時系列は修岳館受ける宣言をした後です。
コミック派なのでライブまでの知識で書いてます。
市川京太郎。
俺のライバルだ。
ライバルといっても負けているところは無い。
成績は俺の方が上。
運動神経も上。
身長だって高い。
ケンカしても絶対勝てる。
例え刃物を持っていても負ける気はしない。
外見だって良い。
まあ市川も悪いわけではないが。
女にだってモテる。
中学に入ってから2人に告られた。
断ったけど。
全てにおいて俺が上。
……だった。
そう過去形だ。
最近の市川京太郎は少し変わった。
カーストトップの山田杏奈と仲がいい。
それどころか安堂や半沢とも話しているのを見かける。
これは由々しき事態だ。
観察したいところだが別のクラスだし、
受験勉強もある。
模試の判定は悪くないが、受験は油断したやつから負けるらしい。
市川は修岳館を受けるらしいから俺は筑波だ。
遊んでる余裕はない。
というわけで率直に聞くことにした。
「山田、少し良いか?」
「え?」
市川に話しかけるのは厳しいので山田杏奈の方に聞くことにした。
当然だ。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「いいけ「あー悪い。ちょっと忙しいんだわ!」
困惑している山田を取り巻きの女が引っ張っていく。
おい、邪魔をするな。
「え?え?」
「ほら行くぞ!」
「にゃあどうしたの!?」
残念。
失敗してしまった。
どうやら俺は山田の取り巻きに危険視されているらしい。
まあ思い当たるふしはある。
仕方ないので山田と一番仲が良さそうな女に聞いてみることにする。
俺は体育館まで移動し、部活が終わるのを待つことにした。
時間を有効活用する為に参考書も持って行く。
1時間ほど勉強をしていると体育館から聞こえる音が小さくなってきた。
どうやら終わったようだ。
外で待ち伏せをしよう。
先に男子が出てくる。
怖がられているのが分かる。
例の噂のせいだろう。
本当のことなので仕方ないが、情けなくないのかとは思う。
それでも男か。
それから10分後に女子が出てきた。
お目当ての子は一番先頭だ。
「小林、少しいい?」
不思議そうな顔をしつつも了解してくれた。
いい子だ。
「最近市川と仲良さそうだけど、
何かあったのか?」
「あー、なんだろう?
確かに最近仲良くしてるね。
山田と関根が特に。
頭いいらしいから関根と気が合うんじゃない?」
「俺の方が成績はいい」
「唐突な自慢!?」
とにかく理由は分かった。
どうやら山田杏奈ではなく関根萌が原因らしい。
彼女は見た目こそチャラいが頭は良い。
受験も近くなって高い学力同士気が合ったということか。
山田は仕事の関係で推薦だろうから余裕もあるし、何となく一緒につるんでるということだろう。
それなら納得だ。
とはいえ学年2位の市川と5位の関根では少し嚙み合わないだろう。
ここは1位の俺が助けてやるべきか。
仕方ないな。
ライバルとは切磋琢磨するものだ。
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「にゃあさっきはどうしたの?
別に用事なんて無いのに」
「如月は良くない噂があるからな、念の為」
「良くない噂?」
「ばやしこと同じ学校だから詳しくは知らないんだけど、
暴力事件起こして相手を病院送りにしたって」
「え」
「まああくまで噂だし、あたしもこういう反応は嫌なんだけど、
山田は仕事の都合上あんまり関わらない方がいいだろ?」
「……そうなんだ。
なんかごめんね。気を使わせちゃって」
「気にすんな。
とはいえいくらなんでも失礼だったよな。
後でフォローしとくわ」
「う、うん。
それにしてもびっくり。
確かに大きい人だけど、
全然そんな感じに見えなかったから」
「人は見かけにはよらないってことだろ」
「そっか……」
本当にそうなのかな、と思いつつ山田は忘れることにした。
仕事に彼氏。
今の彼女は忙しいのだ。
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昨日聞いた話を確認するために図書室へ。
市川が休み時間に図書館によく行くことは1年の時に確認ずみだ。
なるべく話しかけないようにしていたが、今は緊急事態だ。
図書室に入ると市川が窓際の席で勉強をしているのが見えた。
近くに関根はいない。
よしっ。
「市川」
「うお!?
き、き、如月?
急に後ろから声をかけるなよ!」
「調子はどうだ?
俺は絶好調だが」
「学年1位様が馬鹿にしにきたのか?」
「いや、最近関根と勉強をしてるんだろ?
だから調子いいのかと聞いたんだ」
「別に一緒に勉強してないが」
「そうなのか?」
「というか急になんだよ。
そんな話したことないだろ」
「いや、それならいい」
一緒に勉強しているわけじゃないのか。
話が合ったというだけなのか?
念の為関根にも確認しなくては。
俺は図書室を出た。
しかし少し歩いてから気になったことがあったのを思い出して引き返した。
一緒に勉強してるわけじゃないならどうして関根の友達である山田とも仲いいのか。
一応確認しなくては。
足早に図書室に戻る。
すると、
「……なんだそれ」
ありえない光景を見た。
俺は耐えきれなくなってその場を離れた。
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中庭のベンチでぼーっとする。
しんどい時のリラックス方法だ。
でも全然よくならない。
困った。
そろそろ昼休み終わるかもな。
まあどうでもいいか。
と、思っていると声をかけられた。
「如月、昨日は悪かったな。
山田は一応芸能人だからさ。
例の噂もあってちょっと心配しちゃったんだ。
ごめんな」
吉田と関根だ。
昨日の件を謝りたいらしい。
関根は付き添いかな。
でもよかった。
山田を連れてこなくて。
耐えられなかったかもしれないから。
「……吉田か。
別に良い。もう終わったことだし」
「そっか」
「それより聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「吉田でも関根でもいいから教えて。
市川は山田と付き合ってるの?」
「うぇ!?」
「……なんでそう思うの?」
驚く吉田と平静を崩さない関根。
「図書室でくっついてるのを見た」
「あのばか……」
頭を抱える関根。
やっぱりそうか。
そうなのか。
あーあ。
「もういい。
その反応で分かった」
我慢しようとしていたのに。
涙があふれてくる。
どうして終わってから気づくんだ。
何がライバルだ。
何の為に
「如月ちゃん、もしかして」
小さく頷く。
今まで隠してきた思いだけれど、
今は誰かに聞いて欲しかった。
私の両親は小学校の時に離婚している。
原因は父親の暴力。
昔から少しやんちゃな父ではあったが、リストラにあってからおかしくなった。
私を養うために母はフルタイムで働き始めて、顔を見る時間は極端に減った。
それだけでも辛かったのに、離婚のことを学校で男の子にイジられて、
頭に血が上った私は馬乗りになって相手をボコボコにしていた。
相手は気を失ってしまい、救急車がきた。
父親の趣味で小さいころから空手を習っていたのが災いしてしまったようだ。
幸い大怪我はしなかったようだが、相手は退院後即転校。
私は腫物扱いとなり、忙しい母にさらに迷惑をかける結果になってしまった。
そんな私を庇ってくれたのが市川だった。
如月だけが悪いんじゃない。
先に暴言を吐いた方も悪い。
暴言も暴力だ、と。
多分、本人は庇うつもりなんて無かったと思う。
あの時の市川はどことなく偉そうで、嫌みな奴だったから。
逆張りしてみんなを論破したかっただけだろう。
でも、おかげで私は救われた。
救われたんだ。
本当は市川と同じ中学を受験したかったけど、男子校だったので諦めた。
市川が受験で失敗して公立の中学に進学すると分かった時嬉しかった。
でも物凄く落ち込んでいる市川を見て、喜んだ自分に嫌悪した。
中学に入ってから市川は犯罪心理の本を持ってくるようになった。
調べたら中二病というらしい。
それならということで私も合わせた。
女の中二病は一人称が俺になるらしい。
恥ずかしかったが、市川と同じになるのは嬉しかった。
勉強は相変わらず頑張っているようなので私も頑張った。
同じ学校、無理なら同じレベルの学校に行きたかった。
高学歴の男は高学歴の女を好むと聞いたから。
当然情報処理部に入った。
市川は話しかけるなオーラを出しているから話しかけられなかったけど。
それもこれも全部市川と仲良くなりたかったからだ。
頭が良くて中二病だったら話しかけてくれると思ったからだ。
ライバルキャラはどの漫画でも人気だし。
でも、駄目だった。
全部無意味だったんだ。
「……そういうことだったのか。
昨日のことは改めて謝る。
ごめん」
「別にいい。
本当のことだし」
「でも意外。
如月ちゃん美人だから市川狙ってるなんて思いもしなかった」
「山田杏奈の方が美人でしょ」
「……あー」
長い沈黙。
話を聞いてくれたのに申し訳ない。
でも今はちょっと冷静になれない。
「市川は大学教授の息子だし山田は女優の卵。
結局さ、そういうことなんだろうね。
片親の私には
「そういうことじゃないでしょ?」」
続く言葉は関根に阻まれた。
「市川がそういう奴だったらすぐに気づいたでしょ?
如月ちゃんなら」
「……」
嫌いになった振りすら見逃してくれないらしい。
関根は厳しいやつだ。
「市川ってさあ、本当に優柔不断というかビビりというか、
オドオドしてるし自分の気持ちとか言わないし、
最近はマシになったけどド陰キャじゃん?」
「……まあ、うん」
「あ、それは認めるんだ」
吉田がつぶやく。
だってそれは短所じゃないし。
「だから、杏奈の方が積極的だったんだよね」
「え?」
「もうこっちが引くくらいべったりでさ。
本人はバレてないつもりかもしれないけど、明らかに付き合い悪くなったし、
今まで男の話なんて全然しなかったのに急に市川の話しだすし、
市川と同じ小学校のばやしこの家に卒アル見に行きだすし、ぶっちゃけバレバレだった」
うんうんと頷く吉田。
「まあ先に好きになったのは如月ちゃんなんだろうけどさ。
やっぱああいう男落とすには積極的にいかないとね。
基本的に自己肯定感低い受け身野郎なんだから」
「……そっか」
話をして楽になったのか、
今の説を聞いて納得したのか。
自分でもよくわからないが、少しすっきりした。
「そうだね。
今回は私の負けだ」
「というかあの感じってキャラ作りだったんだね。
後輩の女子に割とファン多いけど大丈夫?」
「何人かに告られた」
「あらー」
そっちじゃないと説明するのは大変だったなあ。
でもそれも今日までだ。
市川は中二病を卒業した。
それなら私も卒業するべきだろう。
「えーっと、それでさ。
なんというか杏奈は友達だから一応聞くけど、
彼女いる相手にアプローチとかしないよね?」
「それは大丈夫」
市川はそういうの困るだろうし、
相手はあの山田杏奈だ。
負け戦になるのは目に見えている。
「まだ諦めつかないから別れたら声かけるかもだけど、
一旦受験に集中するよ。もう3年生だし」
市川に合わせるために始めた勉強だけど、私は勉強が得意らしい。
全国模試でも上位を取っている。
せっかくだし、この特技は活かしていこう。
迷惑かけた母に楽させるためにも。
「話きいてくれてありがとう」
「どういたしまして」
もう昼休みも終わる教室に戻ろう。
関根と吉田に礼を言って席を立つ。
「あー、あと一応言っておくけどさ」
「?」
と、吉田に呼び止められた。
なんだろう。
「如月が市川の真似すると陰キャじゃなくてヤンキーにしか見えないからな?」
「え?」
ヤンキー?
なんで?
「山田と同じくらい背高いし中性的な美人の一人称が俺で無口で例の噂もあるから」
「滅茶苦茶怖がられてたよねー?」
「そんな!?」
怖がられてるのは事件のせいだけかと思ってたらキャラ付けにも理由が!?
告白してくる女の子が派手な子だけなのはそういうこと?
もしかして市川にも怖がられてる?
衝撃の事実にあわあわしていると、
見かねた関根がため息をついて言った。
「まあ市川にはそれとなく聞いといてあげるよ」
「あ、ありがとう」
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今日、山田は仕事で早退だ。
山田がいなくても楽しいとは言ったが、実際暇である。
とはいえ受験生なので勉強するしかないけど。
授業の合間なので図書室に行くこともなく、英単語帳をパラパラとめくる。
と、関根が声をかけてきた。
「イッチさあ、
如月ちゃんって知ってる?」
「まあ、同じ部活だし」
うちの学校では山田と同じくらいの有名人だ。
170cm近い身長と長い髪。
鋭い目つきが特徴の美人で、一年最初の中間から常に学年1位をとり続けている天才。
スポーツも得意で空手も強い文武両道。
調子のよかった2年の学年末でも勝てなかった。
こっちの劣等感を刺激してくるやつである。
「どんな子?」
「別に、普通」
嘘だが。
塾にも行ってないのになんであんなに成績いいんだ。
環境的には僕の方が恵まれているのに勝てない。
とんでもない天才だ。
「でもなんか事件起こしてるんでしょ?」
……あーなんだ、その話か。
もう3年以上前のことなのに。
人の噂も七十五日というのは嘘っぱちだな。
「珍しいな、噂話なんて」
「まあちょっとね」
「確かに男を殴って病院送りにしたのは事実だけど、
あれは如月だけが悪いわけじゃないしな。
それに、あの件以外で暴力を振るったなんて聞いたことないし」
「へー」
自分から聞いておいて空返事かよ。
何なんだ一体。
「……でも」
「でも?」
これは言うか迷う。
僕にブーメランが突き刺さる話題だからだ。
「中学上がってから漫画にハマったのか変な感じにはなってる」
そう、昔は元気な女子って感じだったんだが、
例の事件で少し暗い感じになって、中学に上がったらオタク化していた。
人は心に傷を負うとサブカルにハマる定めなのだが(偏見)、
それはそれとして影響受けすぎだ。
俺女子なんて創作かネットにしかいないぞ。
「……如月ちゃん漫画とか読むんだ?」
「部室で読んでるのをたまに見る。
趣味は合うんだよな」
「声とかかけないの?」
なんて、意地の悪い質問をしてきた。
こういう時の関根はいつもニヤニヤしている。
「……分かってて聞いてるだろ?」
僕から女子に話しかけられるわけがない。
そんなこと関根は知ってるだろうに。
「べっつにー」
チャイムと同時に会話は終わった。
先生が入ってきて授業が始まる。
なんとなく関根の方をチラリと見るとLINEを打っている。
おいおい、受験生なんだから真面目に聞けよ。
バレたら内申にも響くぞ。
なんて、柄にもない心配をしてしまった。
まあ関根は容量良いから大丈夫か。
僕は目線を外して授業に集中した。
修岳館目指すと決めた以上、凡人の僕には余裕がないのだ。
原作にこんなキャラ居たらいいなあと思い書きました。
市川のライバルと見せかけて山田のライバル(敗北済み)でした。