勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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お水は貴重ですから

 普段から鎧を着ているヴァリィや硬い服を着ているベラトリックス、トエーリエと違って、アイラは薄い生地のドレスだ。しかも下着を着ているわけではないため、体温や胸の柔らかさが感じやすい。

 

 本来であれば色々と堪能できたはずなのだが、非常に残念なお知らせがある。

 俺がブレストアーマーを着ているので何も感じないのだ。

 

 娼館に行けないばかりか、こういったチャンスすらものにできない。

 

 ちょっとしたエロイベントぐらい堪能させてくれよ……。まさか、俺は呪われているのか?

 

 聖女と呼ばれるトエーリエであれば一目で呪われているか分かるのだが、しばらくは別行動をしているので、最近になって呪われている可能性は否定できない。いや、ずっと女遊びできないことから、呪われていると思って良いだろう!

 

 今度時間ができたら調べに行こうと思った。

 

「どこに行くのですか!?」

 

 強く抱きしめながら移動を続けていると聞かれてしまったが、エロ妄想をしていたためあまり決めてなかった。

 

 とりあえず思いついたことを伝える。

 

「安全な場所を探しています。良い場所知りませんか?」

「わかりません!」

 

 そうだよな。当然の反応である。

 

 貴族令嬢が森に詳しかったらビックリだ。一連の出来事が罠だと思っていただろう。

 

「魔物や動物の気配が濃くなっているので、しばらくはこのまま移動を続けます」

「ひゃい!」

 

 走る振動に負けて噛んでしまったようだ。

 

 しゃべり続けるとアイラがケガをしてしまいそうなので黙ることにする。

 

 移動中、魔物に見つかることもあったが、魔力で身体能力を強化しているためすぐに振り切れる。

 

 久々に体力の限界まで動き続け、辺りが薄暗くなった頃になって、ようやく誰もいない小さな洞窟へたどり着いた。

 

 * * *

 

 急いで枯れ木を集めてから、洞窟の中で焚き火をしている。

 

 俺は入り口の近くに座っており、アイラは焚き火を挟んだ反対側で横になっていた。疲れと緊張からの解放によって眠気が襲ってきたのだろう。静かな寝息を立てている。

 

 パチッ。

 

 焚き火から音がした。

 

 腹が減ってきたので背負い袋に入れていた干し肉を取り出し、枝につけて火で炙る。

 

 香ばしい香りがしてきた。

 

 腹が鳴って早く食べろと急かしてくる。

 

 口を開いて干し肉を近づける。

 

 寝ていたはずのアイラと目が合った。

 

「起きたんですか?」

「はい……」

 

 恥ずかしそうにして俺を見ないようにしているが、目はしっかりと干し肉を追っている。

 

 攫われて森まで来たのであれば、丸一日、何も食べてこなかった可能性もあり、極度の空腹なのかもしれない。

 

「先にどうぞ」

 

 枝に刺した干し肉を前に出す。

 

「よろしいのですか?」

「沢山ありますから」

 

 新しい干し肉を取り出してから焚き火をぐるっと回り、アイラに温めた方を渡す。

 

 ためらいつつも小さく口を開いてパクリと食べ、眉間にシワが寄った。

 

 肉を引きちぎろうとしているが、うまくいってない。

 

「塩辛くて固いですよね。何度もかんで柔らかくしてかみきってください。応援しています」

 

 助けるなんてことはできないので、にっこりと微笑んでから新しい枝に干し肉を刺し、焚き火に近づけて温める。

 

 じっと待ち、油が溶けるほど暖まったので、干し肉を口に入れてかみ切る。

 

 塩辛く喉が渇く味だ。美味しくはない。

 

 高級品を食べ慣れているだろうアイラは耐えられるだろうか。目だけを動かして様子を見る。

 

 食べるコツを掴んだのか普通に食べていた。

 

「味は、大丈夫ですか?」

「クセはありますが、嫌いじゃありません」

 

 モグモグと肉を噛みながらアイラは返事をした。

 

 貴族のマナー的に問題ありそうだが、本人は気にした様子はない。あまり厳しく育てられてこなかったのかな?

 

 喉が渇いたので、水袋に口をつけて飲む。

 

 アイラがじーっと見ていた。

 

「飲みます?」

「はいっ!」

 

 渡すと上品に少しずつ飲み、すぐに返してくれた。

 

「もっと飲んでも大丈夫ですよ」

「お水は貴重ですから」

「確かにそうですが、無理を続けて倒れても困ります」

「心配してもらえて嬉しいのですが、これでも体は丈夫なんです。空腹や喉の渇きには慣れてますよ」

「男爵令嬢なのに?」

「ちょっと前まで貧乏でしたから」

 

 はっとした顔をして、アイラは手で口を隠した。

 

 隠し事を言ってしまったようだ。誘拐に関わることだろう。よく言えば素直、悪く表現するなら間抜けだろうか。隙が多い性格をしていて他人事ながら心配になってしまった。

 

「ということは、今は違うのですか?」

「あはは」

 

 笑って誤魔化そうとしたので、口を閉じてじっと見る。

 

 気まずそうに頬をかいて目をそらされてしまったが、それでも動かない。

 

「前にも言いましたが、知ったら迷惑をかけちゃいますよ……?」

「かまいません」

 

 ここまで来たのだ。困っているのであれば助けてあげたい。肩書はなくなったが勇者の血が騒ぐのだ。

 

 干し肉も食わずに待っていると、ようやくアイラが重い口を開いた。

 

「最近になってルビーの採れる山が見つかって領地が潤い始めたんです」

 

 すると、採掘から販売までのルートは確保できている状態か。

 

 貧乏男爵領から抜け出せるほどなので、採掘量もそこそこありそうだ。

 

 事情が分かってくると、アイラが攫われた理由というのもボンヤリとだが見えてきたぞ。

 

 

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