勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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…………なにしてるの

 木の洞の中で一晩過ごすと、秘薬の効果もあって光属性は強化されたように感じる。

 

 体調は悪くない。リュウールはじっと動かず外を見ている。女性と気づいてからあまり意識しないようにしていたのだが、どうしても瑞々しい唇や服の下に隠された胸へ視線がいってしまう。

 

 無防備すぎるだろ。

 

 樹海の中でさらに男と二人っきりという状況なのだ。もう少し警戒心を持てよと説教したくなるが、今は魔法陣を確認しに行くことを優先したい。立ち上がって声をかけようとする。

 

「あッ」

 

 薄暗かったから木の根に気づくのが遅れてしまいつまずいて、バランスを崩すとリュウールを押し倒してしまった。顔が近い。息がかかるほどで、きめ細やかな肌はさわり心地がよさそうだ。風呂になんて入ってないのにいい香りがして、誘惑されてしまうように感じてしまう。

 

「…………なにしてるの」

 

 目が半分になると静かに警戒した声を出されてしまった。殴られることまで覚悟していたので意外と大人しい対応に驚いている。

 

「声をかけようと思って」

「それで、どうしてこんな体勢になるかわからないんだけど……」

 

 手で胸を押されてたので横に転がると、黙ったままリュウールは立ち上がった。

 

 地面に置いていた剣を腰につけて体をほぐしている。先ほどの出来事がなかったかのように振る舞われて気まずい。

 

「あれだけど……」

「事故だったんでしょ? 出会った期間は短いけど、ポルンは女性を襲うような男じゃないことぐらいわかっているよ」

 

 準備が終わるとスタスタと歩いて洞の外へ出てしまった。

 

 隠し事の多い女性ではあるが信用してくれているのであれば、汚染獣との戦いに支障はきたさないだろう。サバサバとした性格で助かった。

 

 槍を手に持つと俺も外に出る。植物のむわっとした臭いと瘴気が体に絡みついて不快感が高まったので、すぐに周辺を浄化した。

 

「魔法陣があった場所に行くんだよね?」

「ああ。先ずはそこで魔法陣が起動可能か確認してみよう」

「動くなら帰る?」

「もちろん」

 

 リュウールの考えが正しいのであれば魔力は充電されていつでも使えるようになっているはずだ。せっかく樹海に来たのだからもっと暴れ回りたい気持ちはあるが、明らかに準備不足である。メルベルにも転移魔法陣を作れる汚染獣がいないか聞きたいし、大人しく修行の洞窟に戻ろうと思っていた。

 

「死ぬまで戦うとか言わなくて良かった~」

「俺の自己満足に他人は巻き込まないから安心しろ」

 

 樹海で汚染獣と戦うのは私的な理由、復讐でしかない。しかも俺の故郷を滅ぼした個体は既に消滅しているので、八つ当たりに近い行為だ。転移した直後ならともかく冷静になった今、そんなことに他人の命を使うなんてできないので、仮に準備万端だったとしても一人で来ていた。

 

「ポルンがいいなら私からは何も言わないけど、貴方を大切に思っている人が悲しむようなことだけは止めてね」

「…………考えておく」

「しっかりとね」

 

 パンと背中を叩かれてしまった。

 

 思っていたより世話焼きな性格なのかもしれない。

 

 一人で歩き出したリュウールに声をかける。

 

「道はわかるのか?」

「わかんないから案内よろしく」

 

 振り返りながら笑顔で言われてしまった。

 

「周囲の警戒は頼んだからな」

「任せて」

 

 危険な場所だというのに長話をしてしまったと反省すると、脳内のスイッチを入れて戦闘モードに切り替える。神経を研ぎ澄ませ、周囲に汚染獣がいないと確認してから前へ進む。

 

 木々が生い茂る似たような景色は続くが、地面をよくみれば俺たちの足跡はある。また木にも目印をつけていたので道に迷うことはなく、目的地に向かって歩き続ける。敵の姿はない。樹海に入ったら汚染獣だらけだと思っていたが、瘴気さえなければ一時的な平穏を確保するぐらいはできるようだ。

 

 歩いて二十分ぐらいだろうか。腕を引っ張られた。

 

 後ろを向くとリュウールが左側を指さしていたので視線を向けると、鹿の骨にとりついた極小の汚染獣が数匹いる。過去にも何度か見た寄生型だ。距離は目測で十五メートルぐらい先だろうか。こちらには気づいていない。

 

「倒す?」

 

 気持ちとしては即消滅コースなのだが、戦えば異変に気づいた他の汚染獣どもが集まってくるかもしれない。この前みたいな数が押し寄せてきたら魔法陣を確認するどころじゃなくなってしまう。今回の目的はあくまで調査だ。討伐ではない。非常にムカつく話ではあるが諦めよう。

 

「いいや。先に行く」

「うん、わかった」

 

 嬉しそうにされたのは気のせいだと思うことにして、浄化する範囲を最低限にして静かに歩く。

 

 五分もせずに魔法陣があった場所についた。周囲の草は踏まれたことで折れている。茎の切断面からは黒い液体が流れている。内部まで汚染されているのか……と、ここでようやく鈍い俺は、植物たちの重要性に気づく。

 

 普通の植物は汚染されると枯れてしまうのだが、樹海に生息している個体は適応している。

 

 それは瘴気への耐性があるということだ。

 

 大陸中を見てもここでしか手に入らない貴重な素材に、俺はずっと気づかなかったのだから底なしの間抜けだ。

 

 生きて帰れない場所なので研究はされたことないが、自生している植物たちは人類の役に立つかもしれない。転移する前に必ず持ち帰ろう。

 

 




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