勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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ブギィィ!!

 ベルガンド王国のガンダという町で女遊びをしようとしたら、ベラトリックスたちに囲まれて断念してしまった。

 

 このままじゃダメだと思い、なんとか気づかれず抜け出すことに成功するが、追われている状況には変わらない。街道を歩いたら、また見つかってしまうだろう。

 

 危険を承知して森の中に入ると決めた。

 

 フード付きのローブを身につけ、背負い袋を背負う。中には水や食料、野営の道具も入っているので数日なら生活はできるだろう。最悪、狩りをすればなんとかなる、はずだ。

 

 覚悟を決めて薄暗い森を歩く。

 

 誰にも会いたくないので道なき場所を選んでいる。

 

 鳥の鳴き声が聞こえ、遠くには鹿や猪の姿が見える。汚染されてないため多種多様な生物が生息しているのだ。

 

 自由を謳歌していて素晴らしい!

 

 こういう平和を守るために、俺は汚染獣と戦っていたんだ。

 

 自分のやってきたことが役に立っている、そういった実感を覚えつつ森の奥へ進むと、二足歩行する猪――オークを二体発見した。どうやら交尾をしているようで、メスのオークが木を掴みながらお尻を出し、粘着性のある音を立てながらオスのオークが野太い息子を打ち付けている。

 

 自然な営みであり、子孫を残すのに必要なことで、まったくもって非難されるような行為ではない。

 

 だが、俺の心は悲しみが渦巻いていた。

 

 オークですら交尾できているのに、俺は一体何をしているのだろうか。

 

 ズルい。許せない。俺にもわけて……欲しくはないが、先に卒業しているのは納得できないッ! どうして俺は、女性に縁が無いんだ!

 

 新しく買った槍を手に持ち、矛先をオークに向ける。

 

 別に嫉妬して殺そうとしているわけじゃない。

 

 オークは汚染獣より脅威度は低いものの人類を拉致して、犯し、食べることもある。見つけたら処分しても良い存在と知られているのだ。

 

 今すぐ殺すべきなのだが、俺は一歩も動けなかった。

 

「フヒ、ブヒィ~~~」

 

 気持ちよさそうにメスのオークが鳴くと、後ろを向いてキスを始めた。

 

 愛情を確かめ合っている。

 

 そんな二匹に対して、俺は攻撃できるのか?

 

 いや、できない。

 

 したくない。

 

 別の場所で出会っていたのであれば正面から戦い、殺していただろうが、愛を確かめ合っている最中に、邪魔をするのは違うのだ。

 

 槍を肩に乗せて背を向ける。

 

「幸せになりな、そしてもう、俺に見つかるなよ」

 

 オークが絶頂する声を聞きながら、俺は再び森を通り抜けるために歩き出す。

 

 あまり魔物は生息していない場所のようで、動物ばかりが目に付く。

 

 幸いなことに狼や蛇、熊といった肉食系には出会ってないので、道は険しいながらも順調に進んでいる。

 

 草木を踏みしめ足を動かしていると、少し開けたところに出た。

 

 地面の一部が黒ずんでいて、焚き火をしたような跡がある。

 

 触ってみると温かい。少し前までいたようだ。

 

 他にも痕跡がないか探るため周囲を調べると、地面に座っていた痕跡があった。

 

 魔物を狩る冒険者がいたのかもしれないが、少し違和感が残る。稼ぎを重視するなら、もっと出現数の多い場所を選ぶだろう。

 

 野盗といった表には出られない人である可能性も充分残っている。

 

 油断しきっているのか足跡は残っていた。

 

「調べてみるか」

 

 喉に小骨が引っかかったような収まりの悪さを感じ、正体を確かめるために後を追う。

 

 地面は柔らかく足跡がしっかり残っている。人数は四人。そのうち三人は土に深く沈んでいるので重い荷物を持っていそうだ。逆に一人は浅い。荷物はほとんど持っていないだろうし、装備は軽装だろう。

 

 対象の情報はある程度手に入った。急ごう。

 

 小走りで森の中を進む。

 

 しばらくして戦闘音が聞こえてきた。

 

「オーク風情が調子にのるなッ!!」

「ブギィィ!!」

 

 声を聞きながら木の裏に隠れて様子を見る。

 

 オークは五体と多い。戦っている男は三人で、革鎧と片手剣という、おそろいの装備をしている。地面には大きな背負い袋が二つと……ロープで身動きが取れないようになっている女性が一人いた。森の中だというのに薄いピンク色のドレスを着ている。うつ伏せになっていて顔は分からないが、貴族階級の令嬢だろう。

 

 冒険者ではなく犯罪者で確定だな。

 

「高い護衛代を払ってるんだ! さっさと殺せッ!」

 

 指示を出している男は高そうな紺色のローブをつけている。左胸に蛇の紋章が描かれているので、ベルガンド王国の知識があればどこの家かわかったはずだ。

 

 手には短いロッドがあるので魔法を使うのだろう。実力のほどが分からない。もし戦いが得意な家柄で、ベラトリックスほどの能力を持っているのであれば、正面から戦うのは危険だ。

 

「これでも頑張ってるんだよ! 文句があるなら手伝え!」

「お前ッ! 俺様に命令しやがって生意気だぞ!」

「そんなこと言っている状況じゃ――ガハッ」

 

 貴族らしき男と話しながら戦っていた護衛の一人がオークに殴られて顔が潰れた。

 

 あの状況なら即死である。

 

 さらに不利な状況になった残った護衛の二人は、死にたくないとわめきながら懸命に剣を振っている。しかし、そんなもの歴戦のオークには当たらない。また一人、殴り殺される。

 

「ゲオン様……だずげて……」

 

 最後まで生き残った護衛は、剣を構えながら涙声で懇願した。

 

 さすがに動くだろうと思って様子を見ていると、ゲオンと呼ばれた男は魔法を使おうとロッドをオークに向ける。

 

 集中しているのか目をつぶっていて、魔力を集めているようだ。

 

 一秒を争う戦いの中で、これは遅すぎる。少なくとも魔法が実戦で使えるほど習得できているとは思えなかった。

 

 

 

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