勇者の俺がクビになったので爛れた生活を目指す~無職なのに戦いで忙しく、女性に手を出す暇がないのだが!?~   作:わんた

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これはただの日記ですね

 裏口から仲介人の家に入る。

 

 台所だったようで使用済みの調理器具が置かれている。皿も洗ってないようで溜まりっぱなしだ。

 

「汚いですね……」

 

 慣れてないアイラはハンカチで口と鼻を覆いながら、嫌そうな顔をしていた。

 

 旅を続けていたら数日風呂には入れず、食器も満足に洗えないことなんて珍しくない。トイレだってそこら辺ですますことも多く、この程度なら綺麗とも言える。感覚の違いというのを感じた。

 

 台所から廊下に移動する。ほこりっぽいがゴミは散らかっておらず綺麗だった。ドアが開きっぱなしのリビングを見ると、ソファやテーブルが倒れていて荒らされた跡が残っている。二人分の死体があったので、何か持っていないか調べた。

 

「身分を証明するものすらないな。こいつらは雇われたチンピラじゃなく、バドロフ子爵の手先か?」

「領民の顔はよく知っていますが見たことありません。ポルンさまの推察通り、他の領地から来たみたいですね」

 

 小さい町だからだろう。領民の顔は覚えているみたいだ。贅沢と女に溺れていたヴォルデンク男爵だったらこうはいかなかっただろう。やはりアイラは真面目な性格をしていると感じる。

 

「念のため、指名手配書で人相確認ぐらいはしておくか」

「それが良いですね。兵に指示しておきます」

 

 ベラトリックスが使い魔を放った。先ほどの指示を伝えに行ったのだろう。仕事が早くて助かるな。比べたら失礼かもしれないが、兵たちと全く違う。

 

「では二階に行きましょう」

 

 階段をのぼっているとまた死体が一つあった。背中からバッサリと切られている。これは兵の仕業だな。

 

 顔を確認したが、こいつも見たことがない顔らしい。結構な人数が領内に潜り込んでいたみたいだ。バドロフ子爵の本気度というのが伝わってくる。

 

 邪魔だったので階段から死体を落とすと二階に着いた。激しい抵抗があったみたいで壁は焦げており、天上に穴が空いている箇所もある。ベラトリックスが魔法で大暴れしたんだろう。

 

 焦げた臭いがする中、手前の部屋から調べていく。クローゼットや本棚、机の引き出しまで確認するが、何も見つからない。

 

 残り三部屋も同じ状況だ。ベッドを破壊して調べてもバドロフ子爵につながるような証拠はなかった。

 

 部屋の中に燃えかすがあったから、突入されたのと同時に重要な書類は消してしまったのだろう。

 

 手がかりは最初に奪い取った羊皮紙だけか。

 

 そういえば内容を確認してなかったな。

 

 椅子に座って広げてみる。

 

 後ろからベラトリックスとアイラが覗き込むようにしてこちらを見ている。

 

 距離が近く、髪から良い匂いがした。ふと異性として意識してしまう。

 

「何が書いてあるんですか?」

 

 ベラトリックスの息が耳にかかって、ぞくぞくした。ちょっと立てる状況じゃない。足を組んで大きくなってないのをバレないようにしながら、羊皮紙を読み進めていく。

 

 命をかけて守ろうとした割にはたいしたことは書いてないようだ。

 

「これはただの日記だ。何を買って食べたか、そんなことばかりが書かれている」

「よく見せてください」

 

 顔をぐいっと近づいてきた。ベラトリックスの頬が俺の顔に触れる。

 

 柔らかい。温かい。良い匂い。

 

 この三つの単語が脳内を占めた。

 

 さらにアイラも近づいてきて左右を挟まれる。背中には胸の柔らかい感触が伝わってきて、さらに俺を興奮させてくる。敵地にいるのにもかかわらず、意外と胸が大きかったんだななんて考えてしまっている。知能が大きく下がっているのを自覚するほどだ。

 

 こうやって本能が暴走するのは、女遊びできてないのが悪い。うん。俺に責任はないな!

 

「ポルン様、この日記、大人が書いたにしては表現のおかしい箇所があります」

「本当だ。ここはスペルが間違っていますし、どうしてでしょうか?」

 

 余計なことを考えている間にも二人は真面目に日記を読んでいたようだ。

 

 指摘されたので改めて俺も見る。

 

 最初は斜め読みしていたので気づけなかったが、文法や単語に違和感を覚えた。興奮した頭で読んでみても気づけるほどおかしい。

 

 子供でももっと上手に文章が書けるぞ。

 

「これ暗号ですね。解読するには変換のルールを記載した紙があると楽なのですが……」

 

 途中で言葉が止まり、ベラトリックスは燃えかすで黒くなった床を指さした。

 

「燃やされたのか」

「ですね」

「解読できるか?」

「少なくとも一カ月はかかりそうです。最悪は年単位ですね」

「それじゃ間に合わない」

 

 既にバドロフ子爵が動き出しているのだ。俺たちが反撃してアジトを潰したので、報復として町の攻撃は激しくなるに決まっている。

 

 時間をかけて暗号は解読しなければいけない。すぐに役に立つことはないだろう。

 

「とりあえず暗号解読は別に進めるとして、これからどうするかだな。町の警備は今まで通り少し手薄にしてルビー鉱山の強化をするか?」

 

 上手くいっているので方針を変える必要はない。

 

 治安を乱してくる手下どもを処分していけば良いのだ。

 

「賛成です……あ、使い魔が戻ってきました」

 

 残念なことにベラトリックスが離れてしまった。

 

 窓に止まっているガラスで作られた鳥の頭に手を乗せる。記憶を読み取っているのだ。

 

「これは……ちょっとマズイことになりましたね」

「指名手配でもされてたのか?」

「この子はルビー鉱山の方に派遣していた個体だったんですが、どうやら襲撃があったようです。兵は抵抗したようですが乗っ取られているみたいですね」

 

 同時攻撃してきたのか。

 

 思っていたよりも戦力に差があったようだ。

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