勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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全身が燃えるように痛いだろ

 土煙が立ちこめているため、まだ敵は気づいていない。

 

 隠れて居た場所から距離を取るには充分な時間があり、転がっている枝を拾うと光属性を付与して投擲する。偶然にも尖っていた先端が猿の皮膚に突き刺さって一部を浄化、灰に変えたが、かすり傷ていどの効果しかない。

 

「こっちだっ!」

 

 あえて声を出すと、土煙を払うように猿の尻尾が迫ってきた。叩き潰すつもりだったようなので、一歩横にズレて回避する。地面を叩き土が飛び散り顔に当たるが、瞬きせず太い尻尾に槍を突き刺して穂先が完全に埋まる。光属性の魔力を挿入していくと、尻尾が動いて体が勢いよく持ち上がった。

 

「うぉぉおおおっ!」

 

 槍をしっかり握っていたのだが、すぽっと穂先が抜けてしまい地上から十メートル近くも飛んでしまう。

 

 着地まで待ってくれることはなく、猿のでかい手が迫ってくる。空中にいるため動けず防御の姿勢を取ると、全身に激しい痛みを感じながら叩き落とされてしまった。

 

「がはっ」

 

 地面に直撃すると肺からすべての空気が出てしまい、息が苦しい。魔力を使って身体能力強化してなかったら骨は粉々に砕けていただろう。

 

 呼吸はままならず、立ち上がるにしても時間はかかる。

 

 猿の汚染獣からすれば追撃するチャンスなのだが、悶えていて苦しそうにしてそれどころではない。

 

 叩かれる直前に穂先を手のひらに向けて突き刺し、光属性の魔力を勢いよく注いだのだ。これで尻尾に続いて二度目だ。図体がデカいから効きが悪いもののダメージは確実に蓄積している。俺だってやられっぱなしじゃないのだ。

 

 地面につばを吐くと血が混じっていて赤かった。

 

 手で口を拭って握り続けている槍を向ける。

 

「全身が燃えるように痛いだろ」

 

 メルベルから聞いたのだが、光属性の魔力が体内に入ると火傷に似た痛みを感じるらしい。樹海周辺を浄化し続けていることもあって、皮膚と内部同時に攻撃されている。強い個体とはいえ耐え続けるのは厳しいはず。

 

 体内の汚染物質によって光属性の魔力が排除される前に動こう。

 

 苦しみに耐えながらも踏み潰そうとしてきたので、横に飛んで転がりながら立ち上がる。まだタイミングではない。槍に光属性を付与しながら、横に振るわれる尻尾を跳躍しながら穂先で中程まで斬る。これで攻撃には使えなくなったはずだ。

 

 拳が近づいているので着地と同時に槍を投擲する。攻撃途中で軌道を変えるなんて出来ず、光属性が付与された槍は手に突き刺さり、そのまま腕にまで侵入する。柄は完全に埋まってしまった。

 

「――――――!!」

 

 猿の汚染獣は口を開いて無言で叫んだ。

 

 腕の一部が灰になって消えかけている。

 

 大量の毒を一気に取り込んでしまったことで存在の維持が難しくなっているのだろう。

 

 全身に光属性の魔力が回るのを阻止しようとして腕を引きちぎった。

 

 ボトッと地面に落ちるのと同時に灰になって消えてしまい、槍だけが残る。

 

 俺はそれを拾い上げると何度か後ろに跳躍して距離を取って猿の汚染獣を見る。全身が消えかけていて倒れてしまっていた。浄化のために放っている光属性の魔力が、傷口から侵入して体内で暴れ回っているのだ。発生源である俺を倒さない限り消えるまで永遠に苦しみは続く。

 

 立ち上がる力もなくなったようで、猿の汚染獣は倒れたまま腕を伸ばして潰そうとしてきた。

 

 むろん捕まるつもりはない。

 

 回避して、槍を突き刺す。

 

 さらに魔力が注ぎ込まれて消滅速度が上がっていく。

 

 毛のない猿が俺を憎しみの籠もった目で見ていた。

 

「ざまぁみろ。人類を甘くみるんじゃねぇ」

 

 中指を立てながら嗤ってやる。

 

 腕を動かして俺を潰そうとするが、届く前に消滅してしまい灰になった。

 

 もう強がる必要はない。フラフラと歩きながら木の幹に背中を預ける。全身が痛くて立っているのも限界なのだ。厳しい戦いをした後なのだから少し休みたいのだが、どうやらそうはいかないようだ。

 

 中型が消えた途端、様子を見ていたであろう極小の汚染獣が、わらわらと集まってきたのだ。光属性の魔力を放出しているから近づくことはないが、消滅しないギリギリの所で立って俺を見ている。

 

 魔力が尽きたら襲ってくるだろう。

 

 仕方がない。戦うか。

 

 痛みに耐えながら幹から体を離す。

 

 力が入らず膝を突いてしまった。

 

 こまったな。どうやら余力はないようだ。汚染獣に殺されるわけにはいかない。動けないのであれば魔力が尽きるギリギリまで放出量を増やして――。

 

「今度こそ撤退だ! 撤退ーーーーっ!」

 

 走ってきたリュウールに抱きかかえられてしまった。すぐに移動を再開する。

 

「離せ! まだ戦える!」

「無理だから! ここで撤退すればまた汚染獣と戦える! 黙ってろ!」

「むっ……」

 

 より多くの汚染獣を消滅させるためだと考えれば、確かに撤退する判断も悪くない。守るべき人たちもいないので問題はないだろう。リュウールの判断は正しいと言える。

 

「そうだな。今回は撤退するか」

「…………頭打った?」

「なわけあるか! さっさと敵がいないところへ行くぞ」

「はい、はい」

 

 どうでもよさそうに返事をされてしまったが、俺を大切に抱きかかえているので文句はなかった。

 

 樹海に安全な場所があるかはわからないが、どうにかして一息着ける場所を見付けたい。それまで頑張って走り続けてくれよ。

 

 




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