勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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勇者である者、その立場は平民と変わらず、清く正しく生き、世界を守るために奉仕するべし(ベラトリックス視点)

「ゆっくりしたいから全員、外で待っててもらえない?」

「……脱衣所で待機するけど、くれぐれも逃げないように」

 

 殺気に当てられて完全に怯えたと思っていたんだけど、意外と根性はあるみたいで最後に念押しをしてきた。

 

 私が逃げ出したら彼女たちの失態になるから、保身を考えるのであれば言っておきたい気持ちは理解できる。

 

「心配しないで。プルドには用があるから、逃げるなんてことは絶対にしない」

 

 呼び捨てが気にいらないようで侍女たちは眉間にシワが寄って嫌悪感をあらわにした。

 

「あの方は王族で先ほどのような呼び方は、適切ではない」

 

 彼を貴族として扱っているようだけど、その考えは間違っている。

 

 勇者と名乗るのであれば他の地位や肩書きはすべて捨てなければいけない。

 

「勇者である者、その立場は平民と変わらず、清く正しく生き、世界を守るために奉仕するべし。この言葉、貴方たちも知っているよね?」

 

 王国貴族たちよりも権力を持たせないため各国が合意して決められた宣言だ。

 

 時に平民や光教会から強く支持されることもあって、昔から勇者には権力を持たせてはいけないとルールが作られた。

 

 これだけでも権力者にとって邪魔な存在だというのがわかる。すごく歪な制度だよね。それをドルンダ陛下は壊そうとしている。

 

 周囲の反発をどうやって抑えるつもりなんだろう。切り札でもあるのだろうか。答えのない疑問ばかりが思い浮かぶ。

 

「ですが、プルド殿下は違います」

「違いません。勇者と名乗るのであれば、相応の振る舞いをするべきです」

「その考えは古いですね。王族である勇者プルド殿下は、新時代を作り出すお方だから過去のルールに従う必要はない」

「光属性の力を私利私欲のために使うつもり?」

「さぁね。ベッドの上でプルド王子殿下に直接聞いてみたら」

 

 ふっと嗤われてしまった。

 

 私が嫌がっていることを知っていて言ったのだから、嫌みな女だ。

 

 一生好きにはなれない。

 

「気が向いたらね」

 

 手を前後に振ってさっさと出て行けと合図したら、いらついた様子で侍女たちは脱衣所の方に向かった。

 

 一人になり気を張る必要がなくなったので、深く沈んで口まで湯船につかる。

 

 ブクブクと泡を立てながら、これからやるべきことを脳内で何度もシミュレーションしていく。

 

 ヴァリィが上手くことを進めていたら部屋にはお香が焚かれている状態になっている。でもすぐに効果を発揮するわけじゃないから時間を稼がないといけない。

 

 その方法は……思い浮かばない。監視役の侍女たちをどうやって欺すかも決まってない。色々とずさんな計画だ。

 

 普段はゆったりとした服で隠しているけど、この大きな胸を使えば時間を稼げるかな?

 

 触られると思っただけで寒気がした。

 

 お色気作戦はやめておこう。

 

 冷たい態度を取って時間を稼ぐ? なんとかなるかなぁ……。

 

「はぁ……」

 

 こんなことになるなら、ポルン様にすべてを捧げれば良かった。

 

 王城についてから後悔ばかりが思い浮かぶ。

 

 今頃、村で何しているのかな。

 

 エーリカと深い仲になっているかもしれないと思ったら心が痛くなったけど、これからプルドと夜を共にするかもしれない私には、嫉妬する資格はない。

 

 それに今は余計なことを考える余裕なんてないから、ポルン様のことは一旦忘れよう。

 

「まだですか~。そろそろ時間ですよ」

 

 一人になってからたいして時間はたってないのに、脱衣所から侍女が急かしてきた。

 

 ムカついたので無視しておく。

 

 プルドをナイフで何度も刺す妄想をしながら、体を浮かすと天井を見た。

 

 男性に群がる裸体の女性の描かれた絵画があった。趣味が悪い。

 

 私が求められていることを思い出し、気分が沈んでいく。

 

 このまま水に溶けて消えちゃいたいな。

 

「時間です! 早く出なさいっっ!!」

 

 うるさい。

 

 黙って待ってれば良いものを。

 

「これ以上待たせるなら、プルド王子殿下をここに連れてくるよっ!」

 

 それは困る。言ったからには実行しそうだ。

 

 脅しに負けて慌てて湯船から出ると、肌を伝って水が流れ落ちていく。

 

 裸のまま歩いて脱衣所まで行くと、タオルを持った侍女が体を拭き、私の髪を手に取って匂いをかぐ。

 

「良い香りですね。これなら満足されることでしょう。さあこれを着なさい」

 

 別の侍女が服を持ってきた。

 

 受け取るとツルツルとした質感があって気持ちが良い。けど、これを着るのは嫌だな。

 

 ワンピース型のネグリジェなんだけど胸の部分は大きくはだけていて、肌が透けるほどじゃないけど触れば体温が伝わるほど生地が薄い。

 

 男を誘惑するためにだけに作られた服という印象を持った。

 

「さっさと着なさい」

「わかっている」

 

 急かされたこともあって仕方なくネグリジェを着る。

 

 丈が短くて太ももの半分ほどまでしかない。思っていたよりも露出に力を入れていた。

 

「これなら、まぁ、なんとかなるでしょ。行きますよ」

 

 私の後ろと左右、前に侍女が立つと、スリッパを履いて歩き出す。

 

 脱衣所から出て廊下を進んでいると、城内を警護している騎士や兵とすれ違う。

 

 みんな鼻の下を伸ばしててムカついたけど、手を出してくることはなかった。

 

 侍女たちが睨みを利かせたのだ。

 

 プルドが手を出すまでは誰も近寄らせない。そんな意思を感じた。

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