勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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反応を見たい!

 トラピリオン都市を出て、移動を続けている。

 

 大型汚染獣の襲撃と勇者の死亡の話は、難民経由で周辺にも広がっていて誰もが不安そうな顔をしている。土地を浄化するには時間が足りなかったので今はまだ人の入れない土地となっているが、別の勇者が派遣されて後処理が終われば、脅威は去ったとわかって安心してもらえるだろう。

 

 俺が最後まで面倒を見る必要はないのだ。

 

 ポエーハイム王国へ向かう途中に光教会へ立ち寄ると荷馬車を格安で購入した。

 

 これで安全に移動速度を上げられる。

 

 人通りの多い街道を使って荷馬車を走らせているので魔物や野盗の襲撃はなく、またミュールを狙った汚染獣も出現していない。

 

 平和そのもの。

 

 だかそれは仮初め、見せかけである。

 

 裏で暗躍している特殊な個体が大侵攻を狙っている限り、安心した生活なんて送れない。

 

 荷台から見えるのどかな草原、商品を大量に乗せた商人の馬車、巡礼の旅に出ている光教会の信者、魔物討伐のために移動している冒険者、彼らが今日と変わらない明日を迎えられるよう、俺たちは戦い続けなければいけない。

 

 そう思うと自然と気合いが入る。

 

 * * * * * *

 

 旅は順調に進んでポエーハイムの首都にまで着いた。

 

 つい数ヶ月前まで住んでいた場所なので懐かしく感じる。

 

 何度も娼館に突撃してお断りされたなぁ。今なら大丈夫だろうか。もう一度、娼婦の方々にお願いしてみていいかも……なんて外壁をみながら邪な妄想を広げていると、ベラトリックスが頬をつまんできた。力は入ってないので痛くはない。目だけ動かして顔を見ると、なんだか拗ねている感じだった。

 

「どうした?」

「なんだかよくないこことを考えていそうだったので」

 

 つんと唇を尖らせている。心を読む魔法なんてないのに、どうしてわかったんだ。

 

 返答を間違えれば暗い目になって、ぶつぶつと一人ごとをつぶやきそうな気がする。

 

 動揺しつつも表には出さないようにする。

 

「変なことは考えてないぞ。外壁の奥にいるドルンダが、何をしてくるのかわからないので警戒していただけだ」

「だったらいいんですが……」

 

 納得はしてないようだが追求されることはなかった。

 

 頬から指が離れる。

 

「ポルン! 心配ないみたい。歓迎してくれるみたいだよ!」

 

 明るい声でミュールが叫んだ。

 

 指さしている場所は門のところである。

 

 普通は入場待ちの商人たちが並んでいるのだが、そう言った姿はない。鎧を着込んだ騎士たちがずらりと並んでいる。しかも最前列の槍もちは穂先をこちらに向けており、中衛は剣を抜いている。

 

「確かに盛大な歓迎をしてくれそうだ」

 

 静かに剣を抜いたヴァリィが俺を守るようにして荷台の上で立った。

 

「あれは私が率いていた騎士団ですね。新しい団長はグローズという男で私を嫌っていました。ドルンダの命令があれば喜んで襲ってくるでしょう」

 

 元団長を殺して忠義を示せなんて言ってそうだな。

 

 すべてを救うなんて不可能なのは、とうの昔に実感している。振り回される騎士たちには多少の同情心が湧くものの汚染獣との戦いを邪魔するなら容赦しない。殺してでも道を空けてもらうぞ。

 

「魔法で先制攻撃しますか?」

「攻撃する寸前まで準備して反応を見たい! できるか?」

「もちろんですっ!」

 

 荷馬車の周囲に魔力で作られた光る矢――【マジックアロー】が数百本出現した。威嚇にしては多すぎるが、騎士たちは大きく動揺したので反応を見る目的は達成できている。

 

 中央後方で馬に乗っている団長らしき男が指示を出して、【結界】の魔法が発動した。

 

 反撃ではなく守りにでたか。

 

 攻撃する意思はない?

 

 いや、違う。ここからじゃ見えにくいが、数人が弓を番えている。隙を見せたら俺たちを射るつもりだ。

 

 ベラトリックスに魔法を待機させたまま荷馬車を進めると、声が届く範囲までついた。

 

 御者をしているトエーリエに馬車を止めてもらう。何年も旅をしていたので馬の扱いは上手くなっており、揺れることはなかった。

 

「なぜ騎士団が俺たちの前を塞ぐ!」

「偽物の勇者を入れるなと陛下からのご命令だ!」

 

 鼻の下に髭を生やした騎士団長らしき男が返事をしてきた。あいつがグローズか。

 

 ドルンダからの命令だというのは間違いなさそうである。

 

 宰相のメルベルはなにやってるんだよ。こういうときこそ役に立ってくれ。

 

「ポルン様が……偽物? 適性を上げる修行すらせず、権利だけをむさぼるプルドが正しいと? そのケンカ買いますよ。この国を滅ぼしましょう」

 

 静かにぶち切れたベラトリックスが待機させている【マジックアロー】を放とうとしている。

 

「落ち着け。まだ早い」

 

 手を握ったことで思い止まってくれたが、また別が暴走し始める。

 

「ポルンほどの人物を偽物扱いとは……この国の人間は死にたいのかな」

 

 ミュールが俺を評価してくれるのは嬉しいが、ヴァリィと一緒に飛び出そうとするのは困る。大切な体なんだから大人しくしてくれ!

 

「敵の挑発に乗るのは下策だ。落ち着けって」

 

 メイスを持って飛び出しそうになっているトエーリエを止めながら、全員に向けて言った。

 

 いつもは冷静なのに、なんで偽物と呼ばれたぐらいで全員がぶち切れるんだよッ!

 

 

 

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