同時に、彼の船が"コク鉄方式"と思われる旗を揚げている事、日章旗と類似しており、過去にコク鉄船が掲げた事例のある"旭日旗"に酷似した旗を揚げている事を伝えられ、彼の巨大船舶との関係性を質問された。至急返答について指示求む』
クイラ-マイカル航路に就航している石油タンカー、第7茨戸丸からである。
コク鉄社員は皆、確信した。地球から、いや、日本からやって来た、同胞に違いない。それも、そう。
出来たばかりの、海上自衛隊だ! と。
そして、こう張り切った。
海上自衛隊も海軍の末裔とは言え、再出発したばかりだ。我等コク鉄、いや、国鉄が手取り足取り教えてやろう!
彼らはその後に入った追加の報告を受け、仰天する事となる。
─────────────────────
『彼の巨大船舶は、日本国海上自衛隊所属の護衛艦「いずも」を名乗った。全長は目測で250m弱、全幅は同じく40m弱。外見は空母に類似するも、対空砲などは僅か』
『「いずも」艦長山本は本船艦長との会話で、「いずも」は単艦で転移したのではないと示唆した。彼の反応から、ムーの建国神話同様日本が国土ごと転移して来た可能性がある』
─────────────────────
西暦2015年、平成27年。日本国は対岸が消滅し、星空が変わり、釣れる魚も変わり、その正体は新世界への転移、などと言う大事件で大騒動していた。それでも哨戒機で周囲を探索した結果、文明らしいものが存在すると分かり、急遽手隙であった新品の護衛艦いずもを彼らとの接触に派遣した。
接触を待つ間、外交官としていずもに乗艦している田中は、船室で部下と「この世界の文明」について分かっている事を確認していた。
「これが哨戒機の空撮ですが、文明の発達度合いを、地球の世界史に当て嵌めて考えると、やはり『ちぐはぐ』と言う印象ですね。街並みは中近世のそれ。しかし、ほら、この港湾施設などは立派だ。横浜にどこか似ている」
「そして、船舶についてもちぐはぐ。帆船らしきものが多いですが、レーダーの反応からすると金属製の船もあるかも知れないと。その時点で高度を上げて反転したので、詳細な画像はありませんが」
流石異世界だ。地球の常識は通用しない様だ。田中は緊張からか、思わず苦笑した。
その時、伝令役らしい隊員がやって来て、田中を呼んだ。
「艦長から、至急艦橋に来て欲しいと」
「分かった。よし、このまま向かおう」
田中は机上に広げた資料を部下に任せ、隊員の後を追って艦橋へと向かった。
─────────────────────
「無線通信、それも日本語で、ですか!?」
いずも艦長山本の言葉に、田中は驚きを隠せない。地球とは全く違う世界と思って来たのに、まさかの日本語だ。
「はい、私どもも驚きました。こちらの返答を含め、ここに書き起こしがあります」
田中は手渡された紙を読む。
『こちら、クワ・トイネ公国海軍第2艦隊所属の「ピーマ」である。現在我が軍は厳戒状態にあり。貴艦の所属並びに航行の目的を述べられよ』
『こちらは、日本国海上自衛隊所属の護衛艦いずも。我々は貴国との対話を望んでいる』
『了解した。所属について疑問点がある。我が艦の代表及び、我が協力者の貴艦への乗艦を許可願いたい』
田中が読み終わったのを見て、山本が付け足す。
「こちらがこれを許可し、まもなく乗艦する予定です」
「この、厳戒と言うのが気になりますね。しかし、これで接触出来る。あとは、協力者と言うは、何か分かっていますか」
山本は困り顔で答える。
「それが、今まで水平線の向こうに隠れていて、肉眼では観察出来て居ないのですが、レーダーによると、300m級の石油タンカーの様な反応があります。まもなく、ここからも見える様になります」
「いずもより大きい、ですか。タンカーの巨大さは存じて居ますが、まさかそうそうに出会うとは。やはり、この世界、常識は通用しませんね」
「ええ、違いありません」
その石油タンカーがいずもに接近すると、彼らの常識はまた吹き飛ばされる事となる。
────────────────────
「あの、煙突の意匠は、いや、?! 日章旗!?」
『こちら、第7茨戸丸。ニホンコクユウ鉄道船舶所属、ムー国船籍。本船は現在クワ・トイネ公国海軍との協力関係にあり。代表者として本船船長がボートで向かうので、受け入れ準備を願う』
こっから洞爺丸パートですね。このままじゃ国鉄召喚になっちゃう。