勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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一緒に王都へ来てくれないかしら?

 メルベル宰相は気になる発言をした後は黙って立っていた。

 

 しばらくするとヴァリィの肌が元に戻り起き上がる。

 

 なんとランプの魔道具は体内の汚染物質までも浄化する機能があったようだ。

 

 無事が確認出来てほっとした。厳しい戦いだったがなんとか犠牲者を出さずにすんだようである。

 

 * * *

 

 テレサに運んでもらって俺は今、借りていた宿の部屋で横になっている。

 

 一人でゆっくり過ごせれば良かったんだが、なぜかベラトリックス、トエーリエ、ヴァリィが右側に、対立するように左側にテレサが立っている。

 

 王国側と光教会側という構図だ。出会ったばかりだというのに、どうして仲が悪いのだろう? 考えてもわからん。

 

 さすがに表だってケンカするような展開にはなっていないが、目でけん制し合っていた。

 

 このままじゃ空気が重くてゆっくり休めない。適当な話題を振って空気を変えよう。

 

「ベラトリックスはなんで手紙を送ったんだ? 国外へ行って欲しい理由を教えて欲しい」

「……文字通りに逃げて欲しかったんです」

「俺がそんなことしないとわかっているだろ?」

 

 汚染獣が襲っているのであれば、手紙があっても、逆になくても村には戻っていた。

 

 何をしても結果は変わらないことぐらい、ベラトリックスだって分かっていたはずだ。

 

「はい。ですが、それでも伝えるしかなかったんです」

「理由は?」

「王家はポルン様を――」

「何を話しているのかしら?」

 

 部屋にメルベル宰相が入ってくると、ベラトリックスは急に口を閉じた。

 

 王家にまつわる何らかの情報を知っていることを隠したいようだ。であれば、この場であえて話の続きを催促するようなことはしない。

 

 黙ってメルベルを睨みつける。

 

「初対面だというのに、随分と嫌われているようね」

 

 全く気にしてない素振りで言われてしまった。俺がどう思っているかなんて些細なこと、なんて感じていそうだ。

 

 傲慢な態度が気にいらないが、貴族という生き物はだいたいこんなもんだ。平民を対等な存在とは見ないのである。

 

 影で馬鹿にされることも多かったので今さら腹なんて立たない。

 

「まあいいわ。ちょっと用事があってきたの。私は宰相のメルベル、よろしくね」

「ポルンです。で、何の用でしょう?」

 

 四人が動き出す前に声を出した。

 

 体を起こして聞く体制を整える。

 

「一緒に王都へ来てくれないかしら?」

「勇者をクビになった今、行く必要はありません。私は旅に出たいのです」

 

 国内に留めておきたい思惑があるなら、ここで否定するはずだ。

 

 そうすれば政治的に利用しようとしていることが分かる。

 

 貴族どもは何を考えているのか。少しでも知りたいので相手の反応を待つことにした。

 

「一度、王都に来てくれれば後は自由にして良いわよ。ポルンならどの国も歓迎すると思うわ」

 

 反対するどころか賛成されてしまった。

 

 手元に置いておきたいわけじゃないらしい。なら、何を狙っている?

 

「なぜ王都に行く必要があるんですか? このまま旅に出ようと思っていたので、できれば行きたくないのですが」

「それは困ったわね」

 

 頬に手を当てながら鋭い目で俺を見ている。

 

「今回の汚染獣、普通と違ったと思わない?」

「ええ。小型を倒した後に出現したと思ったら、大型に匹敵しそうな汚染獣がでてきました。こんな事例は聞いたことありません」

「私もヴァリィとトエーリエの二人から話を聞いたときは驚いたわ。生まれたてのアレが国内で暴れ回っていたらと思うと背筋がぞっとするわね」

「小型を放置していたから、あんな変化が起こったのでは?」

 

 光教会は何度も討伐依頼を出していたようだが、無視していたのは王家だ。

 

 長時間放置したために、あのような個体が生まれたのであれば、その責任は重い。

 

「ああ。あれね。話を止めていたのは前の宰相みたいだったから、クビにして私が就任したのよ。今回の事件は王家としても責任を強く感じててね。だからちゃんと記録をまとめておきたいの。数日間で構わないから何が起こったのか王都にいる記録担当官に教えてもらえないかしら」

 

 言い分は理解できる。光教会には情報提供しようと思っていたので、王家に渡すのも悪くはない。

 

 汚染獣は人類共通の敵だから、隠すよりも協力したほうが良い、というのが俺の考えである。

 

 話を受け入れても良いと思い始めていると、ベラトリックスが間に入ってきた。

 

「ポルン様、その必要はありません。すぐに国外へ行きましょう」

「あら、何を焦っているのかしら?」

「王都に行かせたくないだけです」

「なるほどねぇ~。あなた、どこまで知っているのかしら」

 

 僅かにメルベルから殺気が漏れ出した。

 

 危険を感じ取ったヴァリィとトエーリエがベラトリックスを背に隠す。

 

「美しい仲間愛……と言いたいところだけど少し邪魔ね。どきなさい」

 

 威圧感のある言葉を発しながら、メルベルが二人に近づいた。

 

 貴族の娘に対応を任せっきりにするわけにはいかない。

 

 ベッドから降りて腕を伸ばし、間に割り込んだ。

 

「私との話は終わりですか? であれば、すぐにでも村から立ち去りますが」

「……少し興奮しすぎたようね。もう少しお話ししましょう」

 

 なんとかベラトリックスから意識を反らせることに成功した。

 

 彼女のおかげで王都に罠があると分かったので、よほどのことがない限りは断ると決めていた。

 

 




魔力切れで動けないポルンを運んだテレサ……役得でしたね!!
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