勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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してません!

 治療を終えたトエーリエとヴァリィが戻ってきた。

 

 トラピリオン都市の現状と汚染獣の存在を伝えると、討伐にはやや否定的な態度を取られてしまう。

 

「仮に巫女が狙われているとしても、今戦う必要はないですよね? 勇者殺しの汚染獣と戦うには準備不足です」

 

 ヴァリィの発言は確実に敵を殺すという観点では正しい。複数の勇者を集め、戦力を整えてから戦うべき相手なのは間違いないが、時間がかかりすぎる。各国との調整も含めて数ヶ月はかかるだろう。

 

 その間にも大型の汚染獣は暴れ回る。ポエーハイム王国の半分は汚染されて人の住めない土地となり、浄化には数年、いや数十年かかるだろう。先ほどとは比べものにならないほどの難民がでて多くが死ぬ。

 

「勝てる可能性があるのに被害を拡大させることになるぞ?」

「ポルン様が死ぬよりかはマシです」

 

 はっきりと言われてしまった。意思は固いようだ。

 

 多くの人が死んでも勇者は生き延び、反撃の機会をうかがうべきといったスタンスなんだろう。

 

「プルドと国軍を派遣すれば被害は最小まで抑えられます。その間に私たちは準備を進めましょう。これが最善の案だと思いませんか?」

 

 俺の腕を掴みながら、現役の勇者を囮にすると言ったのはトエーリエだ。

 

 ヴァリィよりも被害が抑えられるアイデアのように思えるが実は違う。

 

 村で修行をしてこなかったプルドは、一般的な勇者より光属性の適性は低い。大型どころか中型でも足止めは厳しいだろう。さらに言うならドルンダが許可を出さない可能性も高く、実現性という意味でも低かった。

 

「歴戦の勇者が死ぬほどの相手だ。プルドじゃ足止めにもならない」

「メルベルに撃退させるのはどうですか?」

 

 次はベラトリックスか。こぞってみんな俺が討伐に向かうのを反対しやがる。そんなに戦わせたくないのかよ。

 

「正体がバレるリスクを背負って戦っても利益がない。ポエーハイムが滅んだら別の国に行くだろうさ。ヤツは動かない」

「契約を遂行するのに必要だから協力しろと脅しても?」

「それは完全な嘘だろ。断っても魔法は発動しないから脅しにすらならない」

 

 ケルベロスの裏に結界を使う汚染獣がいるなら話は変わるが、そういった証拠がない今は使えない方法だ。汚染獣の背後関係なんて調べようがない上に、メルベルのほうが詳しいので適当なことも言いにくい。

 

 人類のために協力してくれなんてお願いしても無視されるだろう。

 

「無視した結果、ポルン様が死ぬぐらいなら協力すると思ったんですが……」

「それはメルベルを好意的に見すぎだ。不死の存在は何度でも失敗できるのだから、俺が死んでも次を探すだけ。期待しすぎるのはよくない」

 

 結局はお互いに剣を突きつけ合っているから、真の意味で協力はできない。

 

 大型ごとき倒せないのであれば使えないと判断されて捨てられるだけである。

 

「これで俺が戦うしかないと理解してくれただろうが――」

「「「してません!」」」

 

 三人が同時に叫んだ。

 

 こういうときだけ団結してくるから困る。

 

 良いじゃないか。

 

 汚染獣、倒そうぜ。

 

「なんで反対するんだ。絶対に勝てない相手じゃないぞ? 勝率は半分ぐらいある」

「逆に半分の確率で死ぬんですよ? それじゃダメです」

「汚染獣との戦いに絶対はない。常に死と隣り合わせで戦っているんだから、半分もあれば充分だろ」

「そうですが……せめて七割は欲しいです!」

 

 懇願するようにトエーリエが、さらに腕を引っ張る。どうしても行かせたくないみたいだ。

 

 このまま話を続けていても平行線のまま。落とし所がないので結論は変わらないだろう。

 

 一人で戦いに挑めば、さすがに勝てるとは思えない。どうにかして仲間を説得したいのだが、よいアイデアが浮かばず悩む。

 

「あのー。七割でよければ可能性はあげられる、かな?」

 

 期待してなかったと言ったら失礼かもしれないが、ミュールから提案があるとは思わなかった。

 

 それは三人も同じだったようで、少女に何ができるんだと疑いの眼差しを向けている。

 

「巫女は光属性の力を高めるために存在しています」

 

 体内に埋め込まれた汚染獣のことを隠しながら、上手いことをいったな。秘薬のこともあるので言っていることに嘘や誤りはない。ただすべてを正直に伝えていないだけだ。

 

「そういったこともあって私はいくつか便利な道具を持っていまして……」

 

 話ながらゴソゴソと腰に着けている大きいポーチを漁っている。

 

 四人の視線が集まる中、しばらくして小さな瓶を取り出した。赤い液体が入っている。原材料はミュールの血なんだろうな。

 

「これは属性付与ポーションです。一時的にですが、皆さん全員が光属性を手に入れられますよ」

「勇者のように光属性を手に入れられる、ということですか?」

「たった一分程度ですけどね」

 

 目をまん丸として驚きながらヴァリィの手が伸びた。

 

 無意識の行動だとは思うが、手に入れようとしたのだろう。

 

「属性付与ポーションは数年に一つ作れるかどうかといった貴重な物。話し合いが終わるまで渡せません」

 

 取られる前にミュールはポーチにしまってしまった。

 

「皆さんが一分だけ光属性を手に入れたら、汚染獣に勝てますか?」

「ベラトリックスの報告がすべての戦力だと仮定するなら、八割……いや九割は勝てるだろう」

 

 前提条件が変わった今、代表してヴァリィが答えたとおり、しっかりと作戦を練れば勝てる相手だ。

 

 それは仲間たちも理解してくれたようで反対する声はなくなる。

 

 さすが長く生きてるだけはあって、色々と奥の手をもっているんだなとミュールに感心してしまった。

 

 

 




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