勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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守りたいな

 メイドを捕らえてから数日が経過した。

 

 少しだけ屋敷内は落ち着きを取り戻している。

 

 そろそろ町の様子を確認しに行っても良さそうな頃合いだ。

 

 ずっと我慢していた甲斐がある。

 

 そう、女遊びをする日が来たのだッ!!

 

 しかし小さな町であるため娼館は存在しない。一見すると遊ぶ場所がないと思われるのだが諦めてしまうの早計というものだ。

 

 男の欲望がある限り体を売る女は必ずいるし、そういった人たちが集まる場所も用意されている。ただよそ者だと分かりにくいだけで、兵士に遊べる場所を聞いたらすぐに遊べる場所が分かった。

 

 花街と呼ばれる裏通りに立っている女に声をかけて、借りている宿へ連れて行く方式らしい。

 

 門番から相場も聞いている。ぼったくられることはない。

 

 準備は万全なのだ。

 

 俺には街を歩いて地理を把握するという大義名分がある。実際、住民の情報を集めるのも重要だ。ヴォルデンク家がどう思われているのか、リアルの声を集めて状況を把握する予定で、顔が割れてない俺だからできることである。

 

 普段使っている槍は屋敷において、町の住民が着ているラフな服装に着替える。さらにローブについているフードをかぶれば、仮にベラトリックスたちと鉢合わせしても気づかれないだろう。

 

 ふふふ。完璧だ!

 

 期待と興奮で下半身が喜んでいる。

 

 屋敷を出て小さな前庭を進み、門に着いた。

 

「お出かけですか?」

 

 アイラと戻ってきたときに会った門番だ。

 

 まだフードをかぶってないので顔を見て声をかけたのだろう。

 

「町の様子を見てくる」

「かしこまりました。お気をつけください」

「ありがとな。お前も気をつけろよ」

 

 手を振って別れる。

 

 熱心に仕事をしていると見せているが、愚痴は多く夜になると屋敷内で賭博をする。借金で苦労しているらしいので、賄賂を渡せば不審者を見逃すこともあるだろう。その程度の男だ。

 

 まあ、今はどうでも良いか。

 

 さっさと例の場所に行くぞ。

 

 屋敷から離れたのでフードをかぶろうと手をつける。

 

「どこに行くのですか?」

 

 聞き慣れた声がしたので振り返る。

 

 バケットハットと呼ばれる、つばの広い帽子をかぶっている女性がいた。水色のワンピースを着ている。

 

「アイラ様……」

 

 どうしてここに、とまで言わなくても疑問は伝わったようだ。

 

「ポルンさんは私の護衛じゃないですか。一緒にいるのは当然ですよ」

 

 この娘は何を言ってるんだ?

 

 一応ではあるが、屋敷内は安全なのだから、俺に付いていく必要はない。

 

 何を考えているかわからず、不気味な生物のように見える。

 

 あまり好ましくはない。追い返さないと。

 

「当主代理の仕事はどうしたのですか?」

 

 サボるなよ、と責めるような口調で言った。

 

「徹夜して今日の分は終わらせちゃいました。頑張ったんですよ」

 

 化粧で隠しているようだが、よくみれば目元を見たら隈がある。

 

 言っていることは嘘じゃなさそうだとわかったが、同行を許可する理由にはならない。

 

 息抜きができなくなるので断固拒否したいのだが、俺が何かを言う前にアイラが腕に絡みつき、歩いて引っ張っていく。

 

 俺を見上げてくる。目がすわっていて、ちょっとだけ怖かった。

 

「夕方までには戻る必要があります。さ、行きましょう」

「待ってください。今日は一人で行動したいのですが……」

「護衛は依頼主の後を付いてくるものです」

 

 有無を言わさないほどの迫力がある言葉だった。

 

 当主代理という重責、親や使用人たちが信じられない反動なのだろう。

 

 拒否すれば今の関係は崩れる恐れがある。バドロフ子爵が攻めてくることを考えれば女遊びは後日にしてアイラを優先するべきか。

 

「わかりました。お嬢様、どこに行きたいのですか?」

「お仕事の邪魔をするつもりはありません。ポルンさんが行こうとしていた場所で良いですよ」

 

 気が利く女でしょ? みたいな顔をされても困るって!

 

 貴族令嬢を花街に連れて行けるはずないだろ……。

 

 未婚の女性なんて大抵潔癖なんだから、軽蔑されるに決まっている。信頼関係構築どころか破壊へまっしぐらだ。

 

 必死に脳を働かせて別の場所を探す。

 

 ん? まてよ。そういえば、また偶然にもエロイベントが邪魔されてしまったな。

 

 一度ではない。二度、三度だ。さすがに不自然だと思って良いだろう。

 

 そういえば森の中で呪いの話をしていたし、後日に備えて今から確認した方が良いかもしれない。

 

「光教会に行って、バドロフ子爵から怪しい魔法をかけられないか確認してきます」

「あ、それは大事ですね。お忍びで私も見てもらいたいな。散歩しながら向かいましょうか」

 

 特に違和感を覚えなかったようだ。あの男ならやりかねない、そういったイメージがあって良かった。

 

 屋台で買い食いしながら腕を組んで街を歩く。活気があるとは思わないが人々の表情は悪くない。

 

 ルビー鉱山のおかげで領内が潤いだしているからだろうか。今年よりも来年はもっと良くなる。そんな希望に満ちているように感じた。

 

 彼らはまだ、自分たちの足下が脆いとは気づいていないのだ。安心しきっている。

 

「町をじっくり見た感想はあります?」

「守りたいな、と思いますね」

 

 前向きな気持ちを伝えると、腕を放して嬉しそうに俺の周りを回った。帽子のつばがあって顔は見えにくいが、アイラは微笑んでいそうだ。

 

「転ばないでくださいね」

「もちろんです」

 

 本人が楽しんでいるなら、これ以上の小言は不要だな。

 

 つかの間ではあるが、将来のことを考えず解放感というのを味わっててくれ。

 

 屋台で買った串に刺さった肉を食べながらアイラの後ろ姿を見ながら歩いていると、ようやく光教会が見えてきた。

 

 どこも同じ構造で太陽のシンボルを掲げているので分かりやすい。

 

 勇者時代には頻繁に通っていたので懐かしさすら感じる。

 

 そんな場所に知っている女性がいた。

 

「トエーリエ?」

 

 思っていたよりも早く来たな。それが最初に思った感想だった。

 

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