勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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予想していた以上の結果だな

 ケルベロス攻略の計画を練ってから、俺たちは移動を始めて都市が一望できる丘にまで移動した。

 

 ベラトリックスからあった報告通りに建物は破壊され、遠目からでも火事の跡が見える。瘴気によって全体が薄暗くなって、動物は逃げだし、植物も急速に枯れていっている。生存者がいるとは思えない。死の都市へと変貌していた。

 

 風が吹くと、瘴気の不快な感覚がここまで届いてくる。

 

 このままでは体が汚染されてしまうので、軽く光属性の魔力を放出しながら仲間を守り、ミュールを見た。

 

「トエーリエと後方待機だからな。付いてくるなよ」

「心配性だね。わかってる。ポルンが死にそうにならない限りは、ここにいるよ」

 

 不吉なことを言われると、トエーリエが手を握ってフォローしてくれる。

 

「私が見ていますから安心してください」

 

 真っ直ぐな目を見ていた。

 

 信じてます、と心の声が伝わってくるようだ。

 

「詳しい事情は話せないが、ミュールの死は人類の滅亡に繋がると思って守ってくれ」

「お任せください」

 

 迷いなく答えると抱きついてきた。

 

 耳元に唇が触れて温かい息がかかる。さらに温かく柔らかい物体が耳に侵入してきてゾクゾクとする感覚が襲ってきた。

 

「ふぁんっ!?」

 

 思わず声を出してしまったが許して欲しい。舐められるのがこれほど衝撃的な感覚になるとは思わなかった。

 

 娼館で遊ぶときは必ずプレイに入れてもらおう!

 

 そう強く心に誓った。

 

「相手は大型です。私がいないんですから怪我だけはしないでくださいね」

「あ、あぁ……」

 

 戸惑っている間にトエーリエは離れてしまった。四人でコソコソと何かを話している。出会ったときは険悪な雰囲気だったのに、いつの間に仲良くなっているようだ。

 

 弱点みたいな単語が聞こえたので、汚染獣の攻略方法を話し合っているのかもしれない。

 

 なんとなく罠にかかった動物のような感覚に陥るが、きっと気のせいだろう。

 

「おしゃべりはそのぐらいにしてくれ」

 

 パンと手を叩いて注目を集めると、みんなが俺を見てくれた。

 

「ベラトリックス、準備はいいか?」

「もちろんです。攻撃を始めますね」

「デカいのをぶちかましてくれ」

 

 にやっと笑ってから体内の魔力を練り始めると、荒れ狂う魔力によって黒くて長い髪がうねっている。

 

 高度な魔法を使うために時間をかけているのだ。

 

 残された俺たち四人は近くに集まると様子を見ることにした。

 

 時間にして一分ほど経過すると、ベラトリックスが魔力を光属性に変換するポーションを飲んだ。

 

 効果はすぐに発揮され、魔力が変質する。

 

「ポルン様の敵は一匹残らず死になさい」

 

 魔力がいっきに高まると魔法が世界に干渉して形作られる。

 

【アース・ウェーブ】

 

 世界が揺れた。

 

 そう錯覚してしまうほどの強い振動が発生する。都市の方を見ると地面が水のようにうねっていて、小型の汚染獣たちは転倒こそしないが動けない。耐えているだけだ。

 

 この隙を狙って次の魔法が発動される。

 

【アース・ニードル】

 

 地面から無数の針が飛び出した。

 

 長さ一メートル、太さは三十センチほどとでかい。槍と言い換えても違和感はなく、ドロドロに溶けている汚染獣の肉を突き刺し、体内で止まると爆発する。破片は小さな棒状の針だ。内臓はズタズタに破壊され、さらに光属性の魔力が注ぎ込まれて消滅していく。

 

 都市全体をカバーするほどの範囲魔法を二連続で使ったためベラトリックスの魔力は大きく減っている。

 

 フラフラしていて倒れそうだったのでトエーリエが支えた。

 

「予想していた以上の結果だな」

 

 小型の汚染獣はほぼ全滅している。ケルベロスも瀕死の重傷だが、すぐに瘴気を使って体を修復してしまうので時間はかけられない。心を押し殺し、限界が近づいているベラトリックスにさらなる指示を出す。

 

「魔法で飛ばしてくれ」

 

 声を出すのも辛いみたいで、小さくうなずくと【フライ】の魔法が俺とヴァリィにかかった。

 

 前にテレサが使っていたときは暴走していたが、さすが本職は違う。速度は安定しており、丘から滑空するようにしてケルベロスへ向かって進む。槍を前に出しながら光属性を付与し、突撃の準備に入った。

 

 追撃に気づいたケルベロスが口を開く。

 

 喉の奥から火種が見えたが、火球を吐くよりも先に槍が頭に突き刺さる。光属性の力によって浄化され、灰になって消滅した。

 

 勢いを殺しながら着地をして振り返ると敵の姿はない。

 

 ヴァリィが運良く生き残っている小型を斬り刻んでいて一方的に攻撃し完勝ともいえる状況だが、嫌な予感が膨れ上がっている。

 

 この程度で倒せる汚染獣にベテランの勇者パーティは何も出来ずに全滅するだろうか?

 

 考えにくい。

 

 撤退もしくはケルベロスに致命傷を与えるなりできただろう。

 

「ポルン様!」

 

 緊迫した声が聞こえたので思考を止めて周囲を見ると、倒したはずの小型汚染獣が復活していた。気がつけば瘴気が濃くなっている。樹海レベルだ。

 

 光属性の魔力を放出して浄化しても、地面から新しい瘴気が出てきてすぐに汚染されてしまう。

 

「汚染獣はどこからきたんだ!?」

「濃い瘴気の中から生まれてきました!」

 

 湧いて出てきたというのか。

 

 まともな生き物じゃないと思っていたが、まさか汚染獣は瘴気の中から生まれ出てくるとは思わなかったぞ。

 

 これじゃ瘴気の発生源を突き止めない限り、戦いは終わらないじゃないか。

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