勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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理由はどうでもいいか(バドロフ子爵視点)

 ヴォルデンク男爵を毒で意識不明にさせたところまでは良かったが、誘拐したはずの娘が戻ってきて、さらに槍を持った頭のイカれた男から追い出されてしまった。

 

 人生最大の屈辱だ。この二ヶ月毎日メイドを痛めつけても気は晴れない。体内に激しい憎悪が渦巻いている。

 

 この恨みを晴らさなければ前に進めない。

 

 強引に小娘を奪い側室に迎え、ルビー鉱山の利権を奪うだけで終わらせてやろうと思っていたが、計画は変更だ。

 

 領地を荒らして親娘を暗殺した後、ヴォルデンク家は領地を治めるにふわさしくないと宣言して攻め入り、支配してやろう。

 

 武力によって傷つけられたプライドは、同じく武力でしか回復しないのだ。

 

 徹底的に叩きのめして格の違いを見せつけてやる。

 

 寄親と王家には多額の献上品を贈って根回しは終わっている。ヴォルデンク家を取り潰す計画は着々と進んでいた。

 

 * * *

 

 ヴォルデンク領に放っている密偵が戻ってきたので、誰もいない寝室で報告を聞くことにした。

 

「して、最近の動向はどうなっている?」

 

 目の前で跪いている黒い衣装をまとった男に聞いた。

 

 平凡な顔立ちをしており、誰の記憶にも残らない。特徴の無い人間だ。ヴォルデンク領で様々な工作をしてきた腕利きである。

 

「ヴォルデンク男爵は未だ目覚めず、娘のアイラが当主代理として領内の不正を一掃したようです。兵の数名を処刑と給金の向上、労働環境の改善によりメイドや兵たちは、こちらからのコンタクトを拒むようになっています」

 

 厄介だな。想像よりも良い手腕だ。

 

「情報源は絶たれたのか?」

「いえ、メイド長のイレーゼとはつながっております。あやつを首にすれば屋敷内のことが回らなくなるので、当主代理も手を出せなかったのでしょう」

 

 そもそも仕事をしてこなかった小娘が、引き継ぎもなく当主として働いているのだ。周囲に頼らなければ仕事は回らない。

 

 下っ端はともかく、メイドをとりまとめるイレーゼは切れなかったか。

 

「情報によると、当主代理が雇った護衛の名はポルン。外国の人間のようで、同じ出身地の仲間と思われる四人を呼び寄せています」

「放蕩貴族か? それとも大商人の息子か?」

「国外への情報網が少なく詳細はわかっておりません」

 

 これは仕方がない。領地が隣接しているヴォルデンク領とは違って国境は複数の領地を挟んでいる。

 

 本気で調べるにしてもリスクは大きく、時間と金が消費されてしまう。

 

「ヤツは娼婦の集まる通りでの目撃証言が多数あります。かなりの女好きと思って良いでしょう」

「だったら女とよろしくしてる時に殺せそうだな」

「私もそう思ったのですが……女に声をかけても逃げられているようなので難しそうです」

「体を売っている女が逃げるだと? 嘘ではないのか?」

「この目で私も確認しております」

 

 金さえ払えばどんな男とも寝るのに?

 

 あり得ない。

 

 女に嫌われる呪いでもかけられてると言われた方が納得できる。

 

「……まぁ、理由はどうでもいいか。適当な女を派遣して調略できないか試してみろ」

「そう言われると思って数名手配しております」

「わかってるじゃないか。そのまま進めろ」

「はッ!」

 

 ポルンは熟練した戦士と同レベル以上の実力があったので、先に潰しておこうとの判断だ。けっして個人的な恨みではない……!

 

「ルビー鉱山の方はどうなっている?」

「警備計画は入手しております」

 

 羊皮紙を差し出されたので受け取る。これは写しだろう。

 

 不正していた兵が粛清されたからか、手薄になっているな。

 

「これについて内通者は何か言っていたか?」

「当主代理はルビー鉱山の警備に力を入れ、町を巡回している兵の数は減らす方針だと聞いております」

 

 収益の生命線となるルビー鉱山の守りを優先するのは納得できる話だ。

 

 情報に違和感はない。

 

 町が荒らされるのを警戒してポルンとその仲間は小娘の護衛、兵や使用人の不正を監視するために動いていることだろう。ルビー鉱山には行かないはずだ。

 

 明確な隙である。

 

「罠の可能性は?」

「低いかと」

 

 視線で理由を話せと伝える。

 

「イレーゼが内通していることはバレておりません。またルビー鉱山を確認してみましたが、実際に警備は強化されていました」

「ふむ……ポルンの仲間はどうだ?」

「内政は得意だが戦闘面は一般兵に劣ると聞いております」

 

 一人でも魔法を使える相手がいたらやっかいだったが、杞憂だったようだ。

 

 世界を見ても魔力持ちはごく僅か。しかもその多くは貴族階級だ。立場、そして能力面からも貴重な人材を外国に出すとは考えにくく、魔法を使える人材はいないと思って良いだろう。

 

 総合的に判断してポルン以外は武力面で脅威ではないと結論を出した。

 

「情報は出そろった。大きく動くぞ。町とルビー鉱山、その両方を叩く」

「かしこまりました。町の方は冒険者崩れのチンピラを暴れさせ、ルビー鉱山はタイミングを見て襲撃します」

 

 町の治安を悪化させて注目している間、ルビー鉱山を襲撃して乗っ取る計画だ。

 

 寄親から紹介してもらった方の力を借りれば、証拠は一切残らずに支配できるだろう。

 

「切り札は?」

「既に領内へ運び入れております」

 

 であれば、最悪のケースを考えても負けることはない。

 

「いいだろう。それと内通者には寝込んでいるヴォルデンク男爵を殺せと伝えておけ」

 

 そもそもあの男が小娘との結婚を認めさえすれば、こんなことをしなくてすんだのだ。

 

 何がもっと上の爵位じゃないと認めないだ。男爵風情が生意気を言う。

 

 この俺は子爵程度で収まる器じゃない。もっと広い領地を治める大領主となるべき男だ。

 

 侮った責任、取ってもらうからな。

 

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