勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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あっているわよ

「なぜ? ころしたの、に……」

「一度は完全に死んだわね。それは間違いないわよ」

「どうして……いきて……」

「私が持っている特性、と言えば良いのかしら? 生まれてからずっとこれだから、よくわからないの」

 

 必死に口を動かしながら気づいたことがある。

 

 瘴気が薄いのだ。

 

 復活に力を使ったのか、密度が濃く、物理的に干渉できる力なんてない。よくて小型の汚染獣、恐らく極小と同じぐらいの力しか持っていないだろう。

 

 いまならもう一度、殺れる。

 

 同じ事を仲間も思ったようで、動けない俺の代わりにヴァリィが斬りかかると、セレーヌは動かないまま肩から腹まで斬り裂かれる。さらにテレサの放った光の矢が額に突き刺さった。

 

「会話の最中に割り込むなんて、マナーがなってない女ね」

 

 浄化の力によってボロボロと崩れ去って灰になる。

 

 やはり力は弱まっているようだ。

 

「今度こそ、倒せたの?」

 

 トエーリエが疑問に答えられない。特性と言うぐらいだから二度目もあるかもしれない。

 

 次に備えて呼吸を整え、魔力の回復に努める。

 

「念のためもう一度、矢を当てますね」

 

 テレサが弓を構える。

 

 灰の近くにいるヴァリィは剣を構えながら後ろに下がり、ベラトリックスは周囲に光の球を浮かべる。厳戒態勢だ。蘇ったところでまた殺せる。

 

「やります」

 

 宣言と共に光の矢が放たれ、灰の山に刺さる。

 

 何も起こらない。

 

 込められた魔力が切れて矢が消える。

 

 動きはない。何度も蘇るのは嘘で、今回こそ完全に殺した……!?

 

「酷いわねぇ。何度殺すつもりなの?」

 

 瞬きするぐらいの時間で、灰から、また裸のセレーヌが出現した。

 

「死ぬまでだよ」

 

 みんなが戦っている間に、まともに話せるぐらい魔力が回復した。トエーリエの肩をかりながら立ち上がる。

 

「あら。私を殺してくれるの? それは嬉しいわね」

 

 口を手で隠しながら笑っているが、もっと他のを隠せと言いたい。

 

 大きい胸はもちろんのこと、不要な毛を剃って丸見えになっている股の部分とか。

 

 余計なモノがぶら下がってないって、それだけで不思議な感覚になる。

 

 奥も見てみたいなーって好奇心とかいろんなモノがムクムクと……ってトエーリエが首を絞めてきた。

 

 これはマズイ。苦しい! ごめん! 今は本当に弱っているから死んじゃうって!

 

 怒りを静めてもらうためにも、慌てて視線をセレーヌの顔に戻す。

 

「でも無駄よ。私は死なない……死ねないのよ」

 

 諦めを含んだ声だった。

 

 不死という可能性が高まったように感じる。

 

 もし事実なら倒す方法がない。

 

 それこそ封印――そこで俺はようやく気づいた。セレーヌの正体に。

 

「お前、山脈に封じられていた大型の汚染獣なのか?」

 

 仲間がぎょっとした目で俺を見た。

 

「そうね。あっているわよ。確かに封じられていたわ」

 

 みんなが驚いている中、隠すことなくセレーヌは肯定した。

 

 俺は一瞬だけ影のある表情をしていたことに気づく。思い出したくもない記憶なのだろう。

 

「でも、伝承では人の形はしてなかった……どういうこと?」

「大きな体って意外と不便だから、人間の体に化ける魔法を開発したの」

「うそ……そんな理由で……人型に?」

 

 テレサが驚愕しているのが面白いのか、口が裂けるほどの笑みを浮かべている。

 

 それだけじゃない。先ほどまで弱かったセレーヌのまとう瘴気が一気に強くなる。

 

 力が弱まったと演技していたのかッ!

 

 危険だと判断したベラトリックスから光の球が放たれたが、瘴気で作られた黒い壁によって阻まれる。

 

 斬りかかったヴァリィも同じだ。攻撃しても届かないうえに、瘴気に近づいたせいで汚染物質が体内に入って犯されていく。

 

「攻撃は止めろ! 離れるんだ!」

「は、はいッ!!」

 

 素直にヴァリィは従って後ろに飛んで距離を取った。

 

 追撃があると思ったのに笑顔を貼り付けたままセレーヌは動かない。俺たちと戦うつもりはなく、王都を滅ぼすこともなさそうだ。

 

 先ほどから対話したがっているように感じる。

 

「何が目的だ?」

「ポルン。あなたに用があったのよ」

「続きを聞こう」

「あなたは、樹海に興味ないかしら?」

 

 外周には魔物が多数生息し、中心部には危険な汚染獣の本拠地がある。そういった噂がある場所だ。勇者であっても生きては戻ってこれない危険地帯である。

 

「…………ある。いつか行きたいとは思っていた」

 

 俺は汚染獣を絶滅させるために戦いを続けていた。

 

 人生の目的と言って良いだろう。

 

 飽きるほど女遊びをしてから、樹海に行って汚染獣の住処に向かうつもりだった。

 

 嘘でも興味はないと、言えない。

 

「だったら、樹海へ行くついでに殺して欲しい汚染獣がいるのよ」

 

 体を支えてくれるトエーリエの手に力が入った。話に乗るなと言いたいのだろうが、謎に包まれた汚染獣の生態を知るチャンスである。

 

 何も聞かずに断るなんてできない。

 

「どんなやつだ?」

「人類の言葉を借りるなら大型に分類されるわ。恨みがある相手なの。ねぇ、戦ってくれない?」

「相手が大型なら負けるかもしれないぞ」

「私を一度殺せるなら勝てるわよ」

「……お前、もしかして、俺たちの実力を試すために襲ってきたのか?」

 

 憎い相手を殺せるのか知りたいがために来たのであれば、大胆というか、雑な計画を立てたものだと感じた。

 

 死なないという自信があるからこそ、失敗を恐れない大雑把な性格になったのかもしれないな。

 

「さぁ、どうかしらね」

 

 笑って誤魔化されてしまった。

 

 まあセレーヌが襲ってきた理由なんてどうでも良い。だがこれだけはしっかり確認しなければ。

 

「村や王都を襲った汚染獣は、お前がけしかけたのか?」

「そうよ。だったら何?」

 

 右手に残った光属性の魔力をすべて注ぎ込むと光り出した。

 

「許すわけないだろ。死ぬまで殺してやる」

「あー。怖い、怖い。怖くて、王都を滅ぼしたくなっちゃうわね」

 

 脅しとしては効果的だ。ここには知った人たちが大勢いる……生きている人が大勢いるわけだし、ここで本格的に戦うのはマズイか。

 

 集めた魔力を霧散させた。

 

「最初から王都を人質にするつもりだったのか?」

「そんな無駄なことはしないわ。脅されたから言っただけ。もし依頼を断られたら別の人間を探すわ」

 

 意外なことにあっさりと引き下がるようだ。

 

 

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