勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~ 作:わんた
リュウールから助けられた俺は自らの足で走っている。
戦闘のダメージを回復させるため、どこか安全なところで休みたい。
魔法陣があった場所に戻りたいのだが、俺たちが暴れたことで数え切れないほどの汚染獣が集まっている。戦うのは無謀だ。一息つけるような場所を探している。
木に目印をつけながら未開拓の樹海を進み、汚染獣を見かけたら距離をとって隠れ、殺意を押し込めてやり過ごす。
どのぐらいの時間移動したのかわからないが、大木が見えてきた。根の部分には巨大な洞があって二人分なら身を隠せそうである。
「あそこで休もう」
「え、はい……」
慣れない汚染獣との戦闘と緊張が続く逃亡によって疲労が蓄積したようで、リュウールは意識がもうろうとしているようだ。一人で歩くことすら難しいみたいなので、肩を貸しながら歩いて洞の近くで座らせる。周囲に敵はいない。
木は汚染物質をたっぷりと含んでいるようで、枝葉まで真っ黒だ。非常に濃い瘴気の中だと植物は枯れてしまうのだが、どうして変色するぐらいで済んでいるのだろう。
洞の中を覗くと濃厚な汚染された空気が溜まっていたので浄化する。極小の汚染獣もいた気はするが、すでに消滅しているので確かめる術はない。
中は意外と広くて一人だけなら体は横にできそうだ。
気絶してしまったリュウールを引きずるようにして洞の中へ入れて隠すと、近くに落ちている枝と葉を使って入り口を隠し、俺も中へ入る。これでしばらくは安全を確保できたと思って良いだろう。
少し警戒を解いて地面に座るとひんやりとしていた。湿っていて不快感はあるが贅沢は言っていられない。じっと動かないようにして体力を温存しつつ、葉の隙間から外の様子をうかがう。
汚染獣の姿はない。基本的にアイツらは体が大きいから、カモフラージュさえできてしまえば気づかれる可能性は低い。放出している光属性の魔力も洞の中に限定しているから魔力漏れによって察知される危険はないだろう。
「ふぅ……まったくどうなっているんだよ」
修行の洞窟から樹海に行けるなんて話は聞いたことがない。少なくとも前回はそんなことなく、秘薬を飲みながら空気を浄化し続ける訓練だけを続けていた。
最近できた魔法陣なのだろうか。勇者を養成する場所と危険な樹海を繋げるメリットなんてない……いや、違う。やりそうな存在に心当たりがある。
特殊な汚染獣どもだ。
メルベルは元々トラウマがあり、寄生型は俺が撃退したこともあって勇者という存在が邪魔だと思われて対応されても不思議じゃない。もしこの考えがあっているなら次の一手は――。
「うっっ、んっ」
声がしたので起きたかと思いリュウールを見ると、汗を流しながら苦しそうな表情を浮かべていた。
怪我はしてなかったはずだが、見落としがあったのだろうか。
徹底的に調べるため鎧を外して上着を脱がそうとする。
ぷるん。
胸に二つの柔らかい山があった。
下着に包まれているそれは、手を伸ばせば触れるほど近い。
ゴクリとつばを飲み込む。
「お前、女だったのかよ……」
鎧で胸を潰して隠していたようだ。思い返せば無理して男っぽく振る舞っていたようにも見えたので、正体を知って驚いたがどこかで納得もしていた。
「う、ううん」
やばい! 目を覚ましそうだ!
客観的に見たら女性を襲う変態野郎でしかないので、慎重になりながらも急いで上着を戻して横にさせる。何事もなかったかのように外を監視する業務に戻った。
しばらくして背後から人の動く音が聞こえたので振り返る。
「おはよう。疲れは取れたか?」
「今すぐにでも汚染獣と戦えるほど元気になった。迷惑かけたな」
「気にするなお互い様だろ」
「そう言ってもらえると助か…………る?」
会話の最中に胸が楽になっていると気づいたのだろう。リュウールの視線が下がって動きが止まった。
「ねぇ、見た?」
「怪我の確認をしたくてな」
「ふーん……触ったでしょ」
「誓って、そんなことはしてない!」
疑わしそうな目で見られてしまったが、すぐ俺の言葉を信じてくれたようだ。
小さくため息を吐いて力を抜いた。
「ポルンなら、もし触ってても許してあげる」
完全には信じてないのかよ!
「マジで触ってないからな」
「うん。わかってるって」
くすっと笑われてしまった。どうやらからかわれていたようだ。
「私の性別は秘密にしてくれない?」
「理由は……聞かない方が良いか」
「そうしてもらえると助かるかな」
命の恩人だろと言えば教えてくれそうな気もするが、女性の秘密をむやみに暴くべきじゃない。長い付き合いにはならないだろうし、知ってしまったら厄介事に巻き込まれてしまう。気軽な関係でいたいので今は引くことに決めた。
「わかった。理由は聞かないし性別のことは黙っておく」
「ありがと」
男っぽく振る舞う必要がなくなったからか、柔らかい表情に見蕩れてしまった。リュウールが娼婦だったなら指名していただろうなんて、バカな想像をしてしまったほどである。男とは救いのない生き物だな。
知り合いに対して失礼なことをしてしまったと反省しながらも、顔を見ていると気まずいので、視線を再び外へ向ける。
葉の隙間から見える景色は変わっていない。平和である。
「汚染獣は近くにいる?」
「今は大丈夫だ。安心していいぞ」
「そっか。なら、これからどうするか話さない?」
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