勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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光教会はどうですか?

「それでは行きましょうか」

 

 呪われてないと分かった瞬間、アイラが俺の腕を引っ張ってトエーリエから離れようとした。別々になりたいと思っての行動だろう。

 

 数歩進むと、空いている反対側の腕を握られる。

 骨がきしむような強さだ。

 思わず顔が歪んでしまった。

 

「使い魔で連絡しなければいけないほど、私たちの力が必要なんですよね? 事情を詳しく教えてください」

 

 町を視察するのも重要ではあるが、信頼できる仲間を増やすほうが優先度は高い。トエーリエが言っていることは正当性があるので、足を止める。

 

「ポルンさん?」

 

 俺が歩かないことに驚いたみたいだ。

 

 アイラは振り返り、不安そうな顔をして俺を見ている。

 

「散策前に詳しい事情を話しても良いですか? この前言った通り信頼できる人です。必ず力になってくれます」

「……わかりました。そうしましょう」

 

 意見を受け入れてくれたが、ぎゅっと唇を噛んで我慢しているようだ。

 

 言いたいことを飲み込んだというのがわかりやすい。不満です、とあえて伝えているのだろう。子供っぽいとは思うが、それが可愛い。

 

 女は余裕のある男に惹かれるって聞く。年下のこういった仕草を受け止め、包容力のある男として磨かれていけば、モテるようになるのは間違いない。

 

 男磨き……いいな。

 

 夢が広がるぞ。

 

 ふふふ。今から娼館で遊べる日が楽しみである。

 

「その変な顔、止めたほうがいいですよ」

 

 妄想していたらトエーリエに注意されてしまった。

 

「え? そんな変だった?」

「はい。見たのが私だったからよかったものの出会ったばかりの人だったらドン引きですよ」

「マジ?」

「嘘はつきません」

 

 きっぱりと言われてしまえば反論なんてできない。

 

 今後、妄想するときは気をつけようと思った。

 

 トエーリエは俺の背後を見て勝ち誇ったような顔をしてから口を開く。

 

「で、どこで話します?」

「アイラ様の屋敷は……やめた方が良いだろう。うーん。どうするかな」

 

 領主の娘が宿や酒場に入るというのも自然ではない。何か企んでますと宣伝しているようなものだ。

 

「個室が借りられる高級レストランにでもするか?」

 

 金をくれるパトロンがいるから、俺のおごりにしてもいい。

 

 良いアイデアだと思ったのだ、どうやらアイラは違う意見だったようだ。

 

「それは避けた方がいいかもしれません」

「理由を教えてもらえないでしょうか?」

 

 知りたかったので疑問をぶつける。

 

「我が家が領民によく思われてないからです。きっと盗み聞きされて噂を流されてしまうでしょう」

「それほどですか……」

「お父様の資料を詳しく見ると、根拠のない噂を流されてしまっているようで、町の中ですら安心出来ません」

 

 だから帽子で顔を隠していたのか。レストランの中までは素顔を隠しているわけにはいかないので、正体がバレたら聞き耳を立てられるかもしれない。アイラの懸念を見当違いだと却下する考えにはならなかった。

 

「でしたら、光教会はどうですか?」

 

 提案したのはトエーリエだ。光属性を持ち勇者として活動していた俺であれば、個室を一つ貸すことぐらいすぐにしてくれるだろう。

 

 だが、俺の正体が発覚してしまうかもしれない。

 

 どうするべきか悩む。

 

「部外者には貸してくれないのではないでしょうか? 領主代理として私がお願いしても難しいと思いますよ」

「その辺は大丈夫です。特別な伝手がありますから」

 

 アイラに正体を隠していることは伝えていたので、気を使ってくれたのだろう。

 

 ウィンクしてからトエーリエは光教会の中へ入ってしまった。

 

「彼女は何者なんですか?」

 

 光教会は独立した組織で、国からの影響はほとんど及ばない。

 

 理由は光属性持ちを保護、育成しているからだ。人類共通の敵である汚染獣と戦い続けるには中立でなければならず、各国は手を出さないようにしている。

 

 そのため特別な伝手があるというのは非常に珍しいことで、アイラが事情を聞きたがるのも不思議ではなかった。

 

「俺の頼れる仲間、だけでは不十分でしょうか?」

「いつか教えてくれますか?」

「その時がくれば必ず」

 

 元勇者だと隠しているのは女遊びをしたいからで、終わったら正体を明かしても良いと思っている。

 

 この町で数日過ごしたらすぐ終わるだろう。

 

「約束ですからね」

「もちろんですよ」

 

 トエーリエと出会ってから少し機嫌は悪いように見えていたが、ようやく持ち直したようだ。

 

 腕を組み体を密着させてくる。

 

 貴族の子女としては、はしたないと呼ばれる行為で、どんなに気分が良くても普通はしない。

 

「アイラ様?」

「少しだけ、こうしていたいんです」

 

 唯一の肉親が死に、使用人は信じられず、領民には嫌われている。

 

 まだ大人になりきれてないアイラには辛いことが続いていて、誰でも良いから頼りたくなるのはわかる。

 

 勘違いしてはいけない。俺に惚れているのではなく、ただ寄りかかりたいだけだ。行きずりの男だから便利に利用されているだけ。

 

 人によっては寂しいと思うかもしれないが、俺はこれで良いと思っている。

 

 問題が解決すれば別れるのが決まっているので、深い関係になりすぎないぐらいがちょうどいい。

 

 今の距離感を維持していれば良いのだ。

 

「わかりました」

 

 短く返事すると、トエーリエが戻ってくるまで同じ姿勢を維持していた。

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