勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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あれが本来のポルン……?

 話し合いが終わった後もベラトリックスには使い魔による偵察を続けてもらい、都市の隅々まで調べてもらったが敵戦力の大幅な更新はない。

 

 小型が数百と大型が1。

 これが全てだ。

 

 残っていた人たちは全員死んでいるため生存者はいない。普通の汚染獣なら次の獲物を探しに移動するはずなのだが、出て行く気配はなく、その場に止まっていることから明確な意図があると感じる。

 

「汚染獣は何かを探しているそぶりもないのか?」

「はい。徘徊すらしていません。横になって待っています」

 

 ベラトリックスに何度聞いても同じ答えが返ってきた。

 

 人類を滅ぼすのではなく、また不浄の土地を増やすべく歩き回っているわけじゃない。じっと動かないのであれば狙いがあるのだろう。

 

「目的は巫女か?」

「でしょうね。村から逃げ出して助けを求めるなら、トラピリオン都市に行くのが一番ですから」

 

 ミュールの言う通りだが、その考えが正しいのであれば汚染獣は人類側の知識や常識をある程度もっていることになる。

 

 地理、国家間の関係、勇者の所在地、その全てを平民と同等以上に把握されているのであれば、非常に厄介だ。今までと違って戦略、戦術というのを使ってくる可能性が高い。

 

 ただ暴れる汚染獣とはレベルが違う。

 

「また特殊な汚染獣がいるのでしょうか?」

 

 そう考えるのは当然だし、同意見である。

 

 人の言葉を操り生活に紛れ込んでいる汚染獣がいるはずだ。

 

 真っ先に思いつくのはアイラの領地で暴れていた寄生型の汚染獣である。手下は全滅させていた上に、俺とメルベルが手を組んでいることも知っている。復讐に動く可能性はあるが……それにしては派手に動きすぎている。非効率的だ。

 

 寄生して人類同士を争わせる戦い方をするタイプなので、汚染獣を使って都市を滅ぼす方法は選ばないだろう。

 

 暴れ方が寄生型と異なる。

 

 だから――。

 

「三匹目の特殊な汚染獣が人類の生存圏にいる」

 

 最悪な結論を出してしまったが、ほぼ間違いないだろう。

 

「あぁ……なるほど。それで村の所在と手の込んだ奇襲ができたんですね」

 

 パンと手を叩いて全員の注目を集めたミュールは、明るい声なのに表情は暗かった。

 

 汚染獣は人類の言葉を理解せず、知能も劣る。この大前提があったので防諜をせずにすんでいたのだが、状況は大きく変わってしまった。情報を隠さず広く伝える方法はもう使えないだろう。

 

 戦い方を大きく変えなければいけないが、現実問題として各国が連携して対応するのも難しい。対応にばらつきが出てしまい、そこを狙われることまで想像できてしまう。きっとミュールも近いことを考えて、未来は明るくないとでも思ってしまったのだ。

 

「汚染獣の被害はもっと増えます。もしかしたら人類は滅――」

「そんなことはさせない!」

 

 思っていたよりも大きな声を出してしまった。

 

 近くにいたベラトリックスたちは肩をビクンと動かして驚き、俺を見ている。目はまん丸と開いていて何を言うのか待っていた。

 

「樹海の中でコソコソと隠れていたヤツらが出てきてるんだ。ヤりやすくて助かる。ちょうどいいから人類の恐ろしさをその身に刻みつけてやろうぜ」

 

 汚染獣が勝手にやってくるなら歓迎だ。被害を最小に抑えながら討伐できる。

 

 体の奥から歓喜と闘争心が無限に湧き出てくるぞ。自然と口角が上がってしまう。

 

 今なら不眠不休で何日も戦えそうだ。

 

「あれが本来のポルン……?」

「ええ、通常運転です。汚染獣のことになれば後先考えられなくなる人なので、巻き込まれたくないなら早く別れたほうがいいですよ。巫女殿」

「ヴァリィの忠告はありがたく受け取るが、私もポルンと同類だよ。汚染獣を滅ぼせるのであれば、この身がどうなろうと気にしない。喜んで受け入れる」

 

 体を改造するぐらいは覚悟が決まっているからな。ミュールの言葉は重い。

 

「はぁ……また似たような人が集まったんですね」

 

 ため息を吐きながらヴァリィは呆れたような顔をしていた。

 

「志が同じなら何も問題ないだろ」

「まぁ、そうですね……」

 

 ちらっと同じく闘志に満ちあふれたトエーリエとベラトリックスを見て何も言わなくなった。

 

 戸惑っているのは自分だけ。そう気づいてしまったのだろう。

 

 フォローしてあげたいが今は時間を無駄にしたくない。敵の目的もわかったことだし行動しよう。

 

「都市を占拠している汚染獣を消滅させる。小型はベラトリックスに任せるがいいか?」

「はい。巫女のポーションさえあれば数十秒でやれます」

「頼んだぞ。トエーリエと巫女は後方で待機。ヴァリィは俺と一緒に大型と戦う」

「いつも通りですね。また隣で戦えることを光栄に思います」

 

 胸に手を当ててヴァリィは微笑んでいた。覚悟は決まったのだろう。

 

 何度も汚染獣と戦い、死にかけているのにこんな顔をできるなんて、彼女もまた他人とはズレているのだが本人は気づいてないだろう。

 

 それはトエーリエだって同じだ。貴族の令嬢として裕福な暮らしができるのに、現場で泥だらけになり、危険に身を投じているのだから変わり者である。ベラトリックスは…………今更だな。

 

 みんな静かにおかしい。

 

 だからこそ頼もしかった。

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