勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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トエーリエ:ポルンの仲間ってだけはあるね

 大型の汚染獣が五匹も出現した時には、巫女を抱きかかえて駆け出していました。

 

「なんなんですか! あの都市は!」

 

 どうしてポルン様が戦おうとする時に限って、異常な事態が起こるのでしょうか。大型が群れるなんて過去の記録を見てもない。あまりにもおかしいです。

 

「ポルンが好きで集まったんでしょ」

 

 冗談だとしても笑えないし、真実だとしたら最悪です。

 

 せめて順番に来るぐらいの優しさを持ってほしいところですね。

 

「舌を噛むかもしれないので黙っててください!」

「はい、はい〜」

 

 この人は本当に長く生きているのでしょうか。軽い口調は少女の見た目そのままの印象を持ってしまいます。

 

 丘を降りるとポルン様が見えなくなりましたが、居場所は忘れていません。ようやく都市の入り口についたのでさらに進もうとしたら、いろんなところから爆発音が聞こえてきました。これはベラトリックスの魔法ですね。

 

 近くにも火球が落ちてきたので、腕で爆風から顔を守ってやり過ごしました。

 

 派手に戦っているようです。

 

 私も協力しなきゃ。

 

「ちょっと待って! おろしてくれる?」

 

 走り出そうとしたら巫女から止められました。

 

「どうしてですか?」

「ちょっと調べたいことがあってね。ちゃんとポルンの役に立つことだよ」

 

 悩みながら目的地を見るとケルベロスの姿が消えていました。五匹全部です。あの数の大型を相手にしても勝ってしまわれるなんて、さすが私のポルン様。最高ですっ!

 

 あ、違いました。えーっと……そうでした。巫女の話でしたね。

 

 大怪我をしているかもしれないのですぐに駆けつけたいのですが、少しぐらいなら寄り道する余裕はあるでしょう。提案を受け入れることにしました。

 

「すぐに終わるのでしたら」

「ありがと」

 

 私の腕から飛び降りると、巫女は短い足を動かして爆発によって発生した穴に近づく。

 

「これは初めてみるタイプだけど、何をしているかはわかる。うーん。犯人はもうどこかに行ってしまったのかな?」

 

 ブツブツ言っているのが気になって、巫女の背中越しから覗いてみる。

 

 極小の汚染獣がいました。壺のような形をしていて瘴気を吐き出している姿は醜悪です。あまりにも濃度が濃いので黒い霧のようになっていて、離れているのに私の肌を侵食していく。

 

 このままじゃ数秒で汚染により意識を失ってしまいます。

 

 数メートル下がって安全な距離まで退避しました。

 

「いい判断だ。ポルンの仲間ってだけはあるね」

「巫女は大丈夫なのですか?」

「これでも一応は光属性持ちだからね。自分を守るくらいの力は持っているよ」

 

 勇者になるほどの適性はないようですが、それでもあの瘴気に対抗できるのであれば十分です。

 

 テクテクと歩いた巫女は壺型の汚染獣を掴み、持ち上げました。

 

 全長は三十センチほどで意外と小さく、子供でも倒せそうに見えてしまいます。光属性を注がれているのか、クネクネと動いて苦しんでいる姿は虫を想像させ、嫌悪感が強まりました。

 

「口から高濃度の瘴気を出して、新しい汚染獣を生み出していたのかな」

「汚染獣は瘴気から生まれるんですか!?」

「全部じゃないけど、最近生まれた個体はそうなるね」

 

 誰も知らない衝撃的な事実をさも当然に言ってのける巫女は、ポルン様が頼るときめたにふさわしいほどの深い知識をおもちでした。

 

 確かに豊富な知識を持っていますし、魔力を光属性にさせるポーションのことを考えれば技術も高い。間違いなく特定の分野で一流をも超える力があります。

 

「汚染獣を倒すだけじゃ足りないんですね」

「そういうこと。ただ優先度はつけなきゃいけないから今の方針で問題はないかなぁ。今のところは」

 

 気になる言い方でしたが、会話をするつもりはなくなったようで私を見なくなりました。

 

 壺型の汚染獣を持ち歩いてどこかに行こうとするので、ついていきます。

 

 どこにいくのだろうと思っていると、瓦礫の影に隠れるようにして座りました。どうやら台所の跡地だったようで、食材や調理器具が転がっています。

 

「ちょっと中身見せてもらうから」

 

 地面に転がっている包丁を拾うと壺型の汚染獣の腹を切り裂きました。

 

 瘴気は出て来ない代わりに、よくわからない臓器が沢山あります。巫女はそれらを素手で触って機能を一つ、一つ丁寧に確認しており見ているだけで気分が悪くなります。

 

 人体であれば平気なんですが、どうしても汚染獣の中身は嫌悪感が出てしまうんですよね。

 

 というかすぐに終わらせると約束したのに、巫女は何をしているのでしょう。

 

 そろそろ声をかけてポルン様のところに……っ!?

 

 強力な瘴気を感じました。場所は近い。

 

 瓦礫を登って様子を見ると、ポルン様が巨大なケルベロスに向かって走っているところでした。火球が迫ってきているので【結界】の魔法で全て防ぎ、道を作ります。

 

「助かった!!」

 

 たった一言ですが、心に染み渡って幸せな気分にさせてくれました。

 

 ああ、やっぱり私は、この人についていこう。この人のために戦おう。

 

 巫女の周囲に効果が継続する【結界】を貼ってからポルン様の元へ向かう。私の道はこの人と共にある。

 

 

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