勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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すまん。行ってくる

「二人が発見する前に、転移魔法陣を使って汚染獣が村に来たのは間違いなさそうですね。犯人はわかりませんが目的はなんとなく察しが付きます」

「俺たちにも教えてもらえますか?」

「ええ、ポルンやリュウールにも関係があることですからね」

 

 声は小さく消えてしまいそうだが、強い意思を感じる目をしたまま巫女は俺たちを見ている。

 

「狙いは秘薬です。製造方法を抹消して、人類から勇者を奪うつもりです」

 

 光属性の魔力は汚染獣がもつ唯一の弱点だ。適性を上げる秘薬はこの村でしか作れないので、襲撃する理由にはなるのだが、どうして知っているのだろうか。偶然にしては手が込んでいる。少なくとも秘薬という存在、そして勇者を鍛える場があるということは、汚染獣側にバレていると思っていい。俺には少しだけ心当たりがあった。

 

「納得のいく理由ではありますが……汚染獣は知能が低い……いえ、高いのもいるみたいですが、どうして秘薬のことを知っているんですか……?」

 

 詳しいことは何も知らないリュウールは戸惑っているようだ。

 

「わかりません。ですが、ポルンの報告によって知能ある特殊な個体が活発的に活動していることがわかっています。どこからか我々の情報が洩れていても、おかしくはありません」

 

 巫女の目だけが動いて俺を見る。

 

「ポルン、何か知っていませんか?」

 

 契約までバレてしまうと困るので嘘やごまかしで逃げてもいいのだが、汚染獣が好き勝手に動いているのは気に入らない。俺が死んだ後のことも考えれば、知っている人は増えるべきだ。ぼかしながらでも、重要なことは伝えよう。

 

「特殊な個体の一部は人に扮して町で生活している。そいつらが情報を集めているんだろう」

「実際に出会ったのですか?」

「この前お話しした不死と体内に寄生する能力をもった汚染獣どもです。不死の方は瘴気の放出を完全に抑えており、普通の人間として生活しています。寄生型の方は貴族の体内に入って活動しておりました。両方とも戦ったが消滅させられずに逃がしております」

 

 せめて寄生型だけでも処分したかったのだが、俺が寝ている間に起こった出来事だったのでどうしようもなかった。

 

「うそっ……汚染獣ってなんなの……本能で動く災害じゃなかったの?」

 

 衝撃的な事実を受け止め切れてないようで、男の演技が崩れている。

 

「汚染獣について、詳しいことは何もわかっていません。この質問に答えられる人はいないでしょう」

 

 人よりも長く生きている巫女が言っているのだから、間違いないだろう。実際、汚染獣を倒すために複数の国王や貴族と会ったことがあるが、俺よりも詳しい相手はいなかった。人類の生存権を脅かす敵ではあるが、撃退するのが限界で生態を研究する余裕なんてないのである。それに対して汚染獣は人の営みに紛れ込めるほどの知識があるので、差は広がっていくばかり。遅れを取り戻していかないと、いつか取り返しの付かない事態になってしまうかもしれない。そういった危機感、焦燥感といったものが俺の中にはあった。

 

「それで秘薬は無事だったのでしょうか?」

 

 狙われているのであれば奪われたかもしれない。俺の適性はまだまだ上がる。限界はきてないのでなくなったら困るのだ。

 

「そこにいるペルルロージが戦ってくれたので何とか守り切れました」

「彼は光属性を持ってませんよね? 隠し持っていた魔道具で倒したんですか?」

「それもあります。後は……私、変わった光属性の魔力を持っているんですよ」

 

 これは驚いた。まさか巫女も勇者になる資格があったとは。

 

 武器に光属性の魔力を付与できるのであれば、筋肉にしか興味のないペルルロージでも前線で活躍できる。村の守りは思っていた以上に強固だったんだな。

 

「ですが次襲われたときに守り切れるとは限りません。秘薬についてポルンにはもう少し詳しいことをお伝えしましょう。ついてきてもらえますか?」

「それはありがたいのですが……」

 

 ちらっとリュウールを見る。勇者候補生でもある彼女も連れて行けないかとメッセージを送ったのだが、巫女は首を横に振って拒否してしまった。

 

「私が信用してるのはポルン、あなただけです」

 

 それほどまで俺を評価しているとは思わなかった。

 

「わた、いや、俺は大丈夫だ。ここで待っているから行ってくれ」

「すまん。行ってくる」

「気をつけてな」

「わかった」

 

 これから戦いにいくわけじゃないので、心配するようなことは何もないのだが、気づかいだと思って適当に返事をした。

 

「では、付いてきてください」

 

 ヨロヨロと巫女が立ち上がったので、慌てて体を支える。

 

「ありがとうございます」

「お礼は後でいいので、先に行きましょう」

 

 部屋の隅に行きたそうだったので連れて行くと、巫女は床の一部を踏む。壁の一部が空いて階段が出てきた。

 

 小さな家に隠し通路があったのか。

 

「目的地はこの下です」

 

 体を支えながら一緒に階段を降りていく。一瞬だけ後ろを見たら、ペルルロージが入り口に塞がるようにして立っていた。他が入らないように警備しているのだろう。

 

 この下に秘薬が保管されているのは間違いないんだろうが、他にも何かありそうな雰囲気だった。




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